Movie Review 2001
◇Movie Index

ホテル・スプレンディッド('99イギリス)-Feb 10.2001
[STORY]
孤島に立つホテル・スプレンディッド――長生きをしたい人々が集まる場所だった。前オーナー、ブランチェ夫人が編み出した規約を元に、後を引継いだ家族たちがしっかりと守っていた。しかしそこに昔シェフをしていたキャス(トニ・コレット)が舞い戻ってくる。夫人よって次男ロナルドとの仲を引き裂かれた彼女は、夫人が死んだので戻ってこいという手紙を受取ったというのだ。しかしそれがこのホテルの規律を乱すことになり・・・。
監督&脚本テレンス・グロス(長編初監督)
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予告で見た限りでは「ミソも●ソも一緒」っていう映画に見えたんだけど、本編は思ったよりも汚くなくて意外にマトモだった。これなら1泊ぐらいはしてもいいかなーって(笑)予告の時は日帰りでさえイヤ!って思ってたんで。でも風呂とトイレはやっぱ入りたくないかも。

グルメは健康を損なうものだと味気のない魚料理を中心に食事を出し、食べる時にはよく噛むようにと諭す夫人の声入りレコードを流す。便秘になると腸洗浄をし、彼らの排泄物は燃料となって暖房となる・・・隅から隅まで亡くなった夫人の力が働いており、ホテル自体が巨大な生物というか、亡くなった夫人そのもののように見える。夫人は回想シーンに出てくるようなことはなく、オーナーの部屋に飾られている写真と、ボイラーに描かれた肖像のみでしか登場しないが、しっかりとこのホテルに存在しているのだ。テープが伸び切ったような歪んだテーマ曲と、ホテルの独特の色使いといい暗さといい、何かが蠢いていると思わせる描写がキッチュでうまい。

秩序を必死に守ろうとするのは長男デスモンド。彼は夫人の愛情を一心に受けていたため、かなりのマザコン気味。次男ロナルドは不満はあるようだが、一応夫人の規約通りに料理を作り続けている。エステティシャンの長女コーラには“ある秘密”があっていつも思い悩んでおり、夫人の夫モートンは慢性便秘で苦しんでいた。そんな彼らの前に現れ、夫人の呪縛を一気に解放させるのがロナルドの元恋人キャスだ。彼女が作るスパイスたっぷりの料理は客を楽しませ、腸の働きを良くし、いつしか便秘も自然と治っていくのだった。

かなりストーリーを書いてしまったが、普通これだけのキャラと展開があれば相当面白い作品になるはず。なのに爆発的に面白くはなかった。いまいち乗り切れないところがあって思ったよりも長く感じた。テンポはこのままでいいのだが、ところどころで流れが悪く詰まった。特にコーラのエピソードは中途半端な上にあの状態で、気の毒な感じさえした。

そうそう、エンドロール後にオマケシーンがあるので最後まで席を立たないように
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クリムゾン・リバー('00フランス)-Feb 7.2001
[STORY]
アルプス山脈で見つかった死体は胎児のように縛られ、目を刳り抜かれ、手が切断されていた。事件を担当することになったニーマンス警視(ジャン・レノ)は、被害者が勤めていた大学の秘密が気になっていた。同じ頃、刑事のマックス(ヴァンサン・カッセル)は少女の墓の盗掘事件を調べていたが、捜査の途中でニーマンス警視と出会う。一見、何の関わりもないと思われた2つの事件が実は繋がっていて・・・。
監督&脚本マチュー・カソヴィッツ(『アサシンズ』
−◇−◇−◇−
『ホワイトアウト』『バーティカル・リミット』に続くミレニアム雪山三部作(と私が勝手に命名)の最後を飾る作品。でも思ったより雪山シーンは少なかったですね。フランスでベストセラーになった小説の映画化で、アクションではなくミステリ+スリラーでした。

オープニングの死体ドアップシーンに度肝を抜かれるが、ニーマンスの捜査はまったりしててちょっと眠気に襲われた。しかしマックスが別の事件の捜査で登場してからストーリーに動きが出てきて、2人が出会ったあたりから俄然面白くなっていった。特にマックスのアクションはTVゲームの格闘モノみたいで、実はここだけ違和感たっぷりのシーンなのだが、一番面白いシーンでもある。しかしそこからが駆け足すぎて混乱しまくり。分からないところだらけで(疑問は以下に書きます)騙された気分。あとハリウッド映画を意識した作りに挑戦しているのはよく分かるが(成功している部分もある)ニーマンスの犬嫌いとそのオチは中途半端すぎてダメ。こういうのはハリウッドにやらせたほうがうまいね。

