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バッド・ベティカー

バッド・ベティカー

バッド・ベティカー
Budd Boetticher (1916-2001)
米・映画監督

「決闘という西部劇にあってはあたり前すぎる儀式をクライマックスに据えた彼の作品は、しかし、その儀式を、この上なく単純で抽象的とさえ呼べそうな要素に還元している点が特徴なのだ。そこにさまざまな道具立てを盛りこむのではなく、むしろ儀式性を欠いた儀式の無償の純粋性にまでおしやっている点に、バッド・ベティカーの創意が込められているのである。」

蓮實重彦「七の奇蹟」(『映画 誘惑のエクリチュール』収録)

 

『七人の無頼漢』のDVDが2005年12月20日にパラマウントから発売されることが決まりました。ここから予約注文できます。

経歴

1916年、イリノイ州シカゴに生まれる。本名オスカー・ベティカー・ジュニア。闘牛に魅了され、メキシコで闘牛士となる。映画界入りしたのも、闘牛を描く映画『血と砂』(41年、ルーベン・マムーリアン)の技術顧問についたのがきっかけだった。コロンビアとモノグラムで十数本のB級映画を監督。51年に『美女と闘牛士』を撮るまでの最初の11本は、オスカー・ベティカーの監督名でクレジットされていた。

ユニヴァーサルで、オーディ・マーフィ(『シマロン・キッド』51)、ロバート・ライアン(『征服されざる西部』52、『海底の大金塊』53)、ロック・ハドソン(『最後の酋長』53)、グレン・フォード(『平原の待伏せ』53)らを主演に数多くの西部劇や冒険映画を撮る。

闘牛へのオマージュ『灼熱の勇者』(55)、スリラーの佳作『殺し屋は放たれた』(56)のあとで、ついにベティカーはその才能を遺憾なく発揮した西部劇の傑作『七人の無頼漢』(56)を撮り上げる。「おそらく、戦後最高の西部劇」と批評家アンドレ・バザンは評した。

『七人の無頼漢』は、ベティカーがランドルフ・スコット主演で次々と発表することになる西部劇の傑作群の輝かしい第一作である。その多くはハリー・ジョー・ブラウン製作によるものであり、ここから主演のランドルフ・スコットの Ran(dolf) と、ハリー・ジョー・ブラウンの (B)rownをあわせて、この傑作群を「ラナウン・サイクル」と呼ぶのが、正当な映画史の習わしである(そのことが記述していないような映画史は、すべてまやかしだと思って間違いない)。また、この一連のランドルフ・スコットものの脚本の多くを、後にタランティーノにも影響を与えた西部劇の傑作『ハニー・コールダー』(『女ガンマン』のタイトルでDVDあり)を撮るバート・ケネディが書いていることも重要である。

ランドルフ・スコットDVD-BOX

「ラナウン・サイクル」と呼ばれる作品は、『七人の無頼漢』、『反撃の銃弾』(1957)、『Decision at Sundown』(57)、『Buchanan Rides Alone』(58)、『Ride Lonsome』(59)、『決闘ウエストバウンド』(58) 、『決闘コマンチ砦』(60)の全部で七作。個々の物語を記述することにはほとんど意味がないような気がする。似通った地形のなかで、復讐や正義といったテーマをめぐって、同じような物語が七回変奏されるだけなのだ。西部劇というアクション映画の神話的祖型のようなジャンルが、さらによけいな部分をそぎ落とされて、ほとんど抽象的なフォルムへと還元される。この七本をラシーヌの悲劇と比較する人もいるが、それは決して間違いではない。

ベティカーが西部劇で見せた、空間と物語を扱う際の鋭敏な感覚は、ギャング映画『暗黒街の帝王レッグス・ダイヤモンド』(60)でも見事に発揮される。50年代のベティカーがこのジャンルのものをほとんど撮っていないことを、われわれは残念に思うべきだ。

その後、ベティカーは、友人である闘牛士カルロス・アルーザについてのドキュメンタリーを撮りにメキシコに渡り、そこに七年間とどまることになる(蓮實重彦はここにも七を発見して驚喜するだろうか)。63年から67年にかけて、数々の苦難を経験しつつ『Aruzza』は撮影されるが、それが公開されるのはようやく71年になってのことである。このあたりの事情は、自伝 "When in Disgrace" に詳しい。

メキシコからハリウッドに戻ると、ベティカーはかつて一緒に仕事をしたことのあるオーディ・マーフィを主演に『A Time for Dying』(69)を完成させる。ベティカーの真の傑作は、『七人の無頼漢』でも『決闘コマンチ砦』でもなく、この最晩年に撮られた西部劇であるという人もいる。だが、この作品を見ることができる可能性はいまのわれわれには皆無だ。

85年に再びアルーザを撮ったドキュメンタリー『My Kingdom for...』がベティカーの遺作となった。

2001年、カリフォルニア州ラモナで亡くなる。

(改稿中)

フィルモグラフィー(DVD)

平原の待伏せ『平原の待伏せ』

Budd Boetticher DVD-BOX

Tall T (『反撃の銃弾』)
Decision at Sundown
Buchanan Rides Alone
Ride Lonesome
Comanche Station(『決闘コマンチ砦』)



(アメリカから発売されるものですが、日本の Amazon から注文できます。)

参考文献

Last of the Cowboy Heroes: The Westerns of Randolph Scott, Joel McCrea, and Audie Murphy

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