Movie Review 1997
◇Movie Index

CURE('97日本)-Dec 29.1997
[STORY]
奇妙な連続殺人事件が発生する。それぞれの事件の加害者はすぐ逮捕されるが、その犯行手口が全て共通しているのだ。担当刑事の高部(役所広司)は心理学者の佐久間(うじきつよし)と共に捜査を始める。そんな時、記憶喪失の男(萩原聖人)が捜査線上に浮かんだ。
監督・黒沢清(『スウィートホーム』)
−◇−◇−◇−
何も入っていない洗濯機の回る音が恐い。恐さと苛立たしさで、神経がおかしくなりそうになる(このアイデアはいい)だけど他はそれほど恐いと思わなかった。普通の人間に潜む狂気を描きたかったのかもしれないけど、その“普通さ”があまり感じられなかった。なるべくしてなったという感じ。

萩原聖人は『マークスの山』より断然良くて驚いた。ちょっと人を小馬鹿にしたような生意気さがピッタリ。彼と会話をするだけで自分がおかしくなりそうだ。役所広司は安定した演技だけど目新しさはなかったな。どんな役やっても役所広司は役所広司であって、まわりが評価するほどすごい役者とも思えないんだけどね、私には。1番納得いかないのがうじきつよし。最初に、心理学者ぽくないなぁと思ってたら・・・やっぱりダメだったか。これは脚本の問題もあるだろうけど、もうちょっと何かを感じさせる人に演ってもらいたかった。この役にもう少し奥行きがあれば、もっと面白い作品になったと思う。
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スリング・ブレイド('96アメリカ)-Dec 27.1997オススメ★
[STORY]
子供の頃、母親とその不倫相手を殺して病院に入れられていた障害者カール(ビリー・ボブ・ソーントン)が25年ぶりに退院し、帰郷した。しかし父親には会ってもらえず、行き場を失う。そんな時、母親と2人暮らしの少年フランク(ルーカス・ブラック)と出会い、彼の家に居候することになった。
監督&脚本もビリー・ボブ・ソーントン(長編デビュー)
−◇−◇−◇−
不思議な映画だった。冒頭、カールが過去の殺人を告白するシーンは、思わず想像して身震いしてしまうし、カールと少年との交流には涙が流れた。また、とても悲惨なんだけど見終わった後にすうっと心が透明になる。まるでカールとフランクの好きな池のように、カールのまっすぐな瞳のように(なんてポエマーになっちゃうのよこれが)何とも言えない気持ちになった。カールの唸るような喋り方も、最初は違和感があるけれど、フランクがそれを「心地良い」と言うように、見ているこっちもだんだん同じように感じてくる。

ただ少年の母親がどういう気持ちなのか、また母親の恋人の行動にも疑問はある(酔っ払うと暴れるっていう以外のところ)それにバーガーショップの店員役にジム・ジャームッシュが出てきた時には「おいおい(苦笑)」と思った。友情出演なんだろうけど、それまで感じていたリアルさから急にこれが“作り物”だということを自覚させられたような気がした。

余談だけどカールのズボン丈や内股気味な所はフォレスト・ガンプに通じるものがあるね。このスタイルは一様にそれらしく見えるもんだ。
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私家版('96フランス)-Dec 23.1997
[STORY]
編集者のエドワード卿(テレンス・スタンプ)は作家のニコラ(ダニエル・メズギッシュ)からある原稿を見せられ驚愕する。それは30年前にエドワード卿の恋人が自殺した原因がニコラにあると明かされていたからだ。エドワード卿は憎しみを募らせ、密かに復讐を始めた・・・。
監督ベルナール・ラップ(初監督作)
−◇−◇−◇−
私好みの上品なフレンチミステリを見た。同じフレンチミステリでも前に見た『見覚えのある他人』よりずっと面白かった。ミステリと言うには謎らしい謎もなく、淡々としていて盛り上がるシーンなど1つもないのだが何故か目が離せない。それはやはりT・スタンプの存在感だろう。多分もう60歳近いんだろうけど、きっちりと着込んだスーツ姿に気品と色気のようなものを感じる。30年前の恋人の姪が彼に恋するのだがそれも肯ける。私だって惚れちゃう(笑)『プリシラ』で演じた往年の大女優みたいなドラッグクイーンとはまた違った魅力だ。

