新年あけましておめでとうございます。
・・・という挨拶が、はじめての吾輩である。
昨年の暮れから考えても、何かとはじめてのことが続くうちに新年を迎え、お正月を過ごしたように思う。
まずは、大掃除。
おばさんだけでなく、おじさんまでが掃除をしている。
しかも、神棚を下げてきて念入りに磨いたり、椅子に乗っかって照明具を拭いたり、普段したことのないことまでしている。
吾輩としては、雑巾がゆすがれるたびに寄ってしまうわ、拭かれてぶらぶら揺れるものには構ってしまうわ、大騒動した。
掃除と言えば、吾輩自身も、はじめてゲボをして、お腹を掃除することとなった。
出てきたものにびっくり!
猫じゃらしの先っぽの、壊れてどこかに行ってしまったと思われていたモジャモジャ部分。
それも、赤と黄色、ふたつも出てきたのだ。
掛け軸事件というのも起こした。
おじさんの知り合いの書が掛け軸になっていて、前々からぶら下がってはいたのだが、はじめて吾輩の目にとまったのである。
ぶら下がっているものにはぶら下がる、これが吾輩の信条のひとつであり、そうして掛け軸は破れ、床の間を掃除していて気がついたおじさんは、愕然としていた。
年が明け、おばさんたちは、妙に気持ちを真新しくしている。
お雑煮とおせちを食べようとしていたのだが、その中で田作りというのが、吾輩をそそって仕方がない。
夜は夜で、奮発してカニすきを食べようとするので、やたら寄ってしまった。
猫じゃらしを振られたり、鶏のささみを与えられたりして、吾輩の気を逸らそうとしてきて、お正月から食事をめぐるバトルには激しいものがあった。
最後に、障子の通り抜け事件だけ紹介しておこう。
玄関と廊下を仕切る障子の、特に破れのひどかった1ヶ所、寸法を測ったら13cm×21cmだったが、それがぴらぴらしたままだと吾輩の気を引くから、ということで、きれいに破りとられて、穴の開いた状態になっていたのである。
それでついつい、そこを通り抜けて、玄関に侵入し「にゃあにゃあ」鳴いてしまった吾輩。
おばさんたちが目をまるくし、すぐにその穴に、あり合わせの紙が貼られ、応急処置をとられたのだった。
こんなわが家ですが、今年もどうぞよろしくお願いしますにゃ。
食卓におじゃまするのは日常的なことであり、おじゃました者勝ちで口にした食べ物も数知れない。
キャベツ、ホウレン草、そば、海苔、豆腐、ご飯つぶ、パン、パスタ、じゃがいも、ししゃも、金目鯛の西京漬・・・。
おばさんたちが納豆を食べた後の小鉢に顔を突っ込み、粘って糸を引くのを顔じゅうにくっつけて、笑われたこともあった。
何でも食べる吾輩だが、やはり、お魚は特別で、特に鱈が大好物である。
おばさんたちが鍋物をグツグツ楽しむことは、この吾輩がいる限り、危険と判断されているようで、鱈の入った土鍋は、台所のガス台と食卓とを行ったり来たり。
そして、吾輩が満足しないと、おばさんたちも食事どころでないので、先に吾輩の気の済むまで与えてくれる。
気がつくと鱈は半分になっている。
鱈が東の横綱だとすれば、西の横綱は鶏のささみだ。
ボイルされ、食べやすい大きさに細かく裂いて吾輩の前に出されるが、一皿あっと言う間に平らげてしまう。
その間だけでも、吾輩がおじゃまをせず、平安が保たれるということで、鶏のささみは、切らすことなく買い続けられている。
食べ物ではないが、輪ゴムやビニール袋の切れっ端も、吾輩の好物。
感心したことではなく、吾輩の悪癖と言えるのだが、そうしたものが目につくとどうしても齧りたくなり、飲み込みたくなってしまう。
昨年末に吐き出した猫じゃらしの先っぽも、同じ経緯で食べた(?)ものだ。
食べたわけではないが、ゆで卵の殻をきれいに剥いたことがあった。
おばさんが片手鍋で卵を3個ゆでた。
おばさんたちが朝食に2個消費した後、昼食用の1個は片手鍋に残され、ゆでられたときのまま水に浮かんでいる。
吾輩が前足で突くと、浮き沈みをしながら、くるくるとよく回る。
それが面白くて、何回も何回も突っついているうち、殻にひびが入り、次第に剥けたのである。
