Movie Review 2000
◇Movie Index

ウーマン・オン・トップ('00アメリカ)-Dec 21.2000
[STORY]
料理上手なイザベラ(ペネロペ・クルス)と歌手のトニーニョ(ムリロ・ベニチオ)夫妻はブラジルでレストランを経営し繁盛していた。しかしトニーニョが浮気をし、イザベラは家を飛び出しアメリカへやってくる。イザベラを見たTVプロデューサーは彼女の美貌と料理の才能に目を付け、TV番組に出演させたところ大人気になる。
監督フィナ・トレス(『追憶のオリアナ』)
−◇−◇−◇−
女性が料理で愛情を伝える映画が好きだ。例えば『赤い薔薇ソースの伝説』とか『青いパパイヤの香り』に最近では『初恋のきた道』か。この映画も料理の天才だが乗り物(揺れるの)が苦手な人妻が主人公。揺れるのはダメだけど自分から揺れていれば酔わないと分かったことから、車の運転から夫婦生活まですべて自分がリードしてきた。しかし夫はそれが不満で浮気してしまう。
でもちょっと待てよ!結婚する時に、ちゃんと自分の弱点を話さなかったの?きちんと話してればこんなことにはならなかったんではないか。したらこの話もなかったことになるけどさ(笑)でも結局イザベラは弱点のことをトニーニョに話さなかったなぁ。一言言うだけで誤解は解けると思うのに。

イザベラがブラジルからサンフランシスコへやってくるもののトニーニョのことが忘れられず、ブラジルの女神イマンジャに祈ったことから翌日には夫のことをさっぱり忘れてしまう。そして生まれ変わったように料理と美貌で男性にモテモテとなるイザベラ。まるで魔法にかかったように男たちが彼女についていき(ハーメルンの笛吹きみたいよ)彼女の料理番組が大ヒットする。このあたりはファンタジックで面白かったし、なんといってもペネロペ・クルスがすっげーカワイイの。料理シーンは男でなくても画面に釘付け(笑)だけど彼女の夫がサンフランシスコにやってきたあたりから失速する。つーか、個人的にこのダンナが好きになれなくてさ(と思ったら『オルフェ』のマフィアをやってた!)アメリカでもっと成功して、もっといい男を見つけて見返してやるくらいのストーリーを期待してたのもあるけどね。そこらへんが弱かったというか、タイトルがタイトルだけに、ちょっと残念だった。

話がずれるけど、TV番組って日本もアメリカも変わらないね。日本のTVでは深夜でやってた時には面白くて人気もあった番組が、ゴールデンに進出した途端につまらなくなってすぐ打ち切りになってしまうことがよくある。アメリカの場合はもっと厳しそうだ。
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ダイナソー('00アメリカ)-Dec 19.2000
[STORY]
6500万年前の白亜紀――恐竜たちがまだいた時代。ひょんなことからキツネザルに育てられたイグアノドンのアラダーは毎日楽しく暮らしていた。しかしある時、隕石の衝突によって地表に緑も水もなくなってしまった。アラダーたちは生き残った恐竜たちとともに楽園を目指す。
監督ラルフ・ゾンダッグ&エリック・レイトン(?)
−◇−◇−◇−
実写とCGを融合させた迫力ある映像を『トイ・ストーリー2』と同じくDLPの劇場で見てきた。やはりTVCMや他の劇場で見た時とは全然違う。のっぺりしてたのが立体的で色も鮮やか。

映像に関しては文句ない。恐竜というすでに絶滅したものや、しゃべる人形など実際にないものを表現するのにCGはうってつけだよね。しかも実写と合成してもほとんど違和感ないところまで作れるようになったのがスゴイ。これからますます技術が発達して、もっと驚く映像をたくさん見せてくれるだろう。

しかし問題はストーリー。こっちにはあんまり期待してなかったけど、想像通りのダメ話。所詮ディズニーだよなぁ。やってることは『ライオン・キング』とかと変わんないの。だって恐竜でしょ?動物じゃないんだよ。恐竜たちが助け合って旅に出るなんてやめて下さい。しかも肉食の恐竜が悪者で、草食が正義とかってどうよ?別にしょうがないじゃん。そういう種類の恐竜に生まれちゃったんだから肉食って何が悪いのよ。食わないと死んじゃうんだから。そんで旅をするうちに草食恐竜がリーダーに成長していくなんて茶番だ。なんかね、見ててだんだん恐竜って感じがしなくなっちゃったの。普通の動物を見てるのと変わらない。別にこの手の話を恐竜でやらなくても、アフリカの動物で十分だと思う。技術は進歩しても発想は乏しくなっちゃってるのかな。

