「みずほ点訳」ホームページ

 吾輩は阿茶である 




第21回〜第30回



阿茶
カーテンのすぐ脇に正座している阿茶。
自分で開けでもしたのか、遠くを見つめている。




第21回 (2001.8.24)

「寝る子」から「ねこ」になった、と言われるほど、猫はよく寝る。
吾輩も、ご多分にもれず寝てばかり。
時間を測ったことはないけれど、日中、特に午後はほとんど眠っている、と言っても過言ではない。
夜行性なので、夜間はさすがに起きているほうが長いのだが、それでもちょこちょこ寝ている。
猫は熟睡しないという話だが、吾輩は熟睡もする。
夜間はおじさんたちも寝るので、ふとんが敷かれることになる。
どういうものか最近の吾輩は、おばさんのまくらで寝るのが好きである。
おじさんが遊び相手になり、おじさんのふとんを舞台にして遊び疲れたとしても、おばさんのまくらまでひょろひょろ移動して行って眠るのである。
おじさんは些かがっかりするし、おばさんには迷惑だろうと思うけれど、そうしなければ眠れない。
ここに来た当初は床に横になったし、ローボードに飛び上がれるようになってからは、そこが寝場所だったのだけれど、一度おばさんのまくらで寝ることをおぼえてしまってからは、どこにも変わっていない。おじさんのまくらにも変わっていない。
すっかり定着させているのだ。
おばさんが、自分が使えなくなることもあって、まくらカバーを色違いのに取り替えたり、おじさんのまくらと取り替えたり、置き場所を変えたり、いろいろと試みていたのだが、結局すべて徒労。
吾輩がどういう場合でもおばさんのまくらまで行ってしまうので、今はもう、おばさんも承知して、 最初からまくらを使わないでいる。
まくらの横に別の「まくらもどき」を置き、それをおばさんがまくらにしているのである。
よく、親子が「川の字で寝る」と表現するけれども、吾輩がチビなのと、おじさんの寝相が悪いのとで、うちは「以の字で寝る」という感じである。
もちろん日中は、ふとんが敷かれていないので、おばさんのまくらもない。
吾輩の寝場所も、あっちだったり、こっちだったりしている。


第22回 (2001.8.26)

おばさんたち「みずほ点訳」に、昨日また新たな歴史が刻まれたことを吾輩は知っている。
テストの段階で覗かせてもらい、他ならぬ吾輩のページがあったので、面映いやら、誇らしいやら、どうしたものかなと思いながらも気にしていたホームページが、とうとう開設されたのだ。
「阿茶のページ」が、吾輩の足跡でデザインされているのを見つけていきなりそれで、たのしくなってしまい、自慢したくて仕方がない。
ただ、吾輩が書いているメールで構成されているので、まさか「宛先」以外に読まれることになるとは考えてもみなくて、内輪な話もあり、説明が要る話もある。
ムーミンさま(管理人さんを、吾輩はこう呼ぶことにした)が、手直しされたうえで公開してみえるので問題はないが、こういうことになるのなら、この話とこの話はするんじゃなかったなあ、ということがないわけでもない。
読み返すと、尻尾の先まで赤面するかもしれない。
吾輩がベンくんと仲良く(?)写っている写真まで載せていただいたので、アクセスされれば、世界各地で、吾輩を身近に感じてもらえるのである。
光栄なあまりに気絶しそうだけれども、なんとか気絶する前に、開設してくださったムーミンさまに感謝したい。
幸せです、ありがとにゃ!  うーん(気絶した)


第23回 (2001.8.29)

