Movie Review 2009
◇Movie Index
幸せはシャンソニア劇場から('08フランス=ドイツ=チェコ )-Sep 18.2009
[STORY]
1936年パリ。下町にあるシャンソニア劇場が経営不振のため閉鎖となる。幕引き係のピゴワル(ジェラール・ジュニョ)は妻に逃げられ、息子のジョジョ(マクサンス・ペラン)とも一緒に暮らせなくなってしまう。ピゴワルは再びジョジョと一緒に暮らすために、芸人のジャッキーとミルーを巻き込み、再び劇場をはじめようとする。そこへ歌手志望の娘ドゥース(ノラ・アルネゼデール)がオーディションを受けにやってくる。
監督クリストフ・バラティエ(『コーラス』
−◇−◇−◇−
アカデミー賞にノミネートされた『コーラス』の製作ジャック・ペランと監督のクリストフ・バラティエ(ペランの甥)、そして主演のジェラール・ジュニョが再び集結して製作された作品。ペランの息子で『コーラス』では孤児役だったマクサンス・ペランが本作では息子役で出演している(大きくなりましたー)

『コーラス』は感動したので本作にも期待してたんだけど、ストーリーに軸がないというかまとまりがなくて少々期待はずれだった。主役のピゴワルを中心に話が進んでいくのかなと思っていたら、彼が全く出てこないまま他の話が進んでいたりして、もちろん他のエピソードがいらないというわけじゃない。でも中心にピゴワルという軸を据えてそこから話を広げていってほしかったな。あとメインキャストに悲劇が訪れるので、見終わってもちょっとモヤモヤ。『ヘンダーソン夫人の贈り物』を見た時と同じような微妙な気持ちになった。

でもショーのシーンはカラフルでオシャレで可愛くて、見ててとても楽しい。照明や幕引きを担当していた奴らがこんなに歌えるのか?というツッコミは置いといて(笑)これだけのものを見せてくれるなら連日満員だろう。特にドゥース役のノラ・アルネゼデールの歌は素晴らしかった。美人でスタイルもよくて、一番最初に彼女の顔が映ったところで思わず「この子は絶対人気が出る!」とピンときてしまった(笑)見終わって年齢を知ってびっくり。まだ20歳ですか。通りで歌う姿が初々しくて可愛いわけだ。このまま劣化しないで活躍してほしいぞ。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

BALLAD 名もなき恋のうた('09日本)-Sep 6.2009
[STORY]
小学生の川上真一(武井証)は毎晩同じ夢を見ていた。それは真一に何かを訴えようとするお姫様の夢だった。そしてある時、真一はひょんなことから見つけた巻物を読んだ瞬間に気を失い、目覚めると戦国時代にタイムスリップしていた。びっくりした真一は思わず近くにいた武士に声をかけてしまい、それが偶然にも春日の国の武将・井尻又兵衛(草なぎ剛)の命を救ってしまう。春日の城に連れて来られた真一はその国のお姫様、廉姫(新垣結衣)の顔を見て驚く。それは夢に出てきたお姫様だったからだった!
監督・山崎貴(『ALWAYS 三丁目の夕日』)
−◇−◇−◇−
原作はアニメ映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』だが、本作はしんちゃん一家は登場せず、代わりに小学生の真一と父・暁、母・美佐子の3人家族が登場する(私はアニメはまだ見ていない。『オトナ帝国』は大好きなんだけど)
佐藤嗣麻子監督の『K-20 怪人二十面相・伝』で山崎はVFX協力だったが、実はその時、私は山崎と佐藤が夫婦だということを知らなかった。で、この映画で佐藤が脚本協力したという情報で初めて夫婦だと知ったのだった。

そんな興味もあって『リターナー』以来の山崎作品だったが、CGの出来がまず良かった。城はさすがに分かりやすかったけど、多用されているという戦いの場面では、どこで使われているのか分かりにくかった。というか、このシーンはかなりよく出来ていて、CGのことなど忘れてしまったほどだ。CGなんて気にならない、というのは最高の技術だよね。さすがに『レッドクリフ』ほどの迫力はないが、日本のこの時代の小国で人口を考えたら『レッドクリフ』を求めるのは間違いってもんだ。ただ、戦いのシーンはもっとボリュームが欲しかった。

そしてドラマ部分はひどかった(苦笑)『K-20』で子役の今井悠貴の演技が受け付けないと書いたが、本作の武井証の演技も空々しくて私はダメだった。夫婦揃ってこういう子が好みなんだろうか。又兵衛と高虎(大沢たかお)の一騎打ちで間に入ってくるところなんてもうウザさ全開で「この子を斬ってしまえ!私が許す!」と叫びたくなった(笑)その2人の立ち回りでは、周りの人々はただ見守るだけなんだけど、そこもちゃんと演出するべきだった。どうリアクションを取っていいのか分からない役者やエキストラが映ってて緊張感が半減。2人きりで戦わせたほうが良かったんじゃないかな。
それと戦国時代の人のセリフに現代語が混じってるのも気持ち悪かった。辞書を引け。

