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 吾輩は和茶である 




第81回〜第90回



和茶
「何だろね、騒々しい」
サッシのすぐ手前にいる和茶。向こうの濡れ縁にタマタマがいて、
表の道路の同じ方向に目をやり、語らずとも通じているように過ごしている。




第81回 (2013.11.23)

いやあ、待たされたにゃあ。
『吾輩』の更新も、連載というのが恥ずかしいくらい間隔があいてるけど、その後ちっとも姿を現さなかったタマタマのことである。
あれっきりか、と思っていたのだが、昨日ひょっこりやってきたのだった。
時間で言うと、お昼前くらいだったかにゃ。
まるでここの住人であるかのようにごく自然な感じで、門から入って来る。
サッシの手前で外を眺めていた吾輩が気づいたのとほぼ同時に向こうも気がつき、真っすぐにやって来る。
毎日そうやって過ごしているかのように、ふた月前と同じような時間が流れて行った。
おばさんもいつの間にか加わっていて、それでもタマタマには警戒心というものが欠落しているのか、沓脱石や濡れ縁の上に長々と寝そべり、何かのんびりした午後となった。
相変わらず、吾輩が奥に引っ込もうとすると呼び、ほんとは家の中まで入って遊びたいにゃ、てな顔をする。
それは無理、というのを言い聞かせるのが大変だった。
そのうちに縁の下で我慢するか、とでも思ったものか、ずかずかもぐりこんでしまう。
それも、進める範囲のいちばん奥、縁の上(?)で言うなら台所の、その真下くらいまで行ったので、吾輩も台所にまわり、裏の土間に下りるところに床下の風通しのための口があって、そこを覗いたら、すぐ目の前にいたのだった。
光が入るからか、向こうもこちらを覗いていて、まともに目を合わせることとなり、思わず「フーッ」と威嚇してしまったら、タマタマじゃなくおばさんが驚いていた。
だってね、吾輩から見ると、真っ暗な中にふたつの目玉だけが光ってるんだもん。
結局、昨日も半日そんな感じで、吾輩以上に寛いで行った。
また、忘れたころにやって来るかもしれないにゃあ。


第82回 (2013.12.31)

おとといから始まった大掃除。
今年は吾輩も、微力ではあるけれど手伝った。
台所の窓に、外側を拭いているおばさんの雑巾の影が映ったとき、その影に合わせて内側を拭いたのだ。
素手とは言え、ちゃんと掃除になっていた、と自分では思っている。
その一方、手伝うどころじゃない迷惑行為もしてしまった。
ワックスがされたばかりの洗面所を通ってしまったのだ。
このときはおじさんもうっかりしていて、大きさも形も違うそれぞれの足跡がくっきり残された。
また吾輩は、廊下でもワックス直後をすたすた通り、しかも注意されたものだから余計に面白がって、何度も行ったり来たりしたのだった。
面白がると言えば、台所に話が戻るが、シンクの下の扉が珍しく開いていて、このときとばかり入り込んだ吾輩。
と、いつの間にか扉が閉められてしまい、出るに出られなくなっているではないか。
時間にしてどれだけだっただろうか?吾輩の立てる物音に気づいたおじさんが扉を開けるまで、そして開くなりすぐ出て行き、おじさんを驚かせた。
おばさんが「恐くて中をよう見ないわ」って。
そう、ビニールで出来たものがいろいろと仕舞われている場所なのである。
普段は扉の前に何かしら遮るものが置かれてあるのに、そこはやはり大掃除ってことかにゃ。
大掃除のときも散々「こらっ」「こらあ」って言われる場面が多かったが、これは普段からのこと。
今月初めだったか、テレビから「こらあ」って声が聞こえたとき、一目散に逃げ出してしまった吾輩だった。
大晦日に思う。
来年は、テレビの声にまで逃げ出さなくていいような暮らしがしたいものですにゃあ。
さて、紅白歌合戦は勿論、紅組を応援する吾輩。
2014年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。