おじさんが気付いたときには、つるんとした中身だけが浮かび、鍋底に殻が散乱している状態だった。
それから20分ほどして再びおじさんが台所に来たとき、卵は今度、白身までが突っつかれ、黄身が別にぷかんと浮かぶ状態に・・・。
さらに吾輩が前足を出し、黄身で水が濁り始めたので、さすがにそこで片手鍋が取り上げられた。
「殻を剥く手間が省けた」なんて言っていたおじさんも、昼食の卵を食べ損ねて、もはや眉を顰めるばかり。
寒くなってからも、水の大好きな吾輩は当然、毎日浴室に通っている。
日中の、使用時ではない時間にも、ちょこちょこ出入りして、湯船のフタの上をうろうろしたり、手桶を引っくり返したり・・・。
浴室掃除用のスポンジは、ちょうど手頃な大きさ、重さ、軟らかさであるがために、すっかり吾輩の遊び相手にさせられ、組み付かれたり、引っ張られたり、噛みちぎられたり・・・。
夜になって、おばさんたちが使用するとなれば、吾輩の喜びようは尋常ではない。
おばさんたちより先にすたすたと浴室に向かい、湯船のフタの上で三つ指をついて(?)待っているほどだ。
そうした吾輩がじゃまをする格好となり、すぐにフタが開けられずに、素っ裸のおじさんが「寒い、寒い」と言いながら、吾輩をフタの右半分に寄せるところから、入浴が始まることになる。
おばさんの入浴中と、おじさんの入浴中には、吾輩にとって決定的な違いがある。
湯船のお湯を、おばさんのときには直に飲まない。
きちんと前足を使う。
お湯に突っ込んで濡らし、それを口に持って行く。
ところが、おじさんのときだと、湯船の縁に前足をかけるか、場合によっては前足をどっぷりお湯につけて、顔を突き出し、直接、何度も何度も舌で舐めとるようにして飲んでしまう。
お湯なのに熱くないのか、猫舌じゃないのか、どれだけ飲むのかと、おじさんを心配させているが、さて、この違い、水位から来ている。
おじさんがデブなので湯船のお湯があふれ、吾輩は前足を使わなくても飲めるというわけだ。
自分で言うのも何だが、吾輩は結構、おっちょこちょいらしい。
扉に顔面からぶつかったり、階段や窓の桟を歩いていて踏み外したりする。
浴室でも勿論、ちゃんと仕出かしていて、勢い余って顔だけを湯船につけたり、まるまる全身、湯船に落ちたりしている。
ただし、そうした失敗にこれっぽっちも「めげない」のも、吾輩の性格である。
阿ん茶んはその生涯に1回だけ、それも1本だけ爪を切られたらしいが、吾輩はすでに何回も何本も切られていて、ずいぶん待遇が違うにゃあ、と思ってしまう。
そもそも爪切りは、動物愛護センターのときから習慣になっており、センターの獣医先生から「習慣のものですから、忘れてしまわないように続けてくださいね」などと、おじさんは言い聞かされていたそうだ。
おじさんにすれば別に、続けて爪切りを励行しなければならない理由があった。
吾輩がこのような猫であるだけに、せめて爪を短くして、うちの中の建具や家具、おばさんやおじさんを思う存分引っ掻かくのはやめさせよう、ということらしい。
ちょうど今日で、このうちに来て半年になる吾輩だが、阿ん茶んが7年暮らしてどこも傷まなかった建具や家具に、すでに悲惨なほどの傷や穴ができている。
最近も箪笥の上置きの正面をびりびりに破いてしまった。
箪笥の上から降りる際、必ず同じところに足をかけて、ぴょんと飛び降りる。
それを繰り返すうちに、足をかける上置きの正面が破れてしまったのだ。
箪笥の持ち主が大おばあさんらしく、おばさんが頭を抱えている。
で、今朝のこと。
おじさんにしっかりと捕まえられ、前足と後ろ足に生えているすべての爪を切られた吾輩だった。
それだからと言って、吾輩の素行がそんなにおとなしくなるとは思えないものの、おじさんは安心できるらしい。
ところが、切り残しがないか確認をしていたおじさんが、驚くなり元気をなくした。
逃げようとする吾輩を押さえていたときと別人格のようになり、さかんに謝ってくる。
吾輩の左後ろ足の薬指(?)が滲んだ血で赤く染まっていたのである。
