Movie Review 2000
◇Movie Index

ハピネス('98アメリカ)-Jul 15.2000オススメ★
[STORY]
長女のトリッシュは精神科医の夫ビル(ディラン・ベイカー)と子供たちと幸せに暮らしており次女ヘレン(ララ・フリン・ボイル)は作家として成功している。しかし三女のジョイ(ジェーン・アダムス)は恋人と別れ仕事も辞め、何をやってもうまくいかない。おまけに彼女たちの両親も別居することになり・・・。
監督トッド・ソロンズ(『ウェルカム・ドールハウス』)
−◇−◇−◇−
見る直前まで勘違いしてたんだけど、監督は『ベルベット・ゴールドマイン』の人だと思ってました(作品の傾向は全然違うのに)あっちはトッド・ヘインズね。名前が似てるのでつい。そんな人、ほかにもいるんじゃないかしら(私だけか?)

この映画を見てまず思い浮かべたのは『マグノリア』だ。別にフィリップ・シーモア・ホフマンが出てるからってわけじゃないよ(笑)最初は何の脈絡もなさそうな登場人物たちが、実はどこかで繋がっていて、それぞれ不幸なダメ人間ぶりを見せるというストーリー。でもはっきり言って私は『マグノリア』よりもこの映画のほうが大好きだ。同じダメっぷりでもこっちのほうが気持ち悪いし最低最悪なのに、なぜか愛らしくて憎めない。最後も『マグノリア』のような超常現象(?)に頼った結末でなく、自力で“ハピネス”を求めている。それがハタから見れば些細なことでもね(いや、ビリー君にとったら最高の幸せだろうよ(涙))

汗っかきでデブのイタズラ電話魔アレン役のホフマンばかり評判になっていて、私も彼目当てで行ったようなもんなんだが(確かに彼は彼で流石の存在感だった)実は精神科医のビルを演じたベイカーに驚かされた。最低さからいったらアレンより数段上!普段は優しい夫であり頼もしい父親だが、実は可愛い男の子が大好きで、息子の友達を狙ってしまうというとんでもない男。だけど男の子を狙う時に悪魔のように豹変するかと思えば全然そうではなく、普段と変わらないままなのがリアルなのだ。特に息子ビリーとの最後の会話には思わずのけぞった。よくぞ言った!でもサイテー!と声を掛けずにはいられない。

それに比べて女性陣が少々大人しめかな。ニコニコしながらも毒舌のトリッシュや、どこまで行っても不幸なジョイも、設定はいいけど他の人から比べれば大人しかったし、次女のヘレンや母親のモナは存在感もなくそれほど不幸とも思えなかった(ヘレンなんて美人女流作家っていうだけで不幸ではありませんな)そのかわり、ヘレンやアレンと同じマンションに住んでいて、アレンに恋をしているクリスティーナ、彼女は最高でした。
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ボーイズ・ドント・クライ('99アメリカ)-Jul 15.2000
[STORY]
1993年アメリカ・リンカーン。ブランドン(ヒラリー・スワンク)は本名をティーナといったが、性同一性障害で、髪を短くして男の格好をしては女の子をデートに誘っていた。そのため地元の住民からはレズビアンだと罵られていた。ある時、ブランドンは酒場で知り合った男女に連れられてネブラスカへやってくる。そこでラナ(クロエ・セヴィニー)と出会い、彼女に恋をするが・・・。
監督&脚本キンバリー・ピアース(初監督作)
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実話を元に脚色された作品で、主演のヒラリー・スワンクは第72回アカデミー賞をはじめ、数々の主演女優賞を受賞している。

確かにスワンクは素晴らしかった。外見の努力と、ブランドンという人物の表現力に関しては秀逸だ。泣いちゃったもん。でもね、回りの誰もが気付かないほど“男”には見えなかった。というか聞こえなかった、と書くべきか。問題は声なのだ。残念ながら声の高い男と捉えることもできなかった。わざと低い声を出してる風にも感じられなかったんだけど、あえてそれにはこだわらなかったのかな。それ自体、問題じゃないのかもしれないけど、ブランドンが実は女だった!という衝撃の事実が発覚するシーンを見ても「普通分かるって」っていうツッコミをつい入れたくなってしまった。

