Movie Review 2001
◇Movie Index

ユマニテ('99フランス)-May 25.2001
[STORY]
北フランスの田舎町で少女の強姦殺人事件が発生する。事件の担当となったファラオン(エマニュエル・ショッテ)は妻子を亡くしており、今は母と二人で暮らしをしている。彼は隣に住むドミノ(セヴリーヌ・カネル)に好意を抱いていたが、彼女にはバスの運転手をしているジョゼフという恋人がいた。
監督&脚本ブリュノ・デュモン(『ジーザスの日々』)
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99年のカンヌ国際映画祭グランプリ。また役者経験の全くなかったショッテとカネルが最優秀主演男優賞と最優秀主演女優賞を受賞した。本作はデュモンの長編2作目であり、1作目の『ジーザスの日々』では同じくカンヌで特別新人賞を受賞している――とまあとにかく何だかすごいんですけど、映画祭では賛否両論あり、上映中に途中で席を立つ人も多かったという。そんな興味もあって見たんだけど、確かにインパクトはあった。忘れられない映画といっていいと思う。

いろいろあるんだけど、まず刑事のくせにファラオンって全然仕事しないのね(笑)こういう事件が起こったら何をおいてもまず捜査するでしょう。それがもういきなり自転車漕いで汗を流したり、ドミノ&ジョゼフと一緒に海に遊びに行っちゃったりするの。その間にちょこっと仕事をして、また畑を耕したり食事をしに行ったりと、ごくごく普通の生活を優先してる。しかもファラオンはのんびり屋さんなので(笑)何をするにもゆったりしてて、ずっとこんな調子なので上映時間150分というのも頷けるんですわ。

さらに、事件に関しての説明はほとんどない。捜査の方法も何だか間違ってる(笑)しかも驚くべきことに、ファラオンの捜査は全く役に立たず(真面目にやってるんですよ、彼は。しかも仕事してる間は優秀に見えるんです、とても)彼の知らない間に犯人は捕まっており、どうして殺してしまったのか?とか、なぜこの人が犯人だと分かったのか?などという、見てる人なら誰でも知りたいと思うことを一切教えてくれないのです!ワヲ!(笑)

こんな話を2時間以上掛けて見せられていつもなら怒るところだけど、私はファラオンのあの瞬きもしないまっすぐな“眼差し”にやられてしまったんですね。や、別に綺麗で惚れちゃった、とかじゃなくて(どっちかっていうと彼はぶ・・・(以下略))外見も内面もすべて見透かしそうな強い視線でありながら、どこか弱さと哀しみも湛えてる、そんな目をしてるんです。冒頭、彼が転んでカッと目を見開くシーンがあるんだけど、ここでもうきてしまった(何が“きた”のかはうまく説明できないんだけど、ゾクゾクッと何かが走ったのは確かだ)彼を起用した理由がよく分かったよ。

そんなわけで話そのものはあれなんだけど、衝撃を受けたのは事実。参りました。しばらくはファラオンの目がフラッシュバックしそう。
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ベティ・サイズモア('00アメリカ)-May 25.2001
[STORY]
ウェイトレスをしているベティ・サイズモア(レニー・ゼルウィガー)は、中古車ディーラーをしている夫にいつも泣かされている。そんなベティの楽しみは天才外科医デヴィッド(グレッグ・キニア)が活躍するドラマを見ることだけ。しかしある日、夫が殺され、それを目撃してしまったベティはパニックになって夢と現実の区別がつかなくなり、自分が外科医と結ばれる運命にあると信じきり、カンザスからハリウッドへと旅立つ。
監督ニール・ラビュート(長編3作目で日本公開初)
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これ見てすぐ思い出したのはウディ・アレンの『カイロの紫のバラ』 不幸な女の唯一の楽しみは映画館に通うこと。そして何度も見るうちにスクリーンの向こうにいる俳優がそれに気付き、彼はスクリーンから飛び出して彼女と恋に落ちる――。これは完全にファンタジーだったけど、ベティさんの場合は空想シーンはあるものの、現実にありえないとも言い切れない(笑)話なのだ。

とにかくベティは自分が看護婦でデヴィットの運命の人と信じきっている。でも周りは彼女が冗談を言っているのだと思っている。特に中盤ではベティと話した相手が誤解した上に、勝手に自分なりに納得し、違う方向へと話を進めてしまう。このやりとりが何とも言えず面白かった。というか想像していた展開と全然違ってて驚いたね。脚本がうまい。

