Movie Review 2000
◇Movie Index

千里眼('00日本)-Jun 14.2000
[STORY]
“ミドリの猿”と名乗るテロ集団が、米軍基地の発射システムを操作して日本各地にミサイルを落とした。基地に立て篭もった男はさらに第2波のミサイル発射を設定しており、それを阻止しようと“千里眼”と呼ばれるカウンセラー友里佐知子(黒木瞳)が男の説得にあたった。しかし男はミサイル発射を解除する10桁のパスワードを守るため自殺してしまう。男の心理を読み取った友里は見事にパスワードを的中させ、その場にいた航空自衛官の岬美由紀(水野美紀)は彼女を尊敬するようになる。
監督・麻生学(TVドラマの助監督を経て本作で初監督)
−◇−◇−◇−
原作は松岡圭祐の同名小説で、前作『催眠』も既に映画化されている。『千里眼』は『催眠』の続編ではなく登場人物も全く違うが“ミドリの猿”というキーワードが同じで、小説に関してはこのあとの作品で繋がりが出てくるらしい(『催眠』は少々ややこしい状態になっている。小説と映画では全く違うストーリーになっているのだが、小説『千里眼』は映画版とリンクされていて、小説版はなかったような状態。そのフォローが次の作品でされてるらしいが)

小説を映画化するのに、今の日本で(しかもあまり予算がない場合)これが限界かもしれないな、と思い知らされたような作品だった。はっきり言ってショボイっす(苦笑)がんばってはいるけど無理してこういう作品を映画化しなくてもいいのに、なんて思ってしまう。

元自衛隊員のカウンセラーだった美由紀が、映画では現役の自衛隊員として登場するのだが、ここからして間違ってるような気がしてならない。美由紀と友里の出会いを描くのに、小説のように過去に時間を割くわけにはいかないだろうから、このようにせざるを得なかったという、その苦肉の策みたいなのは十分理解できる。でも自衛官だから行動がいろいろと制限されちゃってるのよね。例えば“ミドリの猿”事件を調べるのに休暇を貰わないといけないわけ。でも、なぜ美由紀がそこまでしなきゃいけないの?って映画を見ただけの人は思うだろう。それから友里佐知子の病院を何度も訪ねるシーンも不自然。そのあたりが引っかかってしょうがなかった。

さらに言うと(ここからネタバレ)友里を尊敬し、友里の下で働いてきたからこそ、美由紀は裏切られた時のショックが大きく、怒りもハンパじゃなく、それをバネにして成長していくのだ。それが出会って何日間かの相手に対しては「騙しやがって!」という気持ちはあるだろうだけど、大ショックじゃないよね。いまいち映画の美由紀に感情移入できないのは、そのあたりの浅さかもしれない。水野美紀ちゃん割と好きだったのに、この作品では個性がなく、演技もいまいちだったな。アクションはなかなかだったけどね。それから、せっかく小説が映画『催眠』とリンクさせて、金属音で自殺させるよう暗示をかけていたのに、この作品では言葉で自殺させている。原作者が脚本も手がけているのに変えてしまったのは何故だろう。(ここまで)

でも映画ならではの面白さもちょっとはあったな。人の表情を読み取り、パスワードを入力するシーンは臨場感があり、ミサイル発射を食い止めるところは思わず息を詰めて見てしまった。
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ミッション・トゥ・マーズ('99アメリカ)-Jun 10.2000
[STORY]
2020年、人類はついに火星への有人飛行に成功した。しかし火星での探査中に乗組員たちが何らかのアクシデントに遭い、3名が死亡したらしい。残りの1名を救出するため、ジム(ゲイリー・シニーズ)やウッディ(ティム・ロビンス)ら4人の乗組員たちが火星へと向かった。
監督ブライアン・デ・パルマ(『スネークアイズ』
−◇−◇−◇−
コテコテのSFなんだろうな、きっと脱力するような話なんだろうな、シニーズは目の下がたるんでるんだな、などと見る前に色々想像してから本編に臨み、結果その想像はすべて当たったものの、意外や意外と思われる展開もあり、思ったよりも楽しめた。

