病気にさせないために
Rose Gailica Versicolo
Redoute, Pierre Joseph
(薬をまく前にしておくこと)
鉢植え中心の話ですが、地植にも応用できると思います。
化学農薬を防除の主力に用いるバラ栽培と、ここで紹介したような非化学農薬を用いたバラ栽培には、病害虫防除の道具が異なるということ以外にも、大きな相違点がある、と、私は考えています。
過度のストレスは植物の抵抗力を減じます。したがって、意識して過度のストレスから植物を保護してやる気配りも必要です。それには、非化学農薬栽培の方が、バラに与えるストレスが小さい可能性があり、有利だと考えています。また、ここで紹介している非化学農薬は、電解水など、ほんの一部を除けば、もともと化学農薬ほどの強力さはないのが一般的ですから、その面でもバラの抵抗力を減じるようなことは極力避けねばなりません。通常の栽培で、バラに対するストレス源となるものは、
- 日照不足
- 灌水不足・過多
- 病虫害
- 酸素不足
- 二酸化炭素不足・過多
- 化学農薬による生理的(化学的)ダメージ
- 環境(強風・降雪等)による機械的ダメージ
- 肥料不足・過多
等が、考えられます。このなかで、病虫害と化学農薬によるダメージとは量的には相補的な関係にあると考えられますが、それでは化学農薬によるダメージとはなんでしょうか?
多くの「薬害」とよばれる、農薬散布後の新芽や葉の障害がひとつあげられます。程度の差こそあれ、「薬害」として現れない場合でも、ダメージ自体は存在するでしょう。また、殺虫剤や、乳剤中に含まれるキシレンなどの有機溶媒による、葉面クチクラ層の溶解や葉緑素へのダメージなども大きな問題の一つです。農薬やその代謝物の残留性が大きいと、植物体内や土壌中への蓄積によって、種々の障害が発生します。これらはすべて、バラにとってのダメージであり、このダメージを回復するためにバラは余分のエネルギーを使わねばなりません。そして、この結果として病害虫への抵抗力は確実に減少します。一方、農薬散布によって病害虫から守られた分は、良い意味でのマイナスダメージと考えられ、この正負のダメージのバランスで考える必要から、「相補的」といえるわけです。もしも、農薬の薬害による抵抗力の減少が一定量を越えていると、これは相補的というより、単なる「マッチ・ポンプ」の様相を呈してきます。つまり、農薬によって弱った植物が耐病性を落としたために、次の農薬散布が必要になるということです。
それなら、ここで紹介した非化学農薬なら、バラへのダメージは無いのでしょうか?
代表的な例として木酢液の場合はどうでしょうか。木酢液の標準的な散布濃度は100倍以上ですが、この濃度では、殺菌力はあまり期待できません。それにもかかわらず、不完全ながら一定の防除効果が出ているのです。これは明らかに「マッチ・ポンプ」とは別の原理がはたらいている証拠ではないでしょうか。つまり相補的ではなく、「相乗的」に病害虫防除に貢献している可能性が高いと私は考えます。もちろん、明らかに殺菌力を持つ高濃度域(20倍)での散布では、時により軽度の薬害らしきものが観察されることもありますが、私の経験の範囲で観察された現象は、すべて「可逆的」すなわち時間とともに正常な状態に復帰するようなものでした。決して化学農薬による薬害のように不可逆的なものではありません。本ホームページの目玉の一つである電解酸性水にしても、散布は夏の日中であろうが、いかなる高温の日であろうが、花びらまで含めて、バラにダメージを与えたことは一度もありません。
一般的に、「エキス」と呼ばれる非化学農薬を使用していると、葉のツヤが良くなってくることを経験しますが、これは葉面のクチクラ層を破壊することがないからでしょう。以上が、私が非化学農薬の方がバラへのストレスが小さいのではないだろうかと考えるに至った道筋です。
私がこのような考え、つまりストレスが耐病性を低下させるということを実感したのは、根頭癌腫病の観察からでした。根頭癌腫病をもたらすバクテリアは、どんな土壌にも生息しているといわれています。ナーサリーから購入した地掘り苗にも、必ずくっついていると考えるべきでしょう。ですから、何かの条件がそろえば、たいていの苗は癌腫病を発症してもおかしくないのですが、それが簡単には発症しない理由は、バラ自体の抵抗力によっていると考えられます。
私の場合、新しい苗を購入した年は必ず鉢植えにして様子を見ます。新品の赤玉土、乾燥牛ふん、ピートモスを主体とした用土を用い、その品種の特性を見極めた上で地植えにするなり、本式に鉢で栽培するなり方針を決定します。これまで購入二年目までの株で根頭癌腫病が発症した経験はわずか一例だけでした。しかし、ある条件下でそれが激増することを経験したのです。それは「ほったらかし」栽培でした。ある期間、病害虫防除の手段をまったく講じずに、各品種の耐病性を調べようとしたのですが、その期間が終了した年の冬に植えかえをした際、なんとテストに供した鉢植え株の3割に(といっても3株ですが)、癌腫が見つかったのです。テスト終了時には、被検株のほとんどが黒点病でボロボロになっていましたので、その間のダメージによるストレスはかなりのものであっただろうと考えられます。つまり過大なストレスによって低下した抵抗力に起因する癌腫大量発生だと思えるのです。偏見に満ちていると思われるかもしれませんが、癌種病の被害をよく聞くのは、主に化学農薬を多用している人からだという印象を持っているのは、私だけでしょうか?ここからは少々論理の飛躍がありますが、この場合は、過度の化学農薬によるダメージがバラの抵抗力を落とし、それが癌腫発症の機会をつくっているのではないかと思えてならないのです。
長くなりましたが、私が考える「バラを病気にさせない方法」というのは、バラへのストレスを最小化して、抵抗力を極力温存することです。もちろんこれだけで病気が防止できるわけではありません。バラの耐病性はそれほど虚弱なのです。しかし、少しでも耐病性や病後の回復を図るのに、ここでご紹介することは無駄ではないはずです。
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