またストーリーに関しても、はっきり言って馴染めなかった。何て言うのかな、最後には悲劇がやってくるんだよーっていうのを誇示しすぎてるように見えちゃったのね。また悲劇へ向かわせる過程の描写が、だんだん雑になってたと思うし、明らかに脚色しすぎじゃないかと思えるシーンもいくつかあった。別に事実の通りに描かなくったってぜんぜん構わないんだけど、脚色したことと事実との辻褄を合わせようとして、余計におかしくなっちゃってたみたい。

だけど、この作品に馴染めない一番の理由は、女性が見るには目を覆いたくなるようなシーンがあって、それが嫌だったからなのだ。難癖つけてたみたいで申し訳ないけど。できればもう見たくないなぁ。ジョンとトムが憎たらしい。
でも驚いたのは、7年前とはいえ、進んでると思ってたアメリカがこんなにも保守的で、このような事件が起きていたんだ、ということ。ネブラスカ州という土地柄にもよるんだろうけど。これが都会ならば認められていたのかもしれないね・・・。

クロエ・セヴィニーは意外と良かった。独特の雰囲気があって、いっつもジャンキーとかアル中っぽい役ばっかりなんだけどさ、ブランドンに対する愛情は、この映画の救いだったと思う。
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M:I-2('00アメリカ)-Jul 12.2000
[STORY]
IMFのスパイ:イーサン・ハント(トム・クルーズ)は、製薬会社が極秘に開発した“キメラ”というウイルスとワクチンを盗み出すよう依頼される。イーサンはキメラを狙う犯罪グループのリーダー、アンブローズ(ダグレイ・スコット)の元恋人で泥棒のナイア(サンディ・ニュートン)をアンブローズの元へ送り込むが・・・。
監督ジョン・ウー(『フェイス/オフ』
−◇−◇−◇−
前作のムチッとした体型に板前のような髪型から一転、いつのまにやら格闘家に転職したトム君。スパイ映画というよりはアクション映画として『スパイ大作戦』はもちろん、前作もすっかり忘れて、全く別の映画として捉えたほうがいい。でもワイヤー使ってビルに忍び込むシーンは唯一前作の名残りがあるかな。
どうでもいいけどトム君の顔にキックが飛ぶたびに、鼻がもげるんじゃないか、奥目がさらに埋没するんじゃないかと気が気じゃなかった。余計なお世話だが。

『フェイス/オフ』がめちゃめちゃ良かったので期待してみたんだが・・・思ったほどではなかった。いいシーンはところどころあるんだけど、全体からすると期待はずれ。一番良かったトム君のロッククライミングシーンを最初に持ってきちゃったのが敗因か?あと、M:Iという枠の中で作らなければならず、自由にできなかったかもしれない。製作に携わるトム君の要望とかもあっただろうしね。やはりオリジナル作品ではないとダメか。

キャラクターもいまいち。女泥棒ナイアとイーサンが恋に落ちて、ラブシーンがまぁあるんだけどさ、これがぜんぜん色気ない。ニュートンは動きがしなやかで華麗な泥棒という雰囲気はあるけど色っぽくはないし、トム君は色気というより熱気が出ちゃってるから。またこの2人だけ盛りあがらずに、アンブローズとの三角関係をもっと濃く描いてくれたら盛りあがったかもね。

それに敵ボスがインパクトなさすぎる。ダグレイ・スコットって誰やねん?と思ってたら、あの『エバー・アフター』のボンクラ王子だった。じゃあしょうがない、と急に納得(笑)トム君に釣り合う敵ねぇ。どうせならアンソニー・ホプキンスにやってほしかったよ。アクションは無理でも敵としては貫禄十分。いや、アクションもひょっとしたらイケるかもよ(笑)トム君より強かったりして。

なぜかイーサンの時計がGショックなのだ!スパイなんだからもっといろいろ機能のついた時計しようぜー。というかカシオさんがIMFのために作った特注品だったら面白い。
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サイダーハウス・ルール('99アメリカ)-Jul 9.2000
[STORY]
孤児院で生まれたホーマー(トビー・マグワイア)は、幼い頃から院長のラーチ医師(マイケル・ケイン)を手伝い、、次第に産婦人科の知識を得ていく。ホーマーはラーチのことを尊敬していたが、法律で禁止されている堕胎手術を行うことには反対だ。ある時、軍人のウォリーが恋人キャンディ(シャーリーズ・セロン)とともに堕胎手術のため孤児院にやってくる。
監督ラッセ・ハルストレム(『ギルバート・グレイプ』)
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法律で禁止されていること、人を裏切ること、人としてやってはいけないこと――さまざまな嘘や罪を人々が犯していく。ストーリーとしてはかなりキツイし、表現によってはドロドロになりそうな話なのに、なぜか後味が爽やかな作品だった。『ギルバート・グレイプ』も肥満の母親が死んで、家ごと燃やすシーンがあったが、あれも辛いと思いながら不思議と爽快感が残った。なんでしょうね〜。もちろんついてはいけない嘘もあるけど、つかなければいけない嘘もあるわけで、大人になるにつれてその“ルール”が分かっていく。特にこの作品の大人が子供につく嘘は暖かくてとても優しい。ホーマーやラーチが子供たちに言う、おやすみの挨拶も大好きだ。

