Movie Review 2010
◇Movie Index

インセプション('10アメリカ)-Jul 31.2010サイコウ★
[STORY]
他人の夢の中に潜入してアイデアを盗み出す企業スパイのコブ(レオナルド・ディカプリオ)は、妻モル(マリオン・コティヤール)を殺したとして指名手配され、アメリカに帰れずにいた。そんなある時、サイトー(渡辺謙)と名乗る男からコブに依頼が舞い込む。それはアイデアを盗み出すのではなく、相手の潜在意識に植え付ける“インセプション”というものだった。難しいミッションだったが、成功すれば逮捕されずに国に帰れると言われたコブは仲間のアーサー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)らとともに準備を始める――。
監督&脚本クリストファー・ノーラン(『ダークナイト』
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本作はノーランが10年ほど前から夢に興味を持ち企画を進めてきたというオリジナル作品。そういえば『インソムニア』(不眠症)なんて映画を撮った時もありましたな(笑)今まで日本で公開された彼の作品はすべて見てきたけど、これは彼の集大成とも言える作品だと思った。映像をちょっと見ただけですごい技術力と莫大な制作費がかけられているのが分かるが、それもこれも彼が今までたくさんの映画をヒットさせてきたからこそ、ここまでやりたいことができるわけだ。ここまで着実に進んできた人も珍しいなぁ。なんか嬉しいわ。

他人の夢の中に侵入する話といえば『パプリカ』なんて映画もあったし、建物が折りたたまれたり崩れたりする映像は予告でほとんど見てしまったので(見せすぎだったと思う)新鮮味は正直欠けたけど、無重力でのシーンは面白かったし、何よりラストの鮮やかさにやられた。この手の映画はストーリーが破綻していったり不可解なまま終わったりするが、本作は最後まで緻密で無駄がなかった。やっぱそこがアメリカ人とイギリス人の違いですかねえ(笑)そしてエンドクレジッドで改めて表示されたタイトルを見てその意味を考えてしまった。

“インセプション”――起源、発端、開始などの意味があるが、この映画(ここからネタバレ)コブはインセプションする側ではなく、実はされる側だったんじゃないか?と思った。コブがモルを亡くしたのは事実だろう。その後、彼自身もまた虚無の世界に落ち、戻る気がなかった。そんな彼を浮上させるため、アーサーやサイトーらはその根本を探し出し、モルに縛られず今後は子供たちのために生きるよう前向きな考えを植えつけた、と。他人の夢なのにしょっちゅうモルが邪魔に入るのが疑問だったが、はじめからすべてコブ自身の夢だったとなれば納得だ。最後のコマは、まだ現実までは戻ってない第一階層あたりなのでずっと回っていた。そろそろ目が覚めるということで揺らいだと。(ここまで)・・・なんてね。深読みしすぎと言われればそれまでだけど、こういう映画はこういう深読みが楽しいんだから許してくれ(笑)

ディカプリオの役は『シャッターアイランド』とちょっとかぶるところがあるんだけど(そういえば『レボリューショナリー・ロード』も奥さんに翻弄される映画だったな)映画の内容はだんぜんこちらのほうが面白い。ただ、演技は『シャッターアイランド』のほうが上手かったし印象に残る。本作の彼は主役にもかかわらず演技の面ではいつものディカプリオにすぎなかった。
渡辺謙については、出番の多さとか英語の発音とかつい気にしちゃうので(苦笑)冷静な目では見れないんだよねー。とにかく今回は出番が多くてよかった。
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トイ・ストーリー3('10アメリカ)-Jul 19.2010スバラシイ★
[STORY]
17歳になったアンディは大学へ進学するため引っ越しの準備をしていた。彼はすでにおもちゃで遊ばなくなっていたが、おもちゃたちは捨てられずに取っておいてくれると信じていた。だが、アンディのお気に入りだったウッディ(声:トム・ハンクス)だけが持って行かれることになり、バズ(声:ティム・アレン)や他のおもちゃたちは手違いでゴミに出されてしまう。ショックを受けたバズたちは託児所に行くことを決断し、そこで子供たちに遊んでもらおうとする。ウッディは捨てらたのは手違いだから家に帰ろうと説得するが・・・。
監督&脚本リー・アンクリッチ(『ファインディング・ニモ』
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シリーズ3作目。1と2を監督したジョン・ラセターは本作では製作にまわっており、編集を担当していたアンクリッチが監督を務めている。

