Movie Review 2004
◇Movie Index

しあわせな孤独('02デンマーク)-Jan 23.2004
[STORY]
セシリ(ソニア・リクター)とヨアヒム(ニコライ・リー・カース)は結婚の約束をしている恋人同士。しかし彼はセシリの目の前で交通事故に遭い、半身不随となってしまう。ヨアヒムはセシリに罵声を浴びせ、彼女を拒絶する。ヨアヒムを轢いたのは、彼が入院した病院で外科医をしているニルス(マッツ・ミクルセン)の妻マリーであった。責任を感じたニルスは悲しみに暮れるセシリを慰め、携帯電話の番号を教える。
監督スサンネ・ビア(CMや短編を経て長編初監督)
−◇−◇−◇−
ドグマ95の28本目の作品で、デンマークで8人に1人が見たという大ヒット映画。恋人が半身不随となり拒絶された女が代わりに求めたものは・・・と、同じデンマーク出身でドグマ95を立ち上げたラース・フォン・トリアー監督の『奇跡の海』っぽいんですが(もちろん監督はこの作品を意識していたとは思う)こちらは奇跡は起きません。

ある意味ファンタジーだった『奇跡』に対してこちらはとてもリアル。登場人物1人1人のキャラクターが際立っていて、彼らの行動や言葉に違和感がない。ヨアヒムの介護をする女性のまなざしと、両親の不穏な空気に戸惑う娘の表情は特に良かった。一番多感な時期にこういうことが起きるのって本当につらいだろうな・・・と思いつつ、修羅場シーンがすごく面白かったです(鬼)他人事だからだろう、思わず「さぁ面白くなってまいりました!」とニヤニヤしてしまった。
あとは何と言っても 白衣+メガネ=萌え(きゅーん)←バカ
ニルスすてきー。色気満載でよかったです。ヒットしたのも分かるわ〜(ホントに分かってんのかよ)

ええと、真面目な感想も書きますか。
しあわせから一転、衝撃的な出来事によって訪れた不幸。しかしそこから少しずつ前を向き始めていく登場人物たちを見て、正直言って修羅場が面白すぎたせいで少々気が抜けてしまったんだが(笑)、でもこれも悪くない。ヨアヒムにだけは拍手で送ってやりたい気分になった。がんばれ。そして『しあわせな孤独』というタイトルの素晴らしさに、配給会社にも拍手。この映画にすごくよく合ってると思う。

しかし途中途中で顔のアップや瞬きだけを撮影した映像が挿入されるんだけど、これが鬱陶しかった。ヨアヒムのシーンでは効果的だったけど、他のシーンではあんまり意味ないっていうか、使い方に統一感がなくて気持ち悪かったな。なんか実験でもしたつもりだったんだろうか。

劇中歌が良かったので、サントラ購入。
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イン・アメリカ/三つの小さな願いごと('02アイルランド=イギリス)-Jan 10.2004
[STORY]
アイルランドからニューヨークへやってきたジョニー(バディ・コンシダイン)とサラ(サマンサ・モートン)夫妻と2人の娘は、薬物依存者たちが住む安アパートに移り住む。役者志望のジョニーは毎日オーディションへと出かけ、教師だったサラはアイスクリームショップで働き始める。生活は苦しかったが、亡くした息子を忘れるために頑張っていた。一方、娘たちは同じアパートに住んでいて、いつも叫び声が聞こえる部屋を訪ね、マテオ(ジャイモン・フンスー)という男と知り合いになる。
監督&脚本ジム・シェリダン(『マイ・レフトフット』)
−◇−◇−◇−
ジム・シェリダンがアイルランドからアメリカへ移住した時の実体験をベースにした自伝的映画。脚本は監督の2人の娘ナオミとカーステンも書いており、アカデミー賞の脚本賞にノミネートされている。さらにサマンサ・モートンが主演女優賞、ジャイモン・フンスーが助演男優賞にノミネートされた。

