Movie Review 2000
◇Movie Index

アイアン・ジャイアント('99アメリカ)-Apr 30.2000
[STORY]
1957年、アメリカ・メイン州の田舎町で9歳のホーガースは、森で巨大ロボット、アイアン・ジャイアントに出会った。彼らは友達になり、スクラップ工場のオーナーでアーティストのディーン(声:ハリー・コニックJr)の助けを借りてかくまってもらう。しかし政府の捜査官に見つかってしまい・・・。
監督ブラッド・バード(『シンプソンズ』などTVアニメを手がけ『ニューヨーク東8番街の奇跡』で脚本を共同執筆)
−◇−◇−◇−
アニメ界のアカデミー賞といわれるアニー賞で9部門を獲得した長編アニメーション。ワーナーマイカルシネマズの独占公開で、私が行った新百合ヶ丘では字幕スーパー版も上映されているので(ほかでは日本語吹替版)当然、字幕版で見た。

ちょうどつい最近見た『遠い空の向こうに』と同じ1957年、ソ連のスプートニクが打ち上げられた年の話だ(にしては時代背景がきちんと描かれてないような気もしたんだけど・・・)母子家庭に育った少年がアイアン・ジャイアント(以下I・G)と出会って友達となり、しばらくは楽しく過ごす。しかし実はI・Gは攻撃を受けると反撃するようプログラムされていて、その威力といったらもぅ地球を軽くふっ飛ばすくらいスゴイのである。そのため、軍の攻撃対象となってしまう。でも戦うことをI・Gは全く望んでいない――あとは多分想像つくでしょう。ありがちといえばありがちのストーリーだ。

また、見終わったあと、I・Gが“アレ”に似てるよなーと思っていたら、一緒に行った友達も同じことを考えていたらしい。その“アレ”とは宮崎駿の『天空の城ラピュタ』に登場するロボットのこと。デザインもどことなく似ているし、I・Gは空から降ってくるが、ラピュタのロボットも同じく空から降ってくるという共通点もある。私達はほかのロボットモノに全然詳しくないので、これしか思い浮かばなかったけど、詳しい人ならもっといろいろ浮かんだかもしれない。ということは、それほどロボットにもオリジナリティはないってことだ。

けれどオーソドックスなストーリーでもキャラクターでも、見ていて心が熱くなって、クライマックスでは感動して思わず泣いてしまったのは確か。基本を1つ1つ踏んでる場所が、ちょうど見ているこちらのツボなわけ。ただし、この手は何度も使えない。というか良かったからといって何度も見る作品じゃないなぁ。1度見ればじゅうぶん、と思った。
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ザ・ビーチ('99アメリカ)-Apr 28.2000
[STORY]
タイ旅行に単身やってきたリチャード(レオナルド・ディカプリオ)は、安ホテルで出会ったヤク中の男ダフィ(ロバート・カーライル)から秘密のビーチの地図を貰う。リチャードは同じホテルに宿泊していたフランス人カップル、エチエンヌとフランソワーズ(ヴィルジニー・ルドワイヤン)を誘ってビーチを目指した。
監督ダニー・ボイル(『普通じゃない』
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美しいビーチで爽やかにバカンスを楽しむ幸せカップル映画だったらどうしよう〜そんなのダニー・ボイルじゃないじゃん!なんて思ったことはないけど(笑)予想通りヒネたドラマに仕上がっていた。

秘密のビーチで共同で暮らす人々の集団に入り込んだ3人は、そこで遊び、葉っぱをやって、少し働きながら都会の喧騒を忘れていく。しかしサメに襲われたり現地民とのトラブルによって、そこが“楽園”ではないことに気付かされる。彼らは光ばかりを求めて、すぐそこにある闇に目をつぶることで“楽園”を築いてきたため、それが少しでも崩れた瞬間にすべてが終わってしまう。このあたりが面白いといえば面白いが、元々の“楽園”の描きかたが足りないというか、意外にせせこましくて開放感がないので、崩れた時にそれほど驚きがない。もっと画面いっぱいに美しい風景を映してくれるのかと思ったけど、監督はそういうのはあんまり興味がなかったのかな。まぁ、タイの汚い安ホテルでジャンキー映してるほうがお似合いなんだが。

