Movie Review 2000
◇Movie Index

スリーピー・ホロウ('99アメリカ)-Mar 1.2000
[STORY]
1799年ニューヨーク郊外にある村、スリーピー・ホロウで起きた連続殺人事件。被害者の首が切り落とされ、その首が持ち去られるという事件だ。NY市警のイカボット(ジョニー・デップ)は捜査のために村を訪れる。そして事件の犯人が伝説の首なし騎士だと聞かされる。
監督ティム・バートン(『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』)
−◇−◇−◇−
おどろおどろしい森と屋敷、枯れた大木にガイコツやカボチャと、まるで『ナイトメア〜』実写版のようですごく好きな映像だ。衣装やイカボットが使う科学捜査グッズも面白いし、ストーリー抜きにしても見てるだけで満足できる。けど、そのストーリーというか描きかたが普通すぎちゃったような気がする。たぶん今までなら、首なし騎士に対しても愛情注いでたと思うんだが、そういうのが感じられなくて残念だ。心のない、ただ単に悪者って感じでさ。私は下のネタバレ部分に勝手に解釈したけど(笑)

さらにイカボットとクリスティーナ・リッチ演じるカトリーナとの「恋」となるとこれまたそこに愛情が感じられない。どう見てもお互い好きあってるように見えなかった。気持ちが篭ってない。
イカボットというキャラクター自体も私としてはちょっと物足りない。過去にトラウマがあるという以外にはあまり特徴もないし(ルックスが近頃のデップより奇麗で安心したが)かえって少年イカボットのほうが作り物っぽくて良かった(笑)リッチも普通に綺麗じゃないか。『バッファロー'66』の時のようなキモカワイイのを期待していたのに(ってそういう期待をするほうが間違ってる?)

というわけで、今回は首なし騎士役のクリストファー・ウォーケンでしょう!ステキ過ぎる(笑)メインの話は殺人事件だが、ワタシ的にはこういう話だと思った。(以下ネタバレっす)兵隊に追われた騎士が森で出会った美少女姉妹を見初めるも殺されてしまう。復活した首なし騎士は、ちょっと成長し過ぎたものの(笑)かつての美少女の熟女に頼まれて殺人を繰り返す。ようやく仕事を終えたところで首を返してくれたので、念願通り、切り株の中に熟女をお持ち帰りしてめでたしめでたし――違う?(ここまで)
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Sweet Sweet Ghost('00日本)-Feb 27.2000
[STORY]
長崎の離島・大島町の高校生、剛(大地泰仁)と拓郎(金子統昭)は、剛の叔父(村上淳)に誘われて幽霊屋敷に行って幽霊の写真を撮が、何も写っていなかった。叔父は諦めきれずに写真を撮り続けている。ある時、クラスに東京から転校生がやってきた。剛の隣に座ることになった英世(中島ちあき)と仲良くなった剛は彼女を幽霊屋敷に誘う。
監督・芳田秀明(初監督作)
−◇−◇−◇−
試写会のお誘いありがとうございました>明石さん

幽霊屋敷にお化けが出る噂、転校生英世の「秘密」、トランクを持った謎の男――これらの不可思議なことと、剛の恋、拓郎の両親の離婚といった彼ら自身の悩みを織り交ぜ、どこかファンタジックに仕上げた物語だった。

家族でそうめんを食べたり、縁側に寝転んだり、といったオーソドックスながら懐かしい光景や、英世の家の窓に銀玉撃ったり、授業中に彼女の顔を盗み見たりするシーンは(カメラの角度が剛の視点という感じでいい)かわいくて微笑ましくていとおしくなる。撮りたい映像を撮りました!という素直で爽やかな気持ちが伝わってきてすごく好感を持った。

しかし奇術シーンが私にはダメだった。それまでは初々しかったのに、急に学芸会っぽくなっちゃって一気に醒めた。いや、冷めたというべきかな。それ以前はじりじりと焼けるような暑さだとか、日陰の中や夜の涼しさだとか、自然の空気が伝わってきてたのに、急に冷房の効いた部屋に連れて来られたような違和感があって・・・(ま、実際あのホールは涼しんだろうが)これがテントでサーカスのように見せたら、などと一瞬思ったが、それじゃああまりにも作りすぎでかえって恥ずかしかったか(笑)そうじゃなくても、もうちょっと自然の温度が感じられるところでやってほしかったな。