第83回 (2014.01.07)

新年あけましておめでとうございます。
いつもよりも長い連休になったところで、過ぎてしまえば、やっぱりあっという間だった、とおじさんが申しておりますが、まあ、毎日が連休のような吾輩には・・・。
それでもお正月ならでは、ということがあった。
おばさんがチーズや海苔をくれたのだ。
ちょっとだけではあったが、普段は頑としてくれないのだから、お正月さまさまってところか。
タマタマも年始の挨拶にやってきた。
どうしてか分からないが、赤い首輪をしていない。
おばさんたちが吾輩たちに気付いて広縁に集まってきたときも、首輪の点からタマタマなのかどうかを疑い、でも、この馴れ馴れしさは二匹といないんじゃないの、という意見が大勢を占め、実際、おばさんの携帯電話に保存してある写真と見比べて、やっとタマタマに間違いないことを確認していた。
吾輩には勿論、そんな面倒なことをしなくても分かってるので、とっくににゃあにゃあ話し込んでいたのだけれど・・・。
年末の大掃除に際して入り込んだ台所のシンクの下に、年始もまた入り込むことができ、しかも中の間仕切りの隙間から、隣に続いている引き出しの奥に移動ができて、おばさんが引き出しを全部抜き出しても、奥の奥に避けている吾輩が出ようとはせず、ついにおじさんが出動してきて、力ずくで引っぱり出されたのだった。
そうした、相も変わりませぬ吾輩たちではございますが、どうぞ本年もよろしくお願い申し上げます。


第84回 (2014.02.22)

台所から一段降りた裏の三和土には、洗濯機、整理棚、バケツ、古新聞、古雑誌、吾輩用のダンボール箱など、雑多なものが置かれてある。
その雑多な感じを増幅するようにぬいぐるみやボールなども転がっていて、まあ、これはこれで調和を保っているけど・・・。
さて、ここが今回の事件現場となった。
おばさんが洗濯中のこと。
転がっているうちの一つ、おばさんたちが「なんでも箱」と呼ぶ、古新聞を材料にして折り紙の要領で作られた、ちょっとしたものを入れるつもりの、豆腐一丁くらいの大きさの箱、このときは空っぽだったのだが、吾輩がこれを見つけるなり、箱の中に前足も後ろ足も無理して突っ込むと、すぐにお尻を上げ、おしっこを放ったのである。
箱の中にしたのではない。
おしっこは、どの雑多なものにもかかることなく、低めの放物線を描き切って、三和土に落下したのだ。
おばさんは最初、目の前で起きている吾輩の行動が何であるのか、まったく理解できなかったようだ。
50cmほどの湿った直線が二筋になったとき理解し、その途端、特大のカミナリが落ちた。
「わちゃーっ、何やっとんのーっ!」すぐさまおしっこを止めて逃げ出した吾輩だったが、やはり気になって仕方なく、じきに戻ると、雷様どころか不動明王になってしまったおばさんがちゃんとカミナリの続きを落としてくる。
もうとても逃げ出せそうになくて、ただただおばさんの顔だけ見て静まるのを待った。
その後、おばさんがおじさんに「ここはおじさんがよしよししたらなかんわ」と言い、おろおろしていたおじさんもやっと居場所を見つけたかのように吾輩に近寄って抱っこしてくる。
吾輩もおとなしく抱っこされておいた。
おしっこの上にはコーヒーの滓がまかれ、しばらくして役目を終えて外に掃き出される。
それとともに「なんでも箱」も、これが原因の一つかもしれない、と嫌疑をかけられ放り出されていた。
おばさんたちは、また吾輩がしやしないかと心配しているようだが、まあ、それはどうでしょうか?
今日はまさしく吾輩が主役の「猫の日」となったかにゃあ。


第85回 (2014.03.30)