でも映像や雰囲気はかなり好き。検死するシーンや図書館のシーンは古い匂いが伝わってくるような、ヨ〜ロピア〜ン(byスライドショー)テイストで、浮ついた感じがなくてよい。死体もグロテスクだが、その色合いはまさに氷の中から出てきたように透明感があり綺麗だった。

さて、最大級の疑問だが(ここからネタバレ)眼科医を殺したのはどっち?ってこと。ニーマンスはファニーを無実だと言ってるってことは、全ての殺人はジュディットが行ったことになる。しかし眼科医の家から逃げ出したのはファニーなわけでしょ?ニーマンスを殺さずに逃げたんだから。じゃあ彼女は何のためにあそこにいたの?そして実行犯ジュディットはどこへ?2人がファニーを追いかけている間に、別の場所に隠れていたジュディットが逃げたのかもしれないがちょっと腑に落ちない。このために双子についてちょっと調べたんだけど、指紋は一卵性双生児でも違うらしい。渦の形は似てるそうだが。あと血液型とDNAは同じだそうだ。だから銃を撃ったのがファニーだったとして、銃の指紋とジュディットの指紋は完全には一致しないはず。だからあそこでコンピュータの画面を出さずに台詞だけで「非常によく似ています」って言ったのだね。しかしまた疑問だが、残っていたジュディットの指紋って全部の指?母親が持っていたという指だけならば左手の人差し指のはず。銃は右手で持ってたんだから当然右指になるんだが。(ここまで)うーん、やっぱこりゃ原作読まなきゃダメかな。ああ、でもこういう疑問に対してあーだこーだ書ける映画ってやっぱ楽しいなー。

仕方ないけどフランス映画なのに英語のタイトルってやっぱやだな。サブタイトルが『深紅の衝撃』ってなってるけど、これもサスペンス劇場みたいだし(笑)難しいもんだね。

続編『クリムゾン・リバー2 黙示録の天使たち』の感想はこちら
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ぼくの国、パパの国('99イギリス)-Feb 5.2001
[STORY]
1971年マンチェスター。パキスタン人のジョージ(オーム・プリー)はイギリス人のエラ(リンダ・バセット)と結ばれて7人の子供ができた。ジョージは子供たちに立派なイスラム教徒になってもらいたかったが、彼らはイギリス人として暮らしたいと思っている。ある時、ジョージは長男ナジルをパキスタンの伝統的なお見合いで結婚させようとするが、結婚式の最中にナジルは逃げ出してしまう。
監督ダミアン・オドネル(長編初監督)
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パキスタン人の父とイギリス人の母を持つアユーヴ・カーン=ディンの自伝的戯曲を映画化。エラ役のバセットは舞台でもこの役を演じていたそうだ。イギリスに住んではいてもパキスタン人として育てようとする厳格な父と、夫を立てながらも子供たちの気持ちも尊重したい母。そしてイギリス式の生活に慣れていて、自由に恋愛したいし豚肉だって食べたい子供たち。異なる文化と考え方がひとつの家の中で、お互い一歩も譲らずせめぎあっている。

舞台作品だったせいか、家族が言い争うシーンがこの映画の面白さの1つでもあるのだが、長くなればなるほど五月蝿くて疲れた。これが広い舞台ならこのトーンでもいいけど、映画では狭い部屋の中だからね。特にジョージの声がきつくて。彼の気持ちはよく分かるけど、あの独特な声の高さで一方的に捲し立てられたら、つい反抗したくなる気持ちも分かる。

ただ、こんなことを言うのはナンですが、パキスタンとイギリスの混血といっても、見た目がパキスタン寄りなので(そういう俳優を使ってるからかもだけど)イギリス人として生きていくには無理があるのでは?と思った。たとえ自分がイギリス人だと主張しても、周りが認めてくれないんじゃないかって。特に70年代ならまだ差別はきつかっただろう。だからこそジョージは子供たちにパキスタン人として生きてもらいたかったのでは。きっと子供たちも大人になった時、初めて父親の気持ちが分かるようになるんでしょう。

面白いなーと思ったのは(ここからネタバレ)逃げ出したナジルがまた登場したところ。ブチャイクをあてがわれてしまった次男三男ならともかく、ナジルの場合は美人さんだったのに何故逃げてしまったのか?イスラム教徒でいたくなかったこともあるだろうけど、まさか『マイ・ビューティフル・ランドレット』だったとは!(笑)それを知った弟妹たちの引き具合がおかしくて仕方なかった。(ここまで)