事務所の猫先輩さんに話をして、「ばい菌が入ると大変だから、消毒したほうがいいよ」とアドバイスされたおじさんだったが、帰ってくるなり、相変わらず障子や襖に飛びついている吾輩を見て、消毒する気がなくなったのだとか。
ところで、半年を機に計測された吾輩の体重。
4・5kgであった。
おばさんがバナナを買ってきた。
吾輩がこのうちに来て、はじめてかも・・・。
バナナが果物である以上、ごく当たり前のこととして、果物かごに置かれ、上に布巾が被せられる。
軽く被せられただけだったので、横から黄色い容姿が覗く。
これに吾輩、過剰に反応してしまった。
果物かごの中身がリンゴだろうが、ミカンだろうが、素通りしたのに、なぜかバナナには前足を出して構ってしまう。
そこを目撃したおばさんが、1本ちぎって吾輩に与えてくれたから、たまらない。
齧りつく、抱きつく、前足でチョップする、後ろ足でキックする。
床の上で横倒しにして、プロレスのように攻撃を続けた。
やられっ放しのバナナだったが、まだ少し青かった分、崩れてべとつくことなく、傷だらけになりながらも持ちこたえていた。
この間、吾輩にじゃまされず順調に食事のできたおばさんたちは、食卓をめぐるバトルの切り札として、今後もバナナを買い続けようか、なんて話をしていた。
バナナの皮ですべったわけではないが、昨日の夜は、湯船の中に落っこち、どっぷりお湯につかった吾輩である。
ちゃんとフタがされていたのに、その上に乗った吾輩が動き回るうち徐々にずれてしまい、そうして落っこちた。
お湯を沸かしている途中で、ぬるま湯といった感じの温度。
水が大好きとは言え、とにかく驚いたのが先で、無闇にバタバタし、なんとか湯船から飛び出すことができた。
浴室の隣の部屋にいたおばさんは、このバタバタ音を耳にし、事件に気付いたらしい。
そこに全身びしょ濡れの吾輩が現れたので、すぐにバスタオルを持ってきて、吾輩を拭きながら、くるっと包んでくれた。
驚いて声も出してくれたお蔭で、2階にいたおじさんも駆けつけてきた。
おばさんの手からおじさんの手に吾輩が移される。
手加減のわからないおじさんに、痛くなるほどゴシゴシと拭かれたが、猫だけにスポンジのような構造をしていて、水気はきりがない。
その間に、おばさんが床を拭いてくれた。
湯船に落ちるのは以前にもあったものの、これだけ大騒動し、おばさんに迷惑をかけたのは、はじめてであった。
今日は「猫の日」だそうな。
・・・と言って特別なことは何もないが、最近あった、おばさんたちを驚かせた話をふたつ、してみようと思う。
まずは、吾輩の身長の伸びているのを、身をもって証明することとなった話。
日頃から、おばさんの調理中には、吾輩が怪我やじゃまをしないよう、おじさんが振る猫じゃらしに釣られながら、2階の手前の部屋に閉じ込められる吾輩だが、おじさんがサボって相手をしてくれないと退屈するので、部屋を出たくなって、自分で扉を開けようと試みることになる。
勿論、扉のレバーハンドルにまず前足が届かなかった・・・ちょっと前までは。
飛びついて何とかしようとしたが、飛びつくのが精一杯でうまく行かない。
そうこうするうち、飛びつかなくても、体をいっぱいいっぱいに伸ばすと、どうにか届くようになったのである。
そして先日、前足をかけたレバーハンドルの位置がちょうどよかったのか、おじさんたちが扉を開けるときの要領の見よう見まねでごちゃごちゃ動かしていたら、扉がすーっと開いたのだ。
自分でも驚いたが、おじさんはもっと驚いていた。
ちなみに、レバーハンドルは床から85cmにある。
ふたつ目の話。
やはり2階の手前の部屋で、おじさんを相手に猫じゃらしをしていて突然、胃のあたりから込み上げてくるものに襲われた。
這いつくばった吾輩がケポッ、ケポッ、ケポッと音を立てたことで、異変に気付いたおじさんが、大慌てでティッシュペーパーをつかみ取り、吾輩の顔の真下に敷き終わったところで、吾輩の口から汚物が吐き出された。
床を汚さずに済んだと安堵した様子のおじさんだったが、その汚物を目にしてびっくり!
