Movie Review 2002
◇Movie Index

キス★キス★バン★バン('00イギリス)-Dec 28.2002
[STORY]
殺し屋のフィリックス(ステラン・スカルスガルド)は若い弟子のジミー(ポール・ベダニー)に任せて引退を決意する。そして新しい仕事を見つけるが、それは33歳にもなって未だに外に出たことがない男ババ(クリス・ペン)の子守りだった。フィリックスは無理矢理ババを外に連れ出すが、抜けたはずの殺し屋組織が彼の命を奪おうとしていた。
監督&脚本スチュワート・サッグ(『Fast Food』日本未公開)
−◇−◇−◇−
殺し屋稼業のハードボイルド丸出し男が30過ぎの箱入り息子のお守りをすることによって、変わっていくさまを描いたストーリー。冒頭、フィリックスが屋内プールで任務を遂行するシーンがすごい面白かったので「これはイケルかも」と期待を持って見てたんだけど・・・ちょっと失速してしまった。

フィリックスとババの出会いや、フィリックスと恋人との煮え切らない関係はとてもいいのだけれど、殺し屋組織やジミーとの関係の描き方がいまいちだったなぁ。フィリックスを殺そうとする殺し屋たちと、迷いながらもフィリックスを守るジミー。ここらへんの映像にもっとキレがあれば面白かったのに。それとジミーの葛藤をうまく絡ませてあったらな。なんか彼の扱いが中途半端で気の毒だった。でもペダニーは今後も注目の人ですな。ぶっちゃけ好み(笑)

何よりも素晴らしいのはクリス・ペンだ。『ジャック』のロビン・ウィリアムスの何倍も素晴らしい! 見てないけど『アイ・アム・サム』のショーン兄ちゃんよりもいいかもしれない。何より「俺ってウマイでしょ、ふふん」てな イヤミったらさが見えないのがいいですな。フィリックスとのやりとりで1つずつ大人になるための言葉や行動を覚え、 その後、偶然にも女の子をうまく口説いてしまうシーンは秀逸だった。このシーン大好きだわ。

(ここから少しネタバレします) だから、ひょっとしたらこうなってしまうかも?と思っていた展開通りになってしまった時、ショックでこのまま席を立って帰りたくなってしまった。 できれば見たくなかった。分かってたことだし、こうしなきゃ話が進まないことも理解してたけど。それだけ彼に肩入れしてたようだ私は。(ここまで)

そんなわけで好きなところもたくさんあったけど、ダメだなぁってなところもあり、微妙な映画でした。
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スコルピオンの恋まじない('01アメリカ)-Dec 22.2002
[STORY]
1940年ニューヨーク。保険会社の調査員C.W.ブリッグス(ウディ・アレン)は、最近入社してきたリストラ担当重役のベティ=アン・フィッツジェラルド(ヘレン・ハント)と喧嘩ばかりしていた。ところがある日、ナイトクラブで魔術師の実験台に呼ばれた2人は、相思相愛になる催眠術をかけられてしまう。
監督&脚本ウディ・アレン(『おいしい生活』
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ストーリーは前作『おいしい生活』同様に昔のコメディ映画のような懐かしいお話。あー面白かった、でいい映画なのだが、今回はちょっと引っかかってしまった。それはブリッグスという男をアレンが演じていることね。いや、この役は彼以外にはできないとは思うんだけど、そろそろ70歳に手が届きそうな、言っちゃ悪いがおじいちゃんに近い人がですよ、やり手の保険調査員で女性にもモテてしまうというのはどうなの?しかもヘレン・ハントはともかく、シャーリーズ・セロンやエリザベス・バークレー(『ショーガール』のノエミだ)といった若い子までが彼に惹かれてしまうというのは、ちょっとズルイ(笑)ていうかやりたい放題じゃないすか。

