Movie Review 2001
◇Movie Index

耳に残るは君の歌声('00イギリス=フランス)-Oct 28.2001
[STORY]
1920年代のロシア。ユダヤ人の少女フィゲレは父と祖母と貧しい暮らしをしていた。父はアメリカへ渡り、裕福になったら2人を呼び寄せようと決意し旅立っていった。しかし村が襲われ、逃げたフィゲレはイギリスへと辿り着いた。そこでイギリス人夫婦に引き取られ、スージーと名付けられた。
10年後、スージー(クリスティーナ・リッチ)は父を探すためにアメリカへ行く決意をし、旅費を稼ぐためパリでコーラス・ガールとして働くことになる。
監督&脚本サリー・ポッター(『タンゴ・レッスン』
−◇−◇−◇−
リッチ&デップ出演だったのと『タンゴ・レッスン』がちょっと良かったので見てみた。今回はポッターは出演してないが、そのかわり『タンゴ〜』に出演していたパブロ・ベロンがちょこっと出てて、劇中でダンスを披露している。

冒頭いきなり出てきた少女フィゲレ(演じたのはクローディア・ランダー=デュークいう子役)を見て、出始めの頃の“卓球少女愛ちゃん”にソックリだと思った。二重瞼といい口元といい似てんのよ。そんな子が10分経たないうちにクリスティーナ・リッチに大変身。愛ちゃんも将来リッチみたいな顔になっちゃうんだね(ならねえよ)
今回のリッチの顔は半分綺麗で半分ヤバめ。角度やメイクによってはすごい美人だし、髪型がおかしいと顔までおかしい(笑)でも私はそんな落差のある人が大好きなんで、今回は特に楽しめたな。

歌の上手いブサ美人なスージーが父を探す物語が主軸だが、彼女が渡ったパリで繰り広げられる4人の男女の物語でもある。リッチ以外のキャストも個性派揃い。ダンサーでスージーとルームメイトになるロシアからやってきたローラにケイト・ブランシェット。メイクのせいかマジでロシア系に見えたな、オーストラリア人なのに(笑)
そしてスージーと恋に落ちるジプシーのチューザーにジョニー・デップ。ジプシーといえば『ショコラ』でもそうだったけど、あっちはもうちょっと小奇麗で粋な兄さんでしたが、こっちは野性味溢れる白馬の王子様(笑)ジプシーじゃないけど『デットマン』もそんなような役だったな。この人は本当に流浪の民がよく似合う。
イタリア人オペラ歌手でローラと同棲するようになるダンテにはジョン・タトゥーロ。ごめん、私タトゥーロが歌うシーンは失笑せずにはいられませんでした。だってメチャメチャ口パクで滑稽だったんだもん。これってわざとか?

えー与太話はこれくらいにして率直な感想はというと「おばさまたちが好きそうな映画だなぁ」とまず思った。Bumkamuraで公開するのは大正解。数奇な運命を辿る子ではあるけど、ソフトタッチだよね。早い話がもっと彼女を虐めてやれ、と思いました(非道)その一歩手前で引いてる感じが上滑りしてるように見えた。

それから見た人のほとんどが感じることだと思うんだけど、かなり気になるので書こうかな。
(以下ネタバレ)スージーがようやくのことでパリからアメリカへ渡ったところから異様に展開が早くなかったですか?多分ニューヨークに着いたんだと思うんだけど、そこから父親のいるハリウッドまであっという間に移動しててびっくり。お金そんなに持ってたのか(笑)それまでの過程がとても長かっただけに、いきなりアッサリしすぎだよ。あと15分くらいもうひと苦労見せてもらっても構わなかったのに(日本語ヘンだな)でも父親と会えた時には泣けました。(ここまで)

音楽については詳しいことは分からないけれど、テーマ曲はとても印象的。曲のタイトルが邦題にもなっている(原題は『THE MAN WHO CRIED』・・・泣く男か)
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

春の日は過ぎゆく('01韓国=日本=香港)-Oct 28.2001<2002公開>
[STORY]
録音技師のサンウ(ユ・ジテ)はラジオ番組のDJ兼プロデューサーのウンス(イ・ヨンエ)とともに取材旅行に出かける。それが縁で2人は付き合うようになるが、ウンスには離婚経験があり、相手を素直に愛することに臆病になっていた。
監督&脚本ホ・ジノ(『八月のクリスマス』
−◇−◇−◇−
『八月のクリスマス』が大好きだったので、これも期待して見に行った。監督の2作目にあたる作品で、日本公開版はエンディングテーマソングに松任谷由実の曲を起用している(歌詞は韓国語で歌手も韓国人)

穏やかで緩やかな雰囲気は前作と同じだが、映像的に洗練されたね。前作は全体的に野暮ったかったのが、本作は透明感が出て綺麗だと思うシーンがたくさんあった。映像センスがもちろん良くなったんだろうけど、あれから3年も経つからね。韓国の人や風景も変わったのかもしれない。

