Movie Review 1999
◇Movie Index

肉屋 THE BUTCHER('98イタリア)-Sep 23.1999
[STORY]
美術館に勤めるアリーナ(アルバ・ビアレッティ)は指揮者の夫と2人暮らし。しかし夫が海外公演のために家を空けた後、アリーナは過労で倒れてしまう。医者から肉を食べるように言われたために毎日肉屋へ通うアリーナは、ある時、主人のブルーノ(ミキ・マノロヴィッチ)と店員の情事を目撃する。それ以来、アリーナはブルーノのことが気になって仕方なくなってしまう。
監督&脚本アウレリオ・グリマルディ(『シチリアの娼婦たち』)
−◇−◇−◇−
今回もまたタイトルに惹かれて見に行った。過去にも『かぼちゃ大王』とか『普通じゃない』などタイトルに惹かれて行った映画はけっこうあるんだけど、この映画タイトルも私のツボでした。何たって『肉屋』だもん(爆笑)普通なら『肉の歓び』とか『肉欲の総て』など、いかにも官能的なタイトル付けそうなのに(もし、こういうタイトルだったら見なかったハズ。いや、でもビデオ化したらこういうタイトルになるかもしれないね)それが『肉屋』だもんなー。しかも『THE BUTCHER』つきだもんなー(わはは)配給会社さんはエライと思います。もともと原題の『IL MACELLAIO』も肉屋のことらしいから正しいといえば正しいが。

以前から日本人の皮膚の下は水でできているように見えて、欧米人の皮膚の下には肉が詰まってるように私は見えていた。脂肪と濃い〜血でできてるって感じ。この映画を見てやっぱりそう思った。とにかく肉々しいんだよね。アリーナはスレンダーなナイスバディなんだけど、やっぱり肉っぽい。だから女性の身体を、肉を解体するかの如く責めまくる肉屋の主人という構図は、日本ではちょっと無理なシチュエーションに思える。しいて日本でやるなら魚屋が女体盛りとか・・・いやいや、げっふんげっふん。

えーと(汗)真面目な感想を。結局アリーナは肉屋に何を求めていたのかよく分からない。夫とでは得られない快感を求めていただけなのか?それともそれ以上のものを願っていたのだろうか。これはポルノではなく文学作品として原作は有名らしいから、彼女の心情がたっぷり描かれていて、女性達の共感を得ているハズ。それが何となくこれではただ夫がいなくて寂しい女が、夫の留守中に家に男を呼んで楽しんじゃいます、みたいな、いかにもポルノっぽい話に落ち着いてるような気がしてならない。

また、前半のタルいユルい展開もちょっと飽きる。本来ならここでアリーナの気持ちを繊細に描いていくべきだったのに、単なる後半の1番いいところの繋ぎっぽい。私の後ろの席の人は何度か見てるんでしょうか。最初からさんざ鼾かいて寝てたくせに、後半から急に静かになったもんね。そしてコトが終わったところで映画自体も力尽きたって感じだった。それで十分じゃないか、と言われればそれまでなんだけど、女性としてはそれ以上の、精神的なものを求めてしまうのだ。
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リトル・ヴォイス('98イギリス)-Sep 19.1999
[STORY]
口うるさい母マリー(ブレンダ・ブレッシン)と2人暮らしのLV〜Little Voice(ジェイン・ホロックス)は、死んだ父親の形見のレコードを聴くだけの毎日を過ごしている。電話工事をしにきたビリー(ユアン・マクレガー)はLVが気になるが、彼女は心を開いてくれない。ある時、マリーの愛人でプロモーターのレイ・セイ(マイケル・ケイン)が泊まりにきた。そこで偶然LVの歌声を聞いたレイは彼女を売り出そうとする。
監督マーク・ハーマン(『ブラス!』
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イギリスで人気の舞台を映画化した作品で、舞台でLVを演じたホロックスがこの作品でもLVを演じている。歌は全て吹替えなしで彼女自身が歌っている。
私には彼女のジュディ・ガーランドの歌真似が、似てるか似てないかよく分からないんだけど(マリリン・モンローは分かる。えー・・・あまり似てません(笑))とにかく歌はうまい!特にドレスを着て舞台で歌うシーンは、それだけでも見た価値があった!!と断言できるほど素晴らしく感動的。それにこの監督、『ブラス!』でも思ったけど演奏シーンを撮るのが上手いから、その相乗効果もあっただろうな。歌うLVと、ノリノリで演奏するバンドメンバー、観客たちのカットがホントにタイミング良く撮られている。むちゃくちゃ生き生きしてるんだなあ。

