Movie Review 2010
◇Movie Index
オーシャンズ('09フランス)-Jan 30.2010
[EXPLANATION]
北極海から南極海、アメリカ、アジア、オセアニナなどさまざまな海にいる生物たちを、4年にわたり、時間にして469時間36分も撮影した映像を、103分にまとめたドキュメンタリー。特殊カメラや小型ヘリなどの最新鋭の撮影システムを駆使し、大迫力の映像で展開されていく。また、海洋学者たちの助言により、生物たちの生態を的確に捉えている。
監督ジャック・ペラン&ジャック・クルーゾ(『WATARIDORI』
−◇−◇−◇−
『WATARIDORI』のチームが今度は海の生き物を撮影したということで見てみた。が、いまいちバリエーションが少ないし、思ったより面白い映像がなくて(これならNHKのドキュメンタリーのほうがよっぽど面白い)途中何度か寝そうになった(笑)深海に棲むちょっとグロテスクな生き物だとか、サンゴや微生物なんかも見せてくれたらよかったのに。
印象に残っているのは、日本人が撮影したコブダイと、イルカとクジラ、あとクモガニの大群ね。『スターシップトゥルーパーズ』みたい〜!って思った。

あとヒレを切られたサメ。ずいぶん簡単に切ってるなぁ、完全に死んでからやってるのかなぁなどと思っていたらニセモノだったとは。海に沈んでいくやつはロボットと知ってがっかり。『WATARIDORI』の時も油にまみれた鳥を出したり、刷り込みして飛ばしたりとドキュメンタリーとは言えないことをやってきたが、まさかロボットとは・・・さすがにやりすぎだ。それに本物だとしても私は「ひどいことしてる!」とは思わない。だって食べるために獲っているわけでしょ。鳥が魚をついばんで丸呑みしてるとどう違うのかと。アシカがゴミの海を泳いでる映像や(これもCGっぽかったんだけどどうなんだろ)油まみれの鳥と同じように批判するのはおかしいと思う。

劇中に登場する男の子がジャック・ペランにそっくりで、息子のマクサンス君・・・にしてはちっちゃすぎるよなぁと思ったら、さらにその下の息子ランスロット君だって。この子のほうがお父さんに似てる。感想はそんなもんです(最後は投げやり)
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パーフェクト・ゲッタウェイ('09アメリカ)-Jan 24.2010
[STORY]
ハワイに新婚旅行にやってきたクリフ(スティーヴ・ザーン)とシドニー(ミラ・ジョヴォヴィッチ)は、カウアイ島でトレッキングをしようと準備していた。だが、オアフ島でカップルが殺され、犯人の男女が逃亡中というニュースを知る。もしかしたら途中で出会ったヒッチハイカーの2人が犯人かもしれないと不安になる2人。それでも2人はトレッキングを始め、ビーチを目指し歩きはじめる。そんな中、途中で出会ったニック(ティモシー・オリファント)と親しくなり彼についていくが、彼も実はカップルでジーナ(キエレ・サンチェス)という女性と一緒だった。ニックもジーナもナイフなどの扱いが上手く、この2人こそ犯人かもしれないとクリフたちは警戒する。
監督&脚本デヴィッド・トゥーヒー(『リディック』
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『ピッチブラック』以来、トゥーヒーの監督・脚本映画はやっぱり気になって見てしまう。あれ以上の映画には出会えてないんだけどね(苦笑)今回も期待せずに見ようと思っていたが、私の好きなサスペンスミステリであり、舞台がカウアイ島という私が行ったことがある島ということもあり、やっぱり期待してしまった。

結論から言うと今回も微妙(笑)大まかなストーリーの展開は意外性があって面白かったけど、途中いくつか観客をミスリードさせるところが辻褄合ってない。見てるほうがどうとでも解釈できる上手い台詞選びをすればいいのに(翻訳が間違ってたら申し訳ないが)あそこであんなこと言っといてガラリと変わるなんて、二重人格か?!って感じ。そういうツッコミを危惧したのかいきなりサイコ野郎に変身させちゃって(笑)話を作るのがめんどくさくなって逃げた?って思われてもしょうがないぞ。
あと犯人はカップル、なんだけどそのカップルが3組しか出てこなくて、しかも1組は一緒に行動するわけじゃなくて、そこも個人的には期待ハズレ。せめてあと1組登場させて一緒に行動させ、カップル同士が対立して2対1になったり1対2になったり、みたいな変化がほしかったところ。