今から20年後に果たして火星へ着陸できるほどの技術が発達してるだろうか、と考えるとそれはかなり無理な話だと思う。これが80年代に公開された映画ならば「きっと2020年はああいう風になってるかもしれないねえ」と夢も見られるが、2000年を超えてしまった今では俄かに信じがたい。でもねでもね、火星には本当に映画に出てきたような巨顔があるですよ(といきなり電波な発言をしてみる(笑))写真で見たことあるんだけど、それは顔に見えなくもなかった。その本によると自然にできたものではなく、人為的なものらしい。だから全くの作りではなく、たぶんこういう写真や資料を調べ上げて、夢を膨らませた作品なんでしょう。ていうかさ、全部ウソじゃん!と決めつけるよりも、夢見たほうが楽しいじゃない。

その夢を膨らませた部分は、×××(自主規制)に脱力しつつもファンタジックでいいシーンだと思った。でもその前に夫婦の愛を過剰に描き過ぎだし、ジムたちが乗ったマーズ2号までもが危険な目に遭い、ハラハラしてしまうシーンがやたらと長いのだ。ここが最大のクライマックスと言ってもいいくらい。だからそのあとのシーンとの噛み合わせも悪いし、それ以上のクライマックスを描くことができてない。見てるこっちだってもう恐いものなしだし(笑)ストーリーの展開上、そうせざるを得なかったんだろうが、それならそれでもっとすごいクライマックスを用意してほしかった。贅沢でごめんよ。

あとはキャスト。シニーズは好きだけど、この手のドラマでの主役としてはどうかなと思う。普段のワルモノぶりとか皮肉屋ぶりばっかり見ているせいか、妻を亡くしたやもめ男役なんて見ても「ひょっとして奥さん殺した?」とか「最後は全員殺して火星から1人で逃げ帰りそう」などと考えてしまう。いや、ホントに好きなのよ(笑)でもこういうアクの強い人には真っ当な役よりも、スパイス的な役割を演じてほしいんだな。
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ナインスゲート('99スペイン=フランス)-Jun 7.2000
[STORY]
業界では悪どいやり口と評判の本の鑑定士コルソ(ジョニー・デップ)は、有名な書物コレクターのバルカンから鑑定依頼を受ける。世界にたった3冊しかないという「ナインスゲート〜影の王国への九つの門」という本の1冊を手に入れたバルカンは、コルソに残り2冊と比べて欲しいというのだ。高額な報酬に承諾するコルソだったが、本を預けた古書店主が殺されたり、行く先々で危険な目に遭ってしまう。
監督ロマン・ポランスキー(『赤い航路』)
−◇−◇−◇−
本をめぐる謎と人間の欲望が渦巻くサスペンスってことで、私のすごく好きなタイプの映画だし、確かに残り15分くらいまでは面白かった。でも最後の最後で嵌まれなくて消化不良の気分を味わった作品でもあった。

「ナインスゲート」という本はすごくよく出来てると思う。欲しくなるのも分かるくらい魅力的。スクリーンを通して見ても表紙や紙の質感もよく、挿絵ももっとじっくり見たいと思ってしまう。実は本当にある本なんだよ、と言われたら信じてしまいそう。コレクターが欲しがるというのも納得できる。

そして、その魅惑の本のために次々と事件が起きていく。コルソはニューヨークからスペイン、フランスへと本を求めて行くが、行く先々で事件に巻き込まれる。本屋の雰囲気やコレクターの屋敷も綺麗な映像に仕上がってて好き。CG部分と噛み合ってない部分もあったけど。

問題はストーリーの終盤。ただ本を調べるためだったコルソがいつのまにか「ナインスゲート」という本に魅了される・・・という話のはずなのに、最後までコルソが魅了されてるように見えなかった。それにしてもデップがいまいちヤル気なさそうに見えたのは私だけだろうか。ていうか、もう見慣れちゃったんだろうね、私自身が彼を。演技が安定してて安心して見ていられるけど新鮮味がなくなっちゃったみたい。

さらに、引き返せないところまで来てしまったというのに、何の迷いもなくただ流されるように行ってしまう。だから見てるほうもハラハラせずに一緒になって流されてって、気が付いたらエンドロールだったという・・・。その前まではかなり面白く見られたので、ワタシ的には残念でならない。こういうラストになることは何となく想像できてたので、それはそれで構わないんだけど表現がアッサリしすぎというか、2時間以上も引っ張ってきて結局「これかい(脱力)」って感じ。でもしょうがないかポランスキーだから(うむ)

そんでもってコルソを助ける謎の女を演じたエマニュエル・セイナーがもっとダメだった。何かありそうな雰囲気はあるのにちっとも魅力的じゃない。ラストの表情はまぁ綺麗だったけど。でもしょうがないかポランスキーの嫁さんだから(はぁ)