前2作とも可愛くて面白くてワクワクして最後はうるうるさせられる、ピクサー映画の中でも私が一番好きなシリーズだ。偉くなってしまったラセターが監督するのは難しいだろうな、と思っていたらやはり・・・しょうがないと 思いつつも、このシリーズの良さはラセターの人柄も大きく影響していると思うので不安はあった。さらに今回の脚本はアンドリュー・スタントンが担当していないのも心配だった(『リトル・ミス・サンシャイン』のマイケル・アーントが本作の脚本を担当。オスカーを受賞したけど個人的に『リトル〜』の脚本はそこまでよかったかな?と思ってる)

とはいえ、主要キャラクターは前2作でしっかりできあがっているし、大人になっておもちゃで遊ばなくなったアンディとの別離というしっかりした軸になるストーリーがあるおかげで、今回も観客を裏切らなかった。バービーとケンの出会いはこっちが恥ずかしくなるくらいキュンときたし、スペイン語を話すバズはセクシー(笑)最後はやっぱり泣かされたし。ウッディたちが協力して脱出するっていうのがパターン化してしまっているのが残念ではあるけど、おもちゃで遊ぶ年頃の子供から、子供におもちゃを与える大人まで幅広い層に向けて作られていて、親子で見に行ってもちゃんとどちらも楽しめるようになっているのはさすがだ。そして見た後は、これからはもう少し大事におもちゃを扱ってあげなきゃいけないな、と全員反省してしまうだろう。私だってもういい大人だけど(笑)全く持ってないわけではないので、これからは簡単に捨てないようにします。

すごく嬉しかったのは『となりのトトロ』のトトロが出ていること!しかも、他のおもちゃは喋るんだけどトトロはオリジナルと同じく喋らない。時々「にぱ〜」と笑ったり、ぼいんぼいーんと跳ねたり、もうねちゃんとオリジナル通りなの。それだけ尊重してくれてるんだなぁと感動。もうなんか、いろいろ全部ひっくるめて「ありがとう!」って言いたい、そんなシリーズだった。
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華麗なるアリバイ('07フランス)-Jul 18.2010
[STORY]
上院議員パジェスの妻のエリアーヌ(ミュウ・ミュウ)は、週末に親しい友人たちを招いた。精神分析医ピエール(ランベール・ウィルソン)は妻のクレール(アンヌ・コンシニ)とともにやってくるが、彼の愛人で彫刻家のエステル(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)も招かれていた。そしてエステルを愛する小説家のフィリップ(マチュー・ドゥミ)もやってくる。そんな中、ピエールのかつての恋人レア(カテリーナ・ムリーノ)も現れる。そして翌日、ピエールは何者かに撃たれてしまう。
監督&脚本パスカル・ボニゼール(『Je pense ・ vous』)
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原作はアガサ・クリスティ『ホロー荘の殺人』だが、映画にはエルキュール・ポアロは登場しない(1951年にクリスティ自身が戯曲化した『The Hollow』にもポアロは登場しない)登場人物の設定も一部変えてあり、名前も違う。
ちなみに日本でも『危険な女たち』のタイトルで映画化されている(これは見てないけど)

ここ最近フランスではクリスティブームなのか、ちょくちょく映画化されていて私としては嬉しい限りなのだが、フランス映画になるとトリックやアリバイの描写が少々甘くなるのが難点。でも『アガサ・クリスティーの奥さまは名探偵』より出来はいい。『ゼロ時間の謎』と比べるとちょい下になるが。本作はクリスティ原作の中でも人間関係を重視した作品で、女にだらしないってのはフランス男のほうがハマってるし、男女関係の複雑さもフランス映画らしくていい。ピエールの昔の恋人が肉感的なイタリア人女優というのも面白い。こういうアレンジは大好きだ。

