Movie Review 2009
◇Movie Index
ジェネラル・ルージュの凱旋('09日本)-Mar 7.2009
[STORY]
東城大学付属病院の不定愁訴外来医師・田口公子(竹内結子)は、“バチスタスキャンダル”後にリスクマネジメント委員会の委員長になってしまった。そんな彼女の元に、救命救急センター部長で“ジェネラル(将軍)”と呼ばれる速水晃一(堺雅人)が、医療業者のメディカル・アソシエイツと癒着しているという内部告発文が届く。そしてその告発文と同じものは厚生労働省の白鳥圭輔(阿部寛)の元にも届いていた。
監督&脚本・中村義洋(『チーム・バチスタの栄光』
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『チーム・バチスタの栄光』の続編で、原作は海堂尊の同名小説。原作はシリーズの3作目にあたるが、2作目の『ナイチンゲールの沈黙』と時系列が同じである。映画では『ナイチンゲールの沈黙』に関するエピソードは削られ、原作にはない殺人事件が加えられている。

前作は田口が女だったり、いきなり原作にはないソフトボールの試合シーンが出てきたりと違和感ばかりだったが、本作では慣れたせいかソフトボールが出てきても、速水役がイメージと全く違ってもまぁ許容できた。原作にない事件を挿入することも、これはこれでアリかなと思った。原作の通りにしたらエシックスの説明だけで映画の半分が終わってしまうだろうし(笑)原作も『バチスタ』ほど面白くないのよね(おい)それをよくここまで映画として作ったと思う。

元々原作は、救急救命センターの現状や、つまらないメンツにこだわる大学病院の教授たち、動いてくれない厚生労働省など、医療の現場が抱える問題を、一般の人にも手っ取り早く知ってもらおうとするために書かれたような小説だ。小説からは速見の焦燥感が伝わってくるのだけど、映画ではそこまでは伝わってこない。せめてあの重要なセリフは田口ではなくて、速見に言わせてほしかった。

速水のキャストについては許容はできたが、良い!とまではいかなかったな。イメージと違う人を選んじゃったのを役者が無理矢理合わせようとしてるって感じ。だからセリフ回なんかは悪くないのよ。でもそんな撫肩な人は速水じゃありません(おい)花房主任(羽田美智子)や如月翔子(貫地谷しほり)はイメージ通だったんだけどなぁ。

文句は書いたけど、せめてあと1作『ナイチンゲールの沈黙』までは映画化してほしいなと思う。小夜役のキャスティングが難しそうだし、観客動員数からしても本作で終了な予感はするんだけど・・・。
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ロックンローラ('08イギリス)-Feb 24.2009
[STORY]
ロンドン。街の小悪党ワンツー(ジェラルド・バトラー)とマンブルズの2人はロンドンの裏社会を牛耳るレニー・コール(トム・ウィルキンソン)に騙され多額の借金をしてしまう。そんな時、会計士のステラ(タンディ・ニュートン)がワンツーに強盗の仕事を持ち込む。ワンツーたちは金を奪って借金を返済するが、その金はロンドンでビジネスを始めようとしているロシア人がレニーに渡すものだった・・・。
監督&脚本ガイ・リッチー(『スナッチ』
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『スナッチ』以来、ヒットに恵まれず駄作の烙印を押され続けていたガイ・リッチーが製作にジョエル・シルバーを迎えて久々に『ロック、ストック』シリーズ的な犯罪群像劇を撮った。
というわけで私も久々に彼の作品を見に行った。ストーリーもテクニックも過去作品と同じパターンかもしれないけど、やっぱり面白い。もういいじゃん、下手に作風変えたりしないでずっとこれでいいよー、とリッチーに言ってあげたい気持ちになった。

マフィアに騙された町のゴロツキが悪女の口車に乗せられて強盗するところから事件は始まり、そこへロシアンマフィアや汚職警官や泥棒なども関わり、相手を騙したり出し抜いたりして金が動いていく。さらに今回はロシアンマフィアが持っている1枚の絵画がさまざまな人物の手に渡っていく。この展開が『ロック、ストック〜』な感じで「そうよこれよこれー!」な気分。最後にその絵がある人物に渡った時、思わず「そうきたか!」と唸ってしまった。

