Movie Review 2001
◇Movie Index

スナッチ('00イギリス)-Mar 14.2001
[STORY]
賭博好きな宝石泥棒フランキー(ベニチオ・デル・トロ)がベルギーで86カラットのダイヤを盗み、NYへ運ぶ途中でロンドンのノミ屋へ立ち寄ろうとする。一方、ノミ屋の賭けボクシングのプロモーターをしているターキッシュは、ボクサーを流浪民のミッキー(ブラッド・ピット)に倒され、ノミ屋のオーナーからミッキーを試合に出すよう命令される。
監督ガイ・リッチー(『ロック、ストック&トゥースモーキング・バレルズ』
−◇−◇−◇−
前作同様、パズル的要素を含んだクライム・ムービー。前作は登場人物も少なかったし、ストーリーもシンプルだったので混乱しなかったが、本作は人も多いし話も複雑(そうに見えるんだな、最初は)で、ついていくのが大変だった。中盤になってようやく話が見えてきて、登場人物の関係も分かってくるので、それまで辛抱できればこっちのものだ。辛抱しなきゃいけない映画ってどうよ?って気もするが(笑)

結論から言うと、ストーリーは前作のほうが好きだった。あとパズルをはめ込んでいく仮定と仕上がりもね。気持ちいいくらいにピタッピタッとオチがついて関心したもの。本作は何て言うのかなぁ、パズルのピースを一旦違う場所に置いて(見てるほうも明らかに違うだろ、ってところに置いてる。つまり確信犯)またはめ直してるように見えて、そこがちょっと気持ち悪い。すべての人物にオチをつけなきゃならないから(見てるこっちもそれを求めているけど)こういう展開になるのは仕方ないけど、もう少しシンプルにできなかったのかな。ちょっとしつこいんじゃない?と思う箇所があった。

しかし映像はこっちのほうが凝ってたし、キャラクターとそれぞれのオチの付け方もこっちのが面白かった。特にオープニングの回転しながらキャラクター紹介をするところがカッコイイ(これ見て石井克人の『PARTY7』のオープニングを思い出したが、似てるとは思ってない)
ピットは主役じゃなくて、脇でハジけた役のほうが私は好きだな。あと、ところどころで知ってる人がチョイ役で出てるんだよね。ゴールディとユエン・ブレンナーは分かったけど、何度もミッキーと一緒に登場してるのに全く気づかなかったのがジェイソン・フレミング。ほかにも誰か出てたかもしれない。気になる。

見終わったあとに気がついたんだけど、この映画って人を撃つ映像はあっても、撃たれる映像がほとんどなかったんだよね。そんで死んじゃったら即モノ扱い。とても軽い。そこがこの映画がマンガチックでありコントっぽく見えるところなのかもしれない。
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処刑人('99アメリカ=カナダ)-Feb 22.2001
[STORY]
行きつけのバーに現れたロシアン・マフィアといざこざを起こしたことをきっかけに、コナー(ショーン・パトリック・フラナリー)とマーフィー(ノーマン・リーダス)のマクナマス兄弟は、極悪人を制裁する“聖人”として人々の支持を受けるようになる。彼らを追うFBI捜査官スメッカー(ウィレム・デフォー)もいつしか彼らに共感するようになってしまい・・・。
監督&脚本トロイ・ダフィー(初監督作)
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とにかく回想シーンばかりで意外だった。マクナマス兄弟による自供だとか、スメッカーによる分析というかたちを取ってバイオレンスシーンを描いていく。分かりやすく言うと、Aというきっかけから一気に飛んであとの祭りとなったCを見せ、それから銃撃戦などのBを見せる展開。しかしこれはどんな効果を狙ったもんなんだろうね。観客の興味を引く目的だとしたら失敗だと思うよ。だってCを見せられても全然引き込まれなかったもの。しかももっとひどいことに、後から見せられたBにも全く意外性がないところがきつかった(それでも最初の回想シーンが一番マシだったかな)AからCへ飛ぶ時のちょっと長めの暗転がテンポを悪くしているし、無駄だと思えるシーンが多い上に、繰り返しのパターンが読めてしまったのが飽きてしまった原因だ(これだけ理由があれば十分だって?)