あえてシーンとシーンの繋ぎに流れをつけず、説明的にもせず、一見バラバラに思えるエピソードを繋げていってるのが面白かったし、すごく丁寧に慎重にやってるな、というのが分かった。しかし後半はそれが大雑把になってしまった気がする。(ここからネタバレ)特に拓郎が死んでしまうところ。見てるこちらが理解する隙さえ与えず、どんどん進められてしまってかなり戸惑った。さらに最後の写真。ここで初めて拓郎も英世のことが・・・というのが分かるのに、こちらが切ない気持ちになる余裕もなくエンディングへ。昇華できずに取り残されたような気分になった。はっ!つまりそれがGhost?(←オチつけるなよ(笑)<自分)(ここまで)
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カリスマ('00日本)-Feb 26.2000
[STORY]
刑事の藪池(役所広司)は人質を取って立て篭もった犯人から「世界の法則を回復せよ」というメモを渡される。犯人は人質を殺し、犯人もまた死んだ。責任を取らされ休職にされた藪池はそのまま森へ入った。そこで1本の木を見つけ、木の世話をする桐山(池内博之)という男と出会う。その木はカリスマといい藪池もその木の世話をすることになった。
監督&脚本・黒沢清(『CURE』
−◇−◇−◇−
初日1回目なのに観客が3人くらいしかいなかった。なぜだ・・・(笑)

色々と思うことはあるんだけど、書くのはためらわれる。というか、文章にしたら映画を見た瞬間に感じたことと違うことを書いてしまいそう。もともと映画自体が説明的でないので、改めて鹿爪らしく書くと違う方向に行ってしまうんじゃないかと思う。そんでもって書いてると「分かったつもりになってるフリするなよ」とどこからか声が聞こえてくるような気がするんだ(電波な人間なのか?(笑)<自分)

なので、内容にはあまり触れないところをちょっと書こう。
『CURE』もそうだったけど、人を殺すシーンに全く熱が入ってないのが逆に怖い。普通は殺されるシーンにショッキングな音楽つけて、もっとアップにしたりアングルに凝ったりして撮るのに、俯瞰だったりカメラ固定のままだったりして、まるで虫を殺すかのようにあっさりと殺ってしまう。殺す側にも殺される側にも表情がない。特にこの映画では(ネタバレなので色変えます)植林する人達がボッコンボッコン頭叩いてるシーンが機械的で恐ろしかった。なのに目を離せなかった・・・。(ここまで)殺人シーンを見るたび空虚な気持ちになっていく。

そして黒沢監督のドラマ『降霊』でも印象的だった森の映し方。カリスマが植わっている野っ原はあまりいいと思わないけど、廃虚と化した病院の窓の外に見える緑が不気味に綺麗で吸い込まれる。背景ばかり見てしまって、その前にいる役者たちをぜんぜん見なかった(笑)特に薮池と未亡人が座って話してる後ろで、窓の上から水が滴ってきて、その後ろに濃い緑が見えるシーン。ピタッとはまっていた。

キャストについては監督の好みが出てる。洞口さんがあんな格好で森の中をぷらぷらと歩いてるシーンを見ると、つい『ドレミファ娘〜』を思い出してしまう。まるで「不思議の国のアリス」みたい。全然変わらないな〜この人。それと役所&風吹というと『降霊』で夫婦だったし、他監督作だが『金融腐食列島・呪縛』でも夫婦。今回は夫婦じゃないけど、2人が一緒に歩いてるシーンなど見てるとやっぱり夫婦に見えてしまう。好きなコンビだけどちょっとマンネリかな。
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理想の結婚('99イギリス)-Feb 22.2000
[STORY]
1895年ロンドン。政治家のロバート(ジェレミー・ノーサム)と妻ガードルード(ケイト・ブランシェット)は理想の夫婦として社交界を賑わせていた。しかしロバートの過去を知るチーヴリー夫人(ジュリアン・ムーア)がやってきて、密かに彼を恐喝してきた。ロバートは友人のアーサー(ルパート・エヴェレット)に相談するが、実はチーヴリー夫人はアーサーの元婚約者で・・・。
監督&脚本オリヴァー・パーカー(『オセロ』)
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原作はオスカー・ワイルドの「理想の夫」(彼自身を映画化した『オスカー・ワイルド』は見た)

普段ならこの時代のファッションや、まどろっこしい「しきたり」などを面白く見られるんだけど、この作品ではあまり楽しめなかった。解説等にほとんど目を通してなかったので、人物名とその関係を掴むのに時間が掛かっちゃったこともあり、会話はいまいちテンポに乗りきれず、笑えるところもあったんだけど、それはホントにクライマックスだけだった。しかも面白いのはアーサーの父親であって、メインキャラクターではない。

