Movie Review 1998
◇Movie Index

ダーク・シティ('97アメリカ)-Dec 11.1998
[STORY]
見知らぬ場所で目覚めたマードック(ルーファス・シーウェル)は自分の記憶が全部ないことに気が付く。シュレーバー(キーファー・サザーランド)という男から電話があり、記憶を消したのは自分だという。また彼は刑事バムステッド(ウィリアム・ハート)らに娼婦殺人事件の犯人として指名手配されていた。
監督アレックス・プロイヤス(『クロウ−飛翔伝説』)
−◇−◇−◇−
実は見る気が全くなかった映画だったんだけど(サザーランドとジェニファー・コネリーだったから)予告とTVで評論家たちが誉めてたのを見て見る気になったのだった。でも見て良かった。役者で判断しちゃダメだね。

街の雰囲気やそれが変化するところがすんごくいい。異邦人と呼ばれる謎の生命体が地底で街や人を変化させるんだけど、ビルが伸びたり縮んだりするシーンに感動した。街の全体像が映し出されたところの映像も「おぉ!」と声を出しそうになったし。街は『ロストチルドレン』ぽい感じがした。あとマードックが目覚めたところなんかは『記憶の扉』を思い出した(この映画も主人公は最初に記憶がなかったしね)地下の異邦人たちがわんさか集まって念じるシーンは禅寺っぽいと思ったりして(笑)すごくこういうの好きなんだけど、贅沢言えばうまく纏め過ぎてるというかな。アンバランスなようでいてピチッと統一されてるから、見ているこっちは怖さや不安を感じなくなってしまう。マードック役のシーウェルの顔が歪んでて不気味っつーか不安になったけど(笑)独特の「揺らぎ」というか、もっと三半規管を狂わしてくれても良かったな。

あと、結局娼婦殺しとか、その事件に関わって狂っちゃった刑事とかは一体何だったんでしょう?と思った。死体につけられたドリームキャストみたいなマーク(笑)が現すものは分かったけど、何となく消化不良。ストーリー的にもっと練って欲しかった。
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アウト・オブ・サイト('98アメリカ)-Nov 28.1998
[STORY]
拳銃を使わずに200もの銀行強盗をしていたジャック(ジョージ・クルーニー)が逮捕され投獄された。うまく脱獄した彼だったが、逃亡しようとした時に出会った捜査官カレン(ジェニファー・ロペス)に恋をしてしまった。
監督スティーブン・ソダーバーグ(『セックスと嘘とビデオテープ』)
−◇−◇−◇−
原作はエルモア・レナード。レナードといえば『ジャッキー・ブラウン』があったけど、小説自体全く読んでなかったし、すごく冗長でツライ作品だった。そういえば『ゲット・ショーティ』もレナード作品と知らなくて見てたんだった(笑)これも途中で睡魔に襲われた気がする。レナード作品はリアルな登場人物たちとその会話の面白さがいいらしいけど、映画ではその会話がツライ。原作読まなきゃいけないんだろうけど、でも映画は映画だからねぇ。じゃあ原作読んでないヤツは映画見ちゃいけないのか!って逆ギレしそう(笑)

でもね『ジャッキー〜』よりこの作品の方が面白いと思った。途中でやっぱり睡魔がちょこっと襲ってきたけれども、登場人物たちの会話シーンを見て「あ、これがレナードタッチというヤツなのかな?」って何となく分かった。特にジャックとカレンが車のトランクの中で交わす会話を見て思った。小粋な会話をセクシーな男女が世界一狭い危険な密室で・・・なんて最高のシチュエーションかもね(照)

それに『ジャッキー〜』の時もそうだったけど、時間が前後する。最初はよく分からなかったけど、出来事がパズルのように嵌め込まれていく過程がいい。始まりはジャックがビルから出てきてネクタイを外し、地面にそれを叩き付けるシーン。どうしたんだろう?この人。と思う間もなく強盗を働くジャック。そして忘れた頃に何故彼がネクタイを叩き付けたかが明らかになるのだ。また、美しい雪の降る夜景をバックにジャックとカレンが会話を楽しむシーンと、もう1つのムフ〜なシーンが同時に展開されてウットリする。いいなぁうまいなぁ。ラストのヒネりも好きだ。でも私が頭悪いからなんだけど、登場人物の名前と役柄を覚えるまでに大変だったのと、そのパズルのような展開を理解するまでに時間が掛かってしまった。

