Movie Review 1999
◇Movie Index

SAFE('95アメリカ)-Mar 20.1999
[STORY]
1987年。ロスの高級住宅街に住む主婦のキャロル(ジュリアン・ムーア)は頭痛や吐き気、めまいを訴えはじめる。病院で検査をし、精神科にも通ったが原因は分からなかった。しかし化学物質に対してアレルギー反応を起こすことが分かり・・・。
監督トッド・ヘインズ(『ベルベット・ゴールドマイン』
−◇−◇−◇−
最近耳にするようになった化学物質過敏症を扱ったストーリー。でも闘病記ではなく、キャロルが自分を守りたいための、自分の居場所を探すための、自分の安全を求め続けるような話だった。『ベルベット』よりも前に作られた映画だけど、それより出来はいいと私は思う。とても丁寧に撮られているし。だけどはっきり言ってしまえば嫌いな作品だった。それはつまらないからじゃなくて、生理的嫌悪感と言っていいくらい、気持ち悪さがずっと続いたからだ。

完璧なインテリアに囲まれたキャロルの家や高級乗用車といった閉鎖空間にまず息苦しさを覚える。彼女は発作を起こしたりして様々な治療をするけど治らず、ついに化学物質を一切使っていない施設へ家族と離れて入居する。ここは大自然に囲まれた場所ではあるが、私は見ていてキャロルの家や車と何ら変わりがないように思えた。こんなにも広いのに彼女の周りだけが狭く見える。それだけで不安。また、施設の責任者が喋る言葉に偽善を感じ、アヤシイ宗教ではないかとさえ思える。これでは家族が彼女から離れていってしまうだろうと容易に想像つくところも苦しい。この先も、こんなところにいてもきっと彼女の病気は治らないだろう、それも想像できてしまう。それでも自分の周りに安全なものを張り巡らすことしか考えられない彼女がいる。一種の強迫観念だね。怖い。

だからといって同情する気持ちにもなれないところがまた辛い。とにかくそういう状況に彼女を追い込んで追い込んで、最後は捨ててしまうような、そういう残酷さを感じ取ってしまった。恐い。つまり常に上から見下ろしてるのね。彼女の目線の高さに合わせるのでもなく、彼女の病気を分かろうという気持ちもない。ただの難病克服映画じゃなく、そういう映画を撮りたかったんだろうけど、これは見てる方はやるせない。しかもたっぷり2時間ですよ。こっちまで精神不安定になっちゃいそう。こういう気持ちにさせるってことは成功してるんだろう、ねぇ。だけどねぇ・・・。
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アベック・モン・マリ('99日本)-Mar 19.1999オススメ★
[STORY]
仕事はできるが家事は全くダメという編集者の美都子(板谷由夏)と、家事は何でもこなすが仕事がないフリーカメラマンのタモツ(小林宏史)は結婚して3年目の夫婦。だがある時、美都子はタモツが浮気をしていると思い込み、離婚を宣言。離婚届も役所に出したと言う。タモツは仕方なく浮気相手と誤解されたモデルのマユ(辻香緒里)の家に転がり込む。マユはマユで不倫相手の中崎(大杉漣)とうまく行ってなかった。
監督&脚本&出演も・大谷健太郎(長編初)
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全く知らなかったんだけど、ちょうどこの日、監督の大谷さんと漣ちゃん(←馴れ馴れしい)が舞台挨拶に来た。初日でもないし平日だし夜だし、雑誌に載ったわけでもなかったのでびっくり。だから座席も満席ではなかったし。でもちょっと得した気分(えへへ)漣ちゃんは『犬、走る』とほぼ同じ服装。監督はなぜかやっぱりチェックのシャツなのであった(崔さん・明石さん・かばくん然り)

映画も想像以上に面白くてまたびっくり。各メディアでの評判がいいので見に来たんだけど、ここまでとはね。派手な演出のない低予算さがにじみ出たストーリーではあるけれど、何度も何度もリハーサルをして、役者とスタッフが丹念に作り上げたんだろうなぁというのが良く分かる。登場人物は美都子・タモツ・マユ・中崎の4人しかほとんど登場しないけど、キャラクターがちゃんと作られてる。意地っ張りな美都子と気の弱いタモツのやりとりも楽しい。特にタモツの「暖簾に腕押し」な性格というか空気のようなフワッとした存在がいいなぁ。私は男の人を養えないけれど(給料安いから)一家に一台あってもいいかも(うん)と思わせる。漣ちゃんも自らのお尻を見せるほどの熱演(なのか?)だった。