パズル的要素を取り入れて成功した面白い映画はたくさんあるからね、やりたい気持ちは分かる。比べるのはアレだけど自分的に整理すると、タランティーノの『レザボア・ドックス』や『パルプ・フィクション』がベストとするならば、ガイ・リッチーの『ロック、ストック&トゥースモーキング・バレルズ』は一歩手前。トロイ・ダフィはそれよりさらに五歩足りなかった、って感じでしょうか。

でも致命的なのはやっぱりラストかなー。私はこれを見て萎えました。なんかちぐはぐというか中途半端な印象をいっそう強く感じてしまった。これさえなければもうちょっと楽しく見られたかもしれない。

キャラクターはまぁまぁかな。やはりトップクレジットされているだけあって主役はデフォーでしょ。なんか楽しそうに見えたんですけど(笑)特に××やってる時はビックリしたけど笑ったなー。唇が官能的でステキです。マクナマス兄弟は中身が薄くて、ただ見た目のカッコ良さぐらいしか覚えてないんだけど、回りに濃いキャラを配することで彼らが逆に異質な存在に思えた。
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アンブレイカブル('00アメリカ)-Feb 14.2001
[STORY]
フィラデルフィアで列車の脱線事故が起きた。乗員乗客131人が死亡するという大惨事の中で、ただ1人、無傷で生き残ったデヴィッド(ブルース・ウィリス)。そんなある時、イライジャ(サミュエル・L・ジャクソン)という男が現れ、デヴィットこそ不滅の肉体を持つ“アンブレイカブル”であると告げる。
監督&脚本M・ナイト・シャマラン(『シックス・センス』
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なるべくネタバレしないように書きますが、先入観を持ちたくない人は読まないほうがいいでしょう。

思わず2回も見に行ってしまった『シックス・センス』のような作品を期待して(という方は多いだろう)見に行ったが、残念ながら半分くらい期待ハズレ。前作ほどの驚きと感動は得られなかった。展開は両作品ともに同じなんだけどね。まぁ前作よりも伏線なんかに注意したせいもあるし、最後に絶対何かあると身構えていたせいもあるだろう(宣伝もそれを売りにしてたみたいだけどね)

前半がかなりかったるい展開だった。そこが期待ハズレになってしまった原因の1番大きなところだと私は思っている。1シーン1シーンがやたら長く感じちゃって。これが畳み掛けるような展開ならば、多少疑問に思いながらも引き込まれ、騙されていったかもしれない。しかし緩い展開はじっくり考える余裕があるほどで、かえって物語に集中できなくなってしまったのだ。特にデヴィッドがベンチプレスするシーンはもういいよ、っていうくらい苦痛に感じたし、おなじみシャマラン監督ご出演シーンも長かったような・・・。たくさん映りたかったんでしょうか(笑)半分を過ぎたあたりからようやく面白くなってきたが、これがもう少し前から始まってくれていたらと思う。

でも嫌いな話ではない。前作もそうだが、驚きの事実だけじゃ終わらない。その次に来るものも描いているからだ。ただ、それを見てどう感じるか?前作のほうがその点では非常に分かりやすかったと思う。しかし本作は自分が見ていた視点によって変わってくるだろう。私はラストのセリフがいまだに残っていて、そこに深い哀しみを感じた。

今回もまた怖い!とビクつくシーンがけっこうあって、色使いと陰影の使い方が恐怖心を煽られた。でもなぜか一番怖かったのは、デヴィッドの息子だった。なんかねー目が暗いの。つぶらな瞳が底なし沼みたいで、しかもデヴィッドに対してすがりつくような目をするのが不気味でね。絶対この子に何か秘密があるー!って思ってたけど、ハーレイ君じゃないんだから、とセルフツッコミを入れたりして(笑)

これには続編、続々編もある(かもしれない)らしい。これ以上どうすんだよ?って感じもするけど、確かにこの状態では気持ちが悪いので、何かしらの結論は出して欲しいと思う。
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リトル・ダンサー('00イギリス)-Feb 12.2001オススメ★
[STORY]
11歳のビリー・エリオット(ジェイミー・ベル)は父の命令により嫌々ボクシングクラブに入っていたが、ホールを共同使用しているバレエ教室に興味を持つようになり、こっそりバレエを習いはじめる。しかしある時、それが父親にバレてしまう。
監督スティーブン・ダルドリー(長編初監督)
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同じイギリス映画でありダンスを踊るという意味でか『フル・モンティ』、そして炭鉱労働者が出てくるせいか『ブラス!』が引き合いに出されているが、設定や展開はアメリカ映画の『遠い空の向こうに』とほぼ同じだ。だから『遠い空〜』が好きな人は絶対ハマると思う。っていうか個人的には私はこの作品のほうがずっと好き。『遠い空〜』は主人公に魅力が足りなかったからね。本作はとにかくビリーが素晴らしい(彼らの父親は両作とも甲乙つけがたいです)