全体的にはダメなところのほうが多いんだけど、戦いに行く又兵衛と見送る廉姫のところはちょっと泣いちゃったし、廉姫が車に乗ってはしゃいでいる後ろから、馬で又兵衛が追いかけるシーンはカメラアングルもカットもすべて良かった。ここはベストシーンだ。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

20世紀少年 最終章 ぼくらの旗('09日本)-Sep 2.2009
[STORY]
ともだち暦3年(西暦2017年)カンナ(平愛梨)は氷の女王と呼ばれ、武装集団のリーダーとなりともだちに対して武装蜂起を計画していた。東京を離れていたオッチョ(豊川悦司)はカンナに会い、ケンヂ(唐沢寿明)は生きているはずだから武装蜂起はやめるよう伝える。
一方、蝶野(藤木直人)は刑事から降格となり、東北地方にある検問所の警備を担当していた。そこへ矢吹丈と名乗る男が現れ、検問を突破しようとする。蝶野はその男がケンヂだと気付く。
監督・堤幸彦(『20世紀少年 第2章 最後の希望』
−◇−◇−◇−
『20世紀少年』、『20世紀少年 第2章 最後の希望』
の続編で、三部作の最終章。
ほぼ原作と同じだった1作目から比べると、本作はかなり手を入れたほうだろう。脚本を担当したのが原作者の浦沢直樹と長崎尚志なので、本当はマンガのほうもこうやって終わりたかったのかな、と思った。マンガは“ともだち”の正体が誰かというところにヒネリを入れすぎてグダグダになってしまった。映画はヒネリを入れつつも整理して分かりやすく見せている。これなら納得だ。

最後もこれでもか!と詰め込んで上映時間が長いのはしょうがないが、コンサートのシーンだけやたら長くて飽きた。ステージを組んでエキストラを投入して、メインの出演者も多い場面だから切りたくなかったんだろうけど引っ張りすぎだった。とうとうマンガそっくりで上手いなぁと感心していたコンチ役の山ちゃんが「ウザイ!」と思うほどに(苦笑)
それからラストシーンも蛇足かな。ケンヂが謝るところで終わりでよかったのに、あれではケンヂも“ともだち”も救われたようになってしまった。ケジメをつけるだけで、救われちゃいけないのに。

まぁでもヒットしたから続編製作、ではなくて最初から3部作でやります!と決めて完成させたところは素直に拍手したい。同じく最初から3部作と決めて見事に完走した『ロード・オブ・ザ・リング』と比べたらそりゃ規模が小さいけど、舞台が日本だからこんなもんだろう。CG技術もだいぶ発達して、思ったよりもチャチな感じがしなかった。それからほんの少しのシーンに大物を起用したりして楽しませてもらったし、演技に欲を出さず原作キャラそっくりに作り上げた出演者もよかった。唐沢寿明のケンヂは第1章ではしっくりこなかったけど、本作でバイクに乗ってる姿を見て「ケンヂだ!」と思った。そういえば、雪山のシーンで遠藤賢司と共演してたね(笑)こういうことはマンガでは無理だったし、実写だからできる面白いことだな。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

ココ・シャネル('09アメリカ=イタリア=フランス)-Aug 26.2009
[STORY]
1954年パリ。15年前に引退したココ・シャネル(シャーリー・マクレーン)は復帰するもデザインが古臭いと批評され大失敗。ビジネスパートナーのマルク(マルコム・マクダウェル)からはショーで掛かった費用を返済するためにブランドを譲渡するよう迫られる。窮地に立たされたココは孤児だった自分が今の地位を築くまでの日々を振り返る。
18歳になったココ(バルボラ・ボブローヴァ)はお針子として働き始め、客として来た将校のエチエンヌと恋に落ち、彼の屋敷で暮らすようになる。だが彼の不誠実さに耐え切れず、ココは彼と別れて帽子屋を開業するが、ほとんど売れずに苦しい生活を強いられる。そんな時、エチエンヌの友人だった実業家のボーイ(オリヴィエ・シトリュク)が彼女に手をさしのべる。
監督クリスチャン・デュゲイ(『アート・オブ・ウォー』)
−◇−◇−◇−
アメリカのTV映画で、日本では劇場公開となった。第66回ゴールデングローブ賞テレビ映画部門で、マクレーンが主演女優賞にノミネートされた。

