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Rose Sulfurea (Engraving)
Redoute, Pierre Joseph
 

強酸性水(電解酸性水)


【はじめに】

化学農薬のように残留せず、人体に接触しても安全な薬剤。庭も汚染しない薬剤はないものかと、いろいろ検討しているうちに思いついたのが、病原菌の物理的な殺菌法でした。
具体的には「熱湯消毒」「焼殺」あるいは「放射線照射」などが、これに相当します。
しかし、バラに熱湯をかけるわけにはいきません。火をつけるわけにもいきません。放射線などは、狙いをはずすと人間サマまで危うくなります。

 

そこで、どうしたかというと、「焼き殺す」というのは酸化過程ですから、これを別の方法で実現できないかを考えました。それには、強力な酸化剤が必要です。バラの組織を破壊せずに、微生物の細胞だけを破壊できるような酸化剤を探索した結果、ここで紹介する電解酸性水にたどりついたのです。

電解酸性水が病原菌に接触すると、多くの場合、ほとんど一瞬で相手を破壊します。役目を負えた酸性水は、ただの水に戻ります。役目を終えなかった酸性水も、太陽光や空気との接触により、すみやかにただの水に戻ります。つまり、化学農薬で問題となる環境や人体中での残留はありえません。また、単細胞生物にあたえるダメージは甚大ですが、多細胞生物に与えるダメージは、通常の医療用殺菌剤(たとえばイソジン液)よりも軽微なことが報告されています。散布中の防護(マスクやゴーグル)も必要なさそうですので、仰々しい格好で、近所に不安を与えることもないでしょう。


【電解水とは】

中学や高校の理科の時間を思い出してください。水の電気分解について実験しませんでしたか?
水の入った容器の中に、二つの電極を浸し、これを直流電源に接続すると、水は酸素と水素に分解します。しかし、ただの水では電流が流れにくいので、理科の実験程度では実際には塩水など電流を流しやすい液体を用いて実験したはずです。この場合は出てくる気体は塩素ガスと水素になりますが...

電解水も同じ原理で作ります。ただし、二つの電極の間に仕切りを入れて、プラス極付近の水と、マイナス極付近の水がまじり合わないようにしておき、電気「分解」までいかない程度の電解処理を行います。仕切りには、水そのものは通しにくいが、イオンは通過できるような材料を用います。ここまで聞くと、それってアルカリイオン整水器と同じじゃないか?、という声が聞こえてきそうですが、原理的にはそのとおりです。これらの機械に共通する特徴は、水を分解するというよりも、電気の力によって、普通とは異なった性質の水を作り出していることです。

電極のプラス極側に生成する水を「酸性水」、マイナス極側に生成する水を「アルカリ水」(あるいは還元水)と呼んでいます。
酸性水は、文字通り「酸性」で、pHメーターで測定すると、7より低い値が得られます。バラの消毒に用いるには、pHが3以下の水が必要なようですので、普通のアルカリイオン整水器の能力(酸性水はpH5.5程度まで)では生成は難しいでしょう。一方、pHだけの議論ですと、この程度のpHでしたら、希塩酸やレモン汁(pH〜2.1)で達成できる値です。しかし、これらの液体には、電解酸性水に見られるほどの強力な殺菌力はありません。電解酸性水は、pHが低いだけではなく、「酸化力」が強いのです。酸化力はたとえば「酸化還元電位」という量で計られますが、この値がほかのどのような水溶液よりも高いのです。


【二種類の電解水】

現在、電解水と呼ばれるものの仲間には2種類あると考えていいでしょう。
一つは、アルカリイオン整水器から得られる「酸性水」、もう一つは、強力な殺菌力を得ることを目的に、特に設計された装置から得られる「強酸性水」(あるいは「超酸化水」)です。