つまり登場人物たちが私にとってはそれほど魅力的でなかったからみたい。まずは男性陣。エヴェレットはあの低迷期の垂れ下がった情けない顔つきと比べると数段若返っていて(復活した『ベストフレンズウェディング』の時より肌のツヤがいい気がする)なで肩だがコスチュームが非常によく似合っている。しかしキャラクター的にはもうちょっと何か欲しいところ。
私の好きなノーサムは、今回ははっきり言って誰が演じてもいいような役だったのでは。しかもすでに中年太りしてる気がする〜(泣)これも非常に魅力に欠ける。

女性陣のブランシェットはオーストラリア人、ムーアとロバートの妹メイベル役のミニー・ドライヴァーはアメリカ人でイギリス人女優ではない。なぜこういうキャスティングにしたのか疑問だが、しかしブランシェットは『オスカーとルシンダ』や『エリザベス』ですでに立派に英国人やってるので今回ももちろんよし!コスチュームはもちろん、髪型が上品ですごく綺麗だ。
ムーアはアメリカから渡ってきたオバチャンのように見えなくもないが、ネチネチと男達を責める下品な女とすればこんなもんかな。もっと毒があっても良かったくらい。
そして最後にドライヴァー・・・何を言いたいか分かると思うけど、完全にミスキャスト!なーんでこの人がこれに出てるわけ?しかもアーサーと結婚よっ?!納得いかないっつーの!(嫉妬か?(笑)<自分)顔の表情が豊かでコミカルだとは思うけど、違和感ありすぎるんだよ、この人が出てくるだけで。せっかくの豪華なセットもコスチュームが、彼女が出てきた瞬間に台無し。原作のメイベルがどういう設定なのか分からないけど、こんなんじゃないだろ。ドライヴァーのことあまり好きではないからかもしれないけど、イギリス映画には出ないで下さい、マジで。
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うずまき('00日本)-Feb 19.2000
[STORY]
黒渦町に住む桐絵(初音映莉子)のボーイフレンド秀一(フィーファン)は最近何かに脅えていた。また秀一の父・敏夫(大杉漣)は「うずまき」のものをコレクションしており、学校では生徒が螺旋階段から落ちて死んだ。さらに次々と「うずまき」にまつわる怪現象が起こっていった。
監督Higuchinsky(初監督作)
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マイナスという評価ができるならしてるような映画だ。プラス部分があってもマイナスのほうがはるかに大きくてどうしようもない。途中で何度も「カンベンしてよ」と思ったことか(笑)でも、ある意味飽きなかったので良しとすべき、か?(笑)

原作は読んでないけど連作短編なんだよね。そのエピソードをつまんで繋ぎ合わせ、最後にそれを纏めようともせずにブッツリと終わらせている。黒渦町で起こった出来事の原因が明かにあるようだったが、それが語られないまま終わってしまった(だから気になるんだよ。原作読まなきゃなー)思わず時間切れ?もしくは予算切れ?と思った(笑)

結局、この監督はヴィジュアル重視で各シーンを自己満足的なカッコイイ(と自分では思ってる)映像を撮れれば良かったんでしょう、と思わざるを得ない。ま、わざわざ長野県上田市でロケしたらしい田舎町の風景はいいかな。グリーンがかった映像も綺麗と言えなくもない。
ただ、ミョ〜な遊び心っていうのかな、でんでんが演じる警官が登場すると、その派出所の壁には「でんでんのサイン」が貼ってあったりする。そんなのがチョコチョコと画面に登場するわけ。これがもうウザいを通り越して薄ら寒いんだわ。小ネタ以下!(笑)

さらに見てるこっちが赤面してしまうような学芸会レベルの演技が辛い。初音映莉子のブリッとしたわざとらしさは鼻につくし、フィーファンはきちんと日本語喋ってくれ!と思う(もしくは日本語喋れる人に代わってくれ)さらに佐伯日菜子や阿部サダヲが何故彼らと同級生なのかー?!しかもこれまた演技がお寒い(笑)ま、漣ちゃん(目玉ぐるぐるシーンは高田純次にそっくりだった(笑))も含めて彼らはこういうもんだと割り切った上で演じてるように思えるが、ひとり生真面目そうにやってる高橋恵子がとても気の毒だった。
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