ココ・シャネルをヒロインとした映画が立て続けに3本公開されるということで(『ココ・アヴァン・シャネル』と『シャネル&ストラヴィンスキー』)それなら3本とも見ようじゃないか!と、個人的にシャネル祭りを開催することにしました(笑)
配給会社がバラバラなので偶然だろうが、本作が公開1本目になったのはラッキーだった。ココ・シャネルのことをほとんど知らなくてもOK、非常に分かりやすく彼女の生涯を描いた伝記映画になっている。言語がフランス語じゃなく英語で、時々英語に混じって「ムッシュ」とか言ってるのに違和感あったけど。それからドラマだからしょうがないんだけど、ココがボーイを待ちわびる場面で、2人の幸せな日々の回想シーン挿入したところが急に安っぽくなって残念だった。それまではTVドラマだってことを忘れるほどクオリティが高かったので。

貧乏人の負け惜しみというわけではないが、シャネルの服やバッグって「ケバイ!」って感じで好きじゃなかったけど(まぁ似合いませんし)外国人モデルが着ているのを見て思わず素敵!って思ってしまった(日本の場合はオバチャンが無理矢理着てるイメージが強くて)コルセットをつけない服を作ったりジャージ素材を取り入れたってことも、恥ずかしながらこの映画を見て初めて知った。現代ファッションの礎を築いた凄い人だったんだね。何度かシャネルは危機に遭遇したようだが、今も世界のトップブランドとして君臨し、世界中の女性たちを虜にしているのも頷ける。これからは私のシャネルイメージが変わりそうだ。

晩年のココを演じたマクレーンの貫禄には圧倒される。咥えタバコで服のチェックをする姿はまさにファッション界の女王だ。若き日のココを演じたボブローヴァはちょっと大人しいかな。アクがないというか線が細いというか、やっぱりアメリカ女性な感じ。フランス女はもっとスゲーよ(笑)そっちはオドレイ・トトゥとアナ・ムラグリスに期待するか。
それから階級社会と男性依存から自立を目指す(今では死語だけど)ウーマン・リブの代表みたいな描かれ方をしているとも感じた。製作する国によって捉えられ方もガラリと変わった作品になるんだな。そんなところも面白いと思った。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

南極料理人('09日本)-Aug 23.2009
[STORY]
ペンギンもアザラシもない、昭和基地よりもはるかに酷寒の地、南極ドームふじ基地。海上保安庁から派遣された西村(堺雅人)は、8名の隊員男たちの食事を用意する任務につく。食材はたくさんあるが缶詰と冷凍食品しか使えず、お湯が85度で沸騰してしまうために毎日のメニューを考えるのも難の業だった。
監督・沖田修一(『このすばらしきせかい』)
−◇−◇−◇−
原作は西村淳のエッセイ『面白南極料理人』と『面白南極料理人 笑う食卓』で、西村は元・海上保安官。第30次南極観測隊と第38次南極観測隊ドーム基地越冬隊の2回、観測隊に選ばれている。

私は昭和基地しか知らなかったけど(たいていの人がそうだろう)そのほかにも「みずほ基地」と「あすか基地」があり、これら3つは海に近い場所にあるが「ドームふじ基地」は昭和基地からは約1000km離れた内陸にあるということを今回知った。そしてこの「ふじ基地」は昭和基地よりもずっと寒く、ペンギンなどもいないことも初めて知った。

原作のエッセイは未読なのだが、短編を纏めたようなものなのかな?映画は小ネタをポンポンと積み重ねていくもので、後半盛り上がってクライマックスを迎えるような作品ではなかった。これはこれで面白かったけど、たまにエピソードがそこで終わってしまって「で、この続きは?」って思うところもあり。特に車両担当の主任(古館寛治)が仕事をサボって好き勝手するところは中途半端でモヤモヤした。結局、彼は任期が終わるまでずーっとあんな感じだったんですかね?

あと、通信担当&大気学者は演じてる役者が有名じゃないせいか(車両担当も有名じゃないけど)2人が中心になるようなエピソードなくて残念。本当に問題を起こさない人だったのか、それとも単に削られただけなのか気になった。偏りがあるのはしょうがないが、1人1つは目立つところを見せてほしかったな。

好きなエピソードは遠距離恋愛の兄やん(高良健吾)かな。まさかそういう展開だったとは!意外で面白かったなぁ。実話なんだろうか。いい話じゃないか。

映画に出てくる食事は『かもめ食堂』などを手がけた飯島奈美で、きれいだけど湯気の立ってないサンプル料理みたいなものが今回もたくさん出てくる。世間での評判はいいけど、個人的に毎回この人の料理はおいしそうに見えなくて好きじゃない。本作でも見た目はいいけど食欲がそそられないんだよね。ラーメン見ても食べたいと思わない。原作者はオフィシャルサイトで「映画の場面は実際よりきれいですが」と言っている。もうちょっとワイルドな感じだったんだろうな。原作者に立ち会ってもらって料理を出したほうが良かったんじゃないだろうか。
home