Movie Review 2002
◇Movie Index

至福のとき('00中国)-Nov 3.2002
[STORY]
中国・大連。チャオ(チャオ・ベンシャン)は今度こそお見合いを成功させようと、失業中にもかかわらず相手の女性に結婚資金に5万元用意すると言ってしまった。仲間の手を借りてオンボロのバスをラブホテルのように改造して金を稼ぎ、女性にも旅館経営者だと嘘をつく。すると彼女から、前夫の連れ子で盲目のウー・イン(ドン・ジエ)を旅館で雇って欲しいと頼まれてしまった。
監督チャン・イーモウ(『初恋のきた道』
−◇−◇−◇−
前作『初恋のきた道』で、主人公を素直に見れなかった私ですが、今回もまた主人公に対してかなりむかつきました。チャン・イーモウとは相性悪いのかな私は(笑)なので、感動した方は以下読まないで下さいませ。

狡すっからい嘘つきは誰でも嫌いだと思うんだけど、チャオのような善良そうな嘘つきは始末が悪い。というか、制作側が「コイツはどうしようもない男だけど、悪い奴じゃないんだよ」と描くのが苦手。結局チャオの浅はかな嘘の塗り重ねによってウー・インは外の世界に一人投げ出されてしまった。少しの間ウー・インは至福の時を味わったかもしれないが、あの金持ちに世話してもらっていれば、至福とまではいかないまでも、今までの生活より幸せだったかも・・・と映画のタイトルからして全否定かよ!自分(笑)
(本当はウー・インが一人歩くシーンなど監督の中はなく、某企業からの意向で後から付け足されたという噂も聞く。だとしたらチャオへのむかつき度はちょっと下がるが。本当ならあれは蛇足だったな・・・)

ほかにもドン・ジエにあんな格好させたことに怒ってみたりしたが(一部喜ぶ人はいるだろうけどさ)チャオとウー・インの嬉しそうなシーンはやっぱり泣いてしまった。でもこのいかにも泣いてくれ!なシーンで泣いちゃった自分にまたちょっと怒ったりもした(笑)
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ゴスフォード・パーク('01イタリア・イギリス・アメリカ・ドイツ)-Nov 3.2002
[STORY]
1932年イギリス郊外。ゴスフォード・パークと呼ばれるカントリーハウスに貴族やハリウッドの映画人たちが集まり、昼間はキジ撃ち、夜はパーティーが催された。しかし2日目の夜、主人のマッコードル卿(マイケル・ガンボン)が殺されてしまった。招待客、使用人、屋敷にいる者みなそれぞれ殺す動機を持っており刑事も捜査に手を焼くが、トレンサム伯爵夫人(マギー・スミス)のメイド、メアリー(ケリー・マクドナルド)は何かに気づく。
監督ロバート・アルトマン(『クッキー・フォーチュン』
−◇−◇−◇−
第74回アカデミー賞脚本賞ほか、映画賞を多数受賞。

よくこれだけ主役級、名脇役を集めたなぁ。さっすがアルトマンだね!←悪いが半分は皮肉。なぜなら『ザ・プレイヤー』も『ショート・カッツ』も同じように豪華メンバーだったけどそれが活かされてなくワタシ的にいまいちだったので。でも本作は適材適所というか、役者の使い方はうまい。

ストーリーで書いた人以外にも私が知っているだけで、
クリスティン・スコット=トーマス、トム・ホランダー、ジェレミー・ノーザム、ジェームズ・ウィルビー、ライアン・フィリップ、スティーブン・フライ、クライヴ・オーウェン、ヘレン・ミレン、アイリーン・アトキンス、エミリー・ワトソン、アラン・ベイツ、デレク・ジャコビ、リチャード・E・グラント
と出演してて、この中に入っちゃうとR・フィリップなんてものすごく演技が下手で浮いてるんだけど、浮いていい役だからぜんぜん違和感ないわけ。金庫番のR・E・グラントがいかにも胡散臭い顔(褒め言葉)で屋敷の中を歩いてるシーンもいいし、J・ノーザムがこんなに歌が上手かったなんて・・・甘い声にうっとりしました(でも今回のイチオシはやはりC・オーウェンね。セクシ〜)

一応、殺人事件が起こるわけだけど、ミステリ要素は予想より薄かった。殺人が起こるまでの時間のほうが長かったのでは。一番の見どころは事件ではなく、貴族たちと彼らに仕える使用人たちの暮らしぶりと“関係”だ。初めて知ったんだけど、別荘に招かれる人たちは(一部を除いて)みんな自分の邸宅から使用人を連れてくるのね。そしてその使用人たちは主人の名前で呼ばれる。例えばメアリーは“ミス・トレンサム”だ。貴族は特に頼む用事がなければ使用人のことが“見えない”ので、使用人たちがいても秘密を喋ることがある。その秘密を使用人同士が喋り合う。そして主人は自分の使用人から情報を得る。・・・うまくできてるやね(笑)

