Movie Review 2005
◇Movie Index

恋の風景('03香港=中国=日本=フランス)-Apr 2.2005
[STORY]
死んだ恋人サム(イーキン・チェン)が遺した1枚の絵の風景を探しに、マン(カリーナ・ラム)は香港から青島へやってくる。郵便配達人のシャオリエ(リウ・イエ)は仕事のかたわら彼女のためにその風景探しを手伝うが、次第に彼女に恋するようになる。マンはシャオリエの気持ちに気付くが、サムを忘れたくないマンはシャオリエを避けるようになる。
監督&脚本キャロル・ライ(『金魚のしずく』)
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第5回(2003年度)NHKアジア・フィルム・フェスティバル共同制作作品(NHKもいろいろやってるんすね)

『ターンレフト ターンライト』で絵本作家ジミーを知ってからチェックするようになったんだけど、『地下鉄』もウォン・カーウァイ製作で映画化されてるし(日本での公開は未定)ホントに人気あるんだね。
でもこの映画は絵本の映画化ではなくて、絵本作家を目指すシャオリエが描く絵として登場する。また最後にはジミーが書き下ろした10枚の絵を元にアニメとして登場(でもちょっと『地下鉄』に似てる)セリフもナレーションもないのだが、バックに流れる音楽(担当は梅林茂)とぴったり合っていて、ほんの数分なんだけどこれだけで感動してしまう。というか、これだけが感動(だめじゃん)
同じタッチで本格的に絵本のアニメ化をしてくれないだろうか。『ターンレフト ターンライト』もアニメで見てみたいな。

本編のほうは、もうちょっとで感動できそうなのに微妙に外してくる映画だった。かゆいところに手が届かなくて、もどかしいような感じ。ネタバレになるけど、たとえばタクシーの運転手さんに指摘されて初めてマンがシャオリエの絵に気付くシーン、見せ方が下手だー。感激する気満々のこっちを見事に肩すかし。また、サムが描いた風景の場所が出てくるシーンでも、絵と本物の風景とがピッタリ合うようなカットがあればよかったのに(その風景の中に、シャオリエの絵と同じポーズの彼がいれば尚よし)せっかく探してた風景だっていうのにロクに映してくれないんだもん。そりゃ2人がその場所で会うというのが重要だけどさ、さんざん探してきた場所なんだから。映像そのものは綺麗に撮れてるだけに残念だった。

カリーナ・ラムは可愛いし儚げなところがいいんだけど、表情が乏しくて感情がこちらにあまり伝わってこなかった。そこが外してるなーと思った理由の1つでもあるかも。リウ・イエは“他の男性を好きな女の子に片思いする”役がハマりすぎ(笑)そういえばマンはサムを亡くした悲しみからか嗅覚が鈍ってしまったという設定だったけど、あれはどうなったかね?シャオリエも足を怪我したという割には普通に走ってたような?・・・基本香港映画だから、あまり深く考えちゃいけないのかもね。
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カナリア('04日本)-Apr 2.2005
[STORY]
岩瀬道子(甲田益也子)は息子の光一(石田法嗣)と娘の朝子を連れてカルト教団に出家する。しかしその教団がテロ事件を起こしたことで警察の強制捜査が入り、母親の行方が分からない光一と妹は施設送りとなった。光一の祖父は洗脳が解けないな光一を拒否し、妹だけを連れて行った。妹を連れ戻すために光一は施設を抜け出す。そして途中、偶然助けた由希(谷村美月)とともに祖父のいる東京をめざす。
監督&脚本・塩田明彦(『黄泉がえり』
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地下鉄サリン事件等で日本中を震撼させたオウム真理教。この事件を元に、保護された子供たちのその後を描いた作品。タイトルの『カナリア』とは、警察が教団施設へ強制捜査に入った時に、警官隊がカナリアの鳥かごを持っていた(毒ガスが漏れているとカナリアは死んでしまう)ところからつけたという。

本作は『黄泉がえり』の塩田明彦、ではなく『害虫』の塩田明彦監督作品、でした(出演者も『害虫』や『月光の囁き』の人たちがたくさん出てました)
しかし主役2人以外で一番インパクトがあったのは甲田益也子。子供たちとともに出家後は教団の幹部となり、教団に馴染めない光一を説得してマントラを唱えさせるシーンが強烈で、光一が施設に入ってからも教団の訓えを守り続けてきた理由がよく分かった。それと、まだ幼い朝子もちゃんと演技をしてて、彼女がTシャツの襟首をしゃぶってるシーンがやるせなかった。メインは光一と由希の旅なんだけど、時々挿入される事件前の教団内での出来事のほうが私には印象深くて、こちらのほうをもっとたくさん見たいと思った。

