Movie Review 2009
◇Movie Index
シングル・マン('09アメリカ)-Oct 20.2009
[STORY]
1962年ロサンゼルス。大学教授のジョージ(コリン・ファース)はパートナーだったジム(マシュー・グード)を事故で失い、生きていくのが嫌になり自殺を考えていた。そんな彼の心を見透かしたかのように、教え子のケニー(ニコラス・ホルト)がことあるごとにジョージに話しかけてくる。ジョージはケニーを避けようとするが、次第に彼を受け入れるようになる。
監督&脚本トム・フォード(初監督作)
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監督のトム・フォードはグッチやイヴ・サンローランのクリエイティブ・ディレクターで、自らの名でブランドも立ち上げているファッションデザイナー。
主演のコリン・ファースは第66回ヴェネツィア国際映画祭で男優賞を受賞した。
第22回東京国際映画祭ワールドシネマ部門選出作品。

予告がめちゃくちゃオシャレだったので本編も楽しみにしていたのだが、予告はいいところだけ短く切り取ったものであり、連続してみるとかなり微妙な作品でした。主演のファースが上手いから何とか映画として成り立ってるけど(セリフがなくても表情で読み取れる)そうじゃなかったらイメージビデオとかプロモーションビデオとかそのたぐいになってたかも。カメラはほぼ固定で、人もほぼ動かず視線も動かず、ただ口だけが動いている。まるでマネキンが喋っているみたい。下手に動くと美しさが損なわれてしまう!とでも思ったかのように(そのガチガチさに疲れてしまい、時々ため息をついてしまった)

確かに美しかった。主人公ジョージを取り巻く男性はみなイケメン(笑)しかも個性的イケメンとかじゃなくて、本当に整った正統派ばかり。監督の好み分かりやすいっス(笑)外の風景も屋内も調度品も隙がなく、邪魔なもの、醜いものは徹底的に排除してあり、美意識の高さにただただ圧倒された。そんな見た目ばかりが気になってしまって、肝心のストーリーにあまり身が入らなかったが(苦笑)ラストはハッとさせられた。

でもこれはこれで嫌いではないので、これ1作でやめないでこれからも徹底的に美を追求した映画を撮り続けていってほしいと思う。
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悪夢のエレベーター('09日本)-Oct 16.2009
[STORY]
妻の出産に立会うため、マンションのエレベーターに飛び乗った小川(斎藤工)は、後頭部の痛みで目が覚めた。彼を覗き込んでいたのはヤクザ風の男(内野聖陽)と、ジャージ姿の男(モト冬樹)、そしてゴスロリの少女(佐津川愛美)だった。エレベーターが急に止まり、小川は転んで頭を打ったという。だが、彼らの話を聞くうちに小川はおかしなことに気付く。
監督&脚本・堀部圭亮 (『やさぐれぱんだ』)
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原作は劇団ニコルソンズ主宰である木下半太の同名小説。2007年にテレビドラマ化、2008年には舞台化もされている。

監督と脚本を担当した堀部圭亮は、バラエティやドラマ・映画でよく見ていたが、特に役者ではいい演技するなぁと思ってたんだけど、正直監督としては全く期待していなかった。でも本編を見てみて、意外と正攻法というか、めちゃくちゃではなくきちんとした作りでなかなかいいじゃない、と感心した。原作未読なので原作通りなのか分からないけど、ちゃんとどんでん返しがあって、しかも1回だけじゃなくバタバタとストーリーが変わっていくところが面白かった。すっかり忘れてた話が再び出てきたところが特に。だけど途中でスプラッターシーンを入れたところはちょっとやりすぎだったんでは。確かにあのスプラッターなところはまさに悪夢みたいだったけど、あの気持ち悪さが強烈で、強い印象を残してしまい、他のシーンが霞んでしまった。あの展開だけでもじゅうぶん悪夢なんだからさ・・・。

内野の演技は最初見た時に「あれ?この人こんなに下手だったっけ?」と戸惑ってしまったが、後になって「ああそういうことか」と納得。小川役の斎藤はもうちょっと何とかならなかったのかねぇ。セリフ棒読みに近いじゃん。この人だけ浮いていたように思う。そして佐津川にはビックリした。始めは声に特徴のある子だなぁくらいにしか思ってなかったけど、やられた。上手いというより凄みがあって、まさに怪演(もちろん褒め言葉)今後も注目していきたい。