『ジャッキー〜』に出演していたマイケル・キートンとサミュエル・L・ジャクソンがそれぞれFBIと犯罪者に扮してちょこっと登場したので「おお!」と膝打ちしてしまった。
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トゥルーマン・ショウ('98アメリカ)-Nov 22.1998
[STORY]
小さな島シーヘブンに住むトゥルーマン(ジム・キャリー)は保険会社に勤め、看護婦の妻メリル(ローラ・リニー)と幸せに暮らしている普通の男。しかしある時、彼の目の前にライトが降ってきたことから次第に疑問を持っていく。
監督ピーター・ウィアー(『いまを生きる』)
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実は町全部が巨大なセットで、太陽も月もニセモノ(月にディレクターのクリストフ(演じるはエド・ハリス)らスタッフがいる)両親も奥さんも友達もみんな役者さんで、トゥルーマンだけが何も知らない。24時間視聴者に自分が見られているってどんな気持ちだろう。ある時、トゥルーマンは自分中心に何かが起きていることを察知する。でも周りの人間は誤魔化し、彼に「疲れてるのね」とか「病気かもしれない」と言う。まぁ普通だったらそうでしょう。ただの自意識過剰だったり精神を病んでいたりするわけで本当に自分中心な訳がない。だけどこの場合は本当。病気ではない。

でもトゥルーマンが右往左往するシーンを見ていると、やっぱりキャリー自身を思ってしまう(ホントはそういう風に思っちゃいけないんだけどね〜)人を笑わせることばかりを考えて、私生活でも強迫観念にかられて精神を病んでしまい、専任のセラピーを雇ったりパートナーと別れちゃったり一時期大変だったらしい。実際の彼をもちろん見てないから分からないけれど、こうだったかもしれない、と妙にトゥルーマンとダブってしまった。まぁそれだけじゃない。トゥルーマンの純真無垢さとキャリーの持ち味がすごく良く合っていて(今回はあのイヤ〜なわざとらしさがほとんどないし)いいなぁ〜と思ったら、もともとこの作品はキャリーのために書かれたものではないらしい。キャスティングを考えた人エライ!

外の世界に出ようとするトゥルーマンを阻止するべくクリストフは厳しい指示を出す。そこまでするか!と怒りさえ覚えるけど、日本にもこういうえげつない番組けっこうあるもんね。特にお笑いの人を痛めつけることに関してはクリストフ以上かも。そしてそういう番組を見てしまう視聴者が必ずいることを忘れてはいけないんだな。この映画の中でも視聴者がたくさんいてトゥルーマンの行動を逐一見ているし、私たち観客だって最近はちょっとやそっとのストーリーやアクションでは喜ばない。もっと凄いものを、というニーズに答えるべくその裏で絶対無理してる人達がいるんだから、彼らだけを責められないなぁ。難しいよ。

とまぁグチャグチャ書きましたが、単純にコメディとして見ても途中まではけっこう面白い。このままコメディとして突き進んでも良かったとも思う。後半から倫理を問うようになってしまったおかげで上のように考えることになってしまったんだけど。どっちがいいかも悩むところだな。設定は面白いからね。実は脚本は『ガタカ』のアンドリュー・ニコルが担当している。この人のユニークさは今後も注目だ。
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プリーチング('97イギリス)-Nov 21.1998
[STORY]
ロンドン。保守派の国会議員ハーディングは、モラル粛清キャンペーンとしてSMクラブ摘発に力を入れていた。そこで証拠を掴もうと、アシスタントのピーター(クリスチャン・アンホルト)をクラブに潜入させる。ピーターはそこでNYから来たSMの女王タニア(グィネヴィア・ターナー)の奴隷になってしまう。
監督&脚本スチュワート・アーバン(?)
−◇−◇−◇−
初っ端からボディピアスとか縛りとか電流流したりとかで、もう見てるこっちが痛い!そんなのがホントにいいのか?と思ってたけど、見慣れてくると平気なもんだね(笑)SMな世界に入りたいとも思わないしどこがいいのかも分かんないけど、こういう人もいるんだなぁ〜とか、別にやっててもOKだ!という風に理解できるようになった。自分は着れないけどスタイルいい人がボンテージ着るとやっぱりカッコイイしね。ファッションや小道具見るだけでもいい。

