Movie Review 2003
◇Movie Index

フリーダ('02アメリカ)-Aug 9.2003
[STORY]
1925年。18歳のフリーダ・カーロ(サルマ・ハエック)は交通事故で大怪我を負う。寝たきりになった彼女は孤独から逃れるために絵を描くことに没頭する。手術を繰り返したフリーダはようやく歩けるようにまで回復し、絵で生計を立てようと壁画家のディエゴ・リベラ(アルフレッド・モリーナ)を訪ねる。2人は惹かれ合い結婚するが、ディエゴの浮気癖が彼女を悩ませる。
監督ジュリー・テイモア(『タイタス』
−◇−◇−◇−
第75回アカデミー賞で、メーキャップ賞と作曲賞に選ばれた。作曲賞を受賞したエリオット・ゴールデンサルはテイモアのパートナーでもある。またサルマ・ハエックも製作に加わっている。

フリーダ・カーロについては正直映画を見るまであまり興味がなく、テイモアがこの作品をどんな風に演出したかが目当てだった。でも映画を見て、フリーダにも少し興味を持ったなぁ。絵はやっぱり好みじゃないけど、イサム・ノグチなどの芸術家とも関係を持っていたり(映画では彼とのことはすっ飛ばされてるけど)女性とも関係を持ったりと、下世話なところに興味深々(笑)また、夫ディエゴの女性遍歴も他人事だから言えるけど“面白い”。いろんな女性に手を出してたみたいだけど、ロシア人画家と同棲したり作家と結婚していたりと、やっぱり芸術家が好きみたいね。結局は似た者同士でお似合いだったと。彼の浮気に随分傷ついただろうけど、彼が生真面目で浮気なんか一切しない人だったら、多分フリーダは惹かれてないでしょう。

映画の冒頭は良かった。予告でも使われてるけど、病気でベッドに横たわったフリーダが寝返りを打った瞬間、学生時代のフリーダが走っていくシーン。掴みは前作と同じくいいのよね。そこから実際のフリーダが描いた絵をモチーフにしつつも、それに負けないようにオリジナリティを出そうと必死なシーンがいっぱい(笑)必死すぎてガイコツのパペットまで作っちゃいましたか(実際に作ったのはクエイ兄弟)。でもこれが最悪だった。ニューヨークへ渡った時に、夫をキングコングに例えるシーンもあるんだけど、これもダメだったな。なーんか感覚がズレてるんだよなぁ。奇抜にすればいいってもんじゃない。映画にそれらが溶け込んでなくて引いてしまうばかり。フリーダの絵から実写になったり、実写から絵になるシーンは溶け込んでて、この演出は好きだった。衣装の美しさも引き立ってたし。

まぁフリーダの身体と心の痛みを見せるのに一番簡単でいい方法は、彼女の絵をもっとフィーチャーすることだと思うんだけど、そこに頼りきらずに表現しようとしたところは(映画作家としては当然だけどさ)逃げてなくて好感が持てるし、これからの作品にも期待しようという気になる。作品的にも着実にレベルアップしてるんで、次回作も必ず見ます。
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パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち('03アメリカ)-Aug 6.2003
[STORY]
カリブ海の港町ポートロイヤル。総督の娘エリザベス(キーラ・ナイトレイ)は、8年前、海賊船に襲われた船から助け出された少年が身に付けていたメダルを、密かに隠し持っていた。そのメダルを奪おうと海賊バリボッサ(ジェフリー・ラッシュ)が彼女を誘拐する。彼女に恋する鍛冶屋のウィル(オーランド・ブルーム)は、一匹狼の海賊ジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)の助けを借りて、エリザベス救出に向かう。
監督ゴア・ヴァービンスキー(『ザ・リング』
−◇−◇−◇−
原作(?)はディズニーランドの人気アトラクション『カリブの海賊』。私はホーンテッドマンションと同じくらい、このアトラクションが好きなんだけど、ストーリーは・・・あったっけ?全然覚えてない。映画を見てて歌が同じだったり、似たようなシーンはあったけども。

製作は『アルマゲドン』などでおなじみの(笑)ジェリー・ブラッカイマー。物語を強引に力技でねじ伏せるところがあまり好きじゃないのだが、ディズニー映画だからなのか、本作は素直に楽しめた。バルボッサの肩に乗ってるサルの描写とか、エリザベスが海賊船の中でトランポリンもどきに体を跳ね飛ばされるシーンなんかはディズニーのアニメが実写化したようで面白かった。でも同じようなシーンが何度も繰り返されたり、ラストシーンが正統派すぎたところは面白くなかった。ラストは(ネタバレ)総督が振り返ったら、ウィルとエリザベスも海に飛び込んでそのまま海賊になる、だったら面白かったのに。あの2人が鍛冶屋夫婦になる?もったいない(笑)(ここまで)鑑賞後に物足りなさを感じたのはこのせいだろう。

