Movie Review 2008
◇Movie Index

エリザベス:ゴールデン・エイジ('07イギリス=フランス)-Feb 16.2008
[STORY]
1585年。女王エリザベス(ケイト・ブランシェット)はイングランドを統治していたが、スペイン国王フェリペ2世(ジョルディ・モリャ)やスコットランド女王メアリー(サマンサ・モートン)から命を狙われていた。そんなある日、新世界から帰還したばかりのウォルター・ローリー(クライヴ・オーウェン)が現われエリザベスは惹かれていく。だが生涯独身を誓ったエリザベスは自分を厳しく律する。そして侍女のベス(アビー・コーニッシュ)をローリーに近づけるのだった。
監督シェカール・カプール(『エリザベス』
−◇−◇−◇−
1998年の映画『エリザベス』の続編。第80回アカデミー賞で衣装デザイン賞を受賞した。

前作でも思ったことだけど、本作を見てやっぱり思ったこと。ヘンリー8世ってやっぱり死んでからもメイワクな人!この国王が遺した問題のせいで揉めてるっつうのに。まぁこの問題がなくても難癖つけて戦争は仕掛けられるものだけど。

予告やCMでは迫力あるシーンが多かったので期待していたが、実際はそういう映像ばかり繋いでいただけというのが分かった。歴史モノにしては登場人物が少なく、スカスカという印象。戦争も迫力不足だし、馬はウロウロしすぎ(笑)ブランシェットは力が入っているのでそれなりな映画にはなっているけど(でも私は彼女のエリザベス演技は実はあまり好きじゃないのよね。『アビエイター』のキャサリンも苦手)他の人についてはやる気すら感じられなかった。特にジェフリー・ラッシュとクライヴ・オーウェンはどうしちゃったの?と思ってしまうほど冴えなかった。リス・エヴァンスの使い方ももったいなさすぎ。
そんな中、ジョルディ・モリャは出番は少ないながらインパクトありました。本当は男前なのに、ピョコピョコした歩き方と負けた時の涙目(笑)で、彼が演じてると知らなければ気が付かなかったかも。いいなぁ。

実際のエリザベスはヴァージン・クィーンと言われてはいたものの、ローリーも含めて愛人がいたらしい。だが、本作ではストイックな女王として描いている。女性的な面も見せてはいるけれど、神格化しすぎじゃないかなと思った。裏切ったベスとローリーに対しては“許す”というより、もっと上からの“赦し”与えているように見えた。エリザベスの周りをカメラがぐるぐる回るシーンに至っては、女王というより悟りを啓いた仏様という感じ。監督がインド人だから、という先入観からそう思っちゃったのかしらね。

あ、衣装はどれも見てて面白かったです(と取ってつけたような感想)
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チーム・バチスタの栄光('08日本)-Feb 11.2008
[STORY]
拡張型心筋症のバチスタ手術は成功率の低い難しい手術だが、東城大学病院では外科医の桐生(吉川晃司)を中心とする7人の専門集団“チーム・バチスタ”が26回連続で成功していた。だがその後、突然3例続けて術中死が発生。病院側は原因を見極めようと、心療内科医の田口(竹内結子)に内部調査を命じる。渋々引き受けた田口は“チーム・バチスタ”たちを面接し、手術にも立ち会うが原因が分からない。するとそこへ、厚生労働省の白鳥(阿部寛)という男が現れ、これは殺人事件だと決めつける。
監督・中村義洋(『アヒルと鴨のコインロッカー』)
−◇−◇−◇−
原作は現役の医師、海堂尊の同名小説。第4回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した作品。
原作既読だけど原作ファンというわけではなく、むしろ逆だった。映画の予告を見て面白そうだなーと思ったのが最初。映画を先に見るか原作を先に読むかで迷ったんだけど、登場人物が多くて名前が覚えられないかも(容疑者だけで7人だ)それに医療用語が難しいかも・・・と不安になり、予習のつもりで先に読むことにしたのだ。

そして原作には見事にハマった(笑)面白かった。全体的なストーリーやミステリな部分はさて置き、病院や医療についての説明は分かりやすいし、何よりキャラクターがみんな濃くて個性的でグイグイ引っ張られた。特に田口先生に萌え(笑)映画の予告から入った私は、原作の田口先生が40過ぎの男だということを、読むまで知らなかったのだ(おいおい)いつもは昼行灯だけどやる時はやる、という人が私は好みなのだが、読みながら『機動警察パトレイバー』の後藤隊長のイメージと重なった(この人も好き)ちなみに白鳥は阿部ちゃんを思い浮かべようにも古田新太の顔しか出てきませんでした(笑)