非凡な才能を持ってる人だと思っていたレオ君だけど、最近はまぁフツウの人だよね。もっと表情が豊かな役者というイメージだったけどそうでもないし、オーラはありそうだが個性が感じられない。こちらが見慣れてしまったのか、それとも彼が壁にぶち当たってるのか(『タイタニック』という史上空前の大ヒット作に出てしまったことが、彼にとってある種不幸だったかもしれない)ただ、リチャードというキャラクター自体はいい。嘘つきで小ずるくて周りに感化されやすく、下手に正義感ぶらない今どきの若者って感じで、見ててムカつく(笑)けれどそういうキャラクターだからこそ、楽園と馴染めるし、楽園を去っても生活ができる、適応性に優れているのかもしれない。そこがまたムカついたりするが(笑)

ぶっちゃけた話、監督と出演者に興味がある人が見るべし!という感じ(あ、私の場合はカーライル目当てね)あと余談だけどレオ君が着てた、いかにもタイ王国らしいTシャツは人気出そうだなぁと密かに思った。
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遠い空の向こうに('99アメリカ)-Apr 28.2000
[STORY]
1957年10月4日、ソ連は人工衛星スプートニクの打ち上げに成功した。ウェスト・ヴァージニア州にある炭坑町コールウッドでもこの話題でもちきり。夜になって衛星を一目見ようと町の人間たちが集まり、その光に歓喜した。高校生のホーマー・ヒッカム(ジェイク・ギレンホール)は感激して自分もロケットを打ち上げようと決意する。
監督ジョー・ジョンストン(『ジュマンジ』)
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実は実話だそうです、この話。なーんて下らない駄洒落言ってる場合じゃないけど、原作のタイトルは『ロケットボーイズ(ROCKET BOYS)』で、これを並べかえると(アナグラムというやつね)この映画の原題『October Sky』になるんですね!!めちゃめちゃ洒落てます。それが邦題になると何だかピンとこない、どういう趣旨の映画だか分からない、いいんだか悪いんだか分からないタイトルになっちゃって私の駄洒落以上に(以下自粛)

ホーマーと3人の高校生が何度も失敗を繰り返しながらも、着実にロケット打ち上げ成功に近づいていく。周囲から奇異の目で見られても、厳格な父親の反対にもめげずに、夢はいつか叶うものと勇気付けてくれる。ただし、彼らの功績は彼らだけの力で成り立っているわけでは決してなく、家族や町の人々、学校教師らの支援によるものでもある、ということもきちんと描かれている。50年代のクラシカルな雰囲気がよく出ているし(音楽がいい)当時の炭坑町の暗い現状なども浮ついた演出なしに表現している。

ただし実話であり、原作者ホーマーが現在もバリバリな人なので、本人に対する遠慮がチラリと垣間見えるような気がしないでもない。ほかの3人と比べて、彼だけちょっと優等生過ぎるんだよね。彼に対して好感は持てるけど、ロケットに対する熱意が足りないというか、もっとがむしゃらだったんじゃないのかなぁ。どっか甘えた坊主って感じがしちゃった。でも彼と父親とのやりとりは感動的で、久しぶりに爽やかな涙を流せた作品だった。
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スペーストラベラーズ('00日本)-Apr 23.2000
[STORY]
コスモ銀行に強盗に入った保(金城武)誠(安藤政信)巧(池内博之)は現金強奪に失敗し、人質を取って銀行内に立て篭もることになってしまった。おまけに人質の中に国際手配中のテロリスト坂巻(渡辺謙)がいたことから大騒動になる。
監督・本広克行(『踊る大捜査線 THE MOVIE』)
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映画鑑賞後、ビデオ屋でこの作品の元ネタである舞台『ジョビジョバ大ピンチ』を借りてみた。なるほどこうだったのか、と納得した。たった6人の出演者の作品を大掛かりにし、出演者も増やしてさらにアニメキャラクターまで考え、それなりに笑える作品に仕上げてはいるけど、しかしどうも何かズレてるような気がする。元ネタは舞台劇であり、出演者は6人だけ、という足枷があるから設定や配役やストーリーがそのような流れになってしまうわけで、映画であり、役者は使いたい放題なのにどこか足枷があるように感じてしまうのはなぜ?!