ストーリーは単純なようでいて、けっこう複雑だったかも・・・私にとっては。メダルを奪ったものは呪われ、不死身となるが快楽的なことが感じられなくなる。そしてメダルに自分の血を付けて箱に戻し、メダルが全部揃えば呪いは解かれ、普通の人間に戻る、と。この設定が最初はちゃんと理解できなくて戸惑ってしまった。(ネタバレ)ジャックがバルボッサに刺されていきなりガイコツ化した時、最初から彼が呪われた身だったのかと勘違いしてしまったのだ。直前でメダルを奪ったからなのね。(ここまで)またエンドクレジット後にもこれに関係するシーンが追加されている。このシーンは重要だから見逃しちゃダメ。このおかげで映画が締まって見える。でもブラッカイマーフィルムのロゴを早く出し過ぎ(笑)これも映画の続きかと思ったよ。

キーラ・ナイトレイは顔の造りはケイト・ウィンスレットに似てるんだけど、体重が違うだけでこんなにも可憐に見えるのかと(失礼)と感心させられた。『タイタニック』も彼女だったらまた違った印象を持ったかも。惜しいなぁ。お願いだから太らないでね。
オーランド・ブルームはなぁ・・・微妙。カッコイイんだけど声がダメだね。もっと腹から声を出さないと、英語が分からなくたってじゅうぶん大根に見えてしまう。エルフ役ならあれでいいんだが。
デップとサル、2人(厳密には1人と1匹)のジャックはパーフェクトでした。
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ドラゴンヘッド('03日本)-Jul 29.2003
[STORY]
修学旅行帰りの新幹線。高校生の青木テル(妻夫木聡)は暗闇の中で目覚めた。どうやら事故に遭ったらしく同級生たちのほとんどが死んでいた。生き残ったのは瀬戸アコ(SAYAKA)と高橋ノブオ(山田孝之)の3人だけ。テルとアコは救助を待ったり何とか外に出ようと思うが、ノブオは次第におかしくなっていった・・・。
監督&脚本・飯田譲治(『アナザヘヴン』
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原作は望月峯太郎の同名漫画。私は漫画は読んでないので、以下映画オンリーの解釈になります。

友達が誘ってくれたので、舞台挨拶付き完成披露試写会に行ってきた。本人たちよりも熱狂的なファンにばっかり目が行っちゃった。オープニングとエンドクレジットで出演者の名前が出た時に拍手するのにはビックリした。すげーな、ファンって(笑)

さて本編だけど、大々的に宣伝されているウズベキスタンでロケしたという壊滅した日本。これが想像してたのよりずっと良かった。広大な大地にポツンと佇むテルとアコのショットが印象的。CGもところどころアヤシイところがあったけど、火の玉が飛んでくるシーンなんて迫力があって驚いたし、邦画だからチャチだろうと決め付けてました。スマンね。

で、こうなると目立つのが脚本と演出。役者の演技についてはあまり文句はないのよね。主要キャスト3人が若いせいか、マズイ演技を見ても本人たちを責めるより演出するほうを責めたくなってしまう。物語の最初から順番に撮影してるわけじゃないだろうから、全体を見据えた監督がその都度演技について指示をしないといけないと思う。どの程度やってたのか知らんが、一本調子なんだよね。テルとアコが最初はただ偶然生き残ったから一緒にいただけだったのが、だんだんお互いにいなくてはならない相手になっていく、相手とずっと一緒にいたいから必死に生き抜く。ここが一番大事だと思うのだ。それが全部同じようなトーンなので、つい流して見てしまいそうになったし、彼らに感情移入できなかった。

また、私が聞き逃してるだけかもしれないが、劇中で“ドラゴンヘッド”って言葉は一度も出てこなかったと思う。見た後に調べてないんだけど(わざとね)たぶん途中で出てくる脳手術を受けた頭のこと、なんだろうな。ここからちょっとネタバレだけど、その後は手術をしなくても政府の用意した缶詰を食べるとドラゴンヘッド状態の人間になってしまう。ドラゴンヘッドの人間はもう人間とは呼べない。テルたちは人間でいるために食べ物を口にせず生きることを誓う。はい、ここまで自分で補完してみました。映画をただボーッと見てるだけじゃ全然分からないんですけどね。見る前はドラゴンヘッドっつうのは日本壊滅の原因を作ったモノの通称だと思ってたしな。とにかく見ただけで分かる脚本を書いてくれよ!

そして一番問題なのがラストシーンだ。(ここからネタバレ)映画の『漂流教室』にちょっと似てるんだけど、あの映画では未来への希望が見えるラストだった。でも本作は全然希望が見えなかった。火山がドッカンドッカン噴出してる目の前で「絶対生き続けてやる!」ってあんたそりゃ無理だよ(笑)まるでケンカでボコボコにされた人が「今日はこれくらいにしといたる」って言うのと一緒だって。えーこんなオチかよ?!って思わずツッコミ入れそうになった。今まで見てきたものがすべて無駄になったみたいで虚しかったな・・・とほほ。(ここまで)