末っ子サジが『サウスパーク』のケニーみたいに、いつもジャンパーのフードを被ってるところが可愛かった。上の子たちに小突かれてばかりなので、あれを被ることで自分の身を守ってるんだろうね。そしてそのフードは物語のポイントにもなっていた。
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溺れる魚('01日本)-Feb 3.2001
[STORY]
容疑者を射殺した上に証拠品の現金を着服したことが上にバレてしまった警視庁捜査一課の警部補白州(椎名桔平)。同じく女装癖があり、婦人警官らの制服を窃盗していた秋吉(窪塚洋介)。この2人が警察内部の犯罪を調査する特別監査室に呼ばれ、罪を揉み消す代わりにある任務を命じられる。
監督・堤幸彦(『ケイゾク/映画』
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堤の趣味で作られた映画。以上。

・・・ていうだけじゃやっぱダメか(笑)私のHP史上最も短い感想で終わる映画になるとこでしたが、もう少し書こうかな。

相変わらず小ネタは面白い。巨●とかゲッ●とかケチャップとかさ。でもトータルで見ると全然面白くない。ストーリーが面白ければ何度でも見たくなるが、これは1回だけでいいやって思う。映画というよりもコントの寄せ集めだもん。そういう意味では石井克人の『PARTY7』に似てるかもしれないが、堤自ら出演し、歌まで唄ってしまってるところでもうその差は歴然だ。

この物語はある者が人間を駒のように扱い、ゲームを楽しむかのように事件を起こしていくものなのだが、堤は役者をまさに駒のように扱って、自分のやりたいようにやっている。監督ならばそれは当然のことかもしれないが、役者自身の色が全く出てない、性格もただの記号なので何の魅力もなく、ストーリーに躍動感がない。最近のTVドラマはこの手のタイプが多いが、それはドラマでは通用するかもしれないけど、お金を払ってまで見たいものじゃない。TVドラマでやれよ、と思ってしまう。古い考えかもしれないけど、映画は映画、ドラマはドラマなんですな、私にとって。

上記の通り、登場人物に魅力がなかったんで特筆すべきキャラクターもなし。IZAMも想像してたよりもずっと小粒だったな。あと宍戸錠の使い方も勿体無かった。原作のほうが面白いらしいので機会があったら読んでみるつもり。

『ケイゾク/映画』よりちょっとマシ、程度でしたね(溜息)
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ザ・カップ〜夢のアンテナ('99ブータン=オーストラリア)-Feb 3.2001
[STORY]
チベットから亡命してきた僧侶たちがインドの僧院で暮らしていた。若い僧たちはサッカーに夢中で、掃除の時間に空缶をボール代わりに熱中するほどだった。その頃ちょうどフランスワールドカップの最中で、ウゲン(ジャムヤン・ロゥドゥ)らは夜中にサッカー中継を見るため僧院を抜け出していたが、それが高僧(ウゲン・トップゲン)にバレてしまう。彼らは何とか決勝戦だけでも見たいと高僧に掛け合うが・・・。
監督ケンツェ・ノルブ(ブータンの高僧)
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少年僧たちがサッカー中継を見たくてたまらず、ある行動を起こすこの物語は、実話に基づいているらしい。サブタイトルから想像してもっとファンタジックな話を想像していたが、日本でぬくぬくと生活している者にとっては何てことはない単純な話だ。でも彼らにとっては大事であるし、それを実現させるためにはとても困難なことなのだ。アッバス・キアロスタミ監督の『友達のうちはどこ?』みたいな感じかな。子供が悩む姿を見ると苛々しながらも引き込まれてしまう。

ウゲンは周りにいたらかなりウザイ少年だ。生意気で声が耳障りで、年上の僧に対してもかなり威張ってる。でもいたらウザイけどいなかったらちょっと寂しいかな、っていうキャラクター。僧である前にやんちゃ坊主っていうほうが前面に出ている。そこが何となく憎めない。でもカツアゲは良くないぞ!
そしてウゲンの友達ロドゥは何とブータンの高僧で特別な人なんだそうだ。それにしては演技もうまかったし、失礼ながら高貴な印象はなかったな(ごめん)よく映画になんて出演したもんだ。でも、チベット仏教が置かれている立場と現状を伝えるために快諾したのかもしれないね。主だったストーリーはサッカーを見たい少年たちの話だが、サイドストーリーとしてチベットに帰りたい僧院長や、2人の少年たちがチベットから亡命してきた話も盛り込まれている。これらを描くことで、暗に中国批判をやってのけているのだから。

興味深かったのはバター茶なるもの。茶葉を煮出して、そこに塩とミルクとバターを加えてよく混ぜ、飲む時には大麦の粉をたっぷり入れる。お茶というより主食っぽい。残念ながらそれを飲むシーンがなかったが、ちゃんと飲めるのか?映画館の外で茶葉を売ってたんだけど、美味しいのかなぁ。試してみたい気もするけどちょっと恐い。
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