Movie Review 1999
◇Movie Index

オースティン・パワーズ・デラックス('99アメリカ)-Sep 4.1999
[STORY]
オースティン・パワーズ(マイク・マイヤーズ)とヴァネッサ(エリザベス・ハーレー)は優雅に新婚気分を味わっていた・・・が、何と思わぬカタチで破局してしまった。そこへ今度はCIAエージェントのフェリシティ(ヘザー・グラハム)が登場。新たな恋へ――と思いきや、ドクターイーブル(これもマイヤーズ)がファット・バスター(これもマイヤーズ)を使って、彼の大事な精力源「モジョ」を奪ってしまった!
監督ジェイ・ローチ(『オースティン・パワーズ』
−◇−◇−◇−
『マトリックス』を見てすっかり高揚した気分で今度はこの映画。午前3時にこんなの見たら意味なく笑いそう、と思ってたんだけど、1番面白かったのは最初と最後くらいだった。特にオープニングは1作目より面白い・・・っていうか脱力しながら失笑するしか選択肢がないっす(笑)でも物語が始った途端に長く感じてしまった。基本的には1作目とパターンは変わってないハズなんだけど、オースティンやイーブルの毒気に慣れちゃったのかなー。あの笑い方や喋り方を見ても何とも思わなくなった。

その分、もう1役のファット・バスタードがかなりイヤ!ウザい。ウザい上に汚ならしいし臭そうだし(笑)1作増えるごとに役も増えてったらそれはそれで面白そうだ。エディ・マーフィみたいに。今に相手役の女の子も自分でやるかもしれません(流石にそれはないか)

さらに残念なのはフェリシティ役のグラハムが、ヴァネッサ役のハーレーよりも霞んでたってことすね。個人的にはグラハムのほうが私は好きなんだけど。ヴァネッサはオースティンを嫌ってたのが、だんだんと彼の魅力に惹かれていったわけだけど、フェリシティは最初からオースティンにモーションかけまくっててつまらん。ヴァネッサが90年代の女性で、フェリシティが60年代の女性だから、バリバリ60年代のオースティンはたまらなく魅力的なんでしょうが、それならそこをもっと強調すべきだったのでは?

ほかに見どころは、今回ロブ・ロウの出番が多いこと(笑)そしてイーブルの息子の出生の秘密も明らかになる!さらにカメオ出演者盛りだくさん(特にラストなんて)映画はともかく、アメリカのTV番組を知ってたらもっと面白かったかもね。

エンドロール途中で席を立たないほうがいいです。ちょっとだけど、おまけ映像つきだから。
そして3作目『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』へ。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

マトリックス('99アメリカ)-Sep 4.1999オススメ★
[STORY]
ある時、コンピュータプログラマーのネオ(キアヌ・リーヴス)のパソコンに奇妙なメッセージが表示された。ネオはそれに導かれてトリニティ(キャリー=アン・モス)という女と出会う。さらにモーフィアス(ローレンス・フィッシュバーン)という男から、この世界は“マトリックス”と呼ばれる仮想現実であると教えられた・・・!
監督&脚本ラリー&アンディ・ウォシャウスキー(『バウンド』
−◇−◇−◇−
『バウンド』が好きだったんで、この作品も首を長くして待っていました。そして待ちきれずに先行オールナイトに行ってきました〜(嬉泣)

「で、マトリックスってナニ?」
と相変わらずの理解力のなさを露呈したけど、私はこの作品も好きだ。思ったよりも迫力もなく緊迫感もなくスピード感もなくスケールも小さい(笑)でも狭いけど深い。1番深いところは何かがあるんだけど、どす黒くて何も見えない。そして次第に閉塞感が高まっていく――。

と思ったらいきなりカンフーで笑わせてくれます(笑)かなりTVゲームっぽい。かと思えばアメコミっぽくもなる。元々アメコミが原作なのかと思ったら、ウォショースキー兄弟が書いた原作に、アメコミ作家たちがストーリーボードを描いたらしい。そのアメコミはアメリカの公式ページで見ることができる。ちなみに日本の公式ページはこちら。凝ってるけど重いです。
(実はこの映画の後に押井守監督のアニメ映画『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』('95)を見ました。見事にパク・・・いや、かなりインスパイアされてるんで驚いた。こっちを先に見とけば良かったな・・・ちっ)