暖かくなってきたので、おじさんの膝の上に乗ることも少なくなってはきたが、今朝はたまたま乗ってやって、そのまま小一時間ほど、眠り込んだのだった。
眠り込む前、吾輩の頭や顎の下を撫でてくれていたおじさんが、今さらながら吾輩の立派なひげに気付く。
吾輩が気持ちよくて目を閉じているのをいいこと幸い、ひげの本数を数えたらしい。
左が10本まで、右が12本まで数えたところで、よく分からなくなったのだとか。
で、おじさんが「駄目だろうなあ」って。
何のことかと思ったら、猫のひげには重要な役割があって、狭い場所が通れるかどうかをひげで判断してるっていう話。
ひげが通るようなら体も通れる、という猫独自の理論を、膝の上に長々と寝そべってる吾輩を見下ろして「駄目だろうなあ」って全否定したのだ。
たしかに吾輩のお腹は、中年になってもないのに膨らんでいる。
扉が閉め切られていなくて、自分で開けて部屋に入ろうという場合、扉の下をちょいちょいやって開ける、ひげの分だけ開けたところで入りかける、ところがお腹がつかえて前にも後ろにも進めなくなる、見かねたおばさんに助けられる、なんてことがよくあるにはあるのだ。
吾輩に猫の理論を通用させるには、お腹を凹ますか、ひげをもっと伸ばすか。
後者のほうがまだ簡単な気もしてしまうが・・・。
ちなみに、おばさんは、自然に抜けた吾輩のひげを見つける度に、大事にしまってくれているようである。
猫のひげを財布にしまっておくとお金が貯まる、というのを愚直にも実行しているらしい。
さて、その効果たるや・・・消費税が上がるとか言って、吾輩のカリカリやら猫砂やら買いに走ってるようでは、大したことはなさそうである。


第86回 (2014.05.11)

春の季語になってる「猫の恋」ってやつなのだろうか。
それにしてはちょっと遅い気もするが・・・。
ここ数日、うちの近所が喧しくてしょうがない。
吾輩たち猫には、夜中なんだから静かにしていよう、なんて考えがないどころか、みんな、夜行性だものだから、真夜中にこそ、あおあお、わおわお、にゃあおにゃあお、と鳴き、大声を張り合ってしまう。
で、昼間は静かにしてるかと言うとそうでもなく、まあ黙ってはいない。
これが単体だとどこかで睡眠を取らなければ成り立って行かないのだが、何匹もいるらしく、朝から晩までって状況になってしまうのだ。
おばさんの観察では、黒猫が2匹、白黒が1匹、縞々がよく分からないほど色の淡いキジトラ1匹、それよりは濃い色をした小振りのキジトラ1匹、合計5匹がうろちょろ出入りしているそうだ。
おじさんも、木三田さんの敷地から出てきた茶トラを見かけたと言うし、ちゃんと調査できたら、もっともっといるかもしれない。
そいつらが入れ替わり立ち替わりなのだ、きっと。
そりゃ喧しくて当たり前か。
こないだまでとんと見かけなかったのに、急に、一斉に、やってきた気がする。
そう言えば、その中にあのタマタマを見かけないけれど、どうしてるかにゃあ。
心配したいけど、心配する間がないくらい、出入りする猫たちに振り回されている。
門柱の上にでんと黒が座り込んでいたり、黒と黒がうちの庭で睨み合っていたり、ブロック塀を白黒が行ったりキジトラが来たり、窓越しに黒と目が合ってお互いに固まったり、そんなこんなの度、うちの中を狭いなりにあちらこちら走り回ることになるのだ。
それで疲れて眠りについても、あおあお、わおわお、起こされてしまう。
吾輩には「猫の恋」どころじゃないし、落ち着かない日々がまだまだ続きそうな感じである。

おばさんが新しい爪とぎを買ってきてくれた。
今までの平板タイプとも柱タイプとも違い、年齢を疑われるけど、ひょっこりひょうたん島タイプとでも言おうか?
ダンボール製ながらしっかり出来てて、この吾輩が全体重をかけて乗っかってもびくともしない。
とっても気に入った、誕生日プレゼントなのである。