実は本作には続編『奈落のエレベーター』という作品があるそうだ。映画があそこで終わってしまって「ええっ?!」とびっくりしちゃったんだけど、原作があの続きから始まるなら納得だ。で、続編はちゃんと映画化してくれるんでしょうね?
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ファイティング・シェフ〜美食オリンピックへの道('08スペイン)-Oct 11.2009
[EXPLANATION]
2年に1度開催される、世界最高のフランス料理人を決める“ボキューズ・ドール国際料理コンクール”に挑むことになったスペイン代表ヘスース・アルマグロ。国内予選を勝ち抜いた彼は、決められた食材を使ってのメニューに試行錯誤していた。だが、試食では同僚のシェフらから容赦なく批判される毎日。その一言一言に傷つきながら、さらに努力を重ね、ヘスースは本番を迎える。
監督ホセ・ルイス・ロペス=リナレス(『Hecuba, a Dream of Passion』)
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1987年から2年に1度開催されているフランス料理の国際大会“ボキューズ・ドール国際料理コンクール”その2007年大会に出場することになったスペイン代表を追ったドキュメンタリー。
世界24カ国の代表が集まり、3つのテーマ食材を5時間半かけて調理する。今回のテーマはフランス産の鶏肉とノルウェー産のオヒョウ(カレイに似た魚)、そしてノルウェー産のタラバガニ。
日本代表の長谷川幸太郎シェフがインタビュー取材を受けており、日本の応援団がしゃもじを使って応援する場面なども映されている。

ポール・ボキューズといえばエコール・キュリネール国立のCM。子供の頃に何度も見ているので私にとっては一番有名なフランス人シェフだ。この人の料理を食べられたらなぁなんて夢を見ていた時期もあり(笑)今現在、お店はブラッスリーに行ったことがあるのと、あとはたまにパンを買う程度。メゾンにも行ってみたいねぇ(遠い目)
そんな思い入れ(?)があり、かつ料理が出てくる映画が大好きなので見てみた。

同じヨーロッパということ、そしてスペイン料理はおいしい!(笑)ということでスペインはもっと上位にいるのかと思っていたら、意外とそうでもないことにまず驚いた。この大会は前半12組、後半12組が戦う。これは前回の成績順で、前半は前大会で13位から24位までの国、後半は1位から12位までの国となる。スペイン代表前半での出場(ちなみに日本は後半組)だからいきなり優勝を狙っているのではなく、今大会は12位内に入って、次の大会では後半組に入ろう!というのが目標のようだ、というのが見ていくうちに分かってきた。

ヘスースはスペイン人にしては薄い顔立ちで、話し方なんかも他の人よりちょっと大人しめだなと思った。回りはかなりうるさい(笑)機関銃のようにまくし立ててヘスースの料理にダメ出しをする。それを冷静に受け入れようと努力するも明らかに凹んでいるヘスースが面白い。笑っちゃいけないんだけど、彼の顔が分かりやすすぎてもう(笑)一番面白かったのは、本番当日のフランスチームが出してきた料理を見た瞬間の彼の顔!確かにあれは完敗ですよ。まさに芸術!優勝も当然だ。同じ日本人として当然気になっていた日本チームは漆器を使った盛り付けで見事最優秀アイデンティティ賞と最優秀ポスター賞を受賞し、総合でも日本歴代最高の6位となった。そしてスペインも何と9位!正直言って、練習でずいぶんけなされていたのでもっと下だと思っていた。次の大会でヘスースがまた代表に選ばれるかどうかは分からないが、後半組に入ったということで次はもっと上位を狙えるだろう。日本のシェフもさらに活躍しそうだし、今から楽しみだ。今後もコンクールの動向をチェックしていくつもり。

不満だったのは、スペイン映画でスペイン代表を追いかけている映画だからしょうがないんだけど、大会当日全体の様子はちょっと分かりにくかったこと。また、料理を作っているところは規制があるのか映像がほとんどなく、ヘスースがどんな風に料理しているのか、力を出し切れたのか分からず残念だった。
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ココ・アヴァン・シャネル('09フランス)-Sep 20.2009
[STORY]
孤児院で育ったガブリエル・シャネル(オドレイ・トトゥ)は昼は仕立屋で働き、夜はクラブで歌を歌っていた。そんなある日、将校のエティエンヌ・バルザン(ブノワ・ポールブールド)と出会ったガブリエルは“ココ”という愛称で呼ばれるようになり、彼の邸宅で暮らすようになる。彼の元には客がひっきりなしに現れ、夜毎晩餐が繰り広げられていた。そんな中でガブリエルは疎外感を感じていたが、イギリス人実業家のボーイ・カペル(アレッサンドロ・ニヴォラ)だけは彼女の個性を認めてくれ、やがて2人は愛し合うようになる。
監督アンヌ・フォンティーヌ(『ドライ・クリーニング』
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原作はエドモンド・シャルル=ルーの『ココ・アヴァン・シャネル―愛とファッションの革命児』
個人的に絶賛開催中(笑)の“シャネル祭り”第2弾。本作は『ココ・シャネル』とほぼ描かれる箇所が同じで、ココが孤児院に預けられるところから、愛する人を亡くした悲しみを吹っ切るように服のデザインに没頭しコレクションを開催するところまでが描かれる。