どうせなら主人公が誰とか決めず喋らせることもせず、ナレーションで状況説明する程度で、恐竜たちの生態や生活を(想像する部分が多いだろうけど)ドキュメンタリーのように追ってほしかったな。この映画でもアラダーが生まれる前まではけっこう面白くて引き込まれたのに。それが生まれてからいきなり覚めちゃった。まぁね、ちゃんとキャラクター作らないとグッズが売れないもんね。や〜らしい〜。
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愛のコリーダ2000('76フランス)-Dec 10.2000
[STORY]
昭和11年、料亭吉田屋に阿部定(松田英子)は住み込み女中として働き始め、主人の吉蔵(藤竜也)に一目惚れする。吉蔵も定を可愛がるようになり情事を重ねる。しかし吉蔵の妻がこれを知ることになり、2人は駆け落ち同然で待合宿に逃げ、昼夜関係なく愛欲にふけっていくが・・・。
監督&脚本・大島渚(『御法度』
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当時は大幅なカットをされた作品が、今回ノーカットで国内初公開(ボカシはあります)
『ラストタンゴ・イン・パリ』が今年の初めにやはりノーカットで公開されたので、この作品もいつかやってくれるだろうと期待してたんだけど、思ったよりも早く実現されたなぁ。予定では10月だったのがずいぶん延びちゃったけどね。

かの有名な「阿部定事件」といっても、私が生まれるずーっと前の話なわけで知らなくて当然なんだけど、でも以前TVで事件の特集をやっていたのを見ていたので知ってはいたし、阿部定さん本人のインタビュー映像も見た。この世紀末、ショッキングな事件が多くてちょっとやそっとのことじゃ驚かないが、50年以上前のこの事件が今起こったとしても、きっと大騒ぎになるだろう。映画自体も最初は「すげー」って口あけて見ちゃってたし(笑)でも慣れってこわい。映画の大半がそればっかなので正直だんだん飽きてきちゃってちょっと辛かった。それ以外のシーンだけ繋いだら10分もなさそうだし。だけど情事そのものがこの映画のテーマなので外すことはできない。その繰り返しによって一方は生きることを感じ、もう一方は死へ導かれるのだ。

まぁ何はともあれ藤竜也である。ちょっと前にこの人が出たドラマ見たけど、今も昔もセリフ廻しには進歩がないっつーか、あまり上手とは言えないと思った。でもその妙な抑揚の喋りは、吉蔵のニュートラルな性格にはよく合ってるように感じた。定の我侭や無茶な要求に対して「お前の好きにしたらいいよ」と言い、女のすべて受け入れる。しかし次第に受け入れきれなくなり、逆に女に預けるかたちへと変わっていく。同じ「いいよ」でも声の大きさや微妙な言い回しによってずいぶん違うように感じる。彼が「いいよ」と言うたびに切なくなった。たとえ人生を諦めてしまった男であっても、その命までも預けられた女はそりゃあ手放したくはないよな。定でなくとも一人占めしたい気持ちはよく分かる。吉蔵は本当にいい男だ。しかしこの時代に海パン日焼けはいいのか?竜也(笑)
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ピッチブラック('00アメリカ)-Dec 6.2000
[STORY]
宇宙船がある惑星に不時着した。乗客のほとんどが死に、生き残ったのはわずか10名あまり。護送中だった殺人犯リディック(ヴィン・ディーゼル)はそのスキに逃げ出すが、刑事ジョンズにより再び捕らえられてしまう。惑星から脱出する方法はないかと、宇宙船の副操縦士フライ(ラダ・ミッチェル)と乗客たちは惑星の探索をし、ついに小型宇宙船を発見するが・・・。
監督&脚本デヴィッド・トゥーヒー(『アライバル/侵略者』)
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謎の惑星に不時着した人々がそこから脱出しようと試みるが、数多くの危険に晒され、1人また1人と命を落としていく。最後に生き残るのは誰か?そして無事に惑星から逃げ出すことができるのか?――というよくあるパターンのお話。