物語は2人の長女クリスティーン(演じるのはサラ・ボルジャー)の視点で描かれる。彼女は亡くなった弟フランキー(シェリダン監督の実弟と同じ名前)から言われた「願いごとには願っていいことといけないことがあり、願えるのは三つだけ」という言葉を信じていて、家族がピンチになると、そっと心の中で念じるのだ。彼女は彼女なりに家族を支えているのだ。この願いについては書かないが、3つとも客観的に見れば、彼女が願わなくてもうまく行ったかもしれない出来事ばかりだ。でもそこがかえって素晴らしい。もう2つ目のシーンなんてどんなアクション映画よりもドキドキしたよ!貧乏家族のくせにギャンブラーなところがちょっとムカつく(笑)日本の貧乏人とは感覚が違うみたいだね。みんなで映画を見に行くなんて(しかも『E.T.』だよ!私が小学生の時、どんなに親に頼んでも連れて行ってくれなかった映画だ。うちはそんなに貧乏じゃなかったけどさ)苦しくても楽しむ時間も必要だ、っていう考え方なんだろうなぁ。

妹のアリエル(演じるのはサラの実妹エマ)の無邪気さと、最初は恐ろしかったマテオが心を開き、一家と馴染んでいく様子もすごく良くて、彼の言葉1つ1つに感激した。クリスティーンが歌う「デスペラード」でちょっと涙ぐんだりもしたし・・・。

しかーし!1つだけ「なんだそりゃ!」なシーンがあった。それは(ここからネタバレ)出産費用をマテオが払ったというところ。マテオは家族を励まし、死にそうになっている赤ちゃんに命を吹き込むだけで、それだけでもう十分に役目を果たしていると思う。費用は働いて少しずつ返していく、っていうナレーションでいいと思うんだけどな。出産費用の分割払いなんてできるか!と突っ込まれたとしても、全額肩代わりというミラクルよりは私は受け入れられる。映画見に行くのを控えれば払えるぜ、きっと(←『E.T.』見れなかったのを根に持ってるのか?)(ここまで)
御伽噺じゃないか、と言われてもやっぱりダメ。特にそれまでがとても良かったので、反動が大きかった。だからこの脚本がオスカー取ったら正直微妙だ。
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ゴシカ('03アメリカ)-Jan 1.2004
[STORY]
ウッドワード女子刑務所精神科病棟で心理分析を行うミランダ・グレイ(ハル・ベリー)は、土砂降りの雨の中で、道に立ちすくむ少女に出会い気を失う。目覚めるとそこは自分が勤めている精神科病棟のベッドだった。彼女は夫のダグラスを殺した罪で逮捕されたというのだ・・・!
監督マチュー・カソヴィッツ(『クリムゾン・リバー』
−◇−◇−◇−
『13ゴースト』などを製作したダークキャッスル・エンターテインメント作品。カソヴィッツのハリウッド初進出映画だ。ホラーというよりサスペンス色が強めかな。

オールナイト映画の3本目ということで、ところどころ意識が飛んでたりしてるんですが(ダメじゃん)けっこう面白かった。カソヴィッツの前作を見てるせいか「ちょっと成長した?」なんて(笑)ハリウッド映画らしくしようとして失敗した前作に比べてだいぶスマートになったというか、これで勉強できただろうから次はいい作品が撮れるかも、と偉そうなことを思ってみたり。でも『クリムゾン・リバー2』はもう彼が監督じゃないのよねー(涙)

ストーリーは、深く考えなければいいんだけど、あとで思い返してみるとかなりヘンな話。今までにあった映画のいいところをツギハギしたような内容と言われても仕方ないようなモノ。特にペネロペ・クルス演じるクロエの身に起きていたことなんて滅茶苦茶だ。ラストも絶対におかしいって!

今までは医者として患者の訴えを科学的に治療していたミランダ。しかし一夜にして患者として収容されてしまった。医者に訴えを理解してもらえないもどかしさや苛立ち、そして自分も今までは同じようにしてきたのだ、と振り返るあたりまではすごく良かった。これで話を最後まで引っ張っていっても良かったのね。いろいろゴタゴタくっつけすぎちゃったみたい。
映像はシャワーシーンが印象的。水が落ちていくところをストロボを炊いたように見せてるのがとても幻想的で綺麗だった。実際シャワーを浴びているのはあまり綺麗でないご婦人たちなんだけどね。情緒不安定なミランダの目から見た情景という感じがじゅうぶん伝わった。
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ミスティック・リバー('03アメリカ)-Jan 1.2004
[STORY]
ジミー、デイブ、ショーン、3人の少年たちがいつものように路上で遊んでいると、警察だと名乗る男たちが現れ、親に送り届けるとデイブを乗せて走り去った。4日後、誘拐されたデイブが戻ってくるが、彼の身に何が起こったのかは誰の目にも明らかだった・・・。
そして25年後、ジミー(ショーン・ペン)の娘が何者かに殺された。事件を担当することになったのは刑事になったショーン(ケビン・ベーコン)、そして容疑者として浮かびあがったのはデイブ(ティム・ロビンス)であった。
監督クリント・イーストウッド(『真夜中のサバナ』
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原作はデニス・ルヘインの同名小説。2001年の『このミステリーがすごい!』の10位にも選ばれているベストセラーミステリー(あ、私は読んでません)監督のイーストウッドは、本作では出演はしていない。