まぁでもこの監督は脚本よりアクションが何気に上手くて、今回も犯人のキャラがガラリと変わるあたりからは見ごたえがあった。撮影も工夫があって面白かったし。画面を分割して見せるのは、なんだか漫画かゲームっぽい感じがした。犯人にとって殺人はゲームのようなものだ、というのを表現したのかもしれない。ゲームといえばジョヴォヴィッチが『バイオハザード』のアリスに見える瞬間があって「全員死ぬぞこりゃ」とちょっと思ってしまった(笑)
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シャネル&ストラヴィンスキー('09フランス)-Jan 22.2010
[STORY]
1913年パリ。シャンゼリゼ劇場でロシア・バレエ団の「春の祭典」の初演が始まろうとしていた。 作曲したストラヴィンスキー(マッツ・ミケルセン)は、妻とともに客席で見守るが、あまりにも革新的な振り付けや音楽にヤジが飛び、劇場は騒然となる。そんな中、ココ・シャネル(アナ・ムグラリス)は微笑を浮かべ、舞台に釘付けになっていた――。
7年後。最愛の男ボーイ・カペルを事故で亡くしたココを励まそうと、友人たちがサロンに誘い、数々の著名人と知り合いになる。そんな中で、家族と共にパリで亡命生活を送っているストラヴィンスキーを紹介される。彼の才能に惚れ込んだココは、自分の別荘に一家で住んでほしいと申し出る。
監督ヤン・クーネン(『ドーベルマン』
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クリス・グリーンハルジュ著の原作をクーネンが脚色。第62回カンヌ国際映画祭クロージング作品。

個人的に開催していた“シャネル祭り”最後の作品(1本目が『ココ・シャネル』で、2本目が『ココ・アヴァン・シャネル』
前2作はココの最愛の恋人ボーイを失うところでだいたい終わるが、本作はボーイ死去後、ストラヴィンスキーとの出会いから別れまでの短い期間が描かれている。そして主役はどちらかというとストラヴィンスキーで、ココの存在はファム・ファタールみたいだった。ココを演じたムグラリスはシャネルのミューズなこともあってか、服の着こなしが完璧。完璧すぎてココじゃなく、シャネルの服を着た女優かモデルにしか見えなかった。本人は写真でしか見たことないけど、自分の服については無造作に着てた感じ。『ココ・アヴァン・シャネル』のオドレイ・トトゥの着方が一番それっぽいかな。

映像はやっぱり凝ってるし個性的な撮り方をしていたりして楽しめた部分はあるが、上に書いたようにシャネルじゃないよなぁっていう違和感と、ストーリー展開がやっぱりあんまり面白くなくて(そこは『ドーベルマン』からあまり変わってない)シャネルN゜5誕生のエピソードも取り上げているが、おまけに取ってつけたようで浮いて見えた。彼女と話してたのがあのエルネスト・ボーだというのも見終わった後で知ったよ。名調香師なのに扱いがよくないじゃん(余談だけど、今N゜5をつけてこれを打っています。気分を出すために(笑))

ただ、エンドクレジット後にモノクロの1シーンが入るのだが、そこがある意味一番面白かったな(これから見る人は最後まで見るように)
本編はストラヴィンスキーや妻の感情は分かりやすかったが、ココが何を考えているのかは分かりにくかった。それがエンドクレジット後に初めてココにとってのストラヴィンスキーの存在はどういうものだったのかが明らかになる。なるほど・・・彼がちょっと気の毒になった。こういう種明かしみたいな見せ方は嫌いじゃないぞ。

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ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女('09スウェーデン=デンマーク=ドイツ)-Jan 17.2010
[STORY]
雑誌『ミレニアム』の記者ミカエル(ミカエル・ニクヴィスト)は、大物実業家の不正を告発した記事がガセだったとして名誉毀損で訴えられ、有罪となり半年後に服役することが決まっていた。そんな彼に、大企業ヴァンゲル・グループの前会長ヘンリックからある依頼が来る。36年前、ヘンリックの16歳の姪ハリエットが失踪した事件を改めて調査してほしいというものだった。ミカエルは依頼を承諾し、調べ始めるがハリエットが残した暗号が分からず行き詰っていた。
一方、ヘンリックの弁護士からの依頼でミカエルの身辺調査を行っていたリサーチ会社のリスベット(ノオミ・ラパス)は、その後もミカエルのPCをハッキングし続けていた。そして彼が保存した暗号の謎を解いたリスベットは、思い切ってミカエルにメールを送信する。
監督ニールス・アルデン・オプレヴ(『Worlds Apart』)
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原作はスウェーデンの作家スティーグ・ラーソンの上下巻からなる小説『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』
原作は3部作まで出版されており、5部までの構想があったらしいが、ラーソンが2004年に他界したため3部までとなった。
本国ではパート2の映画が2009年9月に、パート3は2009年11月に公開されている。

2010年版『このミステリーがすごい!』の海外篇2位(ちなみにパート2は9位、パート3は10位)になり本屋で平積みされているのを見て面白そうだと思ったんだけど、最近なかなか本を読む時間がないので、映画なら手っ取り早いということで見てみた。