あらすじに書いたけど“マトリックス”とは仮想現実である。だからその世界では基本的に何でもできちゃうわけ。でもその中にもルール(縛り)がある。例えば“マトリックス”から現実世界へ戻る時には、ちゃんと線の繋がった電話しか使えない。携帯電話は連絡は取れるけど戻る手段には使えないのだ。そういったことがとてもユニークで面白かった。よく考えればヘンじゃない?とか矛盾してる?と思うけど、そんなことを考えてたらこの映画は楽しめないので、頭から追い払わなきゃダメ。続編ではこのルールをさらに明確化して、よりスリリングなストーリーにして欲しい。そして独自の世界を確立してもらいたい。

続編は『リローデッド』と『レボリューションズ』
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

黒猫・白猫('98フランス=ドイツ=ユーゴスラビア)-Aug 22.1999オススメ★
[STORY]
マトゥコはロクに働かず一攫千金ばかりを狙う男。彼はマフィアのグルガから金を借りて石油列車強奪を企む。しかし彼と手を組んだダダンはマトゥコを騙して全てを奪ってしまう。さらにダダンは自分の妹とマトゥコの息子ザーレを結婚させようとする。だが当のザーレは酒場の娘イダ(ブランカ・カティチ)に夢中だった。
監督エミール・クストリッツァ(『アンダーグラウンド』)
−◇−◇−◇−
この映画のCMがテレビ東京でオンエアされてたんだけど、何とナレーションが広川太一郎なのです!(爆笑)2回も見られてウレシー!

強烈で、ただただ圧倒されるばかりだった『アンダーグラウンド』からすると(いい意味で)だいぶ力の抜けた、監督も出演者と一緒に楽しみながら撮った作品だったように思う。でも根本は変わってはいない。生きものたちの欲望と滑稽さはしっかり描かれている。今回はジプシーミュージックが全面に流れ(もちろん楽団も登場)人々が踊りまくる。『アンダーグラウンド』での燃える車椅子じゃないけど電動車椅子が出てくるし、交尾する動物あり糞尿譚あり(笑)死体を冒涜する行為でさえ笑いとなる。

そんな彼らを見つめるのが2匹の黒猫と白猫だ。ただね、この2匹の猫ちゃんたちが、ホントにただ見てるだけなのね(笑)私はこの猫ちゃんたちが何かしらの行動をすることによって、人々の運命が変わっていくのかと思っていた。これはこれで面白かったけど。

猫ちゃんたちに見つめられる人間たちは千差万別。騙す者と騙される者、互いに恋する者たち、恋を探す者たち、肉親への愛、友情、すべてが詰まっている。ストーリーはよく見れば至ってシンプルだし、ラストまでもだいたい想像がつく。でも細かい動きに関しては予想がつかない。出演者のほとんどが素人だったからかな。それだけ目が離せない。

だけど本来なら2時間以上かけてやるような話ではないだろう。石油列車強奪の話がメインかと思えばそれは単なるイントロダクションで(そこが盛り上がらなかったのが、ガッカリといえばガッカリだったが)本番はここから。大団円へ向かっていくパワーにはやっぱり圧倒される。でもちょっとかわいい。エンドクレジットで「Happy End」と出たとき「ああ、見て良かったな〜」と思った。映画を見て「ソンした〜」という気持ちにはならないけれど、怖かった悲しかったムカついた、という感想よりも、やっぱり素直に「笑った!面白かった!」というのが1番じゃないかな。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

パラサイト('98アメリカ)-Aug 15.1999
[STORY]
勉強はできるがイジメに遭っているケイシー(イライジャ・ウッド)は、ある日グラウンドで奇妙なものを発見する。それを水槽に入れてみたところ、たちまち変化し生物のようになった。同じ頃、教師たちが不審な動きを見せていた。大量の水を摂取し、生徒たちには耳の検査を強要する。ケイシーは友人たちの協力を求め、これを追及しはじめたが・・・。
監督ロバート・ロドリゲス(『デスペラード』)脚本ケヴィン・ウィリアムソン(『スクリーム』
−◇−◇−◇−
4人パラサイト<寄生>すると1人1000円ということで、私はもともと「それ」を持っていたので、あとの3人に寄生させて行ってきました(笑)

大きな音には相変わらず弱くてビクッとしたけど、サスペンス・ホラーというよりはハイスクール・ラブ(死語)っつーんですかね、ビバ高っぽくもあり『魔女の条件』的カップル誕生?!みたいなのもありでなかなか面白かったっす。『スクリーム』なんかは「お前いくつだ?」というツッコミ入れたくなるよーなフケた高校生もいたけど、今回はそれほどヒドいのはいなかったように思う。が、ホントに高校生な年齢の子はイライジャ君だけなんだよね。まぁ1番上でも24歳だけど。
その中で注目はデライラ役のジョーダナ・ブリュースターかな。しかし“第2のデミ・ムーア”と呼ばれて心中穏やかではないだろう(笑)ジーク役のジョシュ・ハーネットも使い勝手がありそうだし大化けする可能性もありそうだ。

