Movie Review 1997
◇Movie Index

奇跡の海('96デンマーク)-Apr 30.1997
[STORY]
1970年初頭のスコットランド。キリスト教戒律の厳しい小さな村の住民ベス(エミリー・ワトソン)はよそ者のヤン(ステラン・スカルスゲールド)と熱烈に愛し合い結婚する。しかし幸せは長くは続かなかった。ヤンが仕事中に事故に遭い不随となったのだ。ヤンはベスに愛人を作るように強要する。
監督ラ−ス・フォン・トリア−(『キングダム』)
−◇−◇−◇−
どうして2人がそんなにも愛し合うようになったのか、それが描かれてはいないのだが(2人の結婚式から物語が始まるため)あまりにも激しく切ない愛にそんなことをつい忘れてしまった。主演のワトソンの演技も素晴らしい。娼婦扱いされ教会からも信者として認められなくなり、次第にボロボロになってゆくのだが、その透き通ったまっすぐな瞳は色褪せることなく、最後まで自分自身の中の神を信じ続けている。肉体と反して心は澄んでいく様は美しくさえある。そんなベスを見事に演じていた。

1歩間違うととんでもなく変態ちっくな話だし(笑)なんでヤンがベスに無理矢理愛人作れなんて言うのか未だに理解できないが、それぞれの役者の真剣さと重苦しいスコットランドの風景に寒さも加わって文芸作品らしく仕上がっている。章立てしてある物語の間々に挿入されるスコットランドの寒々とした風景と70年代の歌もマッチしている。2時間38分という長さと、手持ちカメラ撮影のためブレがちょっと気持ち悪くなるが、最後は涙が止まらなかった。
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カーマ・スートラ('96インド=イギリス)-Apr 28.1997
[STORY]
16世紀インド王宮。王女タラと乳母の娘マヤ(インディラ・ヴァルマ)は幼なじみ。2人とも美しい娘に成長し、タラは国王ラジャに嫁ぐことになった。しかしラジャはマヤに心惹かれる。それに気づいたタラは衆人の中でマヤを侮辱する。傷ついたマヤは婚礼の夜にその身をラジャに捧げてしまう。
監督&脚本ミーラー・ナーイル(『サラームボンベイ』)
−◇−◇−◇−
タイトルの『カーマ・スートラ』とは古代インドに伝わる性愛の聖典のこと。

インド映画を見るのは初めてだが、映像と女性の美しさに驚いた。特にマヤ役のヴァルマの美しいこと!褐色の肌はつややかで、しなやかな肉体で踊る姿が官能的だ。王様が惚れちゃうのも分かるね。その分男性がどうにかならないものかと思ったが、ラジャ役のナヴィ−ン・アンドリュ−スは『イングリッシュ・ペイシェント』にも出ていた有名な人らしいし、後にマヤの恋人になるジャイ役のラモン・ティカラムも『カットスロートアイランド』に出てたようだ(覚えてないけど)

幻想的なシタールの調べと、まばゆい衣装にうっとりとさせられる場面もあるが途中でダレてしまった。マヤかタラのどちらかに感情移入できれば良かったんだけど、どっちもどっち(笑)って感じでした。期待していた(何を?)「カーマスートラ」の奥義もいまいち。練習シーンなんかはけっこう笑っちゃったし。でもラストで革命を絡めていて、ただの恋愛モノではなかった。
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スリーパーズ('96アメリカ)-Apr 22.1997
[STORY]
1967年、ニュ−ヨ−ク・マンハッタンに住む4人の少年がふとした悪戯から少年院送りとなり、ノ−クス(ケビン・ベーコン)ら4人の看守に暴行を受ける。それから10年後。4人の少年のうち2人がノ−クスをレストランで射殺する。そして残る少年の1人で、地方検事補となったマイケル(ブラッド・ピット)がこの裁判を担当することになった。マイケルはもう1人、新聞記者のシェイクス(ジェイソン・パトリック)に連絡を取り、看守たちに復讐することを打ち明けた。
監督バリ−・レヴィンソン(『レインマン』)
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この作品もピット主演のように思われるけど、実はピットはそれほど出番がない。ピットの少年時代を演じたブラッド・レンフロにしても同じ。語り手であるシェイクス役のJ・パトリックや彼の少年時代を演じた俳優(名前不明)の方が出番が多い作品だった。だからピットファン、レンフロファンにはガッカリかもしれないけど、話の内容からしたら『デビル』より面白い。ノークスを殺すだけでなくほかの看守たちの罪さえも暴いて復讐する様は、それまでかなりの時間を割いて彼らの悲惨な刑務所時代を描いてきたせいか、ある程度の御都合主義はあるものの、かなり説得力があるし、やり方は汚いけれど応援すらしてしまう。

