Movie Review 2004
◇Movie Index

お先にどうぞ('03フランス)-Jun 17.2004─フランス映画祭横浜2004
[STORY]
パリのブラッスリーでメートル・ド・テルを務めるアントワーヌ(ダニエル・オートゥイユ)は、公園で首を吊ろうとしていた男ルイを助けて家に連れて帰る。そして素人の彼にソムリエの仕事を与えるなど世話を焼く。しかしルイは自殺の原因だったブランシュという女性が忘れられずにいた。そこでアントワーヌは彼に内緒でブランシュに会いに行くが・・・。
監督&脚本ピエール・サルヴァトーリ(『めぐり逢ったが運のつき』)
−◇−◇−◇−
フランス映画祭横浜2004上映作品。オートゥイユは2004年セザール賞の最優秀男優賞ノミネートされた。

オートゥイユのハトが豆鉄砲食らったような顔が好きなので(笑)今回のコメディも楽しみにしていた。そして予想通りのリアクションの数々に大笑いさせてもらった。たぶん本人笑わせようとは思ってないはずだ。大真面目に役に没頭している真剣な顔。でも傍から見たらそれが面白くて仕方ないのだ。「俺って面白いでしょ?」って顔で演じてる(でもあまり面白くない)役者さんたちに見習ってもらいたいくらいだ。

神経質ですぐにキレてしまうルイを精一杯フォローして、何とか立ち直らせようとするアントワーヌ。しかしブランシュに会って、彼女に惹かれてしまうのだ。最初はブランシュとルイを結びつけようと内緒で動いていたのが、次第に彼女と親しくなり、そのことをルイに知られたくなくて内緒にしてしまう――そこが自然で上手いなと思ったし、ある時はアントワーヌとルイの立場が逆転してしまうところも面白かったと思う。
でも(ちょっとネタバレになります)個人的には、私はアントワーヌはルイとブランシュのキューピット役でいて欲しかったんだなあ。彼女に惚れてしまうけど、彼女はルイを見直すようになるっていうように。アントワーヌがルイを助けた褒美として彼女を手に入れた(だって4千ユーロも出したもんね)っていうように見えちゃったのよねー。しかも恋人クリスティーヌより若い女だし、損して得取れって感じですか〜。(ここまで)ということで、ストーリーは素直に楽しく見ることができませんでした。

日本での公開は微妙だなぁ。ところで『お先にどうぞ』って誰が誰に言ってるんだ?
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下妻物語('04日本)-Jun 9.2004オススメ★
[STORY]
こちらへ。
監督&脚本・中島哲也(『Beautiful Sunday』)
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すいません、2回見てしまいました(笑)あとパンフと、何と原作本も買ってしまいました。サントラを買うかどうか迷っています。DVDが出たらたぶん買います。以上、報告でした(笑)

いや、正直言って前回見た時も「コレだ!」という感覚はあったんだけど、原作者がアレだし、とか、フカキョンとか引っかかる部分があって素直になれなかった部分があった。でも見て2日ほど経ってまた見たくなり、気が付いたら『Smap Short Films』に入ってる中島さんの作品(『下妻』が気に入った人はこれも見れ!)を繰り返し見てたり、濱マイクシリーズ借りてみようかな・・・と、すっかり中島ワールドにハマっていたようだ。ホントにえらいすんません。反省してます。

さて、2回目になるともう素直にゲラゲラ笑っちゃいました。イチゴ登場や龍二登場で流れる音楽にいち早く反応して「来た来た来たー!」と大喜びし、前回ちょっとダメだった桃子の啖呵シーンも、これはこれでヨシと思えるようになった。あと前は気がつかなかったけど、今回「なるほど」と思ったのは

(ネタバレ)
◆妃魅姑のシーンがアニメだったのは、それがウソの話だったから実写じゃなかったということ。アニメも唐突で最初馴染めなかったけど、ウソならばアニメでいいわけだ。
◆桃子が車に轢かれて落ちたのがキャベツの上。桃子がイチゴに「今日からこれがあなたのお友達です」と渡したのがキャベツ。友達代理だったキャベツから本当の友情に目覚めた桃子へバトンタッチされました(笑)
◆お金欲しさにダメオヤジにホラ話を聞かせてはお金をせびりまくっていた桃子。その特技で妃魅姑と閻魔伝説の大ボラ話をぶちかました。

(ここまで)