ただ、ランベール・ウィルソンはしばらく見ない間に普通のオジサンになっちゃって(『マトリックス リローデッド』の頃はまだセクシーだったのになぁ)それほど魅力的とは思えなかった。ミュウ・ミュウだってトップクレジットで出演しているのに本編にはあまり絡まず、昔ピエールと関係があったというから彼女も容疑者の1人になるのかと思ってたのに、ちっとも怪しくなかった。もったいないキャスティングだ。

それからこれは配給会社の宣伝のせいだけど「1人の男が殺され、8人全員に“愛”という名の動機があった――。」ってキャッチコピーなんだけど、実際疑われたり怪しかったのは3人くらいでした(笑)姪っ子なんて完全に部外者だった。ひょっとして8人というのは姪っ子じゃなくて運転手?と思ったけど、本国の9人を描いたイラストも姪っ子の絵なんだよな。作ってる途中でいろいろ削っちゃったのかも。

あと見たいのはフランス版『そして誰もいなくなった』かな。殺される前に何組か男女関係とか男男関係ができそうで(笑)面白い作品になりそう。
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ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い('09アメリカ)-Jul 7.2010オモシロイ★
[STORY]
結婚式を2日後に控えたダグ(ジャスティン・バーサ)のために、友人のフィル(ブラッドレイ・クーパー)とスチュ(エド・ヘルムズ)そして新婦の弟アラン(ザック・ガリフィアナキス)はラスベガスでの独身最後のパーティーを開いた。だが翌朝、目覚めると全員ひどい二日酔いで部屋はめちゃくちゃ、バスルームにはなぜか虎がおり、クローゼットには赤ん坊が居るという状況に陥っていた。おまけにダグも行方不明。3人は残された手がかりを元にダグを探すことになるが・・・。
監督トッド・フィリップス(『スタスキー&ハッチ』)
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全米で大ヒットし、第67回ゴールデン・グローブ賞のミュージカル・コメディ部門で作品賞を受賞(ちなみにそのほかのノミネート作品は『(500)日のサマー』『恋するベーカリー』『ジュリー&ジュリア』『NINE』って全部見てるじゃん私。個人的にも『ハングオーバー!』が一番だな)
日本では劇場公開されずビデオスルーされる予定だったが、GG賞受賞とファンたちの活動によって劇場公開されることになった。

酔っ払って記憶をなくしたことが(何度も)ある自分にとっては、この映画はめちゃくちゃハマりました。酔っ払ってる間ってのは気が大きくなってとんでもないことをやらかしちゃう。そんで意識が戻ればめちゃくちゃ気持ちが悪いし、やっちゃったことを後から聞いて赤面して大反省。もう二度とこんなになるまで飲まないって誓いを立てるも忘れた頃にまたやってしまう。お酒ってのは本当にコワイです(まじで)

この映画の登場人物たちも、日本ではなじみがないけど、アメリカ映画やドラマではよく出てくるバチュラー・パーティーを親友のために催すことになり、そこで大きくハメを外してしまう。私は最初、飲んだくらいでこんなになる?!とアメリカンコメディ特有の大げさな表現かと思って半分引いてたんだけど、実は単に飲んだだけではないことが後から分かり、他にも残された手がかりから前の晩に奴らがやっちまったことが徐々に明らかになっていく。ここらへんはちょっとミステリっぽくてグイグイ引き込まれた。とはいえ、明らかになる事実はどれもすっげーどうしょもなくて(一応褒めてます)その割に最後は綺麗にまとめすぎかな?なんて思ってたらエンドクレジットでやられた!こいつらほんとバカ!でもそこがいい!

このエンドクレジットを見ていてフト気がついたんだけど、奴らベロベロに酔ってても本質だけは失ってないんだな。私も記憶なくすけどいつのまにかちゃんと家に帰ってるので、本能でここまでなら大丈夫って気付いてるんだと思う。野郎どもはストリッパーを呼んで大騒ぎするんだけど、ダグは女の子といちゃいちゃしたりしない。そこは守ってる。スチュは素面の時は恋人を愛してるし結婚する予定だけど計画的にすすめてるだけだと言い張るが、ベロベロタイム中に美人で素直で可愛いジェイド(ヘザー・グラハム)をあっという間に好きになって結婚しちゃう。かえってお酒を飲んだほうがいいほうに進むこともあるわけだ(お前が言うな)

