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アラン・ドワン

jean rouch

アラン・ドワン
Allan Dwan
(1885-1981)

経歴

カナダのトロントのアイルランド系一家に生まれる。本名Joseph Aloysius Dwan。やがて家族とともにアメリカのデトロイト、ついでシカゴに移住。ノートルダム大学で、電気工学を専攻する。水銀蒸気灯を開発し、それがシカゴの映画会社エッサネイ社の目にとまったのが、映画界に入るきっかけになる。やがて、エッサネイ社から生まれたAmerican Film Manufacturing Company で、最初はシナリオ・エディターとして働く。1911年から1913年まで、カリフォルニアのラメーサに設立された撮影所で、西部劇を中心とする短編数百本を監督・監修する。なにも知らずに監督をはじめたドワンは、グリフィスの映画を見て映画の撮り方を学んだという。American Film Company を突然解雇されたあと、ユニヴァーサルに雇われて、最初の長編「Richelieu」を監督。次に、フェイマス・プレイヤーズ・ラスキー(ニューヨーク)に移り、最後にグリフィス率いる映画会社トライアングル社に入る。グリフィスの『イントレランス』(16)の有名なクレーン・ショットは、アラン・ドワンのエンジニアとしての助力があって生まれた。キャメラを最初にトロッコに乗せたのもドワンだといわれる。ジョン・フォードはドワンの小道具係だったし、シュトロハイムはドワンの助監督だった。のちに『風と共に去りぬ』を撮るヴィクター・フレミングを映画の世界に導いたのもドワンだった。文字通りパイオニア時代の映画監督である。

1910年代の後半から20年代の終わりまでのサイレント時代は、ドワンの全盛時代だった。このころドワンは押しも押されもせぬ大監督になっている(ジーグフェルド・フォーリーズのひとりマリー・シェルトンと結婚してドイツにハネムーンに出かけたこの「有名なアメリカの監督」のガイドをつとめたのが、ビリー・ワイルダーだったという)。ドワンはスターの才能を開花させるのに優れていた。サイレント映画の傑作に数えられる『ロビン・フッド』(22)ほか十数作品でダグラス・フェアバンクスを、『舞姫ザザ』(23)、『焔の女』(24)、『当たり狂言』(25)などでグロリア・スワンソンを監督し、30年代後半のシャーリー・テンプルの全盛時代には、彼女のお気に入りの監督だった。ロン・チェイニー、キャロル・ロンバード、アイダ・ルピノ、リタ・ヘイワース、ナタリー・ウッドを発見したのも、アラン・ドワンである。

時代はサイレントの時代からトーキーの時代へと移行する。ドワンはトーキー映画の到来にそれほど戸惑わなかったが、映画は映像と動きで見せるものであり、言葉は余計だという、サイレントを経験した監督固有の映画への思いは、終生変わらなかったようだ。大恐慌の時代、彼はアメリカを抜け出してイギリスで3本映画を撮っている。その後アメリカの映画界に復帰する30年代の初頭から40年代の前半までは、ミュージカルを撮ったり、リッツ兄弟のコメディを撮ったり、ランドルフ・スコットがワイアット・アープを演じた『Frontier Marshall』を撮ったりと、どちらかというと作品にばらつきがあり、凡作も多かったようだ。この時代としては、シャーリー・テンプルの『ハイデイ』(37)、レセップスの伝記映画『スエズ』(38)などが有名である。

そして、1945年から56年まで、ドワンはマイナーな映画製作会社リパブリックで仕事をする。西部版『ハイデイ』ともいえる『Driftwood』(47)では、ナタリー・ウッドを孤児役で起用し、『硫黄島の砂』(49)では、ジョン・ウェインにアカデミー賞ノミネートをもたらす。54年から58年まで、ドワンはベネディクト・ボジャースのプロデュースのもと、非常に低予算の西部劇の傑作をつぎつぎと撮り上げる。悪役の名前がマッカーシーというのも意味深い『逮捕命令』(54)、ロナルド・リーガン(レーガン)とバーバラ・スタンウィックの共演した『バファロー平原』(54)、リーガンの最高傑作『対決の一瞬』(55)、ジェームズ・ケイン原作の『悪の対決』(56)、『断崖の河』(57)などである。そして、メルヴィルの『タイピー』の映画化『恐怖の島』(58)、ヴェンダースの『ことの次第』のなかでリメイクされたことでも知られるSF『The Most Dangerous Man Alive』(58)が続く。

『硫黄島の砂』

結局ドワンは、1909年から61年までの半世紀の間に、一巻ものの短編無声映画からトーキーをへてカラー映画にいたるまで、4百本以上の作品を監督したといわれる。残念なことに、そのうちの3分の2は失われてしまった。今われわれに見ることができるのは、そのうちの数十本にすぎない。見る機会はほとんど失われてしまったが、ドワンの全盛期は無声映画の時代だったことを忘れてはならないだろう。

(校正中原稿)

フィルモグラフィー(DVD)

『Northwest Outpost』

『農園の寵児』

『Three Musketeers』

『鉄仮面』

参考文献

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