Movie Review 2003
◇Movie Index

8Mile('02アメリカ)-May 31.2003
[STORY]
1995年デトロイト郊外。ヒップホップクラブでは、毎週末に独自の歌詞でラップを競うバトルが繰り広げられていた。黒人中心のこの店で、白人ラッパーのジミー・スミス(エミネム)は才能がありながら力を発揮できないでいた。また恋人と別れたことや、母親(キム・ベイシンガー)と幼い妹のことも気がかりで、仲間が申し込んだバトルにも棄権してしまう。
監督カーティス・ハンソン(『ワンダー・ボーイズ』
−◇−◇−◇−
エミネムが歌う本作の主題歌『Lose Yourself』が第75回アカデミー賞のオリジナル主題歌賞を受賞。

エミネムファンではないけれど、この主題歌が耳にずっと残ってたのと、監督がカーティス・ハンソンだったので見に行った。 ラップはどちらかというと好きではないけれど、彼のは聞いてて全然不快にならない、むしろ聞いてて心地のよいテンポとリズムで、 英語が分からなくても語呂の良さがよく分かって面白い。特にクライマックスのラップバトルはとても楽しかった。

このクライマックスからラストまでで十分に楽しめたから良かったけれど、それまでの時間は少々辛かった。彼がラップの腕を上げて次第に成長していく話ではないし(才能は元々あるのだ)、一気にメジャーデビューするほど成功する話でもない。今の最低最悪な生活から一歩でも抜け出すため、悩みを吹っ切るためにバトルにチャレンジするだけなのだ。はっきり申しますと、彼は役者が本職ではないので、悶々と悩む姿から何も読めず、惹き付けらることもなく、「いいから早くバトルに出なさいよ」とイライラするほどだった。出たくても出られない状況に陥る設定だったら良かったんじゃないかなぁとも思ったが、それだと彼のストイックでクールな魅力がなくなったかも・・・。

エミネムの自伝的作品──ではあるそうだが、彼自身の半生を綴った物語ではない。これはあくまでもジミーという男の話だ。けれど、ジミーが大成功を納めずに映画が終わっても、不思議とジミーの行く末を心配する気持ちにはならなかった。きっとエミネム自身の話ではないと分かっていても、どこかでジミーとエミネムを重ね合わせて見ていて、必ずジミーが成功すると確信しているからなのだろう。そう観客が判断すると予測してこういうストーリーにしたのならば、それは正しかったねぇ。かえって大成功で終わったら白けてしまったことだろう。だから私はこのラストシーンが大好きだ。
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マトリックス リローデッド('03アメリカ)-May 24.2003オススメ★
[STORY]
前作『マトリックス』の続き。
72時間後、人類最後の都市ザイオンにマシン軍団センチネルがやってくるという。その前に何とかしなければならない。ネオ(キアヌ・リーヴス)たちは預言者からの言葉により、マトリックス内のすべてのドアへとアクセスできるというキーメーカーなる人物を探すことになる。しかしネオには心配があった。トリニティ(キャリー=アン・モス)がエージェントたちに殺される夢を見たのだ・・・。
監督&脚本ラリー&アンディ・ウォシャウスキー(『マトリックス』)
−◇−◇−◇−
前作は先行ロードショーで見たけど、今回は先々行ロードショーで見てきた。はっきり言って、以下に書くことは大事だと思った。

 ◆前作をもう一度見る
 ◆ザイオン、センチネル、など用語の意味をおさらいしておく(チラシのVOL.2とか)
 ◆できれば『アニマトリックス』を見ておく
 ◆本作の登場人物を確認しておく

これらをすべて怠っていた(というか、なるべく予備知識を入れずに見る戦法を取っていた)私は見事に失敗した。ほとんど理解できてないっす。前作も確かにストーリーを理解できない部分が多かったけど、それでも十分楽しめた。でも本作では、ストーリーが理解できないと面白くない。で、理解できなかったから悔しい〜。悔しいので勉強することにしました。とりあえず前作をもう一度見て、『アニマトリックス』を見ます。話はそれからだ!待ってろよ!(笑)
(というわけで『アニマトリックス』見ました)

アクションやVFXについては、すっげー金掛かってんなー、というのが全編通しての感想だ。とにかくやりたいことをやりまくっている。アニメでしかできないと思ってたことを、実写を交えてやってるんだもん。もう不可能はないんだろうな。『バウンド』の低予算っぷりからここまで来るとは、彼らはアメリカンドリームを手に入れたんだなぁなどと、映画そのものとは関係ないところで感動したりして。