こういう仕組みが詳しく描写され、またすごく面白かったので、事件は取ってつけたような感じがしたな。事件の背景にはやはり貴族と使用人が“関係”してるわけだが、唐突に「犯人分かっちゃったんですけど」なシーンが出てきてビックリした。もしかして上映時間の関係で途中カットされた?なんて思ってしまったほど。(少しネタバレ)何で彼だって分かったの?刺したのが彼と分かってからは「ならば毒を盛ったのは彼女か」ってすぐに分かったけど。その最初のところよ、私がビックリしたのは。(ここまで)私なにか見落としたのかな。確かに最初は名前と顔と関係が一致しなくてすごい混乱したんだよね。もう一度見るべきだろうか(笑)
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戦場のピアニスト('02フランス・ドイツ・ポーランド・イギリス)-Nov 1.2002オススメ★
[STORY]
1939年。ドイツ軍のポーランド侵攻により、ユダヤ系ポーランド人でピアニストのウワディスワフ・シュピルマン(エイドリアン・ブロディ)と家族たちもまた、ユダヤ人居住区ゲットーでの生活を余儀なくされた。さらにトレブリンカにある収容所へと移送されそうになるが、ギリギリのところでシュピルマンだけ逃げ出すことができた。それから彼の孤独な逃亡生活が始まった・・・。
監督ロマン・ポランスキー(『ナインスゲート』
−◇−◇−◇−
第55回カンヌ映画祭パルムドール受賞作で、第15回東京国際映画祭特別招待作品。一般公開は2003年3月の予定。
2000年に亡くなった実在のピアニストの半生を描いた作品。私は映画を見るまでどんな人かまったく知らなかったので調べてたら、何と彼のご子息はいま日本の大学で教鞭を取っているのだそう。映画祭で来日したブロディと一緒に記者会見に出席した記事がありました。

映画の始まりは1939年から。年代のテロップが出ると、そこから私の中で終戦カウントダウンが始まる。戦争映画、とくにホロコースト作品を見る時は(といってもできるだけ見ないようにしている。『シンドラーのリスト』も見ていない)いつも早く1945年になってくれと念じながら見る。もうつらくて見てられないから(泣)今回は6年の月日があったわけだけど、こんなに長くて苦しい作品は初めてだった。
ポランスキーもまたパリ生まれのユダヤ系ポーランド人であり、幼い頃に強制収容所に入れられ、そこで母を亡くした経験を持っている。そのためこの作品に対する思いは計り知れないほど強い。シュピルマンと、祖国と、亡くなった人々に捧げた渾身の一作なのである。その強い思いを受け止めきれず、身体はずっと震えっぱなしだったし、私の列に人が座ってなければ立ちあがって逃げ出していたかもしれない。

ユダヤ人とポーランド人を区別するための腕章に始まり、ユダヤ人居住区への引越しを余儀なくされ、さらに強制収容所へとユダヤ人たちを追い詰めていく。その間も、ナチスたちは適当なユダヤ人を面白半分に殺していく。尊い命が、ほんの彼らの気まぐれで決まってしまうのだ。そんな中でよくシュピルマンは生き残ったと思うよ。

ここからはネタバレも含みます。
家族と離れ、一人になったシュピルマンは、ただ生き抜くために敵から逃げ食料を探し続ける。言葉を話すこともなくなり、彼が何を考えているのか全く分からなくなった。言い方は悪いが、もはや人間ではなく動物を見ているようだった。見てる私もそれまでは可哀相だとか戦争は嫌だとかいろいろ考えながら見ていたが、多くの人の死と破壊された建物を見て、もう何も考えられなくなった。ただぼんやりと彼を目で追うようになっていた。

そんな空っぽのところに突如響いたのが彼のピアノだった。私の両方の目からいきなり涙がこぼれた。そして泣いたことにビックリした。元々泣き虫ですから(笑)ちょっとした感動話ですぐ泣いちゃうんだけど、この映画では今まで泣いたのとは全然違う感覚だった。そのあと缶切が入ってたシーンでまた泣いたんだけど、このときの涙と演奏のときの涙は違うものだ。同じシーンをまた見たとしても、もうあんな風に泣くことはないだろう。彼が動物などではなく、ピアノの前で人間性を取り戻していく姿を見たからなのか?・・・分析してもしょうがないからやめよう。

できればもう二度と見たくないけど(つらいから、ね)でもこの作品は間違いなく傑作だ。必見。
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ザ・リング('02アメリカ)-Oct 28.2002
[STORY]
アメリカ、シアトル。ジャーナリストのレイチェル(ナオミ・ワッツ)の姪ケイティと仲間たちが同じ日の同じ時刻に謎の死を遂げた。ケイティの母親に頼まれ、レイチェルは彼女の死の調査を始める。そして辿り着いたのは、1本のビデオテープの噂だった。そのテープを見た者は7日以内に死ぬというのだ。レイチェルはケイティたちが泊まったバンガローでビデオテープを発見した。
監督ゴア・ヴァービンスキー(『マウス・ハント』
−◇−◇−◇−
第15回東京国際映画祭特別招待作品・・・なんだけどさ、一般公開がその5日後というのはどうなのよ?先行ロードショウというか有料試写会というか・・・。でも本物のナオミ・ワッツ(と菜々子)見れたからいいか。