しかしベティの夫を殺した悪者2人組(モーガン・フリーマン&クリス・ロック)が彼女を追いかけるのだが、彼らのパートになると急にトーンダウンし、せっかく集中してたのにそこでふと一旦我にかえってしまう。彼らは悪い奴でも味があり憎めなかったけど、最後の最後まで私には重たく感じた。

ゼルウィガーの下膨れ困惑顔がとにかく可愛い。こういう役がまた似合うんだよね。バツイチの子持ちとか生活に疲れた主婦とか。もうせっかくなので、イメージチェンジなどせずにこのままの路線で行ってもらいたい。っていうか、すでに究極のダメ女『ブリジット・ジョーンズの日記』が控えてたな。予告で見たけどすごかった!楽しみ(笑)
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ハリー、見知らぬ友人('00フランス)-May 23.2001
[STORY]
教師をしているミシェル(ローラン・リュカ)は、妻子を連れて別荘へ向っていた。途中、立ち寄ったサービスエリアで、高校の元同級生だというハリー(セルジ・ロペス)に声を掛けられる。しかしミシェルは彼を全く覚えていない。戸惑うミシェルにハリーは「もっと話がしたい」とミシェルの別荘へと半ば強引についてくる。
監督&脚本ドミニク・モル(『INTIMITE』日本未公開)
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昨年のフランス映画祭で上映された作品(その時は『おせっかいな友人』というタイトルでした)ヒッチコック風などと言われてるのは『見知らぬ乗客』に似てるからなのね。私は未見なので全然分かりませんでした。ダメ過ぎ。今度見ます。

高校時代にミシェルが書いた詩と短編に魅せられていたハリーは、彼に再びペンを取ってもらうために彼が抱えている問題を次々と取り除いていく。その取り除き方がとにかくストレートで驚く。ミシェルの車が故障すれば新車を彼に買い与え(三菱自動車製(笑))、彼の両親がいつまでも子離れできてないと分かると後先考えずにすぐに行動を起こす(どんなことかはナイショ)
とにかく彼のために、彼の書く短編の続きが読みたいために、ハリーは頑張るのですよ。これがもう、おかしいやら恐ろしいやら。ハリーを演じるセルジ・ロペスがまたギリギリで上手いんだ。得体の知れない気味悪さを感じながらも(特に胸毛←おい)どこかピュアで無邪気な子供らしさを漂わせている。

ひょっとするとハリーはミシェルのもう1つの人格なのかもしれない、と思わせる存在になってるところが面白い。ミシェルが心のどこかで考えている、でもすぐに良心がそれを打ち消すような“子供じみた妄想に近い願望”をハリーはそのまま実行してしまうのだ。また、それは観客の願望でもあると思う(想像通りのことしてるだけじゃん、って言っちゃあそれまでなんですが)だから、彼の行き過ぎた親切に対して咎める気持ちが起こらなかったんだよね。
あと、彼らを見て微かにホモ臭を感じる人もいるだろうな(小声)ごめんなさいごめんなさい。

ストーリーに関しては、ラストはもうひとひねりを期待してたせいか、あっさりし過ぎかな?と感じた。また、ミシェルがハリーのことを全く覚えてないという設定がストーリーときちんと絡んでくると思ってたので、それが全く関係なかったのが個人的にガッカリ。なんか期待いろいろしすぎてたみたい。そういう意味では至ってシンプルな構成だったね。

ハリウッドリメイクも決定らしいけど、極端なブラックコメディーorサイコスリラーになりそうな予感。あまり期待はしてない。ハリー役は難しいだろうな。下手すると演技過剰になり単なるサイコ野郎に成り下がりそう。
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ショコラ('00アメリカ)-May 9.2001
[STORY]
フランスの小さな村にヴィアンヌ(ジュリエット・ビノシュ)とその娘がやってきた。母娘は老女アルマンド(ジュディ・デンチ)から部屋と店舗を借り、チョコレートショップを開店させる。しかし村では断食の真っ最中で、村長のレノ伯爵は彼女の店に行かないよう命令する。
監督ラッセ・ハルストレム(『サイダーハウス・ルール』
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厳格なしきたりに守られた村にやってきた女とその娘。彼女が作るチョコレートには不思議な力があり、食べた者が幸せな気持ちになるというファンタジックなストーリー。食べ物が出てくる映画はすっごい好きで、この映画は私の食べ物系映画ベストワンの『バベットの晩餐会』をちょっと思い出した。顔を崩さないように我慢しながらも、美味しい料理を食べた時に思わず頬が緩むシーンが何度もあったけど、この映画もそう。登場するチョコレートは、見た目はかなり濃くて甘そうなんだけど、食べた人の顔でその美味しさをうまく伝えている。口に入れた時に思わず顔がほころび、笑いを漏らしてしまうシーンを見ていると、こっちまで頬が緩んでしまう。羨ましい!食べたい!と何度思ったことか。

