Movie Review 2001
◇Movie Index

レクイエム・フォー・ドリーム('00アメリカ)-Jul 7.2001オススメ★
[STORY]
母親のサラ(エレン・バースティン)の家からテレビを持ち出しては麻薬を買う金を作っているハリー(ジャレット・レト)。ある時、ハリーは親友のタイロンから麻薬の売人になろうと誘われる。恋人マリオン(ジェニファー・コネリー)と店を持ちたいと思っていたハリーは承諾し、金を儲けるようになる。一方、サラはテレビ番組から出演依頼が舞い込み、薬を使った急激なダイエットを始める。
監督&脚本ダーレン・アロノフスキー(『π』
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いや、参りました。『π』の監督だし、バースティンがオスカーにノミネートした作品ということもあったけど、そんなに期待しないで見に行ったのね。それがもう絶句ですよ。まさかここまですごいとは。いや、よくぞやってくれた、という感じ。

というのも、今まで私が見た映画では(『トレインスポッティング』 『グリッドロック』 『ラスベガスをやっつけろ』など)麻薬中毒な人って、禁断症状が出て苦しい時もあるけど、仕事もロクにしないのに運がいいのかたいして不幸にもならずにお気楽に生きててさ、しかもそういう人でなしな生き方がカッコ良く見えちゃったりするんだな。ごく普通に働いて生きてるのが非常にダッサく見えるという。映画としては面白いものもあったけど、反面、許せないという怒りも沸いてたわけだ。作ってるほうがこういう生き方を肯定してるのかどうか分からないけど。

しかしこの作品では麻薬中毒になった人々の悲惨な末路を、これ以上ないくらいに見せつけてくれる。しかも彼らはただ何となくクスリ打ってダラダラ生きてるのではなく、それぞれ夢を持っている。その夢のためにクスリに手を出す。一番手っ取り早くて一番リスクの大きいやり方だが。そして夢を掴みそうになって転落していく。もう這い上がることができないのに、まだ気がつかない。その気がつかない様子が恐ろしくもあり可哀相でもあり、自業自得とはいえ救ってやりたいと思うほどだったね。これ見たら麻薬に手を出そうなんて絶対に考えないはず。

映像に関しては、あの早い動きや細かいカット割りに不快感を感じることは全くなかったし、ほぼひっきりなしに音楽も掛かってるのに邪魔だと思わなかった。こういうのって下手するとミュージック・クリップみたいになっちゃうし「スタイリッシュさを出したかったのねー。ふーん。でもウザイ!」ってなわけになっちゃいそう。でもこの作品ではそういうテクニックがストーリーを表現するため、見せるための手段になってるからウザイと思わないんだろう。それに映像だけでなく、役者への演出も怠ってないところがいい。とにかくバースティンがすごかった!そしてコネリーのラストシーンも。

ふと思ったんだけど、マリオンが桟橋に立ってるシーンだけど、『ダーク・シティ』にも同じようなシーンがあったような気がする。わざと?
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A.I.('01アメリカ)-Jul 3.2001
[STORY]
ほとんどの陸地が海に沈んだ未来。人間の代りにロボットが仕事をこなす時代に、ついに愛するという感情をインプットできるロボットが誕生した。少年型ロボットのデイビッド(ハーレイ・ジョエル・オスメント)は、不治の病に冒された息子を持つヘンリーとモニカ(フランシス・オーコナー)夫妻の元に試験的にやってきた。デイビッドはモニカを愛するようインプットされ、彼女を母として愛するようになるが、夫妻の息子が奇跡的に回復してしまう。
監督&脚本スティーブン・スピルバーグ(『ロスト・ワールド』
−◇−◇−◇−
故スタンリー・キューブリックの企画を引継ぎ、スピルバーグ自ら脚本も手がけた作品(原作はブライアン・オールディスの短編『スーパートイズ』)
キューブリックと同じく完成までその内容は明かされることはなく、撮影期間68日と短期間で撮ったそうだ。どうしても2001年中に公開したかったんだろうな。っていうか、2001年に見ることに意義があるような。そんで30年後くらいにもう1回見てみたいね(それまで生きていられるかのぅゴホゴホ(笑))