で、先に読んでしまって失敗した!とも思った。映画がこれより面白いはずないもんね(おいおい)とはいえ前売券も買ってしまっていたので期待せずに見ることにした。

白鳥が蕎麦とうどんを一緒に食べるシーンは笑ったし、オセロを使って誰が犯人かを考えるシーンは分かりやすく、握手のシーンは「おお!」と感心。けれどそれ以外の原作にないシーンがどれも余計に感じられた。ソフトボールもレモンティーもマジでいらんでしょ。そんなシーンより他にもっと見せるべきものがあるでしょうに。テンポが良ければまだマシだったが、そういうシーンに限って長くてクドくてイライラさせられた。

これ以上比較してもしょうがないのであとは省略するけど、原作が面白いから映画化になるわけで、面白くなければ映画化なんてしないわな、という基本的なことに今回改めて気付かされたのでした。
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ラスト、コーション('07中国=アメリカ)-Feb 9.2008
[STORY]
1942年、日本軍占領下の上海。大学生になったチアチー(タン・ウェイ)は、友人とともに抗日運動を目的とする劇団に入団する。芝居が成功し、本格的に抗日運動にのめり込むようになったリーダーのクァン(ワン・リーホン)は、日本政府に協力する特務機関のイー(トニー・レオン)を暗殺しようと計画する。チアチーはマイ夫人となってイーに接近するが・・・。
監督アン・リー(『ブロークバック・マウンテン』
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原作はチャン・アイリンの短編小説『色・戒』第64回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞と金オゼッラ賞(撮影賞)を受賞した。

過激なシーンが話題の映画だけど、さすがアン・リー、158分もある映画を飽きさせることなく見せてくれた。チアチーが仲間に暗殺実行開始を連絡する導入部から、スパイ活動を始めることになった4年前へ遡る。学生時代のシーンがちょっと長いかなとは思ったけど、それでも集中力が途切れることはなかった。

ただ『ブロークバック』と比べると物語りに厚みがないというか、ズシンとくるものがなかった。両作品とも秘密の関係が描かれていて、2人の間の微妙な緊張感と親密さの描き方は甲乙つけられずどちらも素晴らしい。問題はバックグラウンドだ。主要登場人物はどちらも少ないけれど『ブロークバック』はゲイを許さなかった時代背景があるとはいえ(今でも保守的な地域はそうだ)あくまでも個人的な話で、彼らの妻子くらいしか出てこなくても気にならない。
けれど本作は時代背景や抗日運動の様子ももうちょっと描いてもよかったのでは。イーがどういう立場でどんな仕事をしていて、それに伴う危険と孤独というのがちょっと分かりにくい。抗日側もイーを狙うほかに何をしているのか、イーさえ殺せばすべて解決ってわけじゃないだろうに、なんか単純というか薄っぺらい印象を受けてしまった(けど私がこの時代のことを何も知らないからそう思うだけかもしれない、と書いておきます)
そして何より私はクァン役のワン・リーホンが物語を薄くしてると思った。先入観を持つのは良くないけど、アメリカ生まれなせいか他の人とは纏ってる空気が違うし存在そのものが軽すぎた。ワイルドとまではいかなくても、もう少しキリッとした顔の人がよかったな。

日本料理屋でチアチーが中国の歌を歌い、それをイーが手を震わせながら黙って見ているシーンが一番良かった。2人が身体でなく心で結びついた瞬間だったかもしれない。ここと指輪のところでは思わず涙が出た。
指輪といえば余談だけど、本作の前売券の特典が指輪でした。チアチーの指輪の半分以下の大きさのニセモノだったけどね(笑)
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歓喜の歌('07日本)-Feb 3.2008
[STORY]
大晦日を翌日に控えた小さな町。町営みたま文化会館に勤める飯塚(小林薫)は、翌日のコンサート予約をダブルブッキングしていたことに気が付く。“みたま町コーラスガールズ”と“みたまレディースコーラス”が違うグループであることを知らなかったのだ!何とか時間をずらしてもらおうとするが、“ガールズ”のリーダー五十嵐(安田成美)も、“レディース”のリーダー松尾(由紀さおり)も譲ろうとしない。そこで合同コンサートを思いつくが・・・。
監督&脚本・松岡錠司(『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』)
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原作は落語家・立川志の輔の創作落語。本人のほか師匠の立川談志も本作に出演している。

年末の話にしては寒そうに見えなかったので、最初沖縄が舞台なのかと思っていた(モノレールが“ゆいレール”に見えたのね・・・実際は多摩モノレールだったわけだが)撮影が真夏だったのね。いくら冬の服を着ていてもやっぱり冬に撮影してないって分かっちゃう。できればちゃんと冬に撮影して、年末に公開できるようにしてほしかったな。ただ、映画を見た日がちょうど大雪だったので、映画と同じような気分は味わえたかな。

