ロバート・クレイマー
Robert Kramer
(1939-1999)
1939年、ニューヨークに生まれる。アメリカのインデペンド映画においてもっともオリジナルな映画作家のひとり。資料によっては30年生まれとなっている場合もある。もし30年生まれが事実だとすると、奇しくも、ゴダール、イーストウッドと同い年である。
1965年「Faln」で監督デビュー。ベトナム反戦ムードの高まる60年代後半のカウンター・カルチャーのうねりのなかで、ジョン・ジョストらとともに映像による左翼前衛闘争集団「ニューズリール」の結成メンバーとなり、集団製作により4年間に50本の作品を発表。以後、アメリカを代表する左翼インディペンデント・フィルムメーカーとして、ドキュメンタリーとフィクションの境界線上に現代社会の本質を政治的・批評的立場から見つめる作品を発表し続けている。
処女長編『In the Country』(67)は、ヴェトナム反戦をめぐる政治闘争を逃れて田舎に暮らすカップルが交わす長い対話よりなる映画で、この作品ですでにクレイマーの世界は確立されたといわれている。続く『The Edge』(67)と『Ice』(68)は、テロリズムと接近する政治グループを描く。だが、クレーマーの関心が向かう先は政治だけではない。人間の諸関係を、抑制されたトーンで、間接的、省略的に描くことにもかれは長けている。田舎のあるコミュニティをポリフォニックに描く『Milestones』は、クレイマーの構造的かつ倫理的な探求を、端的に示す映画である。
これらのフィクション映画のかたわら、クレイマーは、『People's
War』(75)、『Scenes From the Class Struggle in Portugal』(77)などのドキュメンタリーを撮り上げている。麻薬密輸を描く『Guns』(80)を、かれはフランスで撮らねばならなかった。これ以後、クレイマーはフランスを中心に活動を続けてゆくことになるだろう。『Notre
Nazi』(84)は、ナチスによるユダヤ人虐殺を描くトマス・ハーランの映画『Wundkanal』の撮影ルポルタージュ(ちなみにクレイマーはユダヤ人である)、アメリカの国道1号線を始点から南下してゆく大作『ルート1』(89)はロード・ムーヴィー・ドキュメンタリーの傑作である。90年代に入ってからもかれの活動は衰えを知らず、『Starting
Point/Point de depart』(93)、『Walk the Walk』(95)などの作品を発表し、97年には、審査員として山形国際ドキュメンタリー映画祭に参加したこともある。
1999年11月、『平原の都市群』完成間際に急逝。
(自分の眼で見ていない作品がほとんどなので、間違いが多々あるかもしれません。いずれ確認しだい訂正していきます。)
FALN, 1965
IN THE COUNTRY, 1966
THE EDGE, 1967
ICE, 1969
PEOPLE's WAR, 1969
MILESTONES, 1975
SCENES FROM THE CLASS STRUGGLE IN PORTUGAL, 1979
GUNS, 1980
UN GRAND JOUR EN FRANCE-NAISSANCE/
A GREAT DAY IN FRANCE, BIRTH ,1981
A TOUTE ALLURE / AS FAST AS YOU CAN 1982
LA PEUR / THE FEAR, 1983
SARKIS AT WOODROW WILSON-MUSEE D'ART MODERNE, 1984
NOTRE NAZI / OUR NAZI, 1984
DIESEL, 1985(『ディーゼル』)
UN PLAN D'ENFER / A PLAN OF HELL, 1986
X-COUNTRY, 1987
DOC's KINGDOM, 1987
ROUTE ONE/USA, 1989(『ルート1』)
DEAR DOC, 1989
MAQUETTE (BROUILLON DE FILM) / SCALE MODEL , 1990
BERLIN 10/90, 1990-91
SOUS LE VENT / LEEWARD, 1991
SERIES OF VIDEOLETTERS : STEVE DWOSKIN , 1991
ECRIRE CONTRE L'OUBLI/WRITING AGAINST FORGETTING :
POUR/FOR FIDEL INTRUSCA FERNANDEZ, PEROU ,1991
POINT DE DEPART/ STARTING PLACE, 1993
LA ROUE /THE WHEEL: GREG LEMOND - ANDREW HAMPSTEN, 1993
WALK THE WALK, 1996
LE MANTEAU /THE MANTLE, 1996
GHOSTS OF ELECTRICITY, 1997(『ゴースト・オブ・エレクトリシティ』)