これらの決定的な違いは、含有塩素濃度と酸化還元電位です。
強酸性水の一般的な定義は、pH3以下、酸化還元電位1100mV以上というのが、おおよそのところです。これに対して、市販の最高性能のアルカリイオン整水器では、pHこそ2.9までが可能ですが、酸化還元電位は980mVが上限でした。この値は私の自宅水道水を用いて得られたもので、原水の状態によって変動します。おそらく原水(水道水)中の塩素含有量に相関すると思われます。もう一つの大きな違いは、アルカリイオン整水器の酸性水は、水道水を直接電解して得ていますが、強酸性水では、食塩水を電解していることです。先にも触れましたが、電解のさいに食塩を添加すると、強力な電解が可能になり、高い酸化還元電位が得られます。さらに電解のさいに発生した次亜塩素酸などにより、強力な殺菌力が得られると考えられているようです。理想をいえば、より強力な殺菌力を期待できる強酸性水が、バラの消毒には適しているのですが、私たちアマチュアにとっての大問題があります。

それは、強力な殺菌力を持つ強酸性水生成器の値段が100万円を越えているということです。強酸性水の殺菌力は、病院の院内感染防止や、食品業界での消毒等に利用されておりますが、業務用であるため装置規模が大きく、高価格なのです。最近、一部の家電メーカーから安価な家庭用強酸化水生成器(後述)が発売されましたが、それでもまだ、ためおき式で15万円前後、水道直結の連続生成タイプで20万円以上の定価がついています。

一方、アルカリイオン整水器は家庭用ですから、先に述べた最高性能の機種でも実売価格は15万円程度です。本当に、この機種で実現できるpH3、ORP(酸化還元電位のこと)800〜900mV程度では、殺菌効果は期待できないのでしょうか?

ここにひとつのデータがあります。残念ながら二次資料からなので、原文をあたったわけではないのですが、それは、東北大学の「電解による酸化電位水の殺ウイルス、殺細菌、殺真菌の作用」というレポートに書かれている結論部分です。「隔膜を介して、水に通電して、陽極側から得られた電解活性水は殺ウイルス、殺菌、殺真菌の活性が認められた。しかし、この活性を有する電解活性水には+700mV以上の酸化還元電位が必要であった...」と書かれているそうです。
これなら、アルカリイオン整水器でも、十分とはいえないが一定の効果はあるかもしれないと考えた私は、早速、上記の性能を備えたアルカリイオン整水器で実験を開始しました。


【実験】

(1)使用機材

アルカリイオン整水器 :松下電工製(ミズトピア TK−734S)

               生成した電解酸性水のpHは2.9、
               ORP(酸化還元電位)は800〜950mV(実測値)

スプレイヤー      :ダイヤスプレー(No.8744)(プラッスチック製蓄圧式、4リットル)

なお、スプレイヤーのノズル前方にポリエチレン製のカップを置き、ノズルからミストで射出された酸性水を捕集してORPを測定したが、生成時とほぼ同値が得られた。このことから、バラの葉面に達した瞬間の酸性水のORPは、少なくとも800mV以上を維持していると推定される。

(2)予備実験

ミニバラ6株を用い、これを2株づつ3群に分ける。
うどん粉病に対する感受性は株ごとに異なるが、前年までの株の様子から、
平均の感受性がほぼ均等になるよう割り付けた。

第1群: 実験群(電解酸性水を、ほぼ週1回散布)

第2群: コントロールA(水道水を、第一群と同時に散布)

第3群: コントロールB(無散布)


約1カ月経過後の、うどん粉病による被害状態は、

実験群:     ほとんどなし
コントロールA: かなり認める
コントロールB: 甚大

なお、黒点病に関しては、もともと雨のかかりにくい場所だったせいで、どの群もあまり発症していないが、実験群の発症が、もっとも軽微であった。なお、水道水散布群で、一定のうどん粉病抑制効果が見られたのは、うどん粉病菌糸は本来水に弱いこと、および水道水自体が微量の塩素を含み、一定の殺菌力を保持していることによると考えられる。

実際は、上記実験と平行して、庭の鉢植えおよび地植えのHTとFLによるフィールドテストを開始している。

(3)フィールドテスト

約3カ月のフィールドテスト中、雨天や強風あるいは出張のときはサボッたため、毎週1回の散布は残念ながら達成できなかった。(およそ2回/月のペースであった)