光一と由希は2人とも目に力のある子で芝居も上手かったが、時々浮くようなセリフを言わされてるのが気になった。このくらいの年頃ってもっと直感で鋭いことを言ってそれにハッとさせられるものだが、本作では大人が考えた子供に言わせたいセリフという感じで、何だか上滑りしてるなーイヤラシイなーと斜に構えて見てしまい、そこで集中力が途切れることも。
イヤラシイといえば、なんつーか、その、少女好きなのが『害虫』よりあからさまになってるような・・・同性として、女の子をそんな風に撮るのはヤメテ!って思うシーンがありました(一歩間違えると犯罪なんじゃ・・・)

でも雨の中で『銀色の道』が流れるシーンまでは傑作扱いしてもいい。海外の人にも見てもらいたいとさえ感じてたのに、最後でやっちゃった!ワタシ的には一番受け入れられない結末でした。ダメ邦画のパターンですよ。それまでは多少ファンタジックでもご都合主義なエピソードがあっても受け入れられたけど、最後はきっちり現実的にありえるところで着地してもらいたかった。
たとえば(ネタバレというわけじゃないけど一応)結局、光一と由希は警察に保護され、朝子も祖父に戻される。ふたたび大人の管理下へ置かれる3人だけど、そこにはもう大人の思惑に左右されない、どこでどうやって暮らそうとも心までは支配されない、という強い意思を持った子たちがそこにいた――(ここまで)とかね。

次回作は『黄泉がえり』の塩田明彦監督作品『この胸いっぱいの愛を』ですね。大手映画会社の作品と、自分が取りたい作品と、両方を(金銭的にも技術的にも)撮れる、それぞれの作品に見合ったカラーを出せるというのは、才能もあるだろうが器用でもあるんだろうな、いい意味で。
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エターナル・サンシャイン('04アメリカ)-Mar 29.2005
[STORY]
ジョエル(ジム・キャリー)は付き合っていたクレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)とバレンタインの直前に別れた。しかしヨリを戻そうと彼女に会いに行くと、彼女は自分のことを全く覚えておらず、すでに別の恋人がいた。友人に相談すると、実はクレメンタインはジョエルの記憶を消去してしまったのだという。その手術をしたラクーナという会社を訪ねたジョエルは、自分も彼女との記憶を消してしまおうとする。
監督ミシェル・ゴンドリー(『ヒューマンネイチュア』
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脚本は『ヒューマン〜』でも脚本を担当したチャーリー・カウフマン。第77回アカデミー賞脚本賞を受賞した。

これから見る人は、タイトルが出るまでのシーンをちゃんと見ておくことをおすすめします。
ぼんやり見ていたら、後になってこの最初のシーンがとても重要だったんだって気が付いて慌てて思い返しましたから。かなり伏線張ってます。
一発屋かと思ってたけど(すまん)すごいぞカウフマン!(&ゴンドリー)『マルコビッチの穴』の時は突拍子もない設定だけで終わってしまった感があったけど、本作ではそこから始まってるところが素晴らしい。

(ここからネタバレ)タイトルが出る前のシーンの、車のキズや日記の破られたページ、パトリック(イライジャ・ウッド)の謎の言葉などの理由が後になって「そうだったのか!」と分かっていくのがパズルが嵌まっていくような面白さだった。しかし一番すごいのは、電車の中で自己紹介をする時にクレムが自分の名前のことをバカにしないでって言うんだけど、ジョエルは怪訝な顔をするのね。彼女が歌って初めて「ああ」って気が付く。でも記憶を消される前の最初の出会いでは、ジョエルはちゃんとクレムの名前と歌のことを分かってる。歌そのものは忘れてないけど、歌とクレメンタインが繋がる記憶を消してるってことなのね。こういう細かいエピソードがスゴイ!

