Movie Review 2001
◇Movie Index

ハムナプトラ2 黄金のピラミッド('00アメリカ)-Jun 10.2001
[STORY]
1933年。リック(ブレンダン・フレイザー)とエヴリン(レイチェル・ワイズ)夫妻は、アレックスという8歳になる息子と共に遺跡の発掘調査をしていた。そこで黄金のブレスレットを発見するが、それを嵌めていたアレックスが何者かに誘拐されてしまう。リックとエヴリンは息子を救おうと誘拐した者たちを追いかけた。
監督&脚本スティーブン・ソマーズ(『ハムナプトラ 失われた砂漠の都』)
−◇−◇−◇−
前作は結局劇場で見そびれて、WOWOW初登場の時に見た。この手の映画には珍しく展開がのろく、主演のフレイザーのもっさり具合ともあいまって、全体的にまったりした雰囲気の作りになってたけど、本作ではまったり感が全然なくて、間髪入れずに危機を持ってくる展開になってたね。でも、これでもか!ってどんどん詰め込んでくるんだけど、瞬く間に消えていくので胃にはもたれない感じ。っていうか見終わった後になんにも残らないね。まぁこの手の映画のそこがいいところなんだけど。

まったり感がなくなったのは、ぐずぐずしたり逃げたりするシーンが減ったから、というのもあるね。エヴリンなんてずいぶん腕っぷしが強くなった。いきなり剣の達人になってるし、子供産むと変わるのか?(そういえば『ターミネーター』のリンダ・ハミルトンがパート2でマッチョになってたよね。お約束なの?)それと危機を作ってしまう“やらかし役”だったエヴリンのお兄ちゃんが何にもやらかさないんだもん。無駄なシーンがないのはいいことだが、コミカルさが減ってしまったのは少し寂しい。お兄ちゃんは常に脇でチョロチョロしててもらいたいもんだ(笑)

オープニングとエンディングはカイル・クーパーが担当してるらしく、時々現れては消えるヒエログリフや、文字が砂嵐のように渦を巻きながら流れていったりして、いつもながらすごい凝ってる。終わったらすぐに席を立たずにしっかり見ろ!と恫喝したくなりました。映画は場内が明るくなるまで終わりじゃないんだぞ。
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誘拐犯('00アメリカ)-Jun 10.2001
[STORY]
金に困っていたロングボー(ベニチオ・デル・トロ)とパーカー(ライアン・フィリップ)は、大富豪のチダック夫妻の子供を代理出産をするロビン(ジュリエット・ルイス)を誘拐し、身代金を要求する。しかしチダックは裏社会にも通じており、運び屋ジョー(ジェームズ・カーン)を使って2人を追いつめようとしていた。
監督&脚本クリストファー・マックァリー(『ユージュアル・サスペクツ』の脚本家で初監督作)
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生まれる前の子供を誘拐して大金をせしめようと企んだ2人のゴロツキ(死語)だったが、誘拐した相手のバックがヤバかった。そこから始まる追う者と追われる者との銃撃戦がまず見物の1つ。
そしてチダック夫妻や部下たちにも秘密があり、それが少しずつ明らかになっていくところも見所になっている。特に後者はありがちな関係から意外なものもあり、それらがすべてセリフによって明らかになってしまうのがちょっとな、と思っていたのだが、最後はセリフではなく目つきや行動で分からせるところがあり、そこが面白かった。

そのほかにも密かに好きなシーンが二個所。モーテルの前で撃ち合う場面で、人々が突っ立ってそれを眺めていて、終わったと同時に何事もなかったかのように戻っていくシーン(人が死んで倒れてるのによ?)日本じゃ考えられない(笑)また、ジョーの部下がやっぱりみんな年寄りだったこと。ダッサイジャンパー着たオヤジがわらわら出てきて、大丈夫か?と思っていたら銃の腕前がめちゃくちゃ良かったりして、やっぱ年の功なのかしらね。