ところで海外でも『カミカゼ・ガールズ』のタイトルで公開するそうじゃないですか。でも日本人にしかウケなさそうなネタがオンパレードで果たして大丈夫なのか?ジャスコは多分大丈夫だろう。ベル(ピー)チやユニ(ピー)サルスタジオジャパンは大ウケかもしれない。でも尾崎豊や水野晴郎は分かんないだろうなー。よく洋画を見ていて、固有名詞や著名人の名前を使ったギャグが出てきて分からずに悔しい思いをしてきたが、今回は逆の立場なわけで、それが何だか嬉しい。うふふふふ。
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21グラム('03アメリカ)-Jun 5.2004
[STORY]
クリスティーナ(ナオミ・ワッツ)はある日突然、夫と2人の娘を交通事故で失い、やめていたドラッグに再び手を出すようになる。事故を起こしたのは前科持ちジャック(ベニチオ・デル・トロ)で、一旦は逃げたものの、妻の反対を押し切り自首する。心臓病で余命1ヶ月を宣告されていたポール(ショーン・ペン)は、クリスティーナの夫の心臓を移植されて回復するが、ドナーの身元が知りたくなり調査会社に依頼する。そしてとうとうクリスティーナに声を掛ける。
監督アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(『アモーレス・ペロス』)
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脚本は監督の前作『アモーレス・ペロス』でも脚本を担当したギシェルモ・アリアガ・ホルダン。第76回アカデミー賞で、ワッツが主演女優賞、デル・トロが助演男優賞にノミネートされた。

なんつーか微妙・・・な映画でした。深いようでいて浅いような、意味があるようで無いような、わざと小難しくしてるだけじゃない?って意地悪く思ってしまった。時間軸をバラバラにしてパズルを嵌め込むような手法を使っているんだけど、コレ時間通りにしたらものすごく退屈な映画だっただろうな。この手法で見たところで途中で話の先が分かってしまい、しかも捻りや騙しが何もないのでやっぱり途中で退屈しちゃったんだけども。

1つの交通事故がきっかけで運命が変わる3人の関係の描き方が物足りなかった。クリスティーナがジャックに殺意を抱き、ポールに協力を求めるところは時間軸がバラバラなせいもあるけど唐突に見えてしまった。というか、この手法で誤魔化されてしまったように思う。またジャックは3人の命を奪ったが、1人の命を救ってもいる。ジャックと、彼に助けられたポールが対峙した時のシーンはもっとそこを強調すべきだったんではないかなと思う。私、『ミスティック・リバー』を見た時にも薄々感じてたけど、ショーン・ペン苦手かもしれない。今回も数学者に見えなかった上にマッチョすぎて心臓病にも見えなかったことにムカムカしてしまった。それがショーン・ペンであるから許されてるみたいなところもちょっとね・・・(でも『プレッジ』は嫌いじゃないです)

良かったのはデル・トロ。演技もだが役柄も良かったんじゃないかな。キリスト教への信仰を試される男の揺らぎが良く出ていた。教会で荒れる若者をたしなめていたのが、事故を起こして犯罪者となってしまった後で、その若者から見られるシーン。このシーンが一番印象深い。また自殺しようとして失敗するところ、ポールから銃を突きつけられるところなど・・・思い出すのは彼のシーンばっかりだなぁ。あ、多少トロ様贔屓も入ってますけどね(笑)
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下妻物語('04日本)-Jun 5.2004
[STORY]
茨城県下妻市。ヤクザな父親が起こしたトラブルが原因で関西から引っ越してきた竜ヶ崎桃子(深田恭子)は、ロリータファッションを極めるために代官山まで2時間半かけて通いつめていた。ある時、洋服代を稼ぐために父親が関西でやっていた有名ブランドのニセモノをインターネットで売ることを思いつく。そして現れた買い手は時代遅れなスケバンスタイルの白百合イチゴ(土屋アンナ)だった。友達なんていらないと思っていた桃子だが、いつのまにか桃子の家に頻繁にやってくるイチゴのペースに巻き込まれていく。
監督&脚本・中島哲也(『Beautiful Sunday』)
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原作は嶽本野ばらの同名小説。バラエティなどで見る著者のキャラクターが苦手なため作品を読む気しなくて、映画も同じように見るつもりはなかったんだけど、監督が中島哲也だし音楽は菅野よう子だし、思ったよりも面白いという噂を聞いたので見に行ってみた。

結果は見て正解だった。ファーストシーンでいきなり独特な作品の世界に連れ去られてしまったので、あとはもう空を飛ぼうがアニメが出ようが何でも来い!(笑)って気持ちになる。CMを数多く手がけている監督のせいか長回しがなく、細かいカットを繋げていくので飽きさせない。しかもその1つ1つの映像が凝っていて、一瞬で終わってしまうようなシーンでは勿体無いと思ってしまうほどだった。

