Movie Review 2001
◇Movie Index

アザーズ('01アメリカ=スペイン=フランス)-Nov 4.2001
[STORY]
終戦直後のイギリス。グレイス(ニコール・キッドマン)は2人の子供とともに、離島の古い屋敷で暮らしていた。彼女の夫は戦地に赴いていてまだ帰っていない。そして子供たちは日光を浴びると皮膚病になってしまうため、日中もカーテンを閉めて暮らしていた。そんなある日、グレイスは新しい使用人を雇うことにする。そしてやってきた老婆と老人、若い娘の3人を雇うことにしたが、彼らがやってきてから屋敷では不可解なことが起こっていく。
監督&脚本アレハンドロ・アメナバール(『オープン・ユア・アイズ』
−◇−◇−◇−
製作はニコールの元夫トム・クルーズ。そのトム君はアメナバールの『オープン・ユア・アイズ』をリメイクした『バニラ・スカイ』でも製作と主演を果たし、今では共演のペネロペ・クルスと付き合ってるという・・・ハリウッド何でもアリだな。

この作品は、ある大ヒット映画を明らかに意識した(っつうかその映画を観客が見たことを前提に)作った映画だな、と思った。その某映画のタイトルを書くだけでネタバレになってしまうので書かないが、どういうつもりで作ったのかなぁ。パクリというか、リスペクトかね(どうでもいいけど最近なんでもリスペクトって言えばいいって思ってないか)某映画を超えてやろうと思ってたわけじゃなさそうだ。そこまでの傲慢さは見えない。あくまでも某映画+ヒッチコックをやってみたい!と。そんな意図が窺える。それとアメナバール作品としては、今回が一番よく纏まってるんじゃないかな。『テシス』と比べるとずいぶん洗練されたね。

某映画のアイデアに関しては確かに遜色ありまくりだが(と言いつつもまたうっかり騙されたんだけどさー)恐怖はきちんと出てたと思う。音の付け方がまたクラシックなんだけど、あの不安をかきたてるような音には何度かビクッとなってしまった。暗い部屋はもちろん、明るい部屋でも物置部屋はすごい怖く見えたし、何より子供の顔がえらい怖くてさー(笑)特に下の男の子なんて眉毛ないんだもん。あんたの怖がる顔が怖いんだよっ!と何度かツッコミ入りました。
ニコール・キッドマンもこういうクラシカルなのがよく似合う。今時珍しいくらいの正統派美人なんだよね、この人。ブロンドにブルーアイズ、まさにヒッチコック映画に出てきそう。役名グレイスと聞いてグレース・ケリーを思い浮かべたのは私だけか(←短絡的)

映画を見た後に、よくよくストーリーを振り返るとあまり辻褄合ってない話だと思うが、出来が悪いとは思わなかった。ただ某映画のようにもう一回見てみようという気にはならなかったね。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

ラッキー・ブレイク('01イギリス)-Nov 3.2001
[STORY]
銀行強盗に失敗したジミー(ジェームズ・ネズビット)とルーディは刑務所に送られた。脱走しようと企むジミーは、更正プログラムの一環として行われる囚人たちのミュージカルに目をつける。この上演後に抜け出す作戦だ。しかし意地悪な看守や他の囚人の妨害が入ったり、カウンセラーのアナベル(オリヴィア・ウィリアムス)に恋をしてしまったことで、脱獄計画はうまく進まず・・・。
監督ピーター・カッタネオ(『フル・モンティ』
−◇−◇−◇−
私の大好きな『フル・モンティ』を監督したP・カッタネオの長編2作目。今回もまた笑いドコロいっぱいで楽しめた。さらに今回は伏線の張り方がうまく、ヤマ場での展開には拍手モノでした。前作と同じくキャラクターもみな個性的で、ミュージカルシーンも楽しかった。

しかし!どうしても引っかかるところがあって、この映画に“オススメ★”をつけることができない。
(以下ネタバレ)それはクリフのこと。無実なのに仲間と同罪にされて投獄され、看守の秘密を見てしまったことで意地悪され、妻と息子には愛想をつかされるという三重苦。そんな彼をどうしてそのまま殺してしまったんだろう。彼が死んだことでジミーたちが奮起するという設定のようだったが、起爆剤としては弱かったと思うし(さらに可哀相!)エンドロールでも中途半端で笑えなかったし(さらにさらに可哀相!)彼にも幸せになって欲しかったな。看守をギャフンと言わせ、妻子を見返してやるような展開だったら、迷わずオススメにしてたと思う。(ここまで)
これに関しては監督に詰め寄って問いただしたい気持ちだ(笑)