階段については、前にも書いたのだけれど、当初、1階から7段までと2階から1段しか使いこなせなかったのが、10日ほどで完全制覇して、ぎこちないながらも、自由に行き来できるようになったのであった。
その頃からでも1ヶ月が過ぎているので、ぎこちなさもなくなり、すっかりお手のもの。
階段を転がり落ちるなんてことは、考えるのもナンセンスなのであるが、世の中は何が起きるかわからない。
なんと、おばさんが落っこちたのであった!
昨日のお昼過ぎのこと。
吾輩は、ちょうど階段を上がったところにいて、おばさんが、「阿茶ー、阿茶ー」と呼びながら、階段の下まできたのだ。
ところが、とんとん上がってくると思っていたのに、4段ほどのところで足を滑らせ、けたたましい音響とともにおばさんが戻って行くではないか。
結局、階段の下まで落ち、両足にムラなく青痣を作っていた。
夜中におばさんが痛さのあまり呻き声を上げ、心配したおじさんが何か言うので、吾輩も目がさめてしまったが、さすがにこの状況を考えると、猫じゃらしをおねだりするわけにも行かなくて、おとなしくしていたし、今日は水曜日なのだけれど、休ませてもらうことを考えたおばさんが、たまたま、おじさんの仕事の都合がついて送り迎えできるというので、出かけることになってしまい、またまた留守番になったのだが、それもおとなしくしていたことだった。
それにしても、吾輩も、「階段はお手のもの」なんて言っていないで、気をつけることにしよう。
青痣など作ったら、せっかくの茶トラ模様が訳わからなくなってしまうものね。


第24回 (2001.9.1)

夏休みも昨日で終わり。猫には、すずめとか、めだかのように学校があるわけではないので、「夏休み」という言い方もおかしなものだが、気にせずに言ってしまうと、今日から「2学期」である。
もっとも、今日は「始業式」だけ、明日は日曜日。
「宿題」をする時間が些か残されている。
宿題というと、おじさんはもたもた残すタイプで、こんなぐあいに考えてこの時期、必死に過ごしたことしかなかったそうだが、なにせ昔の話。
今は、夏休みの途中で提出させる、ということも耳にするので、そうは行かないのかもしれない。
吾輩にも現在、「宿題」が残っている。
それは、おじさんたちの思惑どおりの場所で爪磨きをすること、である。
おじさんたちが買ってきた市販の爪磨きに、吾輩が見向きもせず、そのくせ、まくらやふとんの端っこ、じゅうたんや茣蓙などに爪をかけ、爪磨きのようなことをするので、おじさんたちとしては、よろしくないのだ。
別の爪磨きがいろいろと、新しく買ってこられたけれど、同じこと。
磨くところが、木製あり、ダンボールあり、麻あり、カーペット生地あり。
どれも、猫をまたたびで引き寄せ、爪を磨くところだと思わせるようにできているのだが、吾輩がまたたびに関心を持てないのだから仕方がない。
猫といえばまたたび、という感じもするが、子猫には往々にして無関心ということがあるらしい。
吾輩も、もう少し大人になったら、まんまと引き寄せられて、爪磨きできるようになるかもしれない。
それまではもうしばらく、あっちの部屋、こっちの部屋に、ウエハースのおばけのような爪磨きが、出番のくるのを待つことになりそうである。


第25回 (2001.9.4)

おなじみ『加藤獣医院』の4回目。
今回は先客の犬も猫も、奥さんらしき女性もいなくて、先生がひとり、ぽつんと腰掛けてみえたので、まさか居眠りされていたわけじゃないとは思うけれども、どこか虚ろな顔に見えてしまった。
腸内寄生虫に関しては、前回の注射がすぐに効果を発揮したようで、(これからお食事をされる方は、ぜひ読み飛ばしてくださいね!)その後ひり出されたうんこが白濁したようになっていて、どうもそれが寄生虫の死骸だったらしく、それからは嘘を言ったように、副将軍さまから何も出てこなくなったのである。
といったことを、おばさんが先生に報告した上で、もう一度、同じ注射をされた。
吾輩の首のうしろに注射している先生の腕を見て、おばさんが、「先生、皮がめくれてますよ」と言い出し、先生がたじたじと、「急に日焼けをしたもんだから・・・」と答える、なんてやり取りがあった。
これで寄生虫も終わりです、とのこと。
診察まで終わりかけたので、吾輩はホッとしたのであるが、おばさんたちの視線に気付いた先生が耳疥癬のことを思い出し、結局、またまたまた「ぐりぐり綿棒」と恐怖の耳薬をされて、大暴れしてしまったのだった。
先生もよく分かっていて、「アルコールが気持ち悪いんだよなあ」と話しかけてくれるのだが、それだったら、もうしないでほしいんだよにゃあ、と思ったけれども、ま、これは仕方がないか。
何もなければ、当分の間、行かなくていいようなので、茶トラといってもそこは真っ白な胸を、なでおろしている吾輩であった。


第26回 (2001.9.5)