でも不満もけっこうある。チダック夫妻周辺の人間関係に重点を置きすぎたのか、主役2人についてはキャラが定まってないっていうか、生い立ちについてもそれほど触れられないし、なぜそんなに銃を撃つのがうまいんだ?とか(笑)疑問は多い。でもベニチオはそういう足りない部分も自分の感性や経験でカバーしてる感じがした。ライアンは言われた通りのことしかできてないが(エラソー(笑))

あと身も蓋もないことだけど、やっぱこの人は脚本だけにしといたほうがいいのでは(あらっ)自分の頭の中ではすっかり話が出来上がってしまってるようだが、それを実際に映像化する力が足りないように思えた。映像そのものの面白さはほとんどなし。妙に説明的だったりして、画的には平板な印象だった。まぁこれは何本か撮るうちに解消されていくんでしょう。でもこの話を撮りなれた監督で見たかったとも思う。
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Stereo Future('00日本)-Jun 2.2001
[STORY]
2002年。時代劇で斬られ役ばかりしている圭介(永瀬正敏)は、女優の美香(麻生久美子)に惚れられ若侍役に抜擢されるが、うまくいかない。一方、圭介と別れたショックで口がきけなくなってしまったエリ(桃生亜希子)は植物に触れることで少しずつ癒されていくが、ある時、2人は偶然再会してしまう。
監督&脚本・中野裕之(『SF サムライ・フィクション』
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前作はけっこう楽しめたのに、本作はこれ映画じゃないでしょ。実はこういうのが一番嫌いだったりする。

売れない役者が役者を辞めてまっとうな職につこうとするのを恋人に咎められ二人は別れる。男はそのまま役者を続けるが、売れっ子女優の口利きでいい役をもらえるが、女優のヒモみたいになる。そこにムショ帰りの悪友がお金を借りにやってきて・・・とまあ、昔からあるような手垢のついた泥臭い話を、中野流の、彼のとびっきりのセンスで近未来風にアレンジした、オシャレでポップでキッチュな話なわけですよ。んもう、これがアート丸出しでCMかプロモっぽいシーンばかり。

主演の永瀬からして、彼はしっかり演技するというより自然体が売りのアート系でしょ、桃生はモデルだし、美香の姉役で前作に続き緒川たまきも出てるんだけど、前作では着物にヅラだったので何とも思わなかったが、今回は本来の彼女の姿(笑)が拝めるのが辛くてね。しかも顔ゆがんでるし(やべっ)

また花形役者を演じる竹中直人は笑えるがクドイ。自由にやりたいようにやらせてるんだろうな。でもそうであってもある程度のサジ加減は必要だと思う。ここはここで悪ふざけが過ぎてやっぱり映画じゃないもんなぁ(あまり線引きはしたくないし、するもんじゃないと思うけれど、やはりこれは映画とは思いたくない)
その点、同じ斬られ役の吹越満(『サムライ・フィクション』の時と扮装は同じだ)は自ら加減を知ってるのか、メリハリがきいててタイミングもうまい。こういう人をやはり軸に持ってこないと、ストーリーがきちんと進行せず、グダグダになってしまうのかもしれない、と思った。個性的な人ばかりを出すのは面白いけど、纏める力がなければダメだ。
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シックスパック('00フランス)-Jun 2.2001
[STORY]
パリで女性ばかりが襲われる連続殺人事件が発生。刑事のナタン(リシャール・アンコニナ)はアメリカへ渡り、犯人が“シックスパック”と呼ばれる殺人犯であると確信する。そして犯人に罠を仕掛けるため、女性捜査官マリーヌ(キアラ・マストロヤンニ)が囮となるが・・・。
監督&脚本アラン・ベルベリアン(『パパラッチ』)
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意欲は感じるし、いろいろチャレンジしてるんだけど、それらすべてがことごとく失敗している。しかも、この手の映画を多数製作し、すごい作品も生み出しているアメリカを見下してるように見えたんだよな。でも残念ながらそれらに全く届かないばかりか、アホさ加減を露呈しちゃってる。ざまをみろ(やべっ)
犯人が恐ろしく頭のいい奴で刑事たちがどんなに頑張っても捕まえることができない、ならまだしも、頭悪すぎて取り逃がすんだよ。劇中、ナタンが「俺達はバカだ」というセリフを言うのだが「うん、そうだね」とツッコミを入れたのは言うまでもない(笑)