本編を見るまでもなく、ダブルブッキングした2つのコーラスグループがどうなるのか分かっているけれど、こういう映画は過程を楽しむものだからね。会館の職員やグループのメンバーたちが右往左往する姿を見て笑えたらそれでOK。だが実際はそれほど面白くもなかった。本番1日前にダブルブッキングが分かるとか、会場の改装工事を依頼するところなどが強引で無理があった。あと金魚ネタもちょっと引いたな。

歌は素晴らしかったけど、第九を歌うシーンでいつのまにかピアノ演奏にいるはずのないオーケストラが加わって(男性の声もひょっとして入ってた?)違うものになってしまったのが残念だった。迫力を出したかったんだろうけど、あくまでもこれはコーラスグループの発表会なんだからね。余計なことはするもんじゃない。
ま、一番は主人公の飯塚が好きになれなかったことだな。落語の主人公のようなトボケっぷりは落語で聞くからいいのであって、実際にそういうヤツがいるとかなりイラつくということが分かりました(笑)こんな男、同じ職場にいたらいやだ。

根岸季衣のミニスカ姿が意外とイケてたり、由紀さおりの『竹田の子守唄』で涙が出たり、マグロ販売店員(平澤由美)の歌声にびっくりしたり、もちろん好きなところもありました。一番笑ったのはシャラポワかな。不意を突かれたという感じ(笑)あと細かいところだけど、真由美(根岸)が作るお昼ご飯がリアルで良かったなー。中華鍋に油を入れていきなり麺を炒め始めたのでアレ?と思ったら、冷蔵庫から昨日の残りらしき野菜炒めを出して後から投入するの。これぞお昼ご飯!いいわー。好きだわー。

“レディース”はどちらかというとブルジョワな奥様たちの集まりで、“ガールズ”は自営業やパートで働く主婦たちの集まりだ。やっぱりガールズたちを応援しちゃうよな・・・と気持ちが傾きかけているところで、レディースの皆さんがボランティアで病気の患者や家族のために歌っていることが分かっていく。そういうバランスの取り方は上手いなと思った。
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スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師('07アメリカ)-Jan 13.2008
[STORY]
19世紀のロンドン。理髪師のベンジャミン・バーカー(ジョニー・デップ)は妻と娘と幸せに暮らしていた。だが、美しい妻に恋をしたターピン判事(アラン・リックマン)の策略により彼は無実の罪で流刑されてしまう。15年後、脱獄したベンジャミンはスウィーニー・トッドと名を変え、フリート街に戻ってくる。昔住んでいた家の大家ミセス・ラベット(ヘレナ・ボナム=カーター)から、妻はターピンに追いつめられて自殺し、娘はターピンに引き取られたと知らされる。トッドはターピンへの復讐を誓い、理髪店を再開してターピンを店にやってこさせようとするが・・・。
監督ティム・バートン(『チャーリーとチョコレート工場』
−◇−◇−◇−
1979年に初演されトニー賞受賞の同名ミュージカルを映画化。1997年の映画『スウィーニー・トッド』も見たけど、10年も前のことなのでもうほとんど忘れてしまったなぁ。でも本作のほうがミュージカルのくせに血の量がハンパじゃない(笑)トッドが喉元に剃刀を突きつけるたびにゾワゾワしちゃった。背景にはCGがふんだんに使われ、登場人物たちもメイクやコスチュームが奇抜で、まるで『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』や『ティム・バートンのコープスブライド』を実写で見てるみたいだった。

ミュージカルは見てないので、この映画が初めての『スウィーニー・トッド』だったんだけど、トッドとターピンが娘ジョアンナのことを歌うメロディは耳に残ったけど、あとはあまり印象に残らなかった。狭い部屋で歌うシーンも多かったので冗長に感じた部分もあり。ラストも中途半端に感じた。(ここからネタバレ)トッドが死んだところで終わってしまったけどジョアンナとホープがどうなったのかは見せてほしかった。彼の苗字がホープ(Hope)つまり希望だから2人で逃げて幸せになっていると信じたい。ミュージカルのほうはどうなんだろう?(ここまで)
自分が女のせいか、妻を失ったトッドよりもトッドを愛するラベットのいじらしさに涙。特にトッドとの幸せな生活を夢見て歌い上げるシーンが感動的だ。だけどどんなにラベットが盛り上がろうとトッドの表情は沈んだまま。その対比も切なかったなぁ。最初はひどいメイクだと思ったけど、あのシーンのトッドは本当に魂の抜けた人形のように見えて、なるほど〜こういう効果があるのかと納得。それにしても、ラベットがトッドを想うあまりについた嘘と、真実が明らかになったシーンには正直びっくりした。全然分かりませんでした。
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