ビリーがなぜバレエに興味を持つようになったか?というきっかけ部分の描写が甘いと思ったんだけど(ボクシングをやりたくないからという理由だけでバレエに行くわけないだろうし。私の理解力が足りないだけかなー)彼がダンスに夢中になりはじめたあたりからそんなのどうでも良くなってしまった。きっと彼は踊るために生まれてきたんだろう。ダンスシーンはとにかく引き込まれる。見てても全然飽きない。特に父親に見せる時のあの熱っぽさは、こちらの身体まで熱くなったほどだ。

ビリー以外の登場人物もみな愛らしい。ビリーの母はとうに亡くなっており、ストライキ中の炭鉱労働者である父と兄、そして時々勝手に町を徘徊してしまう祖母がいる。ビリーが理解できず、頭ごなしに叱りつけていた父が、息子の才能に気づいて必死になるところや、小突いてばかりいた兄の一言など、すべて涙なしには見られない。ビリーの友達マイケルもなかなかいいし、彼の才能を伸ばすべく付きっ切りで指導するミセス・ウィルキンソンと、マセた彼女の娘も可愛い。しかし(ここからネタバレ)ビリーの父親が張り切り出したあたりから急に影が薄くなっちゃったな。彼がロンドンへ旅立つ時には見送りに登場しなかったし、25歳になったビリーの公演にも来なかったね。(ここまで)そこが残念でならない。

この作品ではトップ・ダンサーのアダム・クーパーが特別出演している。私はバレエに詳しくないので彼があそこで出てきた深い意味とか全然分かってなかったが、公式ページの解説を読んでなるほど、と思った。しっかり伏線があったわけです。もし私がバレエに詳しかったら、彼が出てきた瞬間に嬉しくなっただろう。ちょっとくやしいな。

余談だけど、関内のあの劇場が立ち見になったの初めて見た(笑)
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回路('01日本)-Feb 10.2001
[STORY]
ミチ(麻生久美子)の会社の同僚が自殺した。それからというもの、社長や友人たちも同じように消えていった。一方、大学生の亮介(加藤晴彦)はインターネットを始めたところ、画面に「幽霊に会いたいですか?」という謎のメッセージが浮かびあがり恐怖にかられる。亮介は同じ大学でネットの研究をしている春江(小雪)に相談するが・・・。
監督&脚本・黒沢清(『カリスマ』
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『カリスマ』の藪池が山から下りたら、都会ではとんでもないことが起きていた。彼は船に乗り、まだ侵食されていない世界へと旅立つことにした・・・。そういう話に見えたんだけど違うかな。落ちていく飛行機や煙の上がった建物は『カリスマ』にも出てきたような(うろ覚えだが)次回作にも何か繋がりが出てくるんだろうか。

とにかく前半怖かった!空間の使い方がいいんだよなぁ。前に人が立ってる後ろに何かを見せたりだとか、遠くからこっちに向かってくるシーンとか、平面なスクリーンなのに奥行きがあるように錯覚させるような(うまく表現できないんだけど)その奥行きが怖かった、私には。特に怖かったのは××がグラグラしながら向かってくるところ。効果音はちょっとやりすぎかなーって思ったけど。あと予告でも流してた飛び降りシーン。CGを使っているようだけどあれ1カットなんだよね。どちらも鬱になりそうなぐらい厭で最高だ(笑)

でも後半からは自分の集中力が途切れてしまったんだろうか、ちょっと乗れなかった。加藤晴彦と小雪がダメだったせいもあるんだろうなぁ。なんかこの2人が出てくるシーンが自分の中の緊張感を削いでいたような気がする。浮いてたんだもん2人とも。今回は一応青春映画らしいし、わざとそういう演出なのかもしれないけど、2人を見てるとまったく不安を掻き立てられないのだ。もっと浮いて見えるかと思ってた有坂来瞳は想像以上に良かった。一番印象深かったのは社長役の菅田俊と吉崎役の武田真治。こういう得体の知れない、ひょっとしたら既に幽霊だったのか?みたいなおかしな喋り方や台詞は、後々になってもまだ引っかかって、今でも急にふと思い出したりするんだな。

個人的意見だけど、やはり主役は役所広司で、脇に無機質な雰囲気を持った青年を配したほうがいいと思っている。同じ普通でも加藤より役所のほうが感情移入しやすい。
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