ジミーを演じたネズビッドは『ウェイクアップ!ネッド』で養豚業を営むピッグ・フィンを演じた人だが、この時の役があまり好きでなかったのと(いかにも不潔で)顔が恐いのとで、今回も最初はちょっとイヤだなぁと思っていた。でもすごい歌がうまいの!いい声してんのよ。そんなわけでポイントアップ(笑)他の出演者もみんな歌がうまくて笑ってしまった。そして何といっても『サウンド・オブ・ミュージック』のトラップ大佐ことクリストファー・プラマーが最高。ミュージカル好きの刑務所長という役柄がナイス!
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

ダスト('01イギリス=トルコ)-Nov 3.2001
[STORY]
ニューヨーク。空き巣に入った若い男エッジは、そこに住んでいた老婆アンジェラに逆に銃で脅され、100年前の話を聞かされる――。
――アメリカ西部。ルーク(デヴィッド・ウェンハム)とイライジャ(ジョセフ・ファインズ)の兄弟は2人とも拳銃の腕が立つ男で、仲も悪くなかったが、イライジャが娼婦のリリスと結婚してからうまくいかなくなる。ルークは弟夫婦から逃げるようにフランスへ渡り、そこからマケドニアへ賞金稼ぎの旅に出たが・・・。
監督&脚本ミルチョ・マンチェフスキー(『ビフォア・ザ・レイン』)
−◇−◇−◇−
前作の『ビフォア〜』がすごく良くて、その監督の7年ぶりの新作ということで見に行った。前作がマケドニアとロンドンを舞台に、時間と空間を超えて人々の出会いと死を描き、マケドニア人とアルメニア人との争いに対するメッセージも込めたストーリー。本来なら決して繋がることのない冒頭とラストがメビウスの輪のように繋がる不思議な映画で、見た後のあの奇妙な感覚は今でも忘れていない。

本作は現代のニューヨークと100年前のマケドニアを舞台に、ある兄弟の愛憎と戦争の話を、まるで老婆が見てきたかのように、黒人青年に語っていくストーリー。老婆が語るマケドニアの話がそのまま映像となって観客たちに提示されるのだが、その映像が老婆の言葉1つで変わったりするので、果たしてこれは真実なのか、それとも老婆の作り話なのか、そして老婆は一体何者なのか?そんな疑問が次々と浮かんでくる。そもそも人の口から発せられる言葉にどれほどの真実があるのか?という非常に基本的なところを突かれ、前作とはまた違う感覚で映像を見つめることとなった。

そんなわけで語り口や物語の構造は今回もとても好みなんだけど、上映時間も長かったし、分からないことが多すぎて疲れてしまった。まずオスマン・トルコとマケドニアの戦いについて知らないから。1912年のバルカン戦争のこと・・・なんだよね?(不勉強)戦っているシーンを見ても、何が何だか分からないからただ傍観するしかなくって。でもこの銃撃戦はめちゃくちゃ迫力あってハラハラした。銃の音も低く重くて、撃たれた人の痛みがこちらまで伝わってくるほど。

そして分からないことはもう1つ。イライジャが聖書の一節をつぶやきながらルークを追いかけるところね。キリスト教が分からないからこの意味もよく理解できなくって。ただルークとイライジャが聖書に出てくるカインとアベルになぞらえてるのかな、というところは分かった。そしてイライジャの妻リリスっていうのはそのまんまよね。聖書の中では“魔性の女”と捉えられているらしい。まさに。ひょっとしてほかの登場人物も聖書と関係あったのかな。いつもながらこの手の話には弱くて困る。

93年に独立したばかりのマケドニア。それまでさまざまな国の支配下に置かれていた国だけあって、ここに生まれた監督のマケドニアに対する思いは1つに絞ることはできないだろう。これから作られる作品もきっと、マケドニアが辿った歴史を描いていくのだろうが、いつか、最初から最後まで笑って見ていられるような楽しくて幸せな作品が公開されることを願う。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

13ゴースト('01アメリカ)-Nov 2.2001
[STORY]
火事で妻と家をなくしたアーサー(トニー・シャローブ)は、2人の子供とともに狭いアパート暮らしをしていた。そんなある時、富豪の叔父(F・マーリー・エイブラハム)から莫大な遺産が入ると知らされたアーサーは、子供とベビーシッターを連れて彼の遺した家に向かった。しかしその家の地下には凶悪なゴーストが囚われており、アーサーたちもまた家に閉じ込められてしまう。
監督スティーブ・ベック(アート・ディレクターを経て長編初監督)
−◇−◇−◇−
ジョエル・シルバーやロバート・ゼメキスらが設立した映画製作会社ダーク・キャスル・エンタテインメントの第2回作品。1960年のウィリアム・キャッスルの同名映画のリメイク。この会社はキャッスルの映画をリメイクするために設立された会社であり、1作目は『地獄へ続く部屋』をリメイクした『TATARI(タタリ)』だった。
オリジナルのほうは上映時に観客が特殊なメガネをかけて見たそうだ(かけると幽霊が見えるようになっていたらしい)本作はそういうギミックはないが、ストーリーの中でメガネをかけると幽霊の姿が見えるという設定になっている。