またこの作品の場合、ほんわかした気持ちになったのはトビー・マグワイアのおかげ?かもしれない。あの、もさっとしたガチャピン顔に騙されてるんだろーか。何にも考えてなさそうなんだよね、この人。いや考えてるのかもしれないけどそれがほとんど見えない。そんで罪のない笑顔をそこらじゅうに振りまいちゃってる。嫌ってるわけじゃないです念のため。なんか得してるヤツだな(笑)っていう印象だ。
それから風景にも助けられている。雪景色の孤児院、青い海、緑の生い茂ったリンゴ園、と地味ながら色彩豊かで美しく、つい和んでしまう。

第72回アカデミー助演男優賞を取ったマイケル・ケインは、確かに素晴らしい。『リトル・ヴォイス』での過剰な演技(あれはああいう役柄なんだけど)もよかったが、今回のラーチ医師役は自然で本当に医者のような説得力があった。ただホーマーが孤児院を出てから、出番が減ってしまったのは残念。ホーマーが成長していく物語なのだから仕方ないが、もっと大きな見せ場があるのかと期待してしまった。

原作は未読。原作者のジョン・アーヴィング自ら脚本を書いてるので、原作を壊すようなことはないんだろうけど、ところどころ端折ってる?と思える部分もあった。また噂によるとラストなどが原作とかなり違うようなので、読んでみたいと思っている。
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白い花びら('98フィンランド)-Jul 1.2000
[STORY]
田舎町でつつましく暮らす農夫のユハ(サカリ・クオスマネン)とその妻マルヤ(カティ・オウティネン)そこに都会からシェメイッカ(アンドレ・ウィルムス)という男がやってきた。彼は車が故障しユハに助けてもらうが、マルヤを見初め、一緒に都会へ行こうと誘う。最初は断るマルヤだったが・・・。
監督&脚本アキ・カウリスマキ(『浮き雲』
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フィンランドの国民的作家ユハニ・アホ原作で、フィンランドではすでに三度も映画化されている作品らしい。原作とは設定が多少違うようだけど。また、この作品はモノクロのサイレント映画で、バックに音楽は流れるし、車のドアを閉める音などは挿入されているものの、セリフは一切、音に出ない(喋ってるシーンはあるけど口パクなのだ)そして時折、黒い画面に文字だけでナレーションやセリフが入る。

キャストはカウリスマキ映画に欠かせない役者たちだが、最初はさすがに登場人物とセリフのギャップに面食らった。だって、いかにもお似合いのユハとマルヤの間に入るシェメイッカのセリフがさ(正確ではないので念の為)
「君のような若い娘があんなみすぼらしい男と」(え?マルヤもかなりオバサンですけど)
「あの男とは年が離れ過ぎている」(そんなに離れてるとも思えないぞ)
「私とのほうが」(いや、あんたが一番年寄りだっつーの)
とまぁツッコミ100回くらい入れてしまいました。でもだんだんそんなこと考えなくなっていった。決してミスキャストとは思わない。むしろ彼の映画にはこのキャストがベストだった。

原作を全く知らなかったので、この作品も『浮き雲』と同様に、いくつもの困難を乗り越えて小さな幸せを取り戻すストーリーだと思っていた。が、その予想は見事に裏切られ、最後まで辛く悲しかった。だから見終わったあと、ユハとマルヤがバイクに乗って市場を目指し、仲良くキャベツを売る冒頭のシーンを思い返した。他の映画なら悲劇のまま終わっても後味悪くてもあまり気にならない。でもこの人の映画だと、ホントに辛いんだな。

にしてもやっぱりどのシーンも切り取ってポストカードにしたいくらい、風景と人物たちのバランスが良く、ぴったりはまってて好きだ。
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