おじさんの親指の先くらいの大きさをした、くちゃくちゃにまるまったセロハンテープが、訳のわからない毛くずを引き連れて出てきたのである。
すぐに汚物を手におばさんのところまで飛んで行ったおじさん。
吾輩もついて走り、3人(?)で汚物を取り囲んで、目をまんまるくして驚いたのだった。
おまけの話。
その後も数回、自分で扉を開けて部屋を出ている吾輩。
我ながら、だんだん上手になってきているように思う。
受験生には申し訳ないが、先月の湯船に続き、落ちた話をまたしようと思う。
2階の廊下の手すりの上を歩くのが好きで、おばさんたちから注意されても、とんと猫耳東風(?)。
飛び乗っては闊歩し、奥まで行くと無理にでも体の向きを変えて戻る、この往復を繰り返している。
それが、とうとう足を踏み外して、階段の何段目かにまで落下したのだった。
そのとき、おじさんは猫砂トイレを掃除中。
吾輩に背中を向けながらも、途中でじゃまされないよう、吾輩の挙動に全神経を集中させていたそうな。
そうした耳に届いた大きな物音。
すぐ振り向いた目には、バツの悪い顔をしながら階段を上ってくる吾輩の姿が映ったそうだ。
吾輩自身、どれほど落ちたのか分かっていない。
しまった!と思った後は無我夢中で階段を上ったことだけ記憶している。
階段と言えば、その途中に吾輩が陣取り、1階の廊下に位置したおじさんまたはおばさんと、階段の手すりの間からちょっかいを出し合う遊びが、ちょくちょく行われている。
もぐらたたきの階段バージョンといったものだが、実はこれ、阿ん茶んも大好きだったらしい。
ただし、阿ん茶んの場合は、どういうわけか、おじさんとしか遊ばなくて、おばさんが手を出しても知らん顔だったそうにゃ。
それだけに今は、おばさんが喜んでいるようである。
階段と言えば、もうひとつ話がある。
外出しようとしていたおじさんが、2階からトントンと降りてきて、はた、と動きを止めた。
下から4段目のところにうんこが落ちており、おじさんの左足が見事に踏んづけたのだ。
明るい場所でないものの、ぐにゃっとした感触で、すぐに何であるか分かったとか。
左足を浮かすようにして靴下を脱ぎながら、おばさんを呼び、始末してもらっていた。
それにしても、どうしてそんな場所にうんこが落ちていたのだろうか。
おじさんもおばさんも身に覚えがなく、吾輩にしたって身に覚えがないのだが、それでも結局、切れが悪かったんだね、と言われ、吾輩の仕業ということになってしまった。
こりゃもう、憤慨するほかない。
猫の爪磨きには癖があるそうで、吾輩の場合は、立ち上がって上下に前足を動かさないと爪を磨いだ気がしない。
ちなみに阿ん茶んはと言うと、カーペットに前足をつき、動きが水平方向だったとか。
それで問題は、いや、おばさんたちにとっての問題は、吾輩が爪磨きをする場所にあるらしい。
2階の廊下に仁王立ちとなり、開けっ放しにしてある障子に正対して、障子の縁でもって磨く。
爪磨きのできるのも「売り」のキャットタワーがすぐ隣にあるのを後目に、ガリガリ、バリバリ。
縁は少なからず削られて、指の数の分だけ並んだ溝ができてしまった。
元々ガタガタの障子とは言え、さらにズタズタになっている。
吾輩がズタズタにすると言えば、もうひとつ。
おばさんたちのトイレットペーパーも餌食になっている。
用を済ませたおばさんもしくはおじさんと、入れ違いに吾輩がトイレに行き、便座の上に立って水を飲む、ここまでが従来の在り方だった。
どうも最近、それだけでは飽き足らず、便座の上に立ったまま体の向きを変え、セットしてあるトイレットペーパーをいじるのである。
噛みついたり、引っ掻いたり・・・。
くるくると回るので、すかを食うときもあるが、それがまた面白さを倍増して、悪いこととは知りながら、どうにもやめられない。
吾輩がトイレを出た後には、穴だらけとなったトイレットペーパーと、床に散乱したその残骸があるばかり。