見る前はかなり怖いのかと身構えていたが、始まって5分くらいで何の根拠もないけど「これは大丈夫だな」と思い、実際見終わってもそれほど怖いところはなかったと思う。“ファミリー向けホラー”って言ってもいいかもしれない(笑)ファミリーとホラーってどう考えても結びつかないと思うけど、ゴーストから子供たちを守ろうと必死になる父親としての姿と、死んだ妻への夫の愛情も伝わるお話なのでね。

ここに登場する屋敷というのが面白い。ゴーストが出るような屋敷というと古めかしい洋館がスタンダードだが、この映画に登場する屋敷は超ハイテクで、壁も床も天井もガラス張り。そして中央の歯車が回転すると部屋の構造が変わったりするのだ。これって別の意味でもいいアイデアだよね。ガラスを組み替えればいろんなバリエーションの部屋のセット造れるから。ビジュアル的にも綺麗だし一石二鳥じゃない。

出演者に関しては、いささか華に欠けた。人間にしてもゴーストにしても地味目で。主役がお父さん(大人)だし、にぎやかしのおバカちゃんがいないせいもあったかな。それにしても霊感の強い男の役でマシュー・リラードが出演してたが、この人はすっかりコッチ系の人になっちゃったね。でもそれでいいじゃん。このままコッチ路線で突き進んでほしい(笑)
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

ミルクのお値段('00ニュージーランド)-Nov 2.2001
[STORY]
広い牧場を経営しているロブ(カール・アーバン)はルシンダ(ダニエル・コーマック)にプロポーズし、2人は婚約した。しかしルシンダは幸せすぎて怖くなり、ロブの愛を確かめようと、わざと彼を怒らせるような態度を取ってしまう。最初はそれでもうまく行っていたが、やりすぎて本当に彼を怒らせてしまった!
監督&脚本ハリー・シンクレア(『トップレス』
−◇−◇−◇−
『トップレス』で妊娠していたリズ(ダニエル・コーマックの役)が、出産したのにミルク代が払えない、という話だと思っていた(マジで!)したら『トップレス』の続編でも何でもない、全く別の映画だと分かって思わず失笑。バカだね、あたし。

「彼との愛は永遠に続くんだろうか?」と結婚を前にしてマリッジブルーになってしまったルシンダが、自分と彼の大事にしているものを両天秤にかけてしまうストーリー。よく「私と仕事とどっちが大事なの?」なんてセリフを耳にするが、ルシンダはそういうセリフを直接ロブにぶつけることはない。しかし、やることはすごいぞ。彼がせっかく絞ったミルクの中で泳いでしまったり、牛を全部売り飛ばしてしまったりと、どんなにロブがルシンダを愛してたってそりゃ怒るでしょってことをやってしまう。嗚呼、愛は盲目、愛は人をおバカにするのね(涙☆)
しかし、そんな彼女を見てアホだなぁと思いつつも可愛く思ってしまう。何しろ真剣で必死だから(笑)彼との壊れた関係を取り戻そうと四苦八苦する姿は、身から出た錆とはいえ応援してしまう。

そういう彼女の行動や心情が、とってもファンタジックに描かれている。最初、そんな映像の数々には戸惑ってしまったが(もっと普通の恋愛映画だと思ったんで)見慣れると非常に面白い。これを受け入れられなければ、この話は面白くないかも。彼女の気持ちがそのままストレートに映像になっている。例えば、ロブに対する申し訳ない気持ちが高まりすぎて部屋の中にミルクが溢れ出しルシンダが溺れてしまうシーンがある。映像で見せられるとおかしいんだよね。これよりもっとお気に入りのシーンがあるが、書いても面白くないので実際に見てほしいな。アニメチックな表現だが、実写で見せられると本当に笑える。この撮影方法についてはティーチ・インで説明がされていたが、CGを使わなくてもこういう映像が撮れるだなぁと感心した。犬を登場させる設定にしても、アイデア1つで面白い方向へ持っていけるのがいい。

もうひとつティーチ・インでのこぼれ話。シンクレアと同じニュージーランド出身で私の大好きな『乙女の祈り』を監督したピーター・ジャクソンとは親友で、彼の最新作『ロード・オブ・リング』にシンクレアは役者として出演してするほど。そんな2人だが、ジャクソンは以前監督した『さまよう魂たち』でゴーストの名前にハリー・シンクレアと名づけたそうだ。今回はそのお返しに本作に出てくる妖精に“ジャクソン”という名前をつけたという。いいオジサン同士が可愛らしいぞ。実際、シンクレアはとってもキュートだった。
home