* ここからは内容に触れるので読みたくない方は飛ばしてください

だからもったいないの。どうしてこのシーンをラストに持ってきてくれなかったんだろう〜(悔)でも、この映画は内気な少女(って年でもないけど)が、実はものすごい才能の持ち主で、スターダムにのし上がっていく話ではないのだ。歌うことで死んだ父親と向き合い、内に篭っていたLVが、青年ビリーと出会ったことで父離れをし、外の世界へ飛び立とうとする、そういう話なのだった。だから彼女にはもう歌は必要ないかもしれない。
そういうテーマがしっかりあるので「ストーリーが良くない」とは言えない。ただ「自分の期待していた話とは違っていた」のね。これはしょうがない。

でもね、こんな尻つぼみな話でいいのか?!と思った。あの大盛り上がりのステージシーン以上の感動を期待してただけにそりゃないよ。
プロモーターのレイが、実は町の中だけの有名人で、借金までして彼女に賭ける姿は何とも哀れで、マリーに対して本心をぶちまけ、敗北の歌を歌い上げるシーンを見て、その人間臭さにある意味感動はした。そしてマリーもレイに見放され、家も焼け、さらにLVにも罵倒されてボロボロになったハズ。そんな2人を救ってやらず、とってもあっけないエンディングを迎える。これには正直言って肩透かしだった。「え?これで終わり?」なんとなく客席の雰囲気もそんな感じだった。まるで『スターウォーズ』1回目の時のような(笑)そんな気分だった。
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サイコ('99アメリカ)-Sep 19.1999
[STORY]
不動産事務所の秘書マリオン(アン・ヘッシュ)は、妻子ある恋人サムと新しい生活を始めるため、会社のお金40万ドルを横領して逃走した。途中降り出した豪雨により彼女はあるモーテルに泊まる。モーテルの主人ノーマン・ベイツ(ヴィンス・ヴォーン)は病気の母と2人暮らしで、モーテルの経営は彼1人がやっていた。
監督ガス・ヴァン・サント(『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』
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もちろんこの映画を見る前に、ヒッチコックのオリジナル作品は見ている。ご存知の通り、本作品は完全リメイク。脚本は年代を1998年に置き換えたことと、マリオンが横領したお金が4万ドルから40万ドルに変わっただけ。いくつか映像が加わってるらしいが(私にはよく分かりませんでしたー)カメラの位置や動きはオリジナルに忠実に撮られている。この作品の撮影監督はクリストファー・ドイル。

どうしてガス・ヴァン・サントはこの映画をこうまで忠実に撮ったのか?それが話題というか問題になってるようだけど、映画を見てみて私は「ヒッチコックと同じように撮ってみたかったんだろうね。ただそれだけだったんだろうね」と思った。きっとヒッチコックを超えてやろうなどとは思ってないだろう。彼を敬愛してるからこそ、彼と同じ体験がしたかったに違いない。ある意味フェチではないかな。もちろん、彼以上の作品に仕上げようなどとも思わなかったハズ(笑)その通りになったけどね。結局「ヒッチコック作品は素晴らしい!」という再認識できる映画なのかもしれない。

だからあえて比べたくはないけれど、目に付くのはやっぱりキャスト。これはあとで述べるとして、次に脚本だ。1998年で交換台を通して電話掛けるか?(笑)アメリカって田舎に行くとそんなになっちゃうわけ〜?お金のゼロを1個増やすよりもまず削るセリフだったろう。そして忠実に撮った映像は、白黒ではよく分からなかった建物や部屋の調度品などをちゃんと見ることができた、という意味で良かったと思う(ヒドい?)でも白黒よりカラーのほうが怖いなぁと思う箇所もあって、なかなか新鮮だったかもしれない。

ノーマン・ベイツの役は、誰がやってもダメだったろう。それならいっそ無名の新人、まだ擦れないような若い俳優にやらせるべきだったのでは。V・ヴォーンは殺人鬼の役をやったようなヒトだよ。見るからにアヤシイ彼がやってどうする!(特に上唇がアヤシイ(笑))
ストーリーが分かっていても、ベイツが驚きながらもマリオンの死体を処理するシーンでは、観客が「可哀相に」と同情するくらい思わせなきゃダメ。アンソニー・パーキンスがモップで掃除している後姿には思わず同情しちゃうんだ、知ってても。せめてそれができる俳優さんなら良かったのに。