しかし内容的には、見た直後には「何だったのの?この話」と首を傾けてしまった。年下の男と離婚歴のある年上の女との恋。2人は愛し合うようになるが、なぜか亀裂が入ってしまう。この亀裂の入り方が不自然というか気まぐれもいいところで、戸惑ってるうちに置いてけぼりを食ってしまったようだ。結局よく分からないまま映画が終わっちゃって(笑)ただ、思い返してみると思い当たるところはあるのよね。

(というわけでここからネタバレ)ウンスがサンウに「私と一緒のお墓に入ってくれる?」と冗談めかして聞くシーンで、サンウが「どうかな(笑)」と答えるシーンがあったが、これもウンスが離れた理由の1つかな。サンウの愛が永遠でないならば、傷つく前にこちらから振って別れてしまおうって。でもサンウは幸せで死ぬことなんて想像できなくて曖昧にしか答えられなかったんだと思う。決してサンウへの愛が揺らいだからじゃないだろう。でもサンウは答えを聞いて、この男もひょっとしたら、と考えたのかもしれない。そうだとしたら、気持ちの行き違いって本当にこわいな。(ここまで)
と、以上のような考えに纏まって、今のところそれで納得させてるんだけど、それでもちょっとスッキリしないね。スッキリ結論を出せる問題でもないけど。

ユ・ジテは『アタック・ザ・ガス・ステーション』で人気が出て、今やハン・ソッキュを抜いて人気男優NO.1らしい。でも『アタック』に出てたことすら私は覚えてなかった。絵を描いてた人って言われて初めて気づいたという(笑)ガタイの良さとつぶらな瞳のアンバランスさがいいのかなぁと考えたが、ワタシ的にはあまり惹かれるものがないねえ。いまいち色気が足りない。

そして『JSA』で大根疑惑が浮上し(私が勝手させ)た美人女優イ・ヨンエだが、やっぱりこの人大根かも〜。言葉分からないけど、伝わることって国や言葉なんて関係ないと思うのね(じゃなきゃ邦画以外見れないもん)今回もまた私には彼女の気持ちが伝わらなかった。ウンスという女がそういう役ではあるんだろうけど、それでもスクリーン通して見えるものってあるはず。・・・美人なんだけどね。

比べちゃいけないけど、やっぱり『八月』のほうが好きだな。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

スパイキッズ('01アメリカ)-Oct 27.2001
[STORY]
冷戦の時代、スパイとして敵対していたグレゴリオ・コルテス(アントニオ・バンデラス)とイングリッド(カーラ・グギノ)は恋に落ち、結婚してスパイを引退した。それから9年後、娘カルメンと息子ジュニとともに静かに暮らしていた2人だが、グレゴリオが属していたスパイ組織から突然仕事に依頼が入る。2人は子供たちを置いて仕事に出かけたが、途中で何者かに誘拐されてしまう。カルメンとジュニは両親を助けようとスパイグッズを駆使して敵に立ち向かう。
監督&脚本ロバート・ロドリゲス(『パラサイト』
−◇−◇−◇−
こういう映画を作れちゃうロドリゲスって可愛いな、って思った。子供の頃に憧れ、想像していたであろうスパイグッズを、常識に囚われずに素直に出してしまえるんだから。かといって目線が子供だというわけでもなく、大人が見てもよくできてるなぁと感心してしまうようなハイテクグッズもあって楽しい。

ただ、そういうグッズや不思議なキャラクターに力を注ぎ過ぎたようで、それを十二分に見せるための時間を取り過ぎたんじゃないかな。ストーリーの進行が遅いように感じた(まぁ話だけ追ってたら30分で終わっちゃうと思うんだけど)短い映画であれだけ派手なのに、途中で退屈する場面もあったんだな実は。

この作品を見ながら、特にヒゲのバンデラスを見て「こういう設定の話あったよなぁ」と思ってたんだけど、あとで思い出したのが『フォー・ルームス』でロドリゲスが担当した話だった(笑)あの時もバンデラスは同じようなヒゲだったし、夫婦が留守中に子供たちが大暴れする話だったし、その子供たちは姉と弟だった。ひょっとしてあの作品を作った時から、この設定をまた使おうと考えてたかも?とりあえず続編ももう決定だとか。

あとはとりあえず好きなところを箇条書き。

 ・コルテスの家と隠れ家(住んでみてえ!)
 ・ジュニがブサカワイイ(『キッド』の子役並)
 ・チーチ・マリンとダニー・トレホはお約束(出てくるだけで嬉しい)
 ・アラン・カミングのコスプレ(何でこんなに似合うんだろ)
 ・グレゴリオの上司萌え(最近見たあの映画を引きずってるわ)
 ・エンドクレジット後のあの映像は何?(って最後は質問かよっ)
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