ただし、前作ほどにインパクトのある映像はなかったな。度肝を抜かれたフローモーション撮影も見慣れてしまったし。というか、ネオが強すぎるのよ。だから全然ハラハラしない。で、強すぎる割には相手もすぐに復活して攻撃してくるので、1回の対戦が長い長い。戦い方にそれほどバリエーションもないから、100人ほどに増えたスミス(ヒューゴ・ウィービング)との対戦にはちょっと飽きが入ってしまった。もっと面白いんじゃないかと期待しすぎたせいもあるだろうが。

なので、なおのことストーリーをきちんと理解してこの映画を楽しみたいという気持ちが強くなっている。しっかり勉強して、公開になったら今度は吹替版で見てみるつもりだ。

そうそう、エンドクレジット後に『レボリューションズ』の予告が入ってるので、途中で席を立たないように!
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ギャングスター・ナンバー1('00イギリス=ドイツ)-May 24.2003
[STORY]
ロンドンのナンバー1ギャング(マルコム・マクダウェル)は、かつてのナンバー1、フレディ・メイズ(デビッド・シューリス)が出所するという話を聞いて動揺する。1968年、メイズは最高級品を身に付け、高級車に乗り回す最高の男だった。駆け出しだった若きギャング(ポール・ペダニー)は彼に憧れ、彼の右腕となるまでに成長した。しかしメイズの目の前にカレンという女が現れ、彼は嫉妬するようになる。
監督ポール・マクギガン(『アシッド・ハウス』)
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ペダニーがギャングといえば、つい最近も『キス★キス★バン★バン』という作品があって、その時の彼は良かったんだけど、今回は狂気が前面に出ててダメだったわー。目はイッちゃってるし、顔を歪ませた時の皮膚のたるみに思わず寒気。それだけ上手いってことなんでしょうか。彼が歳を取るとマクダウェルになる、っていうのも頷ける。でも背が縮み過ぎ(笑)

まぁ今回はペダニーよりシューリス目当てだったんですけどね。その彼はスーツ似合わなさ過ぎ(泣)頭がデカイのは知ってたけど、肩幅全然ねーじゃんか。しかも首が長くてなで肩。タモリじゃないけど、“矢印”ってあだ名つけるぞ!それくらい上半身のスタイルが悪かったなぁ。でも指とか仕草はやっぱりセクシーだった。なので良し(いいのかよ)

ストーリーは若いギャングがナンバー1になろうする話で、それ自体に目新しさはない。でも、ナンバー1に対する想いはまさしく恋なのだ。メイズを見る視線のいやらしさ、それに被るマクダウェルのナレーションは思わず笑ってしまうほど。彼に恋人が出来れば激しく嫉妬し、いっそのこと相手が消えればいいと憎悪をたぎらせ、メイズを落とし入れようとする。さらに怒りを敵のギャングを嬲り殺しにすることで解消し、欲しかったものすべてを手に入れることで欲望を満たそうとするわけだ。そんなことをしても結局満たされないって分かっていてもね。 彼が狂えば狂うほどに、欲しいものから遠ざかっていくところが切ない。が、欲望のはけ口である殺人シーンが酷すぎて共感まではできない、というかさせないところがまたこの作品のいいところなのだろう。

相手がグチャグチャにされるシーンは映さない。でもカメラの目線がやられている相手の目そのものなので、まるで見ている自分自身が痛めつけられているかのようで見ていられない。しかも、何度か気を失っては目が覚めて(スクリーンが明るくなったり暗くなったりする)なかなか終わらないのだ。これはキツかった。アイデアとしてはいいと思うんだけど、正直言ってこの映画でこれをやる必要があったのか、それがちょっと疑問だ。
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めぐりあう時間たち('02アメリカ)-May 17.2003
[STORY]
1923年イギリス、リッチモンド。作家ヴァージニア・ウルフ(ニコール・キッドマン)は病気療養のため、夫とともにこの地に移り住んだ。ヴァージニアはちょうど『ダロウェイ夫人』の執筆中であった。
1951年アメリカ、ロサンゼルス。妊娠中の主婦ローラ・ブラウン(ジュリアン・ムーア)はベッドで『ダロウェイ夫人』を読んでいた。今日は夫の誕生日で、息子リッチーとともにケーキを作るが・・・。。
2001年アメリカ、ニューヨーク。編集者のクラリッサ・ヴォーン(メリル・ストリープ)は、友人の作家リチャード(エド・ハリス)の受賞記念パーティーの準備をはじめていた。エイズに冒されたリチャードを訪ねると、彼はクラリッサを「ミセス・ダロウェイ」と呼んだ。
監督スティーブン・ダルドリー(『リトルダンサー』
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第75回アカデミー賞で、実在の作家ヴァージニア・ウルフを演じたキッドマンが主演女優賞を受賞した。ちなみに劇中の彼女の鼻はつけ鼻である。