ただ、その彼らの復讐するにあたっての重要なポイントとなるデ・ニーロ演じる神父の存在があまりにも軽すぎる気がする。彼らから嘘の証言を頼まれて、ここでこの人は職業柄めちゃめちゃ悩んだりするんだろうとか、虚偽の証言をしたら罪の意識にさいなまれるんだろう、とかいろいろ期待してたんだけど結果は・・・。またダスティン・ホフマン演じる記者も中途半端。ここでこの2人を起用した意味があったのかどうか疑問にさえ思う。原作はもしかしたらもっと複雑で濃い人間ドラマを見せてくれてるのかもしれないな、と思った。またパトリックとピット以外の2人についてはほとんど出番がなくて印象が薄い。だから4人の熱き友情物語でもなくなってしまった。
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デビル('96アメリカ)-Apr 14.1997
[STORY]
IRAの闘士フランシス・マグワイヤー(ブラッド・ピット)はイングランドを攻撃する武器調達のため、ニューヨークにやってきた。そして偽名を使いNY市警警官のトム・オミーラ(ハリソン・フォード)の家に居候する。一方トムはIRAのテロリストがNYに潜伏しているという情報を得ていた。
監督アラン・J・パクラ(『ソフィーの選択』)
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この頃、2大スター夢の共演!というのが流行ってたけど、ほとんどいい作品がなかった。デ・ニーロとパチーノ共演の『ヒート』も世間が騒ぐほどいいとは思わなかったしね。どうしても2人それぞれの見せ場を作ろうと思うし、最後は絶対に対決させなきゃいけないから、変なカット割りになったりストーリーが破綻したりするのだ。

これもそんな作品。大まかに言えば、ハリソンとピットが出会って家族ぐるみで仲良くなるけど、結局彼らは互いに戦わざるを得なくなる。しかし対決の後、涙を流すのだった。おしまい。というわけだ。こういう骨格は構わないけど、そのクライマックスまで持っていく力がないんだね。そしてそのクライマックスの表現がまずい。そして脚本もまずい。

(以下ネタバレ反転)「アイルランドに戻っても殺されるだけだぞ!」などと説得しながら最後はマグワイヤーを撃って殺しちゃうオミーラって一体・・・だった(笑)だったらここで見逃してやって、IRAの闘士として戦わせてあげて、それで死んだとしても彼としても本望じゃない?無駄死にしましたね(合掌)つーか泣かせようと思って作ったシーンなんだろうけど1つも泣けませんよこれじゃ。一緒に見た子とも「何だか納得いかないよね〜」としきりに言い合ったのでした。(ここまで)
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ザ・プロデューサー('96アメリカ)-Apr 12.1997
[STORY]
映画学校を卒業したばかりのガイ(フランク・ホエイリー)は、映画会社の重役バディ(ケビン・スペイシー)の助手を務めることになった。バディの傲慢で侮辱や無理な仕事の数々に我慢していたガイだったが、女性プロデューサーのドーンと恋仲になり、彼女の企画によって昇進するチャンスを掴もうと・・・。
監督ジョージ・ホアン(初監督)
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スペイシー目当てで&チラシの「『ユージュアル・サスペクツ』以上のラストの衝撃!」ってやつに惹かれて行ったんだけど信じた私がバカでした(そうだね・・・)忘れた頃にTV東京の深夜にやりそうな内容の映画だった。ガイ役の人もドーン役の女優さんもいかにもテレ東好みの(なのか?)顔でさ〜。スペイシーが主演でなければ日本公開はしなかったでしょう。良くてビデオでのみの発売とか(笑)

でもスペイシーはやっぱ好きだ。嫌味ったらしくいじめるところは何とも楽しそうでいい。この人の、人を食ったような目にはいつも引き込まれて目を逸らせなくなる。日本人でも橋爪功さんなんてよくこういう目をしますね。橋爪さんは別にファンじゃないけど(笑)

こういうプロデューサーはどこの国にもいるものなのかなぁ。アメリカだったらもっとフェアで実力ある者がのし上がっていくものだと思ってしまうけど、実際はこんなに陰湿な人もいるのでしょう。それが競争というものなんだろうが。人を認めるってことと、自分の非を認めることってとても大事だけど難しいことよね。

またまた余談だけど、ここの映画館はちいさくってすんごい好き(50席はあるらしいけどうんと狭く感じる)見たい映画がなかなかなくてたまにしか行かないけど行くと嬉しくなっちゃう。
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