全編通してスチュとアランのキャラが濃く、行方不明になるダグはしょうがないとしてフィルはいまいちキャラが掴めないなぁと感じてた。イケメンだけどスチュやアランと一緒にいると目立たないし、唯一の既婚者でありながら「結婚なんてするもんじゃない」って自分は失敗したかのような発言をしていて、でも女にだらしない感じもしないしなぁと思ってたら、最後に分かった。イケメンで子煩悩で愛妻家。最高じゃん。この映画でブラッドレイ・クーパーはブレイクしたらしいけど、何でか分かったわ。今からちょっと他の出演映画レンタルしてくる(笑)

パート2の製作も決まったそうで、もう今から楽しみ。今度はスチュのためにバチュラー・パーティーをやってほしい。そしてパート3はアランでよろしく(笑)
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踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!('10日本)-Jul 4.2010
[STORY]
2010年3月。新湾岸署が開署となり、旧湾岸署では引越しの準備に追われていた。警部補となった青島俊作(織田裕二)は刑事課強行犯係の係長となり、新湾岸署への引越し本部長にも任命されていた。そんな時、引越しの混乱に紛れて新湾岸署の倉庫から拳銃が3丁盗まれるという事件が発生。そしてその拳銃を使った殺人事件も起きてしまう。犯人グループはかつて青島が逮捕した犯罪者9名を釈放するよう要求してくる。警察庁と法務省との話し合いが行われ、警察庁長官官房審議官となっていた室井慎次(柳葉敏郎)は犯罪者たちを解放する決断を迫られていた――。
監督・本広克行(『曲がれ!スプーン』
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2003年に公開された『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』から7年ぶりの続編(その間に『交渉人 真下正義』と『容疑者 室井慎次』が製作されている)監督や脚本はシリーズ通して同じだが、音楽は松本晃彦から菅野祐悟へ変更。ただし、あのテーマ曲などはそのまま使われたり、アレンジされて使われている。
出演者については、2004年に亡くなったいかりや長介が演じた和久は病死した設定となっており、本作では彼の甥に当たる伸次郎(伊藤淳史)が湾岸署に配属となる。水野美紀が演じた柏木雪乃は登場しないが、意外な事実が最後で判明する。

パート2はパート1の大ヒット(100億円越え)を受けて浮かれたままノリで作ったという感じで個人的には全く面白くなかったけど(それでも173億円も稼いだのには驚いた)本作はそれよりはおふざけも少なく、真摯に作ったという印象。ただ、相変わらずいくつも事件をぶちあげて混乱させ盛り上げるが、中盤で失速し、終わってから「あれは何だったんだ?」と疑問に思うことがたくさん残る(本作では最初の銀行のとバスのやつの意味が分からん。リハーサルのつもりか?)

TVシリーズの時は本店と所轄の争いとか、上層部のことなかれ主義に憤ったりしたけど、自分が歳を取ったのか、この作品のワンパターンさに慣れちゃったのか、今までみたいに怒りが沸かなくなってしまい、冷静に見るようになってしまった。無理やりいざこざを作ってるようなわざとらしさも感じてしまったし。
それから容疑者や受刑者たちを解放するよう犯人が要求するって、なんか最近どっかで見たような気がするなぁ〜と思ったら『交渉人 THE MOVIE』と同じなことに気がついた。比べちゃいけないけど、あっちのほうが解放するまでの経緯は緊迫感があってハラハラしたなぁ。こっちは相変わらず室井さんが顔膨らませて我慢してるだけだし。このいつものパターンに大ファンなら大喜びなんだろうけど、そこまではいかない私には物足りなかった。

それから最新のセキュリティシステムによって新湾岸署のシャッターがすべて下りてしまった時、青島は木材でシャッターを叩き壊そうとするんだけど、これも何かクサくてね(だって物理的にそんなんで壊せないって分かるし)これが10年前の織田裕二ならこの行動にも納得できたが、40過ぎて小皺も増え、役柄も警部補になった今やる行動じゃないだろう。本作を機にまた新たな踊るをスタートさせるなら、熱いだけじゃなくて経験を積んだ彼らが見たい。
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