ストーリーもさることながら、演出も悪いと思った。『羊たちの沈黙』のようにナタンがとっ捕まってる連続殺人犯と対峙するシーンがあるんだけど、この緊張感のなさは何だ。つーか会った意味があったんだろうか・・・。犯人が“シックスパック”と呼ばれる理由を話すシーンも、本来なら「なるほど」と思わせなきゃいけないはずなのに、ブラックでもアメリカンジョークでもない意味不明の言語(笑)になっていた(翻訳が悪いとは思えない。たぶん元が悪い)てゆーか“シックスパック”ってナニ?
あと、単に車を走らせてるシーンなのに恐怖感を煽る音楽がガンガン鳴ってうるさい上に、そこから流しても意味がないじゃないかってツッコミを何度も入れたのは言うまでもない。

そうだな、いいところも書かなきゃな・・・。
最初から犯人の顔を見せているので、観客は犯人は分かっている。しかし、犯人がある女性を付け回したところで警察に職務質問されるシーンがあるんだけど、ここで警察が変な対応をするのね。見てるほうは「あれ?おかしいな」って思う。そしてのちに犯人の素性が明らかになった時、あの時のあの対応の不自然さに気がつくわけだ。そこだけは「なるほどね」と思った。あとは意味が分からない&納得できねえことばかりでしたさ。
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JSA('00韓国)-May 30.2001オススメ★
[STORY]
韓国と北朝鮮を分断する北緯38度線上にある共同警備区域―JOINT SECURITY AREA―で射殺事件が起こった。生き残った北朝鮮のオ・ギョンピル士官(ソン・ガンホ)と、韓国のイ・スヒョク兵長(イ・ビョンホン)はそれぞれ異なる供述をしており、事件は中立国監督委員会に委ねられることになった。事件を担当することになった韓国系スイス人の女性将校ソフィー(イ・ヨンエ)は調査を進めるが、どちらの供述とも違う真実に突き当たることになる。
監督&脚本パク・チャヌク(本作で長編3作目)
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本国では『シュリ』を超える大ヒット作品だったようだけど、日本ではそこまでのヒットはしなさそう。いや、個人的には私はこの作品のほうがいいと思う。感動して泣いてばかりいた。でもちょっと地味でとっつきにくいかな、と。しかも男同士の友情がメインであって恋愛は一切ないからねえ。もったいない。ホントにたくさんの人に見て欲しいと思う。

物語は三部からなり、一部ではそれぞれの兵士の供述通りの回想シーンとソフィーによる事件の調査が描かれ、二部では兵士たちしか知り得ない真実の回想シーン、そして三部で事件は解明するが・・・という構成となっている。なぜ射殺事件が起こったのか?という謎の部分に興味を持たせ、分断された両国の対立を挿入するも、根底にあるのは国を超えた血の通った物語だ。『シュリ』では殺人マシーンとして描かれていた北の兵士たちが、本作では1人の人間として、南の人間と何ら変わりなく描かれているところにまず驚いた。単純なことで笑い、冗談を言い、相手を思いやる気持ちがしっかりとあるんだ、って。人間だからそれが当たり前だけど、どうやら私は『シュリ』に感化されすぎて彼らを人間として見ていなくなっていたようだ。それに気がついた時からもう泣いちゃって泣いちゃって。けっこう笑えるシーンがある(それにも驚きだ)んだけど、笑いながら泣いたな。

ネタバレになるから詳しくは書けないけど、ラストのアレがいい。こんなところに伏線を張ってたのか!という驚きも含めて素晴らしい。最初から出会う運命だったんだね。

女性将校を演じたイ・ヨンエはすごい美人で華のある人だけど、彼女自身のことについて触れられるシーンでの表情の変化のなさや気持ちの見えないセリフ回しに違和感を感じた。「韓国の松嶋菜々子」なんて言われてるけど、実はCM女王ってだけでなく演技力も同レベルなのか?(あっ)
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