実は最初にデイビッドが夫妻の家に来た時から泣いてました(笑)内容が自分の琴線に触れまくりでしたね。監督は自分に弟妹ができた時に感じた気持ちを投影したそうだが、自分も弟ができた時、ずいぶん嫉妬したし我慢したのね。でも、そんな昔を思い出して泣くなんて何だか無性に恥ずかしくて「騙されんなよ自分!」って何度も言い聞かせながら見てたんだけど(笑)やっぱり勝てなかった。それどころか、監督にシンパシーさえ(ぐはっ)ミイラ取りがミイラになったっつうか。←ちょっと違う

そこで泣き疲れてしまい、デイビッドのブルーフェアリー探しの旅からは、あまり気持ちが入らなかった。特に集中力の切れる残り30分あたりからは、まだ続くの?って思うほどで非常に辛いものがあった。セリフも理屈っぽく説明的すぎたのが気になったな。あと、ある登場キャラが以前見た某映画(ネタバレ)『ミッション・トゥ・マーズ』の宇宙人と変わらないじゃないの!なぜああいうフォルムになるのだ?ていうか、そもそも奴らは宇宙人なの?ロボットなの?天下のILMがあんなショボイもの作るなんて。それでオッケイなのかよ監督よぉ!(ここまで)を思い出させるもので、同じような脱力感を味わったりして。
後半の淡々としたトーンはそれ自体は好みなのに、あの前半を見てしまうとね。あと、妙に子供っぽいシーンがあったかと思えば、キューブリックを意識した小難しさや冷たさを表現したりして、ちぐはぐで雑な印象を受けた。できることなら撮り直しして欲しいとさえ思ってる。

物語の解釈についてはそれこそ何万通りもあると思うのね。もう1回見てみたらまた考えが変わりそうだし、その時の体調とかでも違った感想が出てきそう(笑)ま、それはどんな映画にも言えることだけど。実は私はまだ自分の答えが出せていません。というわけで、とりあえずここで逃げます。じゃ!←卑怯
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ポエトリー、セックス('00オーストラリア)-Jun 30.2001
[STORY]
女子大生ミッキーが失踪した。女探偵ジル(スージー・ポーター)は両親からの依頼を受け、彼女の捜索に乗り出した。しかし手がかりが見付からない。そんな時、彼女の大学で詩の講義を担当している教官のダイアナ(ケリー・マクギリス)と知り合い、彼女と肉体関係を持つようになってしまう。
監督サマンサ・ラング(『女と女と井戸の中』
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前作は2人の女に焦点を当てることに集中していたようで、それなりには緊張感が伝わってきたが、今回は登場人物が増えたせいなのか(笑)どこもかしこも弛緩しまくりで緊張感のかけらもなかった。こういうの見ちゃうと、前作の評価ももっと酷く書き換えたくなっちゃうねえ。

女子大生が失踪し、主人公の女探偵は調査するうちに関係者と恋に落ち、事件の核心に迫ったせいで何者かに脅迫される・・・と、女探偵が恋する相手が女であるということを除けば、サスペンスのパターンを1つずつ踏んでいくんだけど、ダメなところを数え上げればきりがない。

まず女探偵ジルが仕事してるように見えない(笑)気が付くとダイアナと裸で寝そべっている。モノローグの中でジルが「今日は休み」って言うんだけど「今日も休みかい!」とツッコミを入れたくなります。
そして失踪したミッキーが実は別の顔を持っていた!という設定らしいのだが、その裏と表をきちんと描いていないため、ミッキーという女の子の人物像がおぼろげで、そのせいか事件そのものにあまり関心を持てなくなっていった。お父さんの使い方も間違っていませんか?
さらにジルが脅迫電話を受けたりするシーンがあるが、もー全然怖くないです(苦笑)ほかにもまだまだあるけど、ネタバレにもなっちゃうし、今日はこれぐらいにしといたる!(笑)

ポーターのルックスはまさにジルそのものを表してるようでいい。顔が小さいから身体も華奢なのかと思ってたら、脱ぐと肉!って感じでちょっとびっくり。マクギリスももちろん肉!でした。むっちむち。
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ギフト('00アメリカ)-Jun 27.2001
[STORY]
アニー(ケイト・ブランシェット)には、人の運命が見えてしまう能力があった。それを使って占い師として生計を立てていたが、夫のドニー(キアヌ・リーヴス)に虐待されている妻ヴァレリー(ヒラリー・スワンク)の相談に乗っていたことがドニーにバレてしまい、アニーは脅され続けていた。そんな中、富豪の娘ジェシカが失踪し、アニーは婚約者のウェイン(グレッグ・キニア)から能力を使ってジェシカを探して欲しいと頼まれる。
監督サム・ライミ(『シンプル・プラン』
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脚本は俳優のビリー・ボブ・ソーントンが友人のトム・エファーソンと共同で執筆した。だが彼自身は今回出演していない。