見比べてみて面白いと思ったのは同じ女性が主人公なのに描き方によって随分違ってしまうというところ。『ココ・シャネル』は紆余曲折しつつも世界的ブランドを確立する強い女性として描いていたのに対し、本作は1人のフランス女の人生を描いていたというところ。気まぐれでわがままで、階級社会にコンプレックスを持っていて、人と同じなんて耐えられない!という生き方を実行していったら、シャネルというブランドになっちゃった、といった感じ(笑)服を作るシーンもあまりないし、シャネルが協力しているらしいが、服もあまり多くは出てこない。

例えば『ココ・シャネル』ではエティエンヌに乞われてココは彼の家に行くが、本作では勝手に自分で行って居座って、エティエンヌから「もうそろそろ帰ってくれない?」って言われる始末。すげーずうずうしいの(笑)両作品ともボーイ以降の男性遍歴は描かれないが、実際はその後も数多くの男性と浮名を流していたわけで、『ココ・シャネル』のココからはそんなに恋人がいたなんて想像できないが、本作のココならまぁそうだろうな、とすんなり納得できてしまう。本作のココは見ててムカつくことも多かったが(笑)実際のココ・シャネルもきっとこんな女性だったのだろう。やはりフランス人を主人公にするなら、自国で映画を作るべきなんだな。
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ウルヴァリン:X-MEN ZERO('09アメリカ)-Sep 18.2009
[STORY]
ミュータントとして生まれたビクター(リーヴ・シュレイバー)とローガン(ヒュー・ジャックマン)の兄弟は、傷を負ってもすぐに回復する能力のおかげで南北戦争や2度の世界大戦に兵士として戦ってきた。ベトナム戦争では2人は銃殺刑となるが、回復能力のおかげで生き延びる。そこへストライカー(ダニー・ヒューストン)という軍人が現れ、釈放と引き換えにミュータントたちで構成される特殊部隊“チームX”へ参加を持ちかける。2人はメンバーとなりさまざまな任務を行うが、ローガンはそのやり方について行けず、チームを離脱する。
監督ギャヴィン・フッド (『ツォツィ』)
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『X-メン』『X-MEN2』『X-MEN:ファイナル ディシジョン』の3部作の前にあたる作品。ローガンの生い立ちと、彼の武器である両手から飛び出すアダマンチウムの爪がなぜ移植されたか、そして彼が記憶を失った理由などが明らかになる。
キャストはジャックマンのほか、プロフェッサーX役のパトリック・スチュワートも前3部作と同じく出演しているが、『X-MEN2』で登場したストライカーは別の役者が演じている。

前シリーズでは人間とミュータントとの軋轢、ミュータントとして産まれ生きていかなければならない苦悩や葛藤などが描かれていたが、本作は(もうそういうのは前3部作で描いたからいいやと思っているのか)迫力ある映像とアクションに力を注いでいる。個人的には兄弟の確執はもうちょっと掘り下げてくれてもいいのにと思ったが、ウルヴァリン本人は前シリーズよりずっとカッコイイ。前シリーズの垢抜けない野性的な彼もそれはそれで魅力的だったが、本作はスマートでスタイリッシュ。埃まみれになっていても何故か汚く見えない(笑)そして前よりずっと強い。若かったからでしょうかね(笑)

兄弟2人の戦争のシーンはありそうでなかった演出でとても斬新に見えた。ヘリコプターを撃墜するシーンやクライマックスの戦いもアイデア満載で、よくこんなドキドキする設定を思いつくなぁと感心しきり。ただあまり長すぎるアクションはクドいし疲れてしまうのでほどほどにしてもらいたいものだ。そしてやっぱり続編ですか・・・。これからあと2作分まで引っ張る気?『X-MEN ZERO2』とかもうわけわかんないタイトルになりそう(苦笑)若き日のマグニートーを描く企画もあるそうで、こうなるとウルヴァリンよりそっちの映画のほうが魅力的だなぁなんて思ってしまう。
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