Movie Review 1998
◇Movie Index

L.A.コンフィデンシャル('97アメリカ)-May 7.1998オススメ★
[STORY]
1950年代のL.A.深夜、コーヒーショップで惨殺された6人の男女。事件の担当になったのはジャック(ケビン・スペイシー)、エド(ガイ・ピアーズ)、バド(ラッセル・クロウ)の3人の刑事だ。彼らはこの事件をきっかけに変わっていく。そしてその事件の陰には娼婦リン(キム・ベイシンガー)がいた。
監督カーティス・ハンソン(『ゆりかごを揺らす手』)
−◇−◇−◇−
2時間18分という長さなのに無駄なシーンがない、というよりも1つ1つきちんと台詞を読んでいかないとこんがらがるような内容かもしれない。主演以外の名前を覚えたり、いくつも起きる事件と事件の繋がりをしっかり覚えておかないといけない。しかしシド・バド・エドって同じような名前を並べないで欲しいね(苦笑)

主演のピアーズは『プリシラ』でABBAのアレ(笑)を大事に持っていたあの兄ちゃんだ。彼とクロウ、そして彼らの上司役のジェームズ・クロムウェル@豚のために踊った農夫(笑)の、刑事としての正義や汚さをうまく演じていた。クレジットの1番最初に書かれているスペイシーは今回それほどでもない。ただ彼の場合はあのインチキそうな目をしているだけで得してるような気がする(笑)そしてむさ苦しい刑事たちの中での紅一点ベイシンガーは、賞を取るほどの演技をしているとは思えないけど、長い金髪に赤い唇、柔らかなドレス姿で登場するだけで画面に釘付けになる。とても40歳超えてるとは思えない。その存在感が良かったのかな。

宣伝にあるようなラストの衝撃はないけれど、しっかりしたストーリーで十分楽しめる映画だ。あの長い原作を綺麗に纏めたという脚色力もすごいと思うのね。『タイタニック』がなければもっと話題になってただろうに。

小説の感想はこちら
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

ガタカ('97アメリカ)-May 5.1998
[STORY]
劣勢遺伝子を除いて人工出産されるのが当り前の未来。自然出産のビンセント(イーサン・ホーク)は社会の「不適格者」だったが、宇宙飛行士になりたい一心で、事故で両足を失った「適格者」ジェローム(ジュード・ロウ)と契約し、彼の指紋・血液・髪の毛などを提供してもらいながら、超エリート企業ガタカに入社する。
監督&脚本アンドリュー・ニコル(元CMディレクター)
−◇−◇−◇−
もっと宇宙がメインの映画かと思ったら、遺伝子重視の世界の恐ろしさとか兄弟の葛藤とかにウェイトが占められていたように思う。ガタカで起こる殺人事件もイーサンとユマ・サーマンの恋も私にとってはかなりオマケ。車椅子のジェロームの苦悩も伝わらなかったし。

面白かったのはイーサン演じる「不適格者」ビンセントの几帳面なこと!毎朝たぶん2時間くらい掛けてるんじゃないか?身支度に(笑)体毛が落ちないように身体を擦って、髭剃って爪切って髪の毛固めて出掛ける。ガタカに入館する際には右手中指の血を採られて即検査(もちろんビンセントはジェロームの血液を指に仕込んでいる(笑))尿検査やら心音やら検査ばっかり。検査をするとジェロームの顔写真が出るのだが、どう見たって目の前のビンセントとは顔が違う。でも誰も気づかない(なぜなら「誰も顔なんて見てない」からなんだって。検査結果は絶対正しいからか?)「これもわざと?」と、その前に見た『十二夜』を唐突に思い出したりして(笑)

ビンセントの正体がバレそうになるシーンにはめちゃめちゃドキドキしたけど、上に書いたオマケな設定やシーンで面白さがちょっと減った。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

十二夜('96イギリス)-May 5.1998オススメ★
[STORY]
船に乗っていた双子の兄・セバスチャンと妹・ヴァイオラ(イモジェン・スタッブス)は、突然の嵐により離れ離れになってしまう。岸に流れ着いたヴァイオラは、セザリオの名前で男に化けオーシーノ侯爵に仕える。オーシーノは、伯爵令嬢のオリヴィア(ヘレナ・ボナム・カーター)を愛しており、セザリオを使いに出して告白しようとするが、オリヴィアはセザリオに一目惚れしてしまう。
監督トレバー・ナン(舞台監督)
−◇−◇−◇−
シェイクスピアは詳しくないけれど、コメディの場合、誰かが誰かに片思いしていてそれが引き起こす騒動を面白おかしく描いているようだ。以前、ケネス・ブラナーの『から騒ぎ』を見たのだけれど、同じような展開なのにこっちはつまらなかったな〜。役者もヘタだしブラナーは大袈裟だし元妻トンプソンも鼻に付いた。それに比べたら本作はかなり面白い。