人間にも、チャールズ・ブロンソンとか、ルチアーノ・パバロッティとか、ボニージャックスの玉田さんとか、「おひげ」が多くいて、特に歴史に顔を残しているような偉い人間には、「おひげ」がやけに多いのだが、張り合うわけじゃないけど、猫なんて全員が「おひげ」なのだから、ある意味すごいのである。
それも、ちょびひげの猫がいないこともないと思うけれど、大抵は立派なひげを生やしているのだから、すごい。
そして、鼻の横ばかりでなく、額、特に両方の目の上あたりからもひげ(?)を生やしているので、ほんとにすごい顔をしていることになる。
吾輩も、ここに来た当初は、額からも生やしていた。
目の上のあたり、左右に3本くらいずつ、間違いなくあったのだが、気付くたびに本数が減って、ちょっと前には右目の上に1本あるだけになってしまっていた。
それが、とうとう最後の1本まで抜けてしまったのだが、よくしたもので、抜けつくすと、また生え始めるみたいで、ひげのたまご(?)がぼちぼち見受けられるようになった。
おそらく、これがまた額のひげになってゆくのだろうと思われる。
気付くたび、というのは、吾輩はよく姿見の前に立つのである。
そこで、自分の有様をよく観察し、あ、また1本ひげがなくなっているなあ、とか、次のひげが生え始めたなあ、とか思索に耽るのであるが、たまに自分が映っていると思わずに、「うっ、うっ」と威嚇してしまうことがあり、おまぬけなことである。


第27回 (2001.9.7)

猫は低マグネシウムでなければならない、尿はちょっとだけ酸性でなければならない、アルカリになってしまうと尿道結石などになりやすく、酸性も度が過ぎるとよくない、カロリーが高いのも太ってしまう、といった理由から、絶対に「カリカリ」しか食べさせてはいけない、というのが事務所の猫先輩さんのご意見で、聞いてきたおじさんからおばさんにも伝わり、吾輩はここのところ、他の物を口にしたことがなかった。
ところが先日、おじさんたちの夕ご飯にイサキが焼かれたときのこと。
換気扇をフル回転させていたにもかかわらず、煙やにおいが残ったか、吾輩の「食の本能」が黙っていられなくなってしまって、食卓の上をうかがっては、にゃあにゃあ、にゃあにゃあ、騒いでしまったのだった。
おじさんとおばさんが顔を見合わせ、これじゃあ仕方がないよねえ、ということを自分たちに言い聞かせるみたいに、よく確認し合った上で、おばさんが、鰹節をほんの少しだけ、くれたのである。
吾輩はもう、無我夢中でほおばり、あっという間に食べてしまって、もう少しくれた鰹節も、鼻先にくっつくのにも構わず、平らげたのだった。
うーん、うまかったにゃ。たまらなかったにゃ。ごちそうさまだにゃ。
酸性やカロリーをコントロールする食べ物もいいけれど、やはり猫には鰹節がいちばんなのである。
だからと言って、その後、「カリカリ」を食べなくなったわけではなく、毎日、夕ご飯どきに限って、鰹節がちょうだいできる幸せな日日を送っている。


第28回 (2001.9.11)

宇宙人と入れ替わった、というおじさんの話ではないけれど、うちに先日謎の円盤形物体、いわゆるUFOがやって来たのだった。
こんな言い方をして街中が大騒ぎになるといけないので、さっさと話の種明かしをするが、そいつは通信販売でおばさんが取り寄せた猫用品だったのである。
なんでも、カナダの研究グループが、猫の行動を徹底的に観察し、その結果をもとに開発した、どんな猫もイチコロという代物らしい。
まるいお皿にサボテンを載せたようになっていて、サボテンのてっぺんにキャットニップを入れる窪みがある。
まわりの平らな場所にも凹凸があり、背中などをこすりつけると気持ちがよくなって、外箱にも、猫が大喜びでそのUFOにじゃれついている写真が印刷されているのだ。
ところが、である。
吾輩には、どこで気持ちよくなって、どう大喜びすればいいのか、さっぱりわからない。
興味がまるきり持てないのである。
むしろ、説明がむずかしいのだけれども、怖いような感じがしてしまって、寄りつく気もしないのだ。
カナダの研究グループには悪いけれど、大した研究じゃないように思える。
もしくは、吾輩が、猫の中でも例外として取り扱われるのかもしれない。
UFOが来たことと因果関係はないと思うけれども、(これからお食事をされる方は、またしても、ぜひ読み飛ばしてくださいね!)突然、嘔吐してしまったのである。
この日は一日、ほとんど食餌をとっていなくて、眠ってばかりいたのだが、おじさんが帰ってくる頃に、ようやく食欲が出たと思ったら、お腹はやはり空いていたとみえて、ガツガツ食べたのである。
それからすぐ、おばさんに持ち上げられて椅子に移動したことも影響したのかもしれない。
「ウウッ」と唸る間もあまりなく、吐いてしまっていた。
おばさんが慌てて雑巾を取りに行っている間に、第二波がきて吐き、今度はおじさんが慌てたのだが、それから後は、けろっとしたものだった。
夜中には、その分を取り戻すように食欲があって、おじさん、おばさんを安心させることができたのだった。