寄生する「それ」に関しては、私は水に含まれる成分か何かだとばっかり思ってたけど(『水霊』がそうだったから)水分を吸収して成長するものだった。そしてそれは肉体を支配し、仲間を増やしていく。一見、その見分けがつかなくて、急に分かるシーンが1番怖くて面白いかな。見分け方がちゃんとあるところがお約束でもあり笑いドコロかも(笑)

いや〜、だけど映画見たあとでこの映画のチラシ見てびっくりした。(ここからネタバレします)チラシもしくはポスターの写真(ケイシーたち7人が写ってるやつね)、みんな怯えたような顔や驚いた顔をしてるのに、1人だけ満面の笑みを浮かべた人がいるじゃありませんか!これが答えだったのかー!!見る前には全く分からなかったけど、この笑顔はそういう笑顔だったね。その後ろの子の顔も穏やかなのは早くから手下だったからだろうね。こんなところにコトの全貌があろうとは(笑)(ここまで)映画を見た人でチラシを持ってる人はすぐに見てみましょう。

もう1つ。チラシの中に「この映画をご覧頂くと多量の水を欲する現象に襲われる場合がございます。もし、その現象が続く場合には“それ”に寄生されいる可能性がありますので十分にご注意下さい」と書いてある。・・・その通りでございました。あまりの蒸し暑さに脱水症状を起こし、その後マジギレしました。う〜む、恐るべしチラシ!
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

スウィーニー・トッド('97イギリス)-Aug 15.1999
[STORY]
1795年のロンドン。宝石商マンハイムが行方不明になり、彼から宝石を受取る約束をしていたアメリカ人ベン(キャンベル・スコット)は、宝石商が最後に訪れた場所を突き止める。そこはスウィーニー・トッド(ベン・キングスレー)が経営する理髪店だった。トッドは腕の良い理髪師だったが、裕福な客を見つけるとその喉を掻き切り、金品を奪い、尚且つ死体の肉をラベット夫人のミートパイ屋に卸していた・・・。
監督ジョン・シュレシンジャー(『真夜中のカーボーイ』)
−◇−◇−◇−
過去2回も映画化され舞台化もされた作品だけど、私はこれが初めて。この話は事実なのかと思ってたら、いわば都市伝説のようなものらしい。スウィーニー・トッド理髪店もミートパイ屋も実在したみたいだけど。日本でいうところの某ファーストフードでネズミだかミミズだかの肉が使われたとかいう噂と同じようなもんかな(笑)

で、この映画は一体どういうつもりで撮ったんでしょう?あたかも史実であったかのように見せてるのか、それともあくまでも伝説として捉えてるのか、そのあたりが分かり難い。トッドがどうして人を殺し、その肉を食べるようになってしまったのかという理由は尤もらしい。でも床が回転して死体を落としたり、蝋人形館で人を殺したりするシーンはブラックユーモア入ってる感じ。それなら人々がパイを喰うシーンはもっと皮肉ったほうが面白いはずなのにそのあたりはアッサリしている。研究者に肉の鑑定させるところがまた現実的だし。

最もおかしいのは(ネタバレなので色変えましょう)ラストが美しいラブストーリーみたいなところ。夜明けとともに石畳を歩いていく男女(トッドとの格闘でボロボロだけどさ)がフェードアウトしていくのを見て「それ、そういう映画と違ーう!」とツッコミ入れたくなった。キレイにしてどうすんねん(何故か関西弁)かと思えば血まみれ死体やら内臓やらを見せたりしてグログロだったり。でもホラーってわけでもない。(ここまで)どうも最初から最後までチグハグだった。これでは後々伝説として語り継がれる話にならないではないか。

と思ったらこの映画、最初はティム・バートンが撮るはずだったらしい。それなら分かる。バートンならきっとこの映画を最高のブラックコメディにしてくれたはず。毒々しくて滑稽でユーモアのある映画にね。しかも回転椅子や肉ミンチ機械にこだわったりしそう。うぉ〜見たかった!

決してシュレシンジャー監督がダメって訳じゃない。巨匠と呼ばれるくらいの人だし、映像的にはいいんです。ただ大真面目に撮りすぎてて本来の面白さが失われてしまったのがいけない。この映画には向かなかったんじゃないかなぁと思った。
home