人物の説明だけでこのページが終わってしまいそうなので簡単に説明するが、メインは男装したヴァイオラ(=セザリオ)は主人のオーシーノが好きで、オーシーノは令嬢オリヴィアが好きで、オリヴィアは女と知らずにヴァイオラを好きになってしまうという奇妙な三角関係。そこにオリヴィアの執事や騎士や死んだと思われていたセバスチャンが絡んでくる。オリヴィアはかなりモテるんだけど、私はカーターの潰れた顔があまり好きではないので納得できなかった(笑)で、この物語の語り手らしき道化の男フェステが登場する。ベン・キングスレー演じるこの役は最初からすべてお見通しという感じ。ヴァイオラが男装していることもなにもかも。いや〜歌がうまくてびっくりした。

1番面白いのは嫌みな執事を騙す場面。ここは本当に爆笑モノ。黄色い靴下がよくお似合いです(笑)そしてある意味面白いのが、セバスチャンとヴァイオラがそっくりで誰も見分けがつかないという(設定な)こと。見ていて明らかに違う顔(似せてはいるけど)だし男と女なのに、登場人物みな間違えるんだ。「わざと?」とツッコミ入れたくなるくらい(笑)男と女では一卵性は生まれないんだけどね。シェイクスピアの時代には信じられてたのかな。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

ビヨンド・サイレンス('96ドイツ)-May 4.1998
[STORY]
両親が聾唖者ながら、健常者として生まれた少女ララ(タティアーナ・トゥリープ)は、叔母の影響でクラリネットに興味を持ち、その才能を開花する。成長したララ(シルビー・テステュー)は音大に入るべく練習を重ねるが、父が理解を示してくれない。
監督&脚本カロリーヌ・リンク(デビュー作)
−◇−◇−◇−
両親の耳代わりとなって手話の通訳をしたり音の説明をする、トゥリープ演じるララのおしゃまで可愛いところがとても良かった。しかも手話もとても流暢で、彼らが本当の親子に見えた(両親役は2人とも聾者の俳優だ)そして彼女が出てくるだけで画面に活気があった。

映画が50分を過ぎた頃、テステュー演じる成長したララが登場した・・・ガッカリした。髪と目の色以外似てないのもそうだけれど、少女の時のような可憐さや明るさがあまりなく、ぼんやりとしてて雰囲気が暗いのだ。それだけ大人になった、と言えばそうなんだけど。だからそこからのストーリー展開が遅く感じるようになった。ララの妹のほうが可愛いんだなぁこれがまた。

でも、頑固で音楽に理解のない父とララとの壁が氷解する様はとても感動的。口から発する言葉でなく、顔と手で表現する言葉は静かで美しいと思った。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

バタフライ・キス('95イギリス)-May 3.1998オススメ★
[STORY]
北イングランド。ハイウェイ沿いのガソリンスタンドを訪ねてはジュディスという名の女を捜す1人の女ユーニス(アマンダ・プラマー)彼女が去った後には女性店員の死体が残されている。あるスタンドでミリアム(サスキア・リーヴス)という店員にも同じ質問をする。ミリアムはそんなユーニスに惹かれる。
監督マイケル・ウィンターボトム(『GO NOW』
−◇−◇−◇−
映画が始まってすぐ「この映画、私は好きだ!」と思った。グレイ掛かった荒い画面。殺伐とした道路を、おかしなファッションで歩くユーニス。最初の台詞は「Look at me!(あたしを見て!)」たったそれだけでピン!ときた。そして物語が進むうちにやっぱり私の勘は正しかったなぁと思った。

神様に自分の存在を気付いてもらいたくて、GSの店員や行きずりの男を殺すユーニス。ボディピアスをし全身を鎖で自らを縛り17個のタトゥをし、自分は罪深い人間だと戒める。何かに救いを求めていながら、全てを拒絶するような彼女の存在感に圧倒された。彼女の舌足らずなズルズルした喋り方が、私にはとても心地良く感じた。そしてもう1人の女ミリアムは、難聴で祖母の介護をしている普通よりさらに狭い世界しか知らない女。そんな彼女がユーニスに出会って初めて本当の世界を知る。ユーニスを理解し、彼女を救おうとする。しかし行動を共にするうちにミリアムの中でも何かが変わっていくのだ。女と女。同性同士だからこそ何かギリギリの緊張感がある気がする。男と女ならもっと甘い物語だったかもしれない。

ボロボロ泣くような映画じゃないんだけど(1滴も涙をこぼしてません)ラストの儚さと美しさもたまらなくいいのだ。『GO NOW』より好き。ウィンターボトムはいいなぁ。でも『日陰のふたり』はやっぱり見る気がしないんだな(笑)
home