天から授けられた能力<ギフト>を持つ未亡人のアニー。3人の子供を育てながら、占いで生計を立てている。こんな薄幸な役どころをブランシェットが見事に演じている。彼女に特殊な能力があるという設定が決して奇抜なものではなく、素直に受け入れられた。彼女が見えるという他人の運命というのがすごく怖くて、これに耐えているなんて強いと思うし、力を信じてもらえない辛さもよく分かった。それらすべてにおいて彼女に同情し、同調し、涙すらしてしまった。
今まで『エリザベス』『理想の結婚』を見ても、何も感じなかったっていうか、演技の上手い人だというのは分かるけど、伝わるものはないなぁと思ってたのね(逆に下手でも気持ちが伝わってくる時もある)でも今回はしっかり伝わりました。

そんなアニーが女子大生の失踪事件に巻き込まれる。そしてドニーが容疑者として浮かび上がる。でもコイツが“噛ませ犬”だってことは、観客には分かりきってる。だってキアヌだもん(笑)そのためにこの役をあてがわれたのかなー(そこまでは考え過ぎ?)
この人もブラッド・ピットと同じで、顔は正統派のくせに変わったことやりたがるんだけど、それがことごとく失敗してるいい例ですね(ヒドイ)ピットはそういう選択をしても意外に成功しているが、キアヌは勘が鈍いっつーか要するに大根なので(さらにヒドイ)もうちょっと考えたほうがいいのでは(エラソー)
ま、そんなことはどうでもよくて(いいのかよっ)本当に怪しいやつが何人か出てくるんですね。普段はこういうの当てるのは得意なんだけど、今回は最後まで絞れなかった。一瞬疑った時もあったんだけどねー。

かなり気持ちが入って見た作品だったけど、ラストがちょっとなぁ。で、あの人やあの人はどうなったのよ?
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青い夢の女('01フランス)-Jun 24.2001
[STORY]
精神科医のデュラン(ジャン=ユーグ・アングラード)は、患者のオルガ(エレーヌ・ドゥ・フジュロール)の悩みを聞くたびに睡魔に襲われていた。その日もまたオルガの話を聞くうちについ眠ってしまい、目覚めると彼女が絞殺死体となっていた!デュランは必死に死体を隠すが、そこに政界のフィクサーと言われるオルガの夫マックスがやってきてしまう。
監督ジャン=ジャック・ベネックス(『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』)
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眠っている間に自分が患者を殺してしまったのかも?!とあたふたする精神科医デュランは、幼い頃のトラウマ持ちで医者のくせに自分もまた精神科医にかかっている。バツイチで今は画家の恋人がいるが、今回の事件を誤魔化したために破局しそうになる。そんな状況の中、さらにもう1つの殺人が起こり、デュランにとってまさに四面楚歌な状況となる。さて、彼はこのあとどうなってしまうのか?!

・・・と、ある日を境に窮地に陥った男が取る行動を、上から見下ろすように滑稽に描いていく。しかし見下ろしていたかと思えば、いつのまにか彼の心の内を覗き込むような描写もある。ストーリーそのものもブラックコメディだったりサスペンスだったりといろんな要素が詰めこまれている。

映像は青を基調とした印象的な色使いがされていて、綺麗ですごく私の好み。また、クライマックスでのデュランの混乱ぶりを表現した細かい編集は、今までのシーンがいかに計算し尽くして撮影されたものかを証明するように、何の繋がりもないように思えた場面が次々と符合していく。ここを見て私は鳥肌が立ちました!ベネックス、すげえよ!って(笑)

でも脚本が不満なんだな。誰が・どうして・殺した――というあたりの伝え方がすべて会話だけで済まされており、そのセリフもまたずいぶんと説明口調なのだ。なんかそこだけ素人くさいと感じた。事件がきちんと解決するのはいいことだけど、面白くはない。

死体を隠したり運ぶシーンは、昨年のフランス映画祭の予告で流された時にも爆笑の渦だったが、本編もやっぱり面白かった(ちょっと『犬、走る('98日)』入ってるけど)
生前はあんなに綺麗な人でも、死んでしまえばああいう扱いをされてしまうのね、とちょっと気の毒になりました。
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