一応、鈴木光司原作の映画化、ということになっているそうだが、どうみても邦画『リング』のリメイクだ(そもそも小説では主人公は女じゃない)ビデオ映像や、レイチェルの息子がビデオを見てしまった時のシーンなど、似たところも多い。でもね、この映画を見て改めてハリウッド映画ってこういうものなんだ、って分かった。

邦画のほうでは、貞子は死んでからもなお深く怨み続け人間たちに復讐していく怖さを描いていたが、ハリウッド版のサマラは恨みつらみというよりも、存在するだけで周囲の人たちを不幸にしてしまうウイルスのような存在。貞子は生い立ちから死ぬまで複雑な人生だったけど、サマラはもっとシンプルだ。さらに邦画版では無駄だと思っていたシーンや、分かりづらいところも殺ぎ落とされ分かりやすく、テンポよく飽きさせることがない。効果音や音楽の入れ方も迫力あるし、やっぱりウマイよ〜(笑)

ラストについては最初から邦画版とは変えると聞いていたので楽しみにしてたんだけど、ちょーっと期待ハズレだったかな。(ここからネタバレ)レイチェルの息子がビデオをダビングして見せている相手というのは、実は映画を見ている私たち観客であった、ということでいいんだよね。まぁよくあるパターンだよな(毒)というかラストを決定することができずに仕方なくこうした、という感じがしたんだけど、こんな風に思ったのは私だけだろうか。どうせならレイチェルが発狂してビデオを全世界へネット配信!・・・だったら面白かっただろうな、ってそれじゃあいくらアメリカでも上映禁止になっちゃうか。(ここまで)

ところで名前が似てるのは貞子とサマラだけかと思ったら、玲子とレイチェルもちょっと似てたね(他の名前も比較してみたけどこれだけだった)
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トリプルX('02アメリカ)-Oct 28.2002
[STORY]
危険なアクションをビデオ撮影して販売している男ザンダー・ケイジ(ヴィン・ディーゼル)。彼に目をつけた国家安全保障局―NSAのエージェント、ギボンズ(サミュエル・L・ジャクソン)は、ザンダーをエージェントにしようとあらゆるテストを受けさせる。見事合格したザンダーは、テログループが潜伏しているプラハへ乗り込む。
監督ロブ・コーエン(『ワイルド・スピード』)
−◇−◇−◇−
久々にワクワクするアクションを見た。何も考えずにただザンダーの勇姿に惚れ惚れすればいい。ただ最初からすごいアクションを見せられちゃったので、だんだん感覚がマヒしてきちゃって、クライマックスが物足りなくなってしまったほど。贅沢を言うけど、バイクアクションは1回で良かったなぁ。違う乗り物で見たかった。2回目もいいシーンはあったけどね。

でも実を言うと、私が一番好きなのは、ダイナーでのシーン。数多くのアクションの中で一番地味だが、ザンダーという男がただの筋肉バカではなく、一瞬で状況を判断できる能力に長けた頭のいい男であることが分かるシーンだ。カッコ良くてゾクゾクした。ただ、ちょっと期待外れだったところもある。ザンダーってもっと極悪人だと思ってたのよね。自分以外は一切信用しない男だと。それがそうじゃなかった。月に1回はお土産を持って母親に会い行きそうな男だったと(←ヘンな喩え)こうなると続編では彼は最初から素直に任務についてしまいそう。脚本にヒネリを加えないとつまらなくなりそうで、ちょっとそれが不安だ。

今回テログループのボスを演じた人だが、途中までは見たことあるけど誰だかちっとも思い出せなかった。せんだみつおに似て・・・そこでハッと思い出した。『ロード・オブ・ザ・リング』のケレボルンじゃないっすか!登場してセリフ一言だけの影の薄かった人(笑)ガイドブックにはセレボルンと紹介されてしまった人。しかも本名も『ロード』ではマートン・ソーカス、そして本作ではマートン・コーカスと紹介されている(スペルはMARTON CSOKAS) さてどっち?(笑)そんな彼だが、今回は出番多いです。良かったね。でも思い返してみると、ザンダーとのサシでの勝負やアクションはなかったような・・・。いつも手下どもにやらせておいて、自分は先に逃げてなかったか?(笑)パート2ではザンダーと互角に戦えそうな強い男を希望(可哀相なせんだ、じゃないマートン)

ところで、本作でザンダーと恋に落ちるエレーナという女性が出てきましたが、続編ではやっぱり登場しないのかな。ボンドガールみたいに毎回違うとか。エックスガール・・・うーむ。
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