ジョルジュ・フランジュ
Georges Franju
(1912-1987)
フランスの「呪われた映画作家」のひとり。フランジュはまず短編ドキュメンタリー作家として出発した監督であるが、その短編作品がとにかくすごい。彼が監督した数ある短編の中で、ぼくが見たのは『メトロ』、『獣の血』、『廃兵院』ぐらいのものだが、いずれ劣らぬ傑作である。『獣の血』は、パリの屠殺場で首を切られ、はらわたをえぐり出される獣たちを延々と撮り続けるドキュメンタリー。残酷さとポエジー、リアリズムと幻想が合い混じったそのスタイルは、のちの長編に至るまでフランジュ作品の変わらぬ特徴となるだろう。長編では、精神病院を舞台に幽閉と自由を描く『壁にぶつけた頭』、『フェイス・オフ』の元ネタとも言えるホラー映画『顔のない眼』、モーリアックの原作に忠実にブルジョア社会の中で幽閉されたひとりの女の自由への希求を描く『テレーズ・デスケルー』、サイレント活劇への見事なオマージュ『ジュデックス』、そして、コクトーの原作を映画化した幻想的でかつリアリスティックな戦争映画『詐欺師トマ』など、様々なテーマを描き、いずれも見事な完成度を見せている。