また、この手の映画だと映像だけが奇抜で中身スカスカな作品も少なくないが、意外にもちゃんと1本筋が通っていて驚いた。まずビックリしたのが桃子というキャラクターだ。ロリータファッションというとどうしても甘ったれた子をイメージしてしまうが、桃子はとても男前だ(笑)人間は1人で生きて1人で死んでいくものだ。本当に大事なものは貸さない、貸したものはどうでもいいものだから返して貰わなくていい。そう言い切る。そんな桃子に会ってイチゴは格好ばっかりのヤンキーよりも根性が座ってる!と気に入ってしまうのだ。2人が次第に本当の友達になっていくところを、ギャグだの小ネタだのを挟みながらもしっかり描いていて、見終わった後、とても爽やかな気持ちになれた。

深田恭子は今までにないくらいのハマり役だったが、クライマックスで声が出てなかったところが少々減点。ここがバッチリ決まってたらなぁ・・・。良かったのはジャスコ、牛久大仏、ベル(ピー)チ、貴族の森、桃子の弁当――って人じゃないじゃん!
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キッチン・ストーリー('03ノルウェー=スウェーデン)-May 29.2004オススメ★
[STORY]
1950年代初め。スウェーデンの家庭研究所が、ノルウェーとフィンランドの独身男性のキッチンでの行動パターンを調査するため、調査員を派遣していた。ノルウェーの田舎町で1人暮らしをしているイザック(ヨアキム・カルメイヤー)の元にも調査員のフォルケ(トーマス・ノールストローム)がやってくるが、調査に応募したことを後悔しているイザックはなかなかドアを開けない。数日後、ようやくフォルケを家に入れるが、キッチンを使わずに寝室で料理を作ったりと気を許さない。しかしひょんなことから口をきくようになり、仲良くなっていく2人。調査中はお互いに会話してはならないという決まりがあることを知りながら・・・。
監督&脚本ベント・ハーメル(『卵の番人』)
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1950年代当時、スウェーデンの家庭研究所が実際に調査した台所動線図を見た監督がこの作品のアイデアを思いついたという。テニスの審判席みたいな監視台に座って、その家に住む独身男性の行動を記録する調査員。時折被験者と調査員の目が合ってはそらす。この奇妙な調査方法と、2人の気まずい空気が何とも言えない独特なおかしさを作り出した。

ポスターや公式サイトに使われている、テーブルでくつろぐイザックと監視台からそれを見ているフォルケの写真に惹かれて見に行ったんだけど、この設定だけが面白くて、ストーリー自体はそうでもないかもしれない・・・という不安があった。でもいい意味で裏切られた。この設定だけで何度も笑わせられたのはもちろんだけど、ちょっとホロリときたし、最後はニッコリと微笑んでしまうステキな映画だった。あ〜見て良かった。

イザック、フォルケ、そしてイザックと仲のいいグラント、3人ともいい歳のくせに子供っぽいところがあって茶目っ気たっぷりで憎めない。特にイザックとフォルケが仲良くなっていくのを見て、グラントがヤキモチ焼いちゃうところがおバカ過ぎて可愛いらしい。この微妙な関係のグラントとフォルケのことをおざなりにしないで、見てる人に伝えてくれたところが良かった。予想してた通りだったけど、予想通りだったのが嬉しかった。

残念だったのは、スウェーデンとノルウェーの歴史と関係についての知識がないので、理解できないセリフがいくつかあったこと。それから、こっちは字幕を読んでるので分からないんだけど、それぞれノルウェー語とスウェーデン語を話してて会話が通じてるんだよね?(似てる言葉らしいが)言葉が理解できたら会話がもっと面白かっただろうなぁ。

イザックの家のキッチンのデザインも良かったんだけど、やはり一番はフォルケが引っ張ってきたキャンピング・カーだ。形と色の可愛らしさにも惹かれたけど、何よりも中がどうなっているのか知りたくて、中のシーンが出てきた時には食い入るように見た(テーブルと椅子とベッドくらい?トイレはあるんだろうか)狭いけど大人2人くらいは大丈夫なのね。このキャンピング・カー、やはり本国でも大人気で、譲ってほしいという依頼がたくさんあったらしい。結局、維持費が掛かるので処分してしまって、今は1台しか残ってないのだそうだ。もったいない!
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