でも1番解せないのは彼女の恋人サム役のヴィゴ・モーテンセンが全裸だったってこと(笑)もちろんオリジナルは違う。そんなに身体に自信あんのか。かなりおしり汚かったのにね。
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セレブリティ('98アメリカ)-Sep 19.1999
[STORY]
記者のリー(ケネス・ブラナー)は今までの生活を変えようと、結婚16年の妻ロビン(ジュディ・デイヴィス)と離婚し、小説や脚本を書いてはスターに売りこんでいた。一方、離婚のショックから立ち直れないロビンだったが、ひょんなきっかけでTVディレクターのトニーと出会い、TV局の仕事を始めるようになる。
監督&脚本ウディ・アレン(『世界中がアイ・ラヴ・ユー』
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今回は珍しくアレンが出演してない映画で、変わりにアレンそっくりなブラナーが主役だった。神経質で、口篭もりながら言い訳ばっかし言っている。これには最初「おお!」と思ったけど、これはアレンのあのショボいルックスだからこそ許せるのであって(笑)ムチッとしたブラナーにやられるとだんだんウザくなってくる。イヤだ、こんな男。

奇しくもセレブリティに憧れ、自分もそうなりたいと野望を持ったリーがいつまでたっても冴えなくて、逆に不幸のどん底まで落ちて神経メタメタになったロビンが徐々にセレブリティに近づいていくところが面白い。たぶんこんな風になるんだろう、と早々と想像がついたけどそれでも十分に楽しめた。特にロビンがステップアップしていくところが良かったな。キャストの中でも、私の1番はロビン役のデイヴィスだったし。新しい彼が完璧過ぎて不安になり、娼婦にご教授してもらおうなんて可愛い。絶対、幸せになりなさいよ!とずっと応援してしまった。

この元夫婦の対比を見せながら、業界の内訳やパロディを盛り込み、豪華キャストでお贈りする一級のエンターテイメント!・・・なハズなんだけど、どうも軽快さに欠けてたし、こういう業界にしてはお上品過ぎたんじゃないのかな。興味のない相手に対しては、適当に誤魔化したりあしらったり、というのは日本とちょっと似てるかも。これがスマートなNYスタイルなんでしょうか。ハリウッドの内幕映画なんかはもっと汚く描かれているよね。かなり物足りなかった。

その中で1番汚れてたのがレオ君で、実際もこんなことして話題にならなかったっけ?(笑)という迫真の演技(?)を見せてくれてるが『タイタニック』で彼のファンになった人はガッカリだろう。私はファンじゃないんで、どっちかっていうとこっちの彼のがリアルで(失礼)良かったっすね。
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アウト・オブ・タウナーズ('99アメリカ)-Sep 15.1999
[STORY]
ヘンリー(スティーブ・マーティン)とナンシー(ゴールディ・ホーン)は結婚24年目の熟年夫婦。しかしヘンリーは長年勤め上げた会社をクビになっており、妻に内緒でにニューヨークで再就職の面接を受けることになっていた。ナンシーはそうとは知らず一緒に同行。大都会ニューヨークへ期待を膨らませるが、2人を待ち受けていたのは次々と襲い掛かる災難ばかりだった。
監督サム・ワイスマン(『ジャングル・ジョージ』)
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旅行に行ってました。そんで帰りの飛行機の中で見た映画っす。ちなみに往路では『エントラップメント』をやってたんだけど、睡眠を取っときたかったので全く見ませんでした〜。それにゼタだし(笑)

復路だったから良かったけど、往路だったら絶対に見たくない映画だ。先月のプログラムだったらしい『恋は嵐のように』もそうだけど、この作品も飛行機が目的地にきちんと到着しない。ニューヨークへ行くはずが天候不順でボストンに到着し、その後も災難続き。預けた荷物は届かないは列車には乗り遅れるはレンタカーは故障するはお金は盗まれるはカードは使えないは・・・ふぅ(息切れ。でもこれがまだまだ続くんだ)とにかく一生分の災難が降りかかってくる。まぁ半分は彼ら夫婦の迂闊さがいけないんだけど、これから旅を楽しもうとする人たちには不安になっちゃっいそう。「彼らのようにならないよう、気をつけなきゃ」って思えればいいけど(笑)

災難や迂闊さを全部笑わなきゃいけないんだろうけど、これでもかこれでもか!とぶつけてくるので、気の毒だったりアホ過ぎたりしてて笑うに笑えない。場所がニューヨークな所為か『ホームアローン』の2を見てるような気分。「もういいです!カンベンしてくださーい!」って懇願したくなった。日本語吹替版だったから会話が大げさ過ぎて疲れたというのもあったが。

S・マーティンもG・ホーンも好きだけど、ホントに何のヒネリもなくいつもの通り。こういう作品は得意、お手のもの!って感じだった。ヒドイ話ではあるけど役者陣に安定感があるのでつい最後まで見ちゃうし、安直過ぎるがいいラストではあった。ま、こんなもんだろうな〜。
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