出演者たちはみんな真っ白になりながら頑張ってたけど、役者のファンは顔が分かりづらい彼らを見続けるのはつらいだろうな。『呪怨』の白塗りの子みたいだったしなぁ。・・・特にSAYAKA。
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ライフ・オブ・デビッド・ゲイル('03アメリカ)-Jul 29.2003
[STORY]
元・大学教授で死刑廃止論者のデビッド・ゲイル(ケビン・スペイシー)は、同僚の女性をレイプし殺害した罪で死刑囚となっていた。彼は執行の3日前、女性記者のビッツィー(ケイト・ウィンスレット)を指名し、彼と話をして手記を書くよう依頼する。最初は彼が犯人だと疑わなかったビッツィーだったが、話をするうちに彼が冤罪なのではないかと思い始める。
監督アラン・パーカー(『エビータ』
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製作は俳優のニコラス・ケイジ。

ネタバレしないで感想を書くのは無理なので(笑)ここから全部ネタバレしまーす。あ、でも一言だけまず書くとすれば、私はこの映画を見て死刑という刑罰について考えようって気にはならなかったな。社会派でも何でもない、完全な娯楽作品だと思いましたよ。

(さてネタバレ)上の続きで過激なこと書いちゃうけど、本当に死刑について考えさせようと思って製作した映画であったならば、最低の映画だと思う。死刑肯定派も否定派も困っちゃうでしょ、この内容じゃ。だってデビッド・ゲイルは死刑制度を利用し、自分のために命を賭けて世間に復讐・・・いやもっと子供っぽいな。自分を貶めた人々に対して“嫌がらせ”をしただけだから。家を出た妻に、州知事に、教え子だったバーリンに、白い目で見る町の住人たちに対してね。そして本気で廃止運動に取り組んでいたコンスタンスを結果的に騙した。彼女の行為も許されたことじゃないけど、同じ命を賭けるにしてもデビッド・ゲイルは卑怯だなと思ってしまう。映画で彼は死刑廃止にそれほど熱心に見えなかったのもあるな。死刑肯定派を打ち負かすために否定派になってるように見えてしまったというか、自分の知性を誇示するためにやってるんじゃないかとまで思うのはヒドイかな。頭の回転はいいのかもしれない。でも本当に頭のいい人ではないね。ダメになるとお酒に逃げちゃうし(それは人のこと言えないだろうよ)

そもそもこの計画は誰が立てたのか?それとコンスタンスが実行に移すまでの経緯がバッサリ切られてるので、非常に気持ちが悪い。ていうかズルイ。よく見れば辻褄が合わない個所もあるし。原作はちゃんと描かれてるのだろうか?ハッ!まさか『ユージュアル・サスペクツ』みたいにスペイシーが語った部分に嘘があったとか?!(笑)
(ここまで)

死刑という刑罰については考えなかったけど、この映画については上のようにいっぱい考えてしまった。サスペンス映画としてはこれでいいのかもしれない。
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シティ・オブ・ゴッド('02ブラジル)-Jul 26.2003
[STORY]
1960年代のブラジル。リオデジャネイロ郊外にできた公営住宅地“シティ・オブ・ゴッド”は、他のスラムから追われてきた貧しい人々が住む町だ。ギャングの兄を持つブスカベは争いごとが嫌いで、写真家になって町を出ることを夢見ていた。一方、同じくギャングの兄を持つリトル・ダイスは“シティ・オブ・ゴッド”で一番のギャングになろうと、兄たちをそそのかしてモーテルを襲撃する。
監督フェルナンド・メイレレス(監督3作目で日本公開初)
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『オルフェ』で共同脚本を手がけたパウロ・リンスのノンフィクション小説“CICADA DE DEUS”の映画化。エンドクレジットでは演者と一緒に実在の人物の写真が見られる。2002年のカンヌ国際映画祭や東京国際映画祭で上映された。

一歩間違えるとバイオレンス作品になってしまいそうな題材なのに、語り口が軽快だし映像もスタイリッシュ。雰囲気は『アモーレス・ペロス』にちょっと似てるんだけど、こっちの作品がドロドロしてたのに対して、本作は見ててあまり辛くない(一箇所、ものすごく苦手なシーンがあったけど)内容は本作のほうが悲惨で怖いのになぁ。女だろうが子供だろうがいつ殺されてもおかしくない容赦ない世界なのに、それを悲劇として描いてないんだな。死んでしまったらそれで終わり。運と金と頭の回転の早いヤツが生き残るだけ。登場人物の誰にも感情移入させないのだ。

全編まるでゲームのようなので、終わってからも考えさせられたり、落ちこんだりもしない。もう少し余韻を残してくれてもいいかなぁとも思うけど、この作品にはこれで合ってるように思う。この世から悪いことがなくなることはない。日常の中にある危険から逃げるか、殺される前に殺して勝ち残るしかない、ってことなんだな。
ただ、個人的には落ち込むくらい嫌な展開や後味最悪のストーリーのほうが好きなんで、少々物足りなかった。

見た後に知ったんだけど、映画に出演した人々がみな素人だったってことにビックリ。特にリトル・ダイスを演じた少年は、大人になった彼よりも無邪気で残酷で本当に恐ろしく、大人の彼よりもずっと印象深い。大人になって迫力が感じられなくなったのが残念。いくら悪いことをしててもいまいち怖くなかったんだよね(上に書いた、一箇所を除いて)それが物足りなかった一因でもある。
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