第87回 (2014.08.09)

あっと言う間に夏になり、それも半分ほど過ぎた気がする。
もうじきお盆だ。
そろそろまた吾輩の嫌いなワクチン接種か、と警戒していたら案の定、本日、決行されてしまった。
前もってやっておけばよいのに、おじさんがキャリーバッグの点検を始め、すぐにピンと来た。
捕まえに近寄って来るおじさんを難なくかわし、右に、左に。
特に策もなかったらしく、ただの追いかけっこになったので、負けるわけがない。
ところが、この慢心が仇となった。
うっかりトイレに逃げ込み、袋の中の鼠ならぬ猫になってしまったのだ。
キャリーバッグに押し込まれる際、抵抗してみたが、おばさんにまで加勢されて、勝負あり。
ツジカワ犬猫病院に行くと、待合室にいた先客は、おねえさん一人だけ。
抱っこひもでチワワを抱っこしてる。
カンガルーの子のように顔だけ覗かせたチワワとも目が合ったが、おねえさんからも「わあ、猫ちゃん、可愛い」なんて見つめられ、自分が言われたわけでもないおじさんともども、些か照れた。
吾輩の後から来たお客は、なぜか猫ばかり。
そう思って眺めてるうちに、診察室に呼ばれた。
おお、坊主頭先生だ。
まず、体重を量られる。
7・5kgで「ちょうど1kg増えてる」って。
おじさんがすぐに「ねだられるとどうしてもあげちゃって」と言い訳をする。
坊主頭先生もすぐさま「ねだるのは食欲があっていいんだけど、猫にも成人病があるからねえ」と。
これからは、おねだりしてももらえないときがあるのかにゃ?ワクチン接種の注射は、あっさりされて終わった。
待合室に戻ると、吾輩より後に来た猫の飼主どうしがおしゃべりしてる。
どちらの猫もオスの茶トラ、体重が6kgあるとかないとか。
一方の飼主にすると、思ってた以上に大きくなっちゃって、って話のようだった。
ふーん、まだ全然大したことないのににゃあ。


第88回 (2014.10.05)

秋になった。
実は現在、西隣の地主さんが新築住宅を建てているのである。
それ故、工事業者の車の出入りがあったり、重機が入ったりして、吾輩が猛烈に落ち着かない。
こう見えて結構、神経が繊細なのだ。
爽やかな季節になったので、気持ちよく縁側にいることが多くなったのに、近所の猫もとんと現れなくなったし、車がやって来る度に、吾輩も尻尾を下げておばさんのところまで引っ込まざるを得ない。
おばさんが付き合って縁側に出てきてくれると、心強くて吾輩も縁側に居られるのだけれど・・・。
ここには長椅子が一つあって、それにまるっとカバーが掛けてあるのだが、何もないときだと、このカバーの下に潜り込み、安心して、ぐっすり眠ることができる。
残念ながら工事の間そうも行かないかにゃ。
と、先日の午前のこと。
吾輩の姿が見当たらない、というのを心配したおばさんが普段居そうな場所をあちこち探しまわり、その日もまた工事業者が来てるので居りっこないと思いながらも縁側まで来たとき、長椅子のカバーの真ん中が山型に膨らんでちょうどテントのようになってる光景を目にしたのだとか。
その正体や吾輩で、隙間から覗いたおばさんの目には、お腹まる出しで仰向けに熟睡している雄猫7・5kgが、なぜか後ろ足を左右ともに真っすぐ真上に立てた状態で眠りこけており、その足が支柱になってテントが成り立っていた、という図が映ったそうな。
その晩、目撃した光景の珍奇さを思い浮かべながら「和茶も、さすがに慣れてきたんだと思うわ」とおじさんに報告していたおばさんである。
いつの間にそんなにも慣れ、いつの間にそんな芸当をしながら眠れるようになったんだろうにゃあ、と自分のことを訝りながら、また尻尾を下げて逃げてみたりもしている吾輩であった。


第89回 (2014.12.31)