演出はスタイリッシュだけど登場人物たちの行動はおバカだったり泥臭かったりして、そのアンバランスさがまた魅力。ストーリー展開は早すぎて話を理解するまでにちょっと考えちゃったりして追いつくのが大変なところもあったほど。でもその流れに慣れてしまったせいか、ジョニー(トビー・ケベル)が出てくるところでのスローテンポにイライラ。彼が何でここで出てくるのか分かってなかったせいもあるが、ここも他のシーンと同じくらいのテンポで見たかった。

クレジットはジェラルド・バトラーがトップになっているけど、彼の出番は主役と言うには少なすぎるのでファンはガッカリかも。じゃあ誰が主役かというと難しいなぁ。語り手のマーク・ストロングも顔を見せているシーンは少ないしね(カッコ良かったけど)印象的なのはマフィアのボスを演じたウィルキンソンだ。出演していることは知っていたけど、彼がレニーを演じていると気がついたのは映画が始まってしばらくたってからだった。声の調子や喋り方が私が知っているウィルキンソンと違ったし、頭髪もアレだし足が不自由という設定もあってか、まるで別人。さすが名優!
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ホルテンさんのはじめての冒険('07ノルウェー)-Feb 24.2009
[STORY]
ノルウェー鉄道の運転士ホルテン(ボード・オーヴェ)は67歳になり定年を迎えることになった。ところが退職前夜に同僚たちが開いてくれた送別会でアクシデントがあり、翌朝遅刻をして担当の列車に乗り遅れてしまう。それ以来、ホルテンは様々なアクシデントに遭ったり、奇妙な人と出会うようになる。
監督&脚本ベント・ハーメル(『キッチン・ストーリー』
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『キッチン・ストーリー』の後に監督した『酔いどれ詩人になるまえに』はノルウェー映画ではなかったので見なかったんだけど、本作は再びノルウェーを舞台にした作品ということと、予告を見て面白そうだったので見てみた。

うーん、ちょっと期待とは違う映画だったかな。予告ではホルテンさんがトラブルに巻き込まれるところをピックアップして紹介しているので、テンポのよい映画に見えてしまうんだけど、実際はもっとスローテンポ。トラブルは立て続けに起きるわけじゃなくて、一呼吸、いや二呼吸くらい置いて(笑)起きていくのだ。ホルテンさんの性格や生活からしたらこのテンポでもじゅうぶん目まぐるしいのかもしれないけれど、早いテンポで生活している自分にとっては、もうちょっと早くてもいいのになぁ〜なんて思ってしまうのだった。あ、それと邦題は『冒険』と付いているので(原題は『O' HORTEN』)余計な期待をしちゃったというのもあるな。

それからホルテンさんの性格がいまいち掴みづらかったのも、上手くノレなかった理由の1つになるかな。頑固で生真面目なおじさんを想像していたら決してそうではなく、自分の生活を崩したくないというこだわりは持っているようだが茶目っ気もあり、でも何を考えているのか分からないという不思議な人物。次の行動が読みにくいのが面白いといえば面白いんだけど、時々イライラッとさせられるというか・・・こっちが分かりやすさを求めすぎなんだろうなぁ。

ホルテンさんが変わった人たちと出会い、自分も変わろう!と行動を起こすところはすんごいビックリして、このまま天国に行っちゃうという話なのか?!と正直心配しました。あ、そうか、これはファンタジーなんだ!と思わないとちょっと受け入れがたいかも。あーなんかこれも理由の1つになっちゃうか。本作は全体的に自分好みじゃなかった。