そんなところにちょっと呆れて「おいおい」とツッコミながら見てたので、いつもよりは楽しむことはできなかったな。催眠術を掛けられている最中の恍惚とした顔つきや、びっくりして書類をふっ飛ばしてしまう器用な指には笑わせてもらったけれど。それから保険会社の社長役だったダン・エイクロイドも笑わせてくれるのかと期待していたが、笑わせ役はアレンだけだった。そこもちょっと寂しい。
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マイノリティ・リポート('02アメリカ)-Dec 11.2002
[STORY]
2054年のワシントンD.C.では3人の予知能力者“プリコグ”によって殺人事件が未然に防がれていた。犯罪防止局のチーフ、ジョン・アンダートン(トム・クルーズ)は過去に息子を亡くした経験から、犯罪を防ぐことに全てを捧げていた。しかしある時、プリコグが予知した映像にジョンが人を殺す場面が映っていた!ジョンは真相を突き止めるために逃げ出すが・・・。
監督スティーブン・スピルバーグ(『A.I.』
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原作はフィリップ・K・ディックの同名短編小説(『ブレードランナー』の原作でも有名)

実写とCG部分に違和感を与えないためなのか、近未来だからなのか、撮影をヤヌス・カミンスキーが担当してるからなのか、映像が全体的に青みがかったグレーで、粗さが気になった。でも逆にいつものトム君の大スターオーラが抑えられていて、この映画ではちゃんとジョン・アンダートンという男に見えたよ。
ただトム君が主演すると脇役が本当に脇役になっちゃうからね。コリン・ファレル演じる司法省からやってきた男ウィットワーなんてもう少しストーリーやジョンに絡んでくると思ったんだけど、ものすごく中途半端だった。やはり若い男は潰されるのか(なんてな)

というか逃亡シーンは最初の自動車から逃げ出すところは面白かったけど、あとはあまり好きな展開じゃなかった。はっきり言ってジョンが逃げ回るシーンよりも、ジョンたちが犯罪を阻止するシーンのほうが面白かった。逃げるシーンはギャグちっくで逆に笑えたけど、やっぱりもう少しハラハラさせてくれないと。

ストーリーそのものは、犯罪防止局、プリコグ、捜査と確保までのシステム設定を理解できないとちょっとついていくのが大変だ。今でも“少数報告”についてきちんと理解できていないです私。それから、殺人を予知したのにそれを回避したということは、最初から殺人がなかったということになるわけで、そうなると殺人予知はどうなるの?などとパラドックスに陥ったりもした(例のトリックもあとから思い返してようやく理解)元々こういう設定や謎解きは大好きだし考えるのも楽しいので、ジョンのメンタルな部分や逃亡することに焦点を当てるよりも、防止局や予知についてもっと詳しく知りたいなぁと思った。上に書いたように、犯罪を阻止するシーンのほうが面白いと思ったのはそのせいかも。原作を読んだほうがいいのかもしれないな。
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アイリス('01イギリス=アメリカ)-Dec 7.2002
[STORY]
哲学者で作家のアイリス(ジュディ・デンチ)は夫のジョン(ジム・ブロードベンド)と穏やかに暮らしていた。しかしアルツハイマーに蝕まれ、作家活動はおろか喋ることさえ困難になる。そんな彼女を見て、ジョンは40年前2人が出会った頃のことを思い出していた──。あの頃のアイリス(ケイト・ウィンスレット)は才色兼備で周囲の注目の的。一方ジョン(ヒュー・ボナヴィル)は目立たない存在。ジョンはアイリスに一目惚れするが、彼女には複数の恋人がいた。
監督&脚本リチャード・エアー(舞台演出家で劇場用映画監督は初)
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実在のイギリス人作家アイリス・マードックと、夫で作家のジョン・ベイリーの40年間を描いた作品。原作はジョン・ベイリーが妻の死後に綴ったもの。また、現在のジョンを演じたジム・ブロードベンドが第74回アカデミー賞助演男優賞を受賞している。

仲睦まじい老夫婦の画、というのにものすごく弱いので、映画が始まった時からずっと泣きっぱなし。特に夫が妻の介護をするというのはねえ。ジョンは本当にアイリスを愛してるわけよ。40年前のアイリスの恋人たちに嫉妬し、今の呆けたアイリスをなじるシーンは胸を突かれ、「明日も次の日も生きていこう。これ以上近づけないほど1つになろう」と彼女に言い聞かせるシーンではもうスクリーンが見れないほどに泣いた。