実際のところ、SMシーンも確かに見物だけど軸はラブストーリーと風刺だ。女王様タニアがピーターと出会ってだんだん可愛くなっていくなぁと思った。でも子供の頃やノーマルだった時のタニアのモノローグが出たりするんだけど、結局どうしてSMの世界に入っちゃったんだか、ちゃんと説明されてないのが残念。知りたかった。ラブストーリーといえばもう1つあって、糾弾する側の議員ハーディングとその秘書の恋があるわけ。で、おまけに自分たちもSMのケがあることに気がつくという風刺付き。だけどどうせならタニアたちと一緒になってそっちの世界に入っちゃってももっと面白かったんじゃないかな。タニアに恋するピーターも、タニアは好きだしSMの世界も理解するけど、やっぱり自分がそういう倒錯した世界にハマッていくのかというとそうじゃないのだ。

風刺といえばもう1つあって、ハーディングはタニアたちを訴え裁判となる。裁判所にタニアたちSM集団がボンテージで集まる。一方、裁判所にはあの音楽家みたいなカツラに貴族っぽい服、白いタイツの裁判官たちがいるわけ。イギリスでは裁判所でそういう格好してる人たちがいる、ってことを知らなければ、どっちもどっちでしょ?(笑)あの、バグパイプ吹く人たちだってチェックのスカート履いてるんだし。まぁここでは人に苦痛を与えてはいけないというカトリックの訓えに反しているから訴えてるんだけど、服装の上ではとやかく言われる筋合いないかも、って思った。
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ニルヴァーナ('96イタリア=フランス)-Nov 19.1998
[STORY]
2050年。ゲーム・プログラマーのジミー(クリスファ−・ランバ−ド)は、1年前に失踪した恋人リザ(エマニュエル・セイナ−)が忘れられず、クリスマス発売予定のゲームソフト“ニルヴァーナ”の作業もはかどらない。そんな時“ニルヴァーナ”の主役キャラ、ソロ(ディエゴ・アバタントゥオーノ)が、コンピュータ・ウイルスに感染し人格を持ってしまった。自分を消して欲しいというソロの願いを叶えるため、ジミーはマラケシュへと旅立った。
監督ガブリエレ・サルヴァトレス(『エ−ゲ海の天使』)
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『ブレラン』とか『トータルリコール』とか『フィフス・エレメント』とかそういう映画を思い出しながら見た。年末の街の雰囲気は『ストレンジ・デイズ』にも似てるかな。でもハリウッド製とは違うヨーロピアンテイストに溢れてて『ロスト・チルドレン』も思い出してみたり。50年後は進化してるようでしてないような微妙な感じ。車にバーコードがついてるけどそれはちょっと古いよ。身体にいろいろ埋め込んだりする技術はかなり進んでるようだけど見てるこっちが痛くなる。ハッキングするシーンはCGバリバリ使うのかと思いきやジミーが部屋の中を歩いてデータを消す設定でこれはナイスアイデアだ。ゲーム会社の名前が「オコサマスター」でしかも日系企業らしいとはね。オコチャマスターのほうがさらにバカちっくでいいじゃないかなどとアホなことを考えたりして。インドも中国も日本もごっちゃになった勘違い文化を衣装やセットに盛り込んでいて面白い。そんな漢字はないぞという字が書いてあったりするが模様やデザインとして見るといいんだろう。もしかしたら50年後にはアジア全体が融合されてこんな風になっているかも。それにごっちゃにはなっているけど妙に纏まりが良くなっているからかえってそれを狙ったのかもしれないな。衣装担当はアルマーニだけどどこらへんがそうなのかは疎いので良く分かりません。でも登場する3人の女性の衣装がそれぞれにいい。ハッカーであるナイマの衣装だって何気ないけどやっぱりかっこいい。エンドロールにはJ・P・ゴルチエやROMEO GIGLIの名前もあったから協力してるのかな。一応ゲームの中は色がモノクロだったり一部カラーだったりしていてジミーのいる世界と分けているようだけど1度ゲームの中がフルカラーになった時にはひょっとしてこっちが現実かもしれないと『匣の中の失楽』と『匣の中』を最近読了したものだからそれが浮かんで消えたり。とまあ映画そのものに集中できずにいろんなことを考えてしまった。時々睡魔にも襲われたりしてね。最後はちょっと悲しいような切ない気持ちになるけれど何となくダラダラしていて映画の中で止め処もなく降っていた雪のような映画。ちょうど読点の1つもないこの文章のようなそんな作品でした。
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