Movie Review 1999
◇Movie Index

海賊版=BOOTLEG FILM('99日本)-Dec 30.1999
[STORY]
北海道の町を、ヤクザ(柄本明)と刑事(椎名桔平)が車で移動していた。刑事の元妻であり、ヤクザの愛人だった女が死んでしまい、その葬式のためだった。
監督&脚本・小林政広(『CLOSING TIME』)
−◇−◇−◇−
海賊版【かいぞくばん】外国の著作物を著作権者に無断で複製販売したもの(広辞苑より)

何故このタイトルをつけたのかということを念頭に置いて見なくちゃいけない作品だと思う。いかにも予算が足りない(ていうかホントにないんだろうけど)風を装い、画面は白黒、吹替の声は映像とズレまくり、登場人物も極端に少ない。このタイトルをつけることで、あらゆる面ことからの逃げ道にできるんじゃないかな。でもやるんだったらとことん洒落として使わなきゃいけないと思う。この作品ではそれがすごく中途半端だ。

何しろストーリーがかったるい。ヤクザと刑事、2人の会話が延々と続くのは予想通りなのでそれは構わないけど、どうしてもっと飽きないようにできなかったんだろう。74分しかないくせに長く感じてしまった。2人の職業、関係、何故この町を走ってるか、といったことがその会話から少しずつ分かるようになるが、それがあまりにも説明的。わざとらしくって白ける。観客は、ふとした会話から彼らのいきさつを感じ取ることで面白いと思えるのに、それがないので全然面白くない。

また、この2人に絡む若いカップルとのシーンももっと面白くできたはずなのに、この人達が出てきた意味あんの?と問い掛けたくなるほど。さらにストーリーはどんどん破綻していき(意図的なんだろうが)最後は「ちゃんちゃん」っていうような締め。最近それほど酷い作品を見てなかったけど、久しぶりに「何じゃこりゃ?」って感じで新鮮ではあったけどねえ。既存の映画のパロディを散りばめ、海賊版を作り上げた意図は何となく汲み取れるが、製作者と出演者だけ分かってればいい、というか「オレたちのやってること面白いでしょ?これが分かる人こそ通だよね」って言われてるみたいでちょっと腹立たしい。でもぜーんぜん通じゃないので分かりませんでしたっ!(←やけっぱち)

えーと良かったのはシネマ下北沢に初めて行けて良かったな〜ってことかな。狭いけどシートはいいし、手作りっぽい内装でまた行きたくなるような映画館でした。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

ラスベガスをやっつけろ('98アメリカ)-Dec 24.1999
[STORY]
スポーツ記者のラウル・デューク(ジョニー・デップ)と彼の弁護士ドクター・ゴンゾー(ベニチオ・デル・トロ)の2人はバイクレースの取材のためラスベガスに向かった。しかし車の中でもホテルでも常にドラッグを手放さず、取材どころではなかった。
監督&脚本テリー・ギリアム(『未来世紀ブラジル』)
−◇−◇−◇−
タイトル通り『ラスベガスにあるホテルの一室をやっつけ』てました(原題は『FEAR AND LOATHING IN LAS VEGAS』だけど)でも、やっつけたほうもダメージでかくて、ボコボコにされながらも「今日はこれくらいにしといたる」って威張るような状態だった。とにかくドラッグがなきゃ何もできない2人を延々見せられる。最初は真面目にちゃんと見てたんだけど、こっちも同じようにヤル気なくして手足投げ出してダラ〜っとした状態で見てしまった。もう、ほんっとにどうしょもないんだもん(笑)

この作品の時代背景については不勉強なんだけど、1971年はアメリカにとって最低な年だったという。ベトナム戦争も終わらず、アメリカンドリームも消え、不安と失望の世の中。何かにすがるとすればそれはドラッグで、快楽と現実逃避と惰性のために使いまくる2人。素面な時が1秒たりともなく、常に幻覚を見続けることで目の前にあるものを直視できないでいる。映画は不安や恐れを直接表現してはいないが、彼らの言動からそれは何となく感じるし、イヤなことから逃げてるんだってことは分かる。

しかし、最初から最後までそのダメっぷりを正そうともせず、どうしてこうなってしまったのかという尤らしい理由もつけない。そこがこの作品のいいところだと思う。最初は幻覚シーンに嫌悪感があったけど、こっちまでラリってきたのかな(笑)慣れちゃった。すべてが怪獣に見えるというのは理解できないが、ホテルの派手な絨毯の模様がニョロニョロ動くシーンは酒飲んでもなるもんね(え?)思わず「分かる分かる」って頷いてしまった。

今回のデップはまぁ特殊な役ではあるけど、いつもの大袈裟な怪演ぶりはさほど感じられなかった。ガニ股歩きも大人しいもの。びっくりなのはベニチオ・デル・トロ。『ユージュアル・サスペクツ』でしか彼を見てないけど、あのヒョロっとしたチンピラがこんなデブのおっさんになってるとはね。あの出っ腹に感動した。またむさ苦しい中で、ほんの息抜き程度にキャメロン・ディアスやクリスティーナ・リッチも出ているが、ホントどうでもいい(笑)
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

海の上のピアニスト('99アメリカ=イタリア)-Dec 23.1999
[STORY]
豪華客船内に捨てられた赤ん坊がいた。彼はその年であるナインティーン・ハンドレッドと名付けられた――成長したナインティーン・ハンドレッド(ティム・ロス)はピアニストとして毎晩船の中で演奏していて、1度も船を降りたことはなかった・・・。
監督&脚本ジュゼッペ・トルナトーレ(『ニュー・シネマ・パラダイス』)
−◇−◇−◇−
天才ピアニストの伝説を、彼の親友だったトランペッター、マックスが語っていく回想形式のストーリー。このマックス役のプルート・テイラー・ヴィンスが私はダメでした。何故なら眼球の動きがまるで『御法度』の崔さん状態で、これが気になって気になってあんまりセリフが入ってこなかったんだよね。申し訳ないけど集中力を欠いてしまった。1度気になっちゃうともうダメなんだよ。

それだけじゃない。ナインティーン・ハンドレッドのことを語る上で一貫性がなく、ぼやけている。彼が最後まで貫いた「船の上で生涯を過ごす」という生き方を語る上で、彼の才能や恋の話が出るならまだしも、流れが悪いせいか「才能」「恋」「生き方」とバラバラに見えてしまった。そうしてこっちが眉をひそめていると、さらに興ざめなシーンへと続いていく。

(ここからネタバレ)廃船の中でマックスがナインティーン・ハンドレッドをレコードを掛け、呼びつづける。ここで彼の遺骸か遺品でも見つかるのだろうと思ったら、本人登場でビックリしたさ。しかもタキシード姿だよ。3年もどうやって生活してたんだよ。もしかして幽霊かも、と今度は思ったけどそうじゃなかった(笑)しかも本人に陸に上がれない理由を言わせるなっつーの。マックスやほかの人物たちが、彼の偉業から想像して語り継いでこそ、原題の「1900の伝説」になるのに。監督はきっとマックスと彼の会話シーンが、1番伝えたかったことだろうし、船の爆破もどうしてもやりたかったんだろう。それがよく分かるだけに、こちらとしては複雑な心境だ。(ここまで)

とまぁ不満がいっぱいではあったんだけど、私が1番好きなシーンは冒頭。船から“彼女”を見つけて叫んだと同時にバーン!と登場するあの存在と、見つけた彼の表情。ここで身体がビリビリッとなった。ここが1番感動した。
home