第29回 (2001.9.14)

おじさんの鼻に噛みつくことがある。
というのも、事情はこうだ。
今までにも書いてきた話だけれど、おじさんはこれまで猫との接点がまったくないと言っていい人間であった。
猫が、吠えたり、追っかけたり、噛みついたりしないので、犬ほどには苦手にしていなかったにしろ、 関心もなくて、どの猫も同じ顔に見える、という程度であったらしい。
それが今回、吾輩と暮らすことになって、免疫がなかったと言うべきか、ころっと変わった後が、猛烈な変わり方をしてしまったのである。
それだけに、普通の可愛がり様ではない。
吾輩の顔を見かけるなり、だっこをしたがり、顔をくっつけたがり、逃がさないようにしたがるのだ。
しかも、段々としつこくなってきて、吾輩も我慢がしきれず、つい、近づいてきた顔、それも鼻に、かぷっ、と噛みついたというわけだった。
鼻にした理由は簡単で、丸顔のまんなかにあって、まわりよりも高く、噛みつくと、上の歯は鼻梁に当たるけど、下の歯はちょうど鼻の穴におさまって、噛みつくのにもってこい、という感じだからである。
「猫もよく承知していて、人間に対し畏敬の気持ちがあるので、手足に噛みついても、首から上には噛んでこないし、それで噛むようならば、仲間の猫か何かだと思われているんだよね」と、猫先輩さんから聞かされていたおじさんは、人間としてショックだったようだけれども、元はと言えば、おじさんが悪いのだから仕方がない。
もっとも最近は、わざと噛ませようとしている節があって、吾輩が噛む、噛まないで、遊んでいるようなところが見受けられる。


第30回 (2001.9.17)

吾輩がここに来てちょうど2ヶ月目となった土曜日、おばさんたちが美容院にお出かけをした。
普段、おじさんが事務所に出かけ、その後おばさんも出かけて、吾輩が留守番することになる、というパタンが当たり前なのだが、このときは、おばさんが先に出かけ、おじさんが後から施錠して出かける、という新手のパタンになった。
美容院の先生にだいたいの時間を電話してあったので、あまり遅れるわけには行かないし、ふたりが揃って出かけても、先生ひとりきりのお店なので、結局どちらかが待たされるし、それならば、いっそのこと、ひとりだと恥かしくておじゃますることができないおじさんのほうが後に残り、吾輩を眠らせてから出かければいい、といった打ち合わせになったようだった。
おばさんが出かけた後、吾輩をくたびれさせて眠らせようと、おじさんが躍起になって猫じゃらしで相手をしてくれたのだが、吾輩もそうそう都合よく眠くならないので、10分、20分、25分、じりじりと時間が過ぎ、根負けしたおじさんが、1階にも2階にもお皿にいっぱい鰹節を出して、吾輩が夢中で食べている隙に、バタバタと出かけて行ったのだった。
ふたりが帰宅すると、やたらに猫臭くて、くんくん、くんくんと鼻を近づけてしまった。
それもそのはず、美容院には、真っ黒ばかり猫が4匹もいて、おばさんも、おじさんも、取っかえ引っかえだっこしてきたらしいのだ。
おじさんに言わせると、どの猫も重くて腕がしびれてしまい、黒猫だけに顔にも凄味があって、同じ猫とは言っても、全然ちがったそうなのである。
やっぱり無邪気な顔をした吾輩がいちばん可愛いなあ、とのこと。
どういたしまして、である。



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