●うどん粉病

HT・FLはミニバラより強健なためか、3カ月経過後の結果ではうどん粉病の被害はほとんどなし。実際には、散布間隔があいてしまったときに発症するが、電解酸性水の散布で、菌糸は溶けるように流れてしまい、治癒する。新規の感染と思われる場合を除き、治癒した部位での、それ以上の菌糸の発達は見られない。菌糸があたかも溶解したように流れる現象は、20倍希釈の木酢液でも、時として見られることがあるが、電解水の場合は、一層明瞭かつ例外がない。

●黒点病

無散布の場合に比較して、発症はかなり抑制される。散布頻度が前述のように十分ではなかったためと思われるが、完全な制御はできなかった。黒点病の場合は、感染が96時間程度で確立してしまうためと思われる。電解酸性水は残効性がまったくないので、散布直後にやってきた胞子には無力である。したがって、満足できる制御には週2回程度の散布が必要になろう。うどん粉病のように葉面に菌糸の多くの部分が分布しているわけではないので、すでに確立した感染を治療できるかどうかは現状では不明。しかし、発症初期の葉に電解酸性水を散布すると、黒点部分の拡大が停止し、落葉もしない例が多く見られた。これは、従来の散布液では経験しなかったことであり、いくらかの治療効果が期待できるかもしれない。今後は、予防を重視した週2回散布、あるいは、治療効果の確認のために、より高いORPをもつ酸性水での実験が必要と考える。



以上の結果から、うどん粉病にはアルカリイオン整水器で生成した酸性水で十分な威力があることが判明しました。黒点病の制御性向上には散布回数の増加が必要と考えています。


【今後の進め方】

高性能のアルカリイオン整水器で生成した酸性水で、この程度の効果が得られるので、食塩添加の強酸性水では、かなりの効果が期待されます。問題は生成器の価格です。現在入手可能な連続生成可能な機械は、松下電工のミズトピア TKー780H(定価23万円)です。製品カタログによれば、食塩添加で、pH2.5、ORP1100mV以上の強酸性水が毎分1リットルの速度で生成できそうです。これ以外にも15万円程度で購入可能な生成器もあるにはありますが、これは「ためおき式」で、連続生成はできません。毎回数リットル以上必要な用途には、適しません。

●価格と性能の両者を満足する解は、一槽式の大型バッチ式生成器を自作することです。これは、これまで説明してきた隔壁をもつ二槽式の生成器とはちょっと違いますが、できあがった酸性水による殺菌の原理はほぼ同じです。電極部分を、食塩水を満たしたスプレイヤーのタンクに入れて電解を行い、そのまま散布する構造とすれば、もっとも単純で安価な装置となるでしょう。現在、構造の検討段階ですが、年末までにはなんらかのご報告ができるようにと考えています。

●もう一つの方法は、電解水とは異なるが、ほぼ同様な殺菌メカニズムを化学的な方法で実現することができないか検討することです。こちらがうまくいけば、低コストで環境への残留の少ない消毒法となるでしょう。98年にこのヒントが得られ、現在評価中です。

電解を行わず、手軽に強酸性水に近い効果が得られそうです → 酸性水もどき


【ご覧になった方へのお願い】

ここまでご覧になって、電解酸性水の効果に対して興味をお持ちいただけたでしょうか?

もし興味をお持ちになり、かつご自宅にアルカリイオン整水器をお持ちの方は、ぜひ、その装置の最高電解レベルで生成した酸性水を使って、実験をしていただきたいと思います。一般のアルカリイオン整水器では前述したとおりpH5.5程度が限度ですから、ORPも800mV以上を達成することは困難かもしれません。でも、果たしてどの程度の酸性水まで実用に供し得るのかは、まだ誰も確認していないのです。なるべくORPの高い酸性水を作るには、水道の蛇口をなるべく絞って、装置の許容限度まで水流を細くするのも一法です。こうすることにより、少しでも電解時間をかせぐわけです。

以下、散布にあたっての注意点をお知らせします。

●電解酸性水は不安定な物質です。以下のことは絶対に避けてください

これらを行うと、電解酸性水は効力を失ってしまいます。

電解酸性水は農薬ではありません、散布のしかたも、細かいミストが葉裏にうすくかかるようにするのではなく、粗めの水滴で葉の両面や茎を洗うように散布してください。したがって、農薬散布の場合よりも多くの液を使用します。

 


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