さらにすごいのは、記憶を消しても出会えばやっぱり恋してしまう2人・・・で終わらせないところ。互いの悪いところを喋ってるテープを聞いてしまうシーン。ここは思わず震えてしまった(しかし記憶を消す装置なんて大層なものを発明しておきながら、なぜカセットテープを使うか(笑))あの気まずさと恥ずかしさ!ジョエルよりクレムより私が一番先にその場から逃げ出したくなった(笑)

ただ、他が完璧すぎるのか、メアリー(キルスティン・ダンスト)がドクター(トム・ウィルキンソン)に告白するところが気になってしまった。唐突すぎる。だったらその前のスタン(マーク・ラファロ)とのいちゃつきぶりは何だったのかと。スタンもいきなり「外の空気を吸いに行く」と出てってしまうのがヘン。ちゃんと仕事しなかったのが気まずくなったのか?それとも2人に気を回したのか。でもメアリーのことを好きなんだったら、気を回したりしないだろう。でもキスしてるのを見てもショックを受けてる感じじゃなくて・・・うーん。些細なことかもしれないけど、とにかくここだけがものすごく気になる。
(ここまで)

記憶を消す時の映像も面白かった。CGもたくさん使ってるんだろうけど、意外と単純な方法も使ってそうで、そのアイデアはぜひDVDにメイキングとしてつけてほしい。
キャリーは「この人、本当はこういう人なんだろうな」と思わせる繊細で壊れそうな表情がたまらない。ただ、記憶の中のシーンで、コメディで見せる演技をしてしまってるところが残念だった。個人的にはあの演技は一切封印して欲しかったな。好きな人には嬉しかったかもしれないけど。
ウィンスレットは期待していたのとちょっと違った。安定感のある演技なので、見てて不安にならないところがかえってこの役に合ってないと思った。それに彼女は田舎っぽさは出せるけど下品じゃないものね。クレムはビッチ!っていう雰囲気がないと。その髪の色が泣くぞと。クレムとジョエルが別れるきっかけとなったケンカのシーンも、もっと狂ったような怒りをぶつけないと、その後の記憶を全部消してやる!っていうクレムの直情型の性格に繋がらないんじゃないのかな。『乙女の祈り』の時の演技だったらハマったかもしれないが・・・あれはもう10年も前になるのか。ウザいかもしれないけど、もう少し若いアメリカ人の女の子にやってもらいたかった。
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アビエイター('04アメリカ)-Mar 26.2005
[STORY]
ハワード・ヒューズ(レオナルド・ディカプリオ)は急死した父の事業を引き継ぎ、18歳にして大富豪となった。そして巨額の制作費を投じて監督した映画『地獄の天使』が大ヒットし、一躍ハリウッドに踊り出る。そして有名女優キャサリン・ヘップバーン(ケイト・ブランシェット)と恋に落ちる。一方、航空会社を買収し軍用機の開発にも乗り出し、ライバルのパンナム社との争いも激しくなっていく。
監督マーティン・スコセッシ(『ギャング・オブ・ニューヨーク』
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1930年代にハリウッドの寵児となり、1976年に死去した実在の大富豪ハワード・ヒューズの半生を描いたドラマ。第77回アカデミー賞で助演女優賞(ブランシェット)、撮影賞、編集賞、美術賞、衣装デザイン賞の5部門を受賞した。

正直言ってハワード・ヒューズに興味はなくて、見たら疲れそうだなぁと思ってたんだけど、ブランシェットとジュード・ロウ目当てで見てみた・・・ジュード・ロウの出番少なっ!カメオ出演と言ってもいいくらいじゃないですか(『ロング・エンゲージメント』のあの人のほうがよっぽども出番多いよ)
ブランシェットのほうは・・・うーん、どうなんだろう。いつもの彼女のほうがいい演技をしてるように思うんだけど。特にハワードと2人で話すシーンは互いに自分のセリフを言ってるだけで会話になってないような感じで、違和感あった。ディカプリオとの相性が良くなかったのかも。

ディカプリオも気張りすぎててセリフも一本調子だし、表情のパターンも少なかった。そのかわり眉間のシワにいろんなバリエーションがあって楽しかったけどね。1本深いのが真ん中にできたり、川の字みたいになったり、肉っていう字が浮かび上がったり(笑)昔はこんなんじゃなくて、もっと自然体でいい表情をしてたのになぁ。今までのイメージを壊そうと躍起になっているような感じがした。もっと軽い作品にも出てみたらどうだろう。

でも思ったより面白かった。『ギャング〜』よりは私はこちらのほうが好き。飛行機への情熱を傾けるところでは、私は彼はお金を出して注文つけるだけの人だと思ってたので、実際に設計に携わったり、自らテストパイロットになったことに驚き、感心した。また公聴会でのやりとりでは、ハワードは決して清廉潔白じゃないのに、アメリカ人独特の論理展開で強引に正義のヒーローみたいになっちゃってるところに笑ってしまった。ズルイよなー。