ストーリーも、映像も、役者においても、いい出来の映画だと思う。ただし好みは激しく分かれそう。私の感想はというと、はっきり言って好きな話じゃない。後味がすごく悪い。後味が悪い映画は嫌いじゃないんだけど、この映画は受け入れられなかったな。それに役者の演技も好みじゃなかったので、かなりつらい映画だった。ストーリーについては原作者に言えよ、って感じなので置いておくとして、気になったのは絶賛されているショーン・ペンである。

たしかに上手いし、存在感はあるし、ジミーという役にぴったりの俳優だ。でもぴったりすぎて見ててちっとも面白くない。この俳優がこんな役をやるのか!っていう意外性が見たかったな。演技も思った通りの演技で、意外性なし。まぁ、ひょっとしたらこれはわざとなのかもしれない。ストーリーがあまりにもキツイのでリアルな演技をするとますますキツくなりそう。過剰だったからかえって気になってしまい、冷めた目で見れたのでね。

良かったというか、男3人よりも印象的だったのは、デイブの妻セレステを演じたマーシャ・ゲイ・ハーデンと、ジミーの妻アナベスを演じたローラ・リニーだ。特にアナベスはジミーよりも肝が据わっててすごい迫力だった。裏主役は彼女かも・・・。いざとなるとやっぱり女は強いのね。
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レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード('02アメリカ)-Jan 1.2004
[STORY]
ある出来事があってから、世間から身を隠している伝説の男エル・マリアッチ(アントニオ・バンデラス)。そんな彼を引きずり出したのはCIA捜査官のサンズ(ジョニー・デップ)だった。サンズは麻薬王バリロ(ウィレム・デフォー)が計画するメキシコ大統領暗殺を阻止してほしいと、エル・マリアッチに依頼する。
監督ロバート・ロドリゲス(『スパイキッズ』
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1995年に製作された『デスペラード』の続編。

前作見てるし、内容も単純だろうから大丈夫だとタカをくくって解説やあらすじなどを全く読まずに見たんだけど、私がバカなだけかもしれないけど、途中までさっぱり話が見えなくて混乱してしまった。まずサンズの役柄が全然理解できなくてさ。「CIAだって?また冗談ばっかり(くす)」って信じなかったのがいけなかった。本当にCIAだったのね。で、CIAだと分かってからも、彼の目的というのがよく分からなくて、分かるまで全然楽しめなかった。失敗したー。

でもロドリゲスってやっぱり小道具というかスパイグッズみたいなの好きだよね。意味のない義手とかマシンガンギターにはまたまた笑わせてもらった。でも一番笑ったのはそんな凝ったもんじゃなくて国旗のシーンだった。あれはギャグと取っていいんだよね?ガン・アクションは正直見慣れちゃったせいかそれほど驚きも感激もなく。

ベストシーンは予告でも流れたけど、回想シーンで登場のサルマ・ハエック演じるカロリーナとマリアッチが逃げるシーンだ。壁づたいに降りていくところがハラハラしたし面白かった!けど、前作ではサルマってすごいいい女!って思ったんだけど、本作では痩せちゃったせいか華奢すぎていまいちだったな。今回はエヴァ・メンデスのほうがカッコ良くてセクシーだった。唇がいいです。ただそれほど出番がなかったのが残念。もっと彼女を見たかった。

そろそろスパイキッズでもなくマリアッチでもない、ロドリゲスの新作が見たいなぁ。はっ!まさか『パラサイト2』とか?やめてー。
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