とらばいゆ('01日本)-Oct 27.2001
[STORY]
姉妹でプロ棋士の麻美(瀬戸朝香)と里奈(市川実日子)。2人とも同じランクで戦っていたが、麻美はサラリーマンの一哉(塚本晋也)と結婚してから調子が悪く、負けた日にはつい一哉に八つ当たりしていた。ある日、里奈が新しい彼氏の弘樹(村上淳)を連れてきた。何かと一哉の味方をする里奈や弘樹に麻美は苛立つばかり。そしてとうとうランク落ちしたら離婚すると宣言してしまう。
監督&脚本・大谷健太郎(『アベック・モン・マリ』
−◇−◇−◇−
本作もまた前作と同じような設定なんだけど、人が言い争う姿を見るのは面白いし飽きないねー。今回もまた夫婦喧嘩、恋人同士の喧嘩、そして姉妹喧嘩が楽しめる(笑)

瀬戸朝香は“ザッツ成田離婚”な演技でハマリ役。ていうか『成田』の時よりもさらに声が太く男前になって迫力あった。対する旦那役が何と塚本晋也という変り種で「ええっ?!」と思っていたら・・・一哉さんいいんだ〜(あら)
『アベック』の時もタモツいいなぁと思ったんだよね。情けなくて頼りなくて、女性から見て魅力に欠けるキャラのはずなのに、あれだけ女性がヒドイ罵倒をしても、それを受け止めてくれるというか、うまく流してくれる人なのね。麻美がすごい羨ましかった(笑)塚本さん自身の演技も上手くてさらに驚いちゃいました。

今回も会話だけで状況を一変させてしまうストーリー展開となっているが、どうしても、どうしても納得できないところがある。しかもすごい重要なところで。
(以下ネタバレします)一哉が実は将棋に凝っていたという設定。これはいけません。だって将棋について何も知らないからこそ、麻美が負けて悔しい思いをしてることに気が付かないわけで、将棋を知ってるなら、ああいう態度を取ったりしないんじゃないかと思って(将棋を知っててもプロの世界について興味なかっただけかもしれないけどね)里奈に八百長を持ちかけるのだって、将棋を知ってるならそんなこと頼むのが間違ってることぐらい分かるでしょうに。そこが納得できなかった。
それに最後の夜に将棋をさすシーンも、個人的には麻美が初心者の一哉に将棋を教えながら仲直りするほうが良かったんじゃないかなぁと思ってる。『アベック』でタモツが美都子の服を縫ってあげた時みたいな、微笑ましい気持ちになれたんじゃないかと。今回はそれがなかったんだな。
(ここまで)

こういう作品を2作続ければ普通はマンネリになってしまいがちだけど、これがこの監督の持ち味だと思うので、次回作以降もこれを貫いて欲しい。変に作風変えたりしなくていいと思う。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

トレーニング・デイ('01アメリカ)-Oct 24.2001
[STORY]
警官から刑事になり出世したいと思っているジェイク(イーサン・ホーク)は、ベテランの麻薬捜査担当の刑事アロンゾ(デンゼル・ワシントン)の下で働くことになった。しかしアロンゾの法を無視したやり方に、正義漢のジェイクはついていけない。アロンゾはそんな彼をからかいながら麻薬捜査官としてのやり方を教えていくのだが・・・。
監督アントニー・フュークワー (『リプレイスメント・キラー』)
−◇−◇−◇−
ベテランとルーキーが最初は対立するが、次第にお互いを理解しあうという“バディもの”だと思ってたんだけど、いい意味で裏切られた。詳しく書くとつまらないから程々にしときますが、こういう展開になるとは思わなかったな。面白いじゃないの。

でもいくつかの伏線の張り方があまり上手とは言えなかったし整理されてない感じもした。いちいちまどろっこしくてイライラしちゃって。でも見終わってみると、わざとそういうやり方で長い長い一日を表現していたのかな、とも思う。もう本当に長かった!アロンゾとジェイクが顔を合わせるのが朝10時で、おそらく終わりは0時過ぎくらいだと思うから14時間か。それ以上に感じた。早く一日が終わって欲しい、ジェイクを解放してあげて、とずっとずっと思ってて、終わったあとに無茶苦茶疲れてしまった。映画見てこんなに疲れたのは久しぶり。ちょっと嫌な疲れ方かも。

正義漢な役が多いデンゼル・ワシントンが汚れ役ということで注目されたわけだけど、なんか楽しそうにやってるのがよく分かった(笑)でもちょっとはしゃぎすぎたかもしれない。特にクライマックスは少し引いちゃったな。英語分からないけど、感覚として「ちょっと違う」と思った。上手いことは上手いんだけどね。イーサン・ホークは今回◎。実際自分に子供がいるからこその演技がビッと伝わってきた。

全体的な感想としては、アカデミー賞は無理だろうと(笑)

と書きましたが、デンゼル・ワシントンが見事主演男優賞を受賞しました。イーサン・ホークも助演男優賞にノミネートされてたし、2人ともごめんね。おめでとう!
home