アルバート・リューイン
Albert Lewin
(1902-1968)
数年前、フランスに留学していたときに、たまたまアルバート・リューイン(または、アルバート・ルーウィン)の映画を2本見ることが出来た。 『パンドラ』と『ドリアン・グレイの肖像』だ。恥ずかしいことに、ぼくが彼の名前を知ったのはそれが初めてだった。最初に見たのが『パンドラ』で、これはパリでリヴァイヴァル(!)されたものが、ぼくの住んでいたディジョンという町でも公開されたので、見ることが出来た。『パンドラ』は、「さまよえるオランダ人」をベースにしたファンタスティックなラヴ・ロマンス。呪われた運命を背負ったジェイムス・メイスンは、真の愛を得るまで永遠に時を彷徨い続けなければならない。そんな彼が、エヴァ・ガードナー(まさに目の覚めるような美しさだ)の死よりも強い愛をえて永遠の時からついに解放されるとき、雷鳴とともに砂時計はひび割れる。アメリカ映画のことはだいたい知ってるつもりだったが、この映画を見たとき、こんなに繊細で大胆な映画を撮る人がまだハリウッドにいたのかと、心底驚いた。以来、もう一度見たいとずっと思っていた映画だが、ヴィデオにもなってないし、どうやったら見られるだろうかと思っていたところ、意外なところで再会を果たすことが出来た。ユスターシュの大傑作『僕の小さな恋人たち』の中で、主人公の少年が初めてキスをする映画館でかかっている映画が、『パンドラ』なのだ。次に見た『ドリアン・グレイの肖像』も幻想的な傑作である。こちらは白黒映画だが、たった一カ所だけ挿入されるカラーのショットがぞっとさせるほど怖い。ぼくが見たのはこの2本だけだが、この2本以外はあまりぱっとしないと、ものの本には書いてある。さて、どうなんだろう。