一番凄いと思ったのは、ハワードが事故に遭うシーン。落ちる!ってところでカットして、次のシーンで病院にハワードが担ぎこまれるシーンでも構わないのに、飛行機が民家を破壊していくところや、彼が飛行機から血まみれになって脱出するシーンまできちんと見せていた。とても痛そうで、迫力ある映像だった。しかし彼を助けに来た人は一体誰だったんでしょうか?最初、一緒に飛行機を作ってたグレン(マット・ロス)かと思ったけど違ったような。炎をバックに全速力でこちらに向かってくるシーンがまるでアクション映画のヒーローみたいで、そこだけえらい浮いてました。ハワードの運命の人が登場!なのかと(笑)

ラストは実在の人物の映画によくある「ハワードはその後・・・云々」という説明テロップがなく、この手の映画では珍しい切り方で、かえって印象に残った。
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ナショナル・トレジャー('04アメリカ)-Mar 24.2005
[STORY]
フリーメイソンによって守られてきた秘宝が独立戦争中のアメリカで行方不明となった。その秘密を代々受け継いできたゲイツ家の子孫ベン・ゲイツ(ニコラス・ケイジ)は、相棒のライリー(ジャスティン・バーサ)、資金援助をしてくれたイアン(ショーン・ビーン)らとともに北極圏に沈んだ船から暗号を探し出す。暗号を解読すると、秘宝の鍵は合衆国宣言書にあるという。イアンは宣言書を盗もうと提案するが、ベンが拒絶すると2人を殺そうとする。かろうじて逃げ切ったベンとライリーは、公文書館の管理責任者アビゲイル(ダイアン・クルーガー)に面会し、宣言書が盗まれる危険があると警告するが信じてもらえない。ゲイツはイアンに盗まれる前に自分が盗んでしまおうと計画する。
監督ジョン・タートルトーブ(『キッド』
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製作は『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』のジェリー・ブラッカイマー。

アメリカの歴史とかフリーメーソンとか何も知らなくてもとりあえず楽しめる映画。展開がヌルい、と思ったらディズニー映画なんだから、と言い聞かせる映画。そしてケイジの頭を見て増えてる、増えてない、で自問自答する映画である(言い切ったな)

とはいえ、ヌルいくせに130分もある映画にしては飽きさせずにストーリーを引っ張る力は持っている。秘境の宝を探すより、実際にあるもの(独立宣言書やアメリカの紙幣)にヒントが隠されているほうがちょっとだけど本当っぽく感じるせいかも。自分は本作に登場する場所に行ったことはないけれど、博物館に普段から展示されているものに暗号が隠されていると知ったらワクワクするだろう。本作でも、某教会に行くまでの冒険はかなり楽しめました。その後の展開は・・・(笑)

と、いうかこの映画を見て、ヌルい展開であればあるほど悪役が気の毒に見えるということに気が付きました。銃の腕はそうとう悪いようで弾がちっとも当たりません。追いかけるのがヘタなのでベンたちを捕まえることができません。殺してしまえばそこで終わりなのに、何故かそこで妙な優しさを見せたりします。・・・最後はイアンに同情さえしてしまいました。

ケイジ演じるベン・ゲイツは、ベイツ家のためにも何が何でも宝を見つけなければ!という信念以外は、性格が分かりにくくて魅力が感じられなかった。それよりも彼の父親パトリック(ジョン・ヴォイド)のほうがキャラクター的には面白い。かつては祖先と同じように秘宝の謎に挑んでいたが、今では諦めて堅実な人生を送り、放蕩息子を諭す父親なのだが、息子にイヤイヤながらも協力し、ふとした瞬間に自分の知識がポロリと出てしまったり、しまいには目を輝かせてしまうという可愛らしさ。

そしてベンの相棒であるライリーも相当“おいしい”役だ。ボケとツッコミを両方こなし、母性本能をくすぐることを言ったりする(それに騙されてカワイイと思っちゃう私)だいたいこの手の役って何かしらドジをやらかしてピンチを招いてしまうのだが、ライリーはソツなくこなしている。だからすごく地味なんだけど、見ていてストレスを感じなくていい。同じようにアビゲイルもミエミエのドジを踏まずスマートだが、悪く言えば完全に添え物。可愛い笑いを取ったところもあったんだけど。例えばベンやライリーにはない知識を持ってるとか、何か役割を与えてほしかったな。そういえば彼女の職場の同僚が最初は意味ありげに登場してたけど、途中でプッツリ消えてしまったね。ひょっとしてアビゲイルの恋人という設定で、ベンたちを妨害する役だったのかも?!
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