予想より遥かに面白かった。原作の長さを1本の映画にまとめるのは大変だっただろう、原作未読な上に物覚えが悪いので、設定や人間関係を把握するまでに時間が掛かり、途中で「えーと、この人誰だっけ?」となったり(それでも壁に写真を貼って何度も観客に見せるところは工夫してると思った)駆け足になったところもあったが、ハリエット失踪事件の残された資料から真相を突き止めていくところが本格ミステリという感じで見ごたえがあった。特にハリエットが失踪する前に撮影された写真を見て、ミカエルが手がかりを掴むところは興奮してしまった。何で36年前に分からなかったんだろう?っていう事実もあったけど、ネットや画像の解析技術が発達した現代でなければ解明できなかったこともあったわけで、現実に起きている昔の未解決事件もこんな風に解決できたらいいのに・・・とちょっと思った。

キツいシーンも甘くせずにちゃんと見せて、観客を重たい気分にさせてくれたのが逆によかったし(ハリウッドリメイクの噂があるがどうすんのか)ノオミ・ラパスは役作りしすぎて他の役ができるのか心配になるほどの熱演だった。パート2、3ともにとりあえず日本でも上映してくれそうなので、本作では謎だった彼女の過去が明らかになるのか楽しみだ。でもパート2と3は別の監督(スウェーデンのTVドラマ『刑事マルティン・ベック』などを監督したダニエル・アルフレッドソン)なのがちょっと引っかかるところ。元はドラマにする予定だったというし、本作の雰囲気を踏襲した映画だといいなぁ。
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(500)日のサマー('09アメリカ)-Jan 10.2010オモシロイ★
[STORY]
グリーティングカードを制作する会社に勤めるトム(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は、アシスタントとして入社してきたサマー(ゾーイ・デシャネル)に一目惚れしてしまう。サマーには彼氏はいなかったが、彼女は恋人なんて誰かの所有物になるのは嫌だという女の子。だが、好きな音楽が一緒だったことで2人の距離は縮まり、付き合いはじめるが、サマーは真剣に付き合う気はないとトムに宣言する。トムも気軽な関係でいいと答えるが、彼自身は運命の恋だと疑わなかった・・・。
監督マーク・ウェブ(初監督作)
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2009年のサンダンス映画祭で上映され、ゴールデングローブ賞のミュージカル・コメディ部門にもノミネートされた。

予告を見た時は、サマーがビッチかイタイ系かデンパのどれかで、優しいトムが振り回される可哀相な話だと思ってた(笑)でも実際見てみたら予想とは全然違った。というか見る人の視点によって幾通りにも見える作品だった。

トムがサマーと出会ってからの500日を、時系列をバラバラにして見せていく手法で、この手の見せ方は今では珍しくない(むしろまたかよって感じだ)が、本作はサスペンス映画ではないがこの見せ方が非常にいい効果を出していて、コロっと騙されるところだった。何に騙されるかって、簡単に言うとサマーがビッチなのか、そうじゃないのか?ってこと。

これは観客がトムに感情移入して見るか、サマーの言動を理解して見るか、どちらの立場にもならず客観的に見るかでかなり印象が変わる。私は最初はトムに、終盤で「あれ?サマーって・・・」と気がつき、最後はどっちもどっちだなぁとという流れ。最後までトムを中心にみると「なんだよこの女!」ってムカつくかもしれないが、サマーの言ってることを抜き出すと、彼女は彼女で一貫してるんだよね(それでもムカつく人はいるだろうが)それをトムのほうが勝手に解釈しちゃっただけで。その考えのズレがすっごく面白かった。そういえば、一番最初のテロップ“この映画に出てくる登場人物は――”のところからもう「これは面白い映画に違いない!」って思ったんだよね。その予感が見事に当たったのだった。

途中でアニメが挿入されたり、画面が2分割されたり、いきなりミュージカルみたいに踊りだすシーンなどが出てくるんだけど、どれも自然に入ってくるので違和感がない。何ていうか「こんな凝ったことやってるんだよスゴイだろ〜」という自画自賛とか押し付けがましさが全くなくて、トムの気持ちを表現しようと思ったらこういう見せ方になっちゃいました、っていう感じの自然さね。脚本も上手いけど、映画そのものがよく出来てた。今後の作品にも期待だ。

主演のジョセフ・ゴードン=レヴィットは『ブリック/Brick』のブレンダンだった!というのを後で知った。あの映画ではメガネだったし顔のほとんどが髪で隠れちゃってたから気がつかなかった(あとデミ・ムーアの『陪審員』の息子か!)この映画だけしか知らなかったら、彼自身もトムみたいな感じなのかなって思っちゃってたかもしれない。他にもいろんなタイプの映画に出演しているようだし、早くも監督業も経験しているようで、彼の今後も期待だ。
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