おじさんを相手に追いかけっこしてると、吾輩がただ逃げるばかりじゃなく、すっと隠れることがある。
吾輩が隠れるのに手ごろな大きさの、中が空っぽの、そのために存在するかのような段ボール箱が廊下の端に置かれてあるのだ。
そうして急に消えた直後から、おじさんの「和茶、和茶、どこ行ってまった?」てな間抜け声が上がり、勿論、返事しないでおいて、間合いを見て、また吾輩がおじさんを挑発する。
これを繰り返す次第。
ところで最近、台所の入り口に小さな段ボール箱が置かれた。
廊下の端のよりずっとずっと小さい。
それなのに逃げてるときは夢中だからか、ここにも隠れようとしてしまう吾輩。
後ろを追ってきたおじさんが「無理に決まっとるわ」と笑って言うのも構わず、無理にでも大きな体を丸く縮ませ、寝かせ、押し込み、どうにかこうにか隠れる、いや隠れていない、隠れた気になる。
おじさんが調子を合わせて「和茶、どこ行ったあ?」と続けてくれるので、この段ボール箱もちょくちょく利用し、じきに壊してしまった。
大掃除の間も、そんな具合に相変わらずだった吾輩。
今日はもう大晦日。
今年の紅白歌合戦はどちらを応援しようかにゃあ?
2015年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。


第90回 (2015.04.25)

新年の挨拶をしなくては、と思ってるうちに新年度になってしまい、それも早25日。
間隔がものすごく開き、ご心配くださった方もあろうかと厚かましく思う吾輩だが、たしかに厚かましいくらい元気で、風邪ひとつ引くことなく、相変わらずの毎日を過ごしている。

それで、最初の話から失敗談というのも何であるが、吾輩、おじさんに不本意なところを見られてしまった。
おじさん相手に追いかけっこする際、座卓を大いに活用する。
その下に入り込んでしまえばこっちのもので、捕まえようと伸ばしてくる手から、からかうようにあっちに逃げ、こっちに逃げ、できる次第。
その日もそうやって入り込もうと座卓に駆け寄ったのだが、調子に乗り過ぎたのか目測を誤り、座卓の下ならぬ側面にまともに顔をぶつけてしまった。
イテッと思ったときにはもう、おじさんが笑い転げてた。
ぶつかった瞬間の顔が思った以上に歪んでたそうだ。
猫はやっぱり柔らかい、けれど、そもそも猫がぶつかるのか、なんて思ったとか思わなかったとか。

寒くなくなり、食卓にサラダが置かれるようになって、それが長芋と水菜とじゃこのサラダだったりすると、おばさんたちの動向を猛烈に気にすることとなる。
二人ともが台所に戻れば必ず、サラダに顔を突っ込んでしまうからだ。
座卓の側面とは、まさに天国と地獄。
胡麻が些かじゃまだにゃあ、と思いながらも、じゃこに舌鼓を打つ。
大抵はそうしてるところにまたおばさんたちが現れるので、慌てなければならない。
逃げ出すのが早いか、おばさんたちの大声が早いか。
でも、おばさんたちは学習しないらしくて、食卓にサラダを置いたまま、うかうかと二人して台所に行ってしまう。
しめしめ。
再びじゃこにありつく吾輩である。

今週の月曜日の朝だったと思う。
おばさんの、それも最もお気に入りの靴に、事もあろうにおしっこを引っかけてしまった。
靴をどうしよう、ということはない。
たまたまおしっこをした場所に靴があったのだ。
おばさんが気づいたとき、靴に沿って三和土が濡れており、靴底から前日の雨の水気が染み出したにしては多量、そしてどうも黄色く見えたとか。
鼻まで近づけたおばさんが、吾輩のおしっこだと結論を出す。
余所の猫が縁の下に来ることがあるので、吾輩が自分の存在を主張したのじゃないか、という推論もおじさんに披露していたおばさんだったが、ただ猫砂までが我慢できなかっただけのこと、である。




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