ヴァージニア・ウルフについては名前しか知らず『ダロウェイ夫人』も読んだことはない・・・と、いつもこれで失敗してるので、とりあえず彼女の経歴だけ頭に入れておいた。で、見に行ったんだけど、やっぱり『ダロウェイ夫人』の内容も知っておくべきだったな。映画でもいいから見ておくべき。あと『オルランド』も映画化されてたね。これもヴァージニア・ウルフを知る上で見ておいて損はないだろう。
(と書いたけど、うちの近所のレンタルショップにはどっちの映画もないのだった・・・)

映画は3つの時代の3人の女性の1日を描いていく。1人を描ききったら次に、というのではなく、3人のエピソードを少しずつ見せていくのだ。しかし、しょっちゅう変わるのに全く戸惑うことがない。3人がどこかで繋がっているからだろうか。それともテンポが素晴らしくいいからだろうか。思いっきり感心した。素晴らしい。でもね、音楽も盛り上がりの一端を担っていたけれど、ほぼひっきりなしに使われていて私には少々煩かった。

ストーリーに関しては、失礼だけど説明過多なハリウッド映画にしては珍しく、分かりにくい表現が多かったのではないかな。彼女たちの表情から読み取らなきゃと必死になった。エキセントリックなヴァージニアや、セリフの多いクラリッサはまだいいんだけど、ローラに関しては難しかったー。表面上は穏やかで寡黙な人だったから。そんな彼女と、夫や息子とのやりとりにはものすごい緊張感が走ってて、私は3人のうちローラが一番印象深かった。主役もムーアだったと思う。キッドマンは頑張ってるんだけど、見ている間ずっと違和感があって「なんだろう?」と疑問に思ってたら、それは喋り方だと気がついた。イギリスの発音とアクセントね。何度も言うが私は英語が全然喋れないけど、彼女の夫やお姉さんが喋る英語の発音と違うことは分かった。そういうところはあまり気にしなかったのかな。

最後に感じたことを書いておく。(ネタバレ)古い時代のヴァージニアやローラは世間の常識に縛られるしかなかった。現代に生きるクラリッサは女性と同棲することもできるし、人工授精で子供を産むこともできた。でも、本当に彼女はレズビアンなんだろうか?本当に愛しているのはリチャードだけだったと思う。でも彼はゲイ。だから自分も彼と同じように同性愛者になることで、彼と繋がっていようとしたんじゃないかな。一見、何不自由ない生活を送るクラリッサもまた、幸せだとは言いきれないのではないかと。(ここまで)なーんて思いました。何度か見てみれば、もっといろんなことが分かってきそうな映画だなあ。
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X-MEN2('03アメリカ)-May 7.2003オススメ★
[STORY]
ホワイトハウスでミュータントによる大統領暗殺未遂事件が発生。ミュータント対策担当官のストライカーはミュータント抹殺しようとする。一方、失われた過去の記憶を取り戻そうとウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)は旅をしていたが、何の成果もなくプロフェッサーX(パトリック・スチュアート)の屋敷へ戻ってくる。そこへストライカー率いる特殊部隊が攻撃を仕掛けてきた!
監督ブライアン・シンガー(『X-メン』
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1作目よりも断然面白かった!というか見事にハマりました。前作はミュータントの位置付けや各キャラクター紹介、ミュータントVSミュータントという単純な図式で繰り広げられていた物語だった。しかし本作では基本情報をすっ飛ばし、新たに登場するミュータントや、ミュータントを抹殺しようとする人間の登場により、物語に厚みが出た。

本作で登場するミュータントのナイトクロウラー、デスストライクは、今までのミュータントとは立場が違う。ナイトクロウラーはミュータントの中でも見た目が人間とかけ離れていて、同じミュータントでさえ一瞬怯むような異形なのである(前作にも出ていたミスティークもそうだけど)そのためサーカス団に身を置いていた。
デスストライクは薬によって人間に操られているミュータントである。薬が切れかけた時の彼女の顔を見逃してはならない。彼らのような境遇のミュータントが、きっと世界中にいるはずなのだ。
そして成長したパイロ(役者は前作と違う)もまた、プロフェッサーXの庇護の元に勉強してきたが、どこかで違和感を覚えながら生活してきた。今回の戦いによって、彼の運命も変わろうとしている。
プロフェッサーXとマグニートーだって、考え方が違うだけで同じミュータントだしね。ホント、こんなに複雑とは思わなかったなぁ。アクションシーンももちろん面白かったけど、私はこういうところにとても惹かれた。

そういえば前作のマグニートーが迫力不足と書いたけど、今回はやってくれた!カリスマ性も発揮して背筋がゾクゾクした。ハル・ベリーも前作より見せ場が多かったのは、やっぱりオスカー効果なのかな。

というわけで、1作目のアルティメット・エディションDVDの購入を決定(笑)次回作も早く見たいー!
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