見る前に心配(?)だったのは、主演が私の苦手なビノシュだったこと。でも彼女が狂言回し的な役だったのが助かった(笑)途中、彼女中心の流れになったところがちょっとダメだったけど、黙って村人たちを観察してるあたりは好感さえ(!)持ってしまった。それにビノシュよりも注目すべき登場人物が他にたくさんいたからというのもある。盗癖があり、変人扱いされているジョセフィーヌ、娘とうまくいっていないアルマンド、そして一番注目してしまう人物は、敬虔なクリスチャンで村長のレノ伯爵だろう。村人たちが徐々に彼女に心を開き変わろうとする中で、最後まで自分を守ろうとする。そんな彼に同情を覚えつつも、彼が解放されるのを待ち望んでしまう。その解放のされ方は見てのお楽しみなんだけど、かなり笑えました。

いつも思うんだけど、この人の作品って映像というか色使いがすごくいいんだよね。『サイダー〜』の時は、林檎畑の緑にシャーリーズ・セロンが着ていた赤いカーディガンが良く映えていて綺麗だったし、この作品でも古い家々に母娘の真っ赤なコートや青いカーディガンがアクセントになっている。

フランスの話だけどキャストは各国から集められた感じ。ビノシュと娘役のヴィクトワール・ティビソル(ポネットちゃん大きくなった!)はフランス人、ジョニー・デップはアメリカ人、デンチとレノ伯爵役のアルフレッド・モリーナは英国人で、アルマンドの娘を演じるキャリー=アン・モスはカナダ人。そしてスウェーデン人のピーター・ストーメアとレナ・オリンが夫婦というのも面白かった(監督もスウェーデン人なんだよね)
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アメリカン・サイコ('00アメリカ)-May 5.2001
[STORY]
ウォール街の一流証券会社の若き副社長パトリック・ベイトマン(クリスチャン・ベール)は、高級フラットに住み、ブランドスーツに身を包み、エクササイズを欠かさない完璧主義の男。しかしそんな彼には殺人鬼というもう1つの顔があった・・・。
監督メアリー・ハロン(『I SHOT ANDY WARHOL』)
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原作はベストセラーらしいけど未読。
とにかくクリスチャン・ベールが気持ち悪くてハマり役。レオ様じゃなくて良かったね。まぁアメリカ人をイギリス人のベールが演じているっていうのは本来ならおかしいことなんだけど、よっぽどのことがなければ私なんぞ見た目で区別つかんし(笑)彼ってちょっとトム・クルーズ的奥目だしね。あの鍛え上げた肉体も最高っす(好みは別問題だけど)

また、小道具や音楽の使い方も笑える。カッコイイ名刺を競って作っては見せびらかすシーンは爆笑モノ。カードケースやその取り出し方もそれぞれ個性があって見せ場の1つになっている。ただしレストランを予約するシーンや、ビデオ撮影シーンは笑えるか笑えないか微妙なところだな。笑った瞬間にちょっと背筋が冷たくなるような、そんな感じだ。傍から見れば明らかに異常だが、当の本人たちにはごく普通のことなのだ。

そもそも彼は自分の外見と肩書きばかりにこだわっており、自分の性格は全く見えていない。他人に対してもそれしか見ていないし、見えてもいない。そして見えていないことに気が付いてもいない。だからこそ何のためらいもなく人を殺せる。人間としてみていないからだ。しかし殺人を重ねることで、見えていなかったことに気が付き愕然とする。そして自分こそ一番で、自分こそオリジナリティ溢れる人間だと思い込んでいたのに、周りの人間も自分と同じなのだと気がつくのである。これじゃあ俺の立場ないじゃん!俺の居場所はどこなんだ!とパニックに陥る話・・・と私は解釈したんだけど、どうなんでしょう?原作もこんな感じなのかなー。というのも、映画はそこまで親切じゃなかったんで。つーか、見終わった直後は「え?これで終わりなの?」という感じでした。なんだか何もかも中途半端で、自分なりに納得できる解釈をつけないと釈然としなくてそれとも単に私に理解力が足りないせい?すごい不安になってきた。・・・やっぱり原作読まなきゃダメかな。でも元を読まなきゃ分からない映画っていうのもなんですなぁ。
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