次に使おうとしたおばさんは、巻きとっても巻きとっても穴のなくならないトイレットペーパーを、工夫して使用しているようだ。
どうもご苦労さま、にゃんちゃって。
吾輩がまた、トイレットペーパーをおもちゃにして、おばさんたちを困らせたようである。
それも早朝からエンジン全開で、かなりエスカレートしてしまった。
そもそもは、吾輩にいたずらされないよう、きちんと閉められているはずの2階のトイレの扉が、なぜかふわっと開いていたことに始まる。
セットされたトイレットペーパーのすぐ下に、スペアと思われる新品が1個、ぶら下げられているのを見つけた。
こうなると構わずにはいられない。
セットされている訳ではないので、噛みついたり引っ掻いたりすれば、破れたりちぎれたりする上に転がりもする。
ころころとトイレから出て、ズタズタになりながら階段を転がり落ち、階下にまで散乱した。
先に起きてきたのは、おばさんだった。
廊下に出るなり、驚きの声を上げる。
真っ白なトイレットペーパーくずが、2階のトイレの扉の前に始まって、階段の上から下まで隈なく、さらに階下へと、花吹雪のように、埋めつくすように、散らかりまくっているのだ。
階段を降りるとそこには、すっかり痩せてしまったトイレットペーパーが弱々しく横たわっていたのだとか。
おばさんも、おばさんに呼ばれたおじさんも、もはや笑うしかないようだった。
さて、張本人の吾輩はと言うと、相変わらずの悪食で、トイレットペーパーも噛みつくうちに齧って食べたと思うが、他にも奇妙なものを口にしていた。
先日嘔吐したとき、そのゲボの中に何かのバーコードが貼りついていたのだ。
自分でも何を食べたのだったか、わからなくなっている。
猫砂の掃除はおじさんが受持ちで、大抵はその日の朝、事務所に出かける前に掃除している。
おばさんに言わせると、何もそんな慌ただしい時間にやらなくても、となるのだが、おじさんはおじさんなりの生活リズムがあるらしい。
それで問題は、昨日の朝、今日の朝と、おじさんがおかしな行動をしていたこと。
掃除の途中で、吾輩のうんこをよく眺め、見比べた末に一つ選んでビニール袋に仕舞い込んでいるのだ。
特に今朝は、なぜか昨日のうんこを捨て、今日のうんこと取り替えていて、その様子を見ているうちに、こちらも催してきてしまった。
掃除を終えたばかりの猫砂トイレに入り、うんこをする。
すると、すかさずおじさんが来て、なぜか今日のうんこも捨て、最新うんこに取り替えたのだ。
訳が分からない。
・・・と思っていたら、爪を切られ、キャリーバッグに押し込まれ、問題のビニール袋を手に提げたおじさんに、ツジカワ犬猫病院まで連れて行かれたのである。
診察室に入って、流暢先生とおじさんとのやりとりを聞き、やっと訳が分かった。
吾輩の体形がお腹のあたりから横に張り出すように膨れており、しかも左右に差があって、右のほうが特にぷっくりしているらしく、何かの病気ではないかと心配したおばさんたち。
おじさんが事務所の猫先輩さんに相談、悪食であるのも虫がいるからかもしれないと教わって、うんこを持参の上、診察してもらいに来た次第だった。
キャリーバッグから出されるなり、「でっかい猫だなあ」と流暢先生の一言。
すぐに体重が計測され、数字は5・80kgを示す。
体温計は平熱を示したらしい。
その後、流暢先生の手でもって触診されたかと思えば、複雑な機械を駆使して超音波により検査され、診断が下された。
「どこにも問題ないですよ」お腹が膨らんだとすれば、考えられるのは水が溜まるか、臓器が大きくなるか。
どちらにもなっている様子はなく、第一、流暢先生の目から見れば、そんなにお腹が膨らんではいないのだとか。
たしかに大きな猫で、太る体質ではあろうが、今はまったく問題ないとのことだった。
やれやれ。
何でもないのに病院にまで出かけたことにはなったが、何事もないのが一番である。
病院までの道すがら、ちょっと時期が過ぎたとは言え、桜が見られたので、まあ、よしとしましょうかにゃあ。