シーンの多くはセリフのやりとりのみ(舞台でもできそう)上映時間は95分と短めだけど、普通こんな調子の映画だったら飽きるでしょ。ただの夫婦喧嘩から始まった話だし、下らないっちゃぁ下らない。だけどそれが笑わせたり驚かせたりして全く飽きない。たった一言のセリフで今までの状況がガラリと変わってしまうところがまた面白い。そしてそれが各所にちりばめられているので事態は二転三転してますます混沌としてくる。そのセリフが理屈っぽくなく、それぞれが言いたいこと言ってメチャクチャで、なかなか真実が見えてこないんだけど、言葉じゃなくてフトした行動や仕種に真実があるように思えた。

ラストの画は1枚の絵のようにピタリと嵌まり込んでて特にすてきだった。
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富江('99日本)-Mar 13.1999
[STORY]
泉沢月子(中村麻美)は3年前の交通事故が原因で事故の記憶がない。またその後遺症からか不眠症になっていた。精神科医の細野(洞口依子)の催眠療法で月子は「トミエ」という名前を口にする。また細野を尋ねてきた刑事の原田(田口トモロヲ)は3年前に「川上富江」という名の女生徒が殺された事件に月子が係わっていることを話す。
監督・及川中(『日本製少年』)
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藤潤二原作の『富』に田口トモロが出演してて・・・なんて無理矢理ワ行を作ってみたりして(←まだ言うか内輪ネタ)本当は伊藤潤二に『富江』です

原作は1つしか読んでないのでちょっと調べてみたら、いくつかの短編うちの「写真 富江PART4」などから登場人物の名前を借りたりして脚本を書いてて、映画のストーリーは原作には忠実ではないらしい。むしろオリジナル作品と言っていいとか。なるほどね。だからストーリーに矛盾が生じたり人物描写がいまいちなのか、と思った。まず物語の軸であり本来感情移入するべき人物、月子に全く入っていけない。彼女の置かれた状況や気持ちが曖昧で中途半端なのだ。だから怖くない。

また「富江」の特性(?)である「殺しても身体の一部があれば生き返る」「バラバラにされればそれだけ富江が増える(←原因不明なバイオホラー?)」という恐ろしさが表現されていない。映画冒頭、スーパーの袋に入れられた富江の頭部が破れ目からちょっと見えるシーン(ポスターもこれ)や、バスケットに入れられて食物を与えられてるところは「匣にみっしり」的でちょっと怖いかな、と思ったけどそれだけ。

また(ここからネタバレ)ラストだって月子が富江化してしまうのは、富江の唾液からでも富江化してしまうという恐ろしさ&女はみんな富江のような魔性を秘めているんだよフフフ・・・(笑)ということが言いたかったんだろう、と思うけどそれが活かせてない。それに富江の首を持ち去った月子の彼氏や原田刑事がぱったり出てこなくなったのもいい加減な感じ。続編、作るつもりなのか?!やっぱし(笑)(ここまで)

あと洞口さんや田口さんの存在感からすると富江も月子も薄い。特にあの富江のどこに男たちは狂わされちゃうのでしょー?(うーむ)でも文句ブチブチ書いたけど、気持ちは伝わる。しょーもない!とか全然ダメ過ぎ!と切り捨てるには可哀相になってしまった。

その後、この『富江』シリーズは何本か作られてるけど富江replayしか見ていません。
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愛の悪魔フランシス・ベイコンの歪んだ肖像('98イギリス)-Mar 13.1999
[STORY]
1964年。画家フランシス・ベイコン(デレク・ジャコビ)のアトリエ兼住居に盗みに入ったジョージ・ダイアー(ダニエル・クレイヴ)はベイコンに見つかり、そのまま彼の愛人になってしまう。しかし彼らの関係は次第に破綻していった・・・。
監督&脚本ジョン・メイブリィ(『リメンバランス』)
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う〜ん、想像してたのと違ってた。常軌を逸してるベイコンに対して愛人のジョージは喧嘩しながらも彼についていく、という話だと思ってたら、まぁ半分はそうなんだけどさ。ベイコンは確かにちょっとイッちゃってる雰囲気はあるけど、それは芸術家にありがちなハイテンションをキープしてるだけで、薄化粧などするものの(メイクシーンは笑える)立派な大人だった。一方のジョージは芸術家の愛人になったのはいいが、彼の友人たちについていけずに酒に薬に走って自殺願望が濃くなっていくのね。な〜んだ、ジョージのほうが繊細だったのか、と。ま、勝手にそう思ってた自分が悪いんだがちょっと意外だった。