とはいっても私はこの手の映画はあんまり見てないんで(心臓に悪い)全然詳しくないけど、まず思い浮かぶのは『エイリアン』当たり前か(笑)造形はもちろん『エイリアン』のが素晴らしいけど。それから『CUBE』ね。次第に人間関係に歪みが生じ、最初は好人物と思われていた人物が本性を現したりするところが似てるな。どちらの映画もキャストが知らない人ばっかりだから、誰が生き残るのか全く分からないところも似てるか。ただ人物描写は『CUBE』のほうが上。こっちはその性格の移り変わりが極端すぎた。そして最後に急にパッと頭に浮かんだのが『ディープ・ブルー』これは両方見た人ならニュアンスを分かってくれるかも(笑)

こういう作品をたくさん見てる人ならもっと浮かぶことでしょう。それくらいありがちなストーリーだし、今まであった作品よりやっぱり落ちちゃうんだけど、期待してなかった分、私はかなり楽しめた。最初は逃げ出した殺人犯を探すのを見てドキドキし、次に惑星に生息する生物から身を守るところを見て別のドキドキがあり、終わった頃には緊張のあまり手足が冷たくなっていた。映像も好き。あんまりお金掛かってないだろうなーってのがすぐ分かるけど工夫が見える。事故シーンはカメラのブレでうまく表現し、屋外のシーンでは映像を荒くし砂漠のような色彩にすることで惑星らしさを出しているし、生物は暗闇にしか出てこないので十分誤魔化しがきく。ホントはこういう目で映画を見てはいけないんだろうが、がんばってるねーと応援したい気持ちになる。ご都合主義と言われればそれまでだけど、惑星の秘密や生物の弱点も面白かった。

すでに続編も決定しているそうだ。生き残ったアイツが『エイリアン』のリプリーのような数奇な運命を辿るのだとしたら面白いだろうなー。でも1作目も日本じゃあんまり扱いよくないんで、続編をきちんと上映してくれるか心配なんだけどね(未公開のままビデオのみになったりして)
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タイタス('99アメリカ)-Dec 2.2000
[STORY]
古代ローマの将軍タイタス(アンソニー・ホプキンス)は、宿敵ゴート族を滅ぼしゴートの女王タモラ(ジェシカ・ラング)と息子たちを人質として連れて帰る。戦いで息子たちを亡くしたタイタスは、タモラの長男を生贄として殺してしまう。怒ったタモラはタイタスに復讐しようと皇帝サターナイナス(アラン・カミング)に取り入り女帝となるが・・・。
監督&脚本ジュリー・テイモア(初監督作。舞台『ライオンキング』の演出家)
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いきなりだけど、ジェシカ・ラングが小柳ルミ子に見えてしょーがなかった。そして相変わらずアラン・カミングは篠井英介なのだった――。あ、あとタイタスの孫が『ホームアローン』の頃のカルキン君に似てました(笑)

冒頭の演出には驚かされた。現代から一気に古代へ、いや古代ともつかない異空間へと観客を連れ去ってくれる。時代考証はおそらく滅茶苦茶、衣装も全くリアリティはないが、それでも不思議と納得してしまうほどの迫力と説得力。予告等で流された、兵士たちの行進シーンは鳥肌が立つほどだった。スゴイぞー!と久々に映画を見て興奮した。

でもだんだんそれに慣れてきてしまったせいか、途中でちょっとかったるかった(2時間半以上あるしね)いくら演出が目新しくても、元がシェイクスピア作品だから、台詞回しがいちいちまどろっこしいの。どうせなら演出だけでなく、ストーリーや台詞さえも大胆に切り込んで欲しかったな。あ、でも古典のベースを変えずにどこまで新しくできるか?が目的だったとしたら、これでいいんだろうな。

あと、映画なのに途中で舞台を見てるような気分になったのも気になった。せっかく冒頭は映像としての面白さがあったのに、だんだん単に機械的に場面転換してるだけに見えた。カメラの動きも単調で平面的というか、一方方向からしか見てないのでは?って感じ。外のシーンでもまるで屋内で撮ってるみたいで、これならわざわざロケする必要ないじゃん、と思うほど。

だけどラストはまた映像らしさを出したね。でもこれはちょっと狙いすぎっつーか『マトリックス』ですか?って感じで失笑。次の切り替えはうまいと思ったけど。最初と最後だけこういう風にするって決めてたのかなあ。途中の飽きちゃいそうなところももっと奇抜にして力を入れて欲しかったな。
・・・あ、そういえば役者について全然触れなかったな。最初に誰に似てるってだけじゃん(笑)ま、いいか。
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