よく考えるとご都合主義じゃないかと思う箇所もあるが1時間半ちょっとにまとめたところでうまくそれをカバーしている。が、もうちょっと詳しく知りたい箇所があったりもして一長一短か。
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ノーマ・ジーンとマリリン('96アメリカ)-Dec 20.1997
[STORY]
女優を夢見るノーマ・ジーン(アシュレイ・ジャッド)は、俳優やプロデューサー達と関係を結びながらスターになろうとする。髪を金髪に染め、整形してマリリン・モンロー(ミラ・ソルヴィーノ)として生まれ変わったが、いつも孤独で酒と薬に溺れていた。
監督ティム・フェイウェル(?)
−◇−◇−◇−
2人の女優が1人を演じるということでとても楽しみにしていたけど、その効果があったか?というとそれほどでもない。1人が2役として演じても全然構わなかったんじゃないかな〜という程度。またさまざまなな本や番組、映画でモンローの私生活や過去が語り尽くされているだけに、特に新鮮味が感じられなかった。新しい衝撃の事実!なんていうのもなかったし。ケネディとの関係や、謎とされている最期についてもなにもなし。生きている時の彼女のみにスポットを当てたんだろうけど、さまざまなエピソードを繋げただけという感じが否めない。数々の男性関係についてもサラリとしていたように思う。

女優に関しては、どちらかというとソルヴィーノよりA・ジャッドの方が似てるかな。ソルヴィーノは歌はうまいけど表情がモノマネだった。あと、普段彼女はあげて寄せてるんだね(何を?)でろ〜んとしてて非常にガックリしました(だから何が?!)
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フル・モンティ('97イギリス)-Dec 20.1997オススメ★
[STORY]
イギリス北部のシェフィールド。鉄鉱場が閉鎖されて半年、失業者のガズ(ロバート・カーライル)は妻に離婚されて養育費も払えず、最愛の息子とも会えなくなりそうになっていた。そんな時、町に男性ストリップの巡回ショーがやってきて女性たちが熱狂的になるのを見たガズは、自分たちもこれで儲けようと企む。
監督ピーター・カッタネオ(?)
−◇−◇−◇−
最初から最後まで笑いっぱなし。これも英国映画でしかも失業者を扱ったもの。オープニングを見ていて「あれ?私まだ『ブラス』を見てるのか?」と思うシーンがあった。知りたい方は続けて見てみよう(笑)

フルモンティとは英語のスラングで、意味は“すっぽんぽん”つまり丸裸になってしまうというわけだ。しかしその丸裸になる男6人は決してナイスバディではない(まあまあOKなのは1人だけだ)太ってお腹の出た者や老人まで。そんな彼らが賢明に服を脱いで踊るのが最高に面白い。ハリウッド映画のドタバタとは違う、愛らしい笑いがある。また『ブラス』もそうなんだけど決して大成功でお金ガッポガポってわけじゃない。アメリカだったらここですぐに成功して大金持ちになっちゃったりするが、この先は?とちょっと不安にさせるのがイギリス的なのかも。だけど久々に私の大ヒットだ。
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ブラス!('96イギリス)-Dec 20.1997オススメ★
[STORY]
ヨークシャーにある炭坑が閉鎖に追い込まれていた。炭坑夫たちのバンドの指揮者ダニー(ピート・ポスルスウェイト)以外は皆、バンドよりも閉鎖のことで頭がいっぱい。そんな時、バンドに加入したグロリアと、若い炭坑夫アンディ(ユアン・マクレガー)が恋仲になる。しかしこのグロリアは・・・。
監督&脚本マーク・ハーマン(?)
−◇−◇−◇−
小さな町の炭坑で暮らす人々。音楽が好きで酒が好きで仲間を愛している。でも失業は困るしお金もない。描いているのはそういう素朴な人々、だけど彼らが奏でる音楽は、力強くて元気が出る。マクレガーが主役なのかな?と思っていたがそれほどなくて、どちらかというと指揮者ダニーとその息子家族が中心の話だが、親子で同じ歓びを分かち合うって、とても羨ましくてジーンとくる。

演奏シーンが4回ほどで1曲まるまる演奏するのだが、それがぜんぜん飽きないし最後の曲は鳥肌が立ち、またその後のスピーチは感動してポロポロ泣いた。音楽を知らない私でもこれだけ入れたのだから、ブラバン経験者はもっと強く感じるかもしれない。
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