列車が雪の中を走るシーンは、車内から映したところも空撮もどちらも美しくてうっとり。車両のデザインも、頑丈そうだけどおしゃれで、もっと内部を見たくなった。寒そうだけど、大雪のノルウェー鉄道に乗って旅をしてみたくなった。
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チェンジリング('08アメリカ)-Feb 22.2009
[STORY]
1928年ロサンゼルス。電話会社で働くクリスティン(アンジェリーナ・ジョリー)が仕事に行っている間に、息子のウォルターが自宅から姿を消した。5ヵ月後、警察からウォルターを保護したという連絡が入りクリスティンは会いに行くが、全く違う少年がウォルターだと名乗った。警察に別人だと言うが取り合ってもらえず、ロス市警のジョーンズ警部(ジェフリー・ドノヴァン)は彼女を精神異常者だとして精神病院に収容してしまう。かねてからロス市警の腐敗を批判してきたブリーグレブ牧師(ジョン・マルコヴィッチ)はクリスティンを救い出そうとする。
監督クリント・イーストウッド(『硫黄島からの手紙』
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1920年代にロサンゼルスで実際に起きたゴードン・ノースコット事件を元に映画化。 題名のチェンジリング(Changeling)というのは“取り替え子”という意味。
第61回カンヌ国際映画祭出品作品。第81回アカデミー賞で主演女優賞(ジョリー)と撮影賞、美術賞の3部門でノミネートされた。

実話を元にした話ということは映画の宣伝で知っていたけど、まさかこんな酷い事件が元だったとは知らなかった。ロス市警がクリスティンにやったことはもちろん酷いんだけど、ゴードン・ノースコット事件の凄惨さに胸をえぐられたような気持ちになり、ロス市警の横暴は私の中では霞んでしまった。特にサンフォード少年が怯えながら事件を供述するシーンは、殺される少年とノースコットに協力させられたサンフォード、どちらの子も本当に可哀相で、思わず手を組み、少年たちの冥福を祈るように見てしまった。サンフォード役(エディ・オルダーソン)の子の演技も真に迫っていて、キャストの中では一番引き込まれた。

だからアンジェリーナ・ジョリーもまた、私の中では霞んでしまったかな。見る前までは、予告で見た限りでは彼女がオスカーを取るかも?なんて思ってたんだんけど、見終わってから「受賞はない」と確信。20年代当時のメイクのせいもあると思うんだけど、表情が数パターンしか見られず演技の幅も感じられず、ハッとさせられたのは最後に諦めないと微笑むショットくらい(この時の笑顔は救いのない映画だという感想を一気に吹き消した素晴らしいシーンだ)あと精神病院の医師に暴言を吐くところは妙にキマっていた(笑)やはり20年代の女性よりも現代女性を演じるほうがハマるようだ。
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20世紀少年<第2章> 最後の希望('09日本)-Feb 14.2009
[STORY]
2000年に起こった“血のおおみそか”から15年後の2015年。“ともだち”はテロリストから世界を救った救世主として崇められていた。そんな中、高校生になった遠藤カンナ(平愛梨)は、一人暮らしをしながら失踪した叔父の遠藤ケンヂ(唐沢寿明)を待ち続けていた。そして“ともだち”を批判して問題児扱いされてしまう。同じクラスの小泉響子(木南晴夏)とともに“ともだちランド”へ送られたカンナは“ともだち”の正体を知ろうとするが・・・。
監督・堤幸彦(『20世紀少年』
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2008年8月に公開された第1章の続編で、1章のラストから15年後から始まる。相変わらず駆け足な展開だけど、1章も2章も区切りのいいところで終わりになっているところがいいじゃないの。原作とは違う展開になる箇所がいくつか出てきたが、カンナがともだちランドに送られるところや、ともだちが○○されるところなどは違ってても違和感なく、うまく纏めたと思う。だけど(ここからネタバレ)ナショナルキッドのお面を取ったらヨシツネって・・・。(ここまで)その改変はやめてと言いたい。オッチョの勘違い、または何か理由があってそういうことになったということにしてほしい。何だか心配になってきたぞ・・・。お願いだから3章でヘンな方向に行かないで(願)

今回のそっくりは小泉響子とホクロの巡査(佐藤二朗)ね。木南晴夏は演技はもうちょっとだったけど、あの表情は原作通り。そしてホクロは予想以上だった。みんな原作マンガを読んで演技を考えているんだろうか。春波夫(古田新太)は見る前からピッタリだと確信していたので驚きまでには至らず。それとマライア(前田健)もそっくりではないけど上手いキャスティングだった。コンチ(山寺宏一)はあの首のシワの寄りかたがマンガの通り。さすが山ちゃんだわ。

結末も含めて、今回は“繋ぎ”なので何とも言えない部分が多いな。3章を見てちゃんと感想を書きたい。
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