なおかつ、そういう関係を理解するのにえらい時間が掛かった。何しろ時間の経過が分かり難いし彼らの友人関係も分かり難い。またベイコンの描いた絵がほとんど出てこないので、彼がどんな絵を描いていたのか分からない(事前に絵を見とくべきだったのか?)だからいくら彼が絵を描くシーンがあってもこっちに何も伝わらない。だんだんイライラしてきちゃって困った。

イライラの原因はそれだけじゃなくて映像にもある。とにかく歪みを入れたりボガシを入れたり凝ってるには凝ってるけど、歪ませるのは彼らの人生だけでいいと思った(苦笑)その凝り固まった映像ばかり見せられて肩凝ったし最後はグッタリ。たった1時間半の映画なのにここまで疲れさせるんだからむしろ凄いね。ただし、やっぱりジャコビは上手い。すっかり忘れてたんだけど「『バジル』の父親役だったじゃん!」と気付いたのは映画中盤でした。そう短期間にこういう役者さんを2度見ることってあんまりないからね。はっ!もしかしてジャコビファン疑惑?!(笑)
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ウェディング・シンガー('98アメリカ)-Mar 3.1999
[STORY]
80年代のアメリカ郊外。ウェディング・シンガーのロビー(アダム・サンドラー)は、自分の結婚式当日に花嫁に逃げられてしまう。そんな時、ウェイトレスのジュリア(ドリュー・バリモア)と知り合う。彼女もまた結婚を控えていたが・・・。
監督フランク・コラチ(『ウォーターボーイ』)
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私もつい最近、ウェディング・シンガーじゃないけど、友達の2次会で司会をやった。そして一緒に見たMちゃんはしょっちゅうピアノ伴奏や曲の編集をやらされているらしい。となると映画終了後はその話題で大いに盛り上がる。将来は私が司会でMちゃんが曲担当として結婚式会社を作る!とかそういう将来設計までしちゃいました(笑)

まぁ女の子にとって結婚式はやっぱり一大イベントであり、後悔しないように一生懸命になるさね。それに対して男性はどうしても女性に任せきりになってしまうという話をよく聞く。新婚旅行に行くためにはその前に仕事を片づけなきゃいけないし、そういう細かい準備が嫌いな人もいるんだよね。この映画のジュリアもそう。証券マンのフィアンセは準備にノータッチ。そしてそんな相手に不安を感じてマリッジブルーになってしまう。これを見て大きく共感する結婚間近や既婚の女性はたくさんいるだろうな。

そこでロビーがジュリアの手伝いをしはじめて恋が芽生えてしまう。確かにロビーはいい奴だ。歌いかたも顔も髪型もイヤ〜ンな感じで私は好きじゃないけど、人柄はいい。そしてドリちゃんめちゃめちゃ可愛い。今までにないくらい可愛いじゃないか。脇な人たちもそれぞれ細かい動きをしてて面白い。最初と最後だけに登場してやっぱり歌まで歌っちゃうスティーブ・ブシェミや、ミートボールおばちゃんにボーイ・ジョージもどきの兄ちゃんまで。でも、これは演出が悪いのか脚本が悪いのか分からないけど、そのアンサンブルが活かしきれてない。特に始まりから中盤までは噛み合ってなくて退屈だ。ラストになってようやく1つにまとまって思わずホッとしたくらい。

ストーリーもありがちといえばありがちなんだよね。分かりやすいラブストーリー。キスの練習シーンを見て「ああこりゃ『恋しくて』だよ〜」とちょっと悶えてみたりして(笑)たまにはこういう大団円なハッピー映画を見てポワ〜ンな気持ちになるのもいいもんだね。
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