舞台の映画化は往々にして舞台から抜け出せない作品が多いような気がするが、これだけ大掛かりで、オリジナルアニメまで作っておきながら非常に世界が狭い。舞台では都合上、警察とのやりとりは電話のみだったが、映画ではこれだけの人数とキャストを揃えたのだから、もっと駆け引きを入れても良かったはず。アニメキャラと登場人物たちのカラーを打ち出した意味もほとんどなかったんじゃないのかなあ。

この作品は「笑って、泣けて、元気が出る映画」らしいけど、ワタシ的には「泣けて」はいらなかった。「泣け」るシーンを作ったせいか「元気が出」なかった。ヘタに涙での感動を押し付けようとせずに、最後の最後まで痛快娯楽映画として、笑いの感動を与えてほしかった。あざといんだよ。ちなみにジョビジョバのラストも私は好きじゃないっす。

ストーリーは上のように不満がかなりあったけど、キャラクターにおいてはけっこう好きだな。銀行のキャラクターであるコスモト太郎と坂巻が常に持っているクマのぬいぐるみ、彼ら2人(?)の置かれる場所も凝っていて、まるでそこだけ別の物語が進行しているような感じすらする。特にコスモト君のスクリーンセーバー可愛かった。公式ページからダウンロードできるといいのに。

それとファンサービスなのか『踊る〜』の特別編で特殊急襲部隊長を務めていた高杉亘が、今回も同じ役で登場しているところが面白かった。2つの作品で出演者がかなりかぶってはいるけど、まるっきり同じ役というのは彼くらいじゃないかな。
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ボーン・コレクター('99アメリカ)-Apr 23.2000
[STORY]
優秀な捜査官だったリンカーン・ライム(デンゼル・ワシントン)は、事故によって脊髄を損傷し、寝たきりの生活になってしまっていた。しかし猟奇殺人事件が次々と発生したことから、捜査員たちが彼を頼ってきた。ライムは死体の写真を撮影したパトロール警官のアメリア(アンジェリーナ・ジョリー)の嗅覚に感心し、彼女を自分の助手として起用する。
監督フィリップ・ノイス(『今そこにある危機』)
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日本でも話題になったベストセラー小説を映画化したもので、私は原作は未読だ。
昔、某出版社が打った「見てから読むか、読んでから見るか」というキャッチコピーじゃないけど、原作があるものってどっちを先にするか迷うところ。でもだいたい映画を先に見てから原作を読むかな。たまたま原作を読んだものが映画化されてしまった時はしょうがないけど、たいていそれは原作のイメージからかけ離れてしまっていたり(自分が勝手にイメージしたものなので、自分に責任があるんだけど)大事なシーンが端折られてしまっていたりして、ガッカリすることのほうが多いので。

この作品の場合も随分と端折られている印象は否めない。アメリアが死体を発見するところや、ライムの指示で現場に1人きりで行かされるシーンなどは、かなり丁寧に描かれていて臨場感たっぷり。思わずこちらもアメリアと同じようにドキドキしてしまうほど。犯人の手掛かりを探しながら、少しずつ犯人に近づいていく過程が1番面白い。A・ジョリーってもっと浮ついたようなイメージを持ってたんだけど(失礼)堂々とした存在感があってカッコ良く、新鮮だった。
しかし終盤、あれよあれよという間に事件が進展して解決へとなだれ込んでしまう。タイトルである『ボーン・コレクター』のこともちょっとした説明だけですっ飛ばされ、気が付いたら冬だった・・・みたいな(←これは喩えだけにあらず)

おまけに端折ったあたりから急に安っぽいドラマのようになっちゃって、それにも「う〜む」という感じ。しっかり2時間ある作品だけど、これならあと15分くらいあってもいいくらいじゃないの。でもかえって原作が面白そうで、早く読みたくなってしまった。これは先に映画を見ておいて良かったと思う。原作が先だったら怒ってたかも。

あれ?そういえばアメリアの彼氏ってどうしちゃったんだろう・・・。
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