40年前のシーンでは、ブロードベンドとボナヴィルのそっくりぶりに笑いつつ、デンチとウィンスレットは似てないので多少の違和感を覚えた。ウィンスレットの存在感や演技力はさすがなんだけど、聡明さや髪型、男性遍歴などのせいか『キャリントン』のエマ・トンプソンとカブってちょっとイヤな感じ。あそこまで過剰ではないけど、一歩間違えると不快になりそうな演技かも。そんなところもデンチとウィンスレットが重ならなかったところかな。
そっくりといえばジョンの恋敵モーリスが、年老いた姿でも登場するんだけど、これもそっくりなのね。そうしたら何と本当の親子だった!(笑)

ただ、私はアイリス・マードックについて全然知識もないし著作も読んだことがないので、際立ったエピソードを繋いでいく形式のこの映画では、彼女とジョンのことがきちんと理解はできなかった。結婚に至るまでの描写はもう少し順を追って欲しかったし、アルツハイマーの進行も早すぎて時間の経過が読めずに困った。1時間半ちょっとの映画なんだけど、2時間あっても良かったのでは。

ストーリーとは全然関係ないんだけど・・・冒頭、濁った川で泳ぐシーンがあって、若いほうのアイリスの胸元のビロビロしたものは一体なんだろう?と思ってたら(濁ってるからよく見えなかったのよ)全裸だったんですね。それだけなんですけどね。はい。
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ハリー・ポッターと秘密の部屋('02イギリス=アメリカ)-Dec 5.2002
[STORY]
ホグワーツ魔法学校で1年を過ごしたハリー(ダニエル・ラドクリフ)は再びダーズリー家に戻ってきた。しかし一家からはいじめられ、突然現れた屋敷しもべ妖精ドビーからは学校に戻ってはならないと警告される。ドビーのせいでハリーは監禁されてしまうが、親友のロン(ルパート・グリント)に助け出される。ようやく新学期が始まる学校へ戻ることができたが、また新しい事件に巻き込まれる。
監督クリス・コロンバス(『ハリー・ポッターと賢者の石』
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今回もまたバッチリ予習をしてから映画に臨んだ。前作よりも内容が盛りだくさんなだけに、どこをどう切るのか気になったけど、まぁ妥当なところだね。長さを感じさせない展開になっていたし。ただハリーが間違えてダイアゴン横丁ではなくノクターン横丁に辿り着いてしまったシーンは意味のないものになっていたな。

逆にハリーとロンが空飛ぶ車で学校へ行くシーンやクィディッチのシーンは迫力があって、これは本では体験できない面白さだ。特にクィディッチのシーンは、まさかあんな狭いところを箒で駆け抜けるとは思わなかったし、暴走したブラッジャーがあそこまで狂暴とは思わなかった。まるで自分も試合に出てるような錯覚を起こすほど。前作は人物と背景の映像がうまく噛み合ってなくて違和感があったけど、本作の試合シーンはよくできていると思った。
・・・でも前から思ってたんだけど、クィディッチのルール、これってどうなの?(これは映画とは関係ないのでこっちに書くことにします)

本作で登場する新しいキャラクター、ケネス・ブラナー演じるロックハート先生は小説ほどウザくなくてOK。でもちょっと年齢が上すぎて生徒たちが夢中になるのは「?」だったので、ヒュー・グラントで見てみたかった気もする。マルフォイの父ちゃんもこれからもどんどん横槍を入れてきそうなイヤな奴ぶりで良かった。
不満なのは女の子たちだ。嘆きのマートル役の子はダニエル・ラドクリフがおさげ髪したような子じゃないか。もっとブサイクだと思ってたのに。そしてロンの妹ジニーも、地味なのはいいが、地味すぎて存在を忘れてしまいそうになった(というかもう既にちゃんと顔を思い出せない)前作に比べて「この役はこの人以外にいない!」というインパクトの強さがなく寂しかった。

ハリーもロンも声変わり途中だったようで、セリフや叫び声が苦しそうだった。次回作の叫び声はもう野太いのだろうね。ハーマイオニーもすでにおでこにシワがないか?ダンブルドア校長役のリチャード・ハリスは亡くなってしまったし、次回以降どうなっちゃうのかね。キャストが代わったら人気もなくなってしまいそうな予感(『ネバー・エンディング・ストーリー第2章』のようになったらマズイ)

エンドクレジットはやたら長いんだけど、最後にオチ映像があるので席を立たないように。
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