レナ・オリン演じるリアナ・テルファーの城でのシーンを見ていて急に『アイズ・ワイド・シャット』を思い出した。ちょっと似てると思う。そういややってることは同じじゃん(あっ)
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クワイエット・ファミリー('98韓国)-Jun 3.2000
[STORY]
会社をリストラされた6人家族がソウル郊外で山荘を開業することになった。しかしいつまでたっても客がやってこない。ようやく1人の客がやってくるが、翌日、謎の自殺を遂げていた。家族は必死になって死体を山に埋めるが、それからやってくる客がみな次々と死んでしまう。
監督&脚本キム・ジウン(初監督作)
−◇−◇−◇−
98年の映画にしては映像もテンポもちょっと古臭いような感じがした。その翌年に公開された『シュリ』と比べるとその差は歴然。山荘にやってきた客が次々と死んでいってしまう設定もいいし、家族の行動がすべて裏目裏目に出てしまうという展開も面白い。

でも家族のキャラクターが活かされてないと思った。お父さんお母さん、そして兄ちゃんはこれでいい。でも居候している伯父さんと姉ちゃん、そして一見主人公かと思われた末娘がほとんど活躍しなくて物足りない。出番さえも思ったよりなかったもんね。韓国NO.1アイドルと言われるだけあって可愛い子なんだけど、とりあえず出しとけ、みたいな感じだったのかしら。日本と同じだな(ぉ もっと、それぞれが勝手な行動を取って楽しませてほしかった。クライマックスだけはそれが顕著で笑えたけどね。
さらに飼っている犬までが何かとんでもないことをやらかしてくれるんじゃないかと期待しちゃったんだけど、それはやっぱりハリウッド映画の見過ぎだろーか(笑)

100分くらいとあまり長い映画じゃないけど、途中少し中だるみした。あと15分くらい削って1時間半以内でババババッと勢いで見せてくれればお気に入りになったかも。でもこの監督の次回作も面白そうなので期待したい。

余談だけど『シュリ』で北朝鮮の工作員として圧倒的な存在感を見せたチェ・ミンシクが伯父の役で出演している。西岡徳馬と世良公則を足して2で割ったような渋さがあったのに、この作品では太ってて鶴田忍だった(笑)それから間違って殺されてしまう警官役の人がモト冬木にちょっと似てた。韓国映画を見てると必ず誰かしらにソックリな人が登場するので、それをチェックするのも楽しい。
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インサイダー('99アメリカ)-Jun 2.2000
[STORY]
報道番組の敏腕プロデューサー、バーグマン(アル・パチーノ)はタバコ会社の不正を報道しようと、元タバコ会社の重役ワイガンド(ラッセル・クロウ)に協力を依頼する。しかし会社と守秘義務契約をしていたため拒否される。バーグマンの説得によりワイガンドは番組出演をOKするが、タバコ会社からの圧力や何者かによって家族が危険に晒されてしまう。
監督&脚本マイケル・マン(『ヒート』)
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デ・ニーロとパチーノが共演した『ヒート』。クライマックスで2人が対決するシーンは、2人それぞれをアップにし過ぎて2人が対峙するカットが少なく、失礼ながら私は「これって別撮り?」と思ってしまい(ホントは一緒だったようですが)ワタシ的にはいまいち面白くなかった。
今回はパチーノとクロウは同じ画面に入っていたけれども(笑)やっぱり毛穴見えるくらい人物に近寄った映像が多く、それに慣れるまでに随分時間が掛かってしまった。何かね、近寄られ過ぎると見てて疲れるのよ。疲れた時は遠くを見なさいってよく言われるでしょう。あれと一緒(←ちょっと違うか?)

1995年に実際に起きた出来事を元に作られた作品で、人物もタバコ会社も実名らしい。既に起きてしまった出来事とはいえ、そのまま使用するなんてちょっとびっくり。日本じゃ考えられないな。ま、そのせいか、ところどころがあやふやな部分もある。多少脚色はするが、事実でないことや解明されていないことを推測で描くようなことはしていないところがフェアというか、訴えられないように注意してるのね。

私の理解力がないのか、この件を報道することになったきっかけや、バーグマンがワイガンドと知り合うきっかけがよく分からなかった。またバーグマンが各方面に働きかけるシーンも「この人は誰?」とか「どういう意味が?」などとついていくのに必死。未だに分かってないところが多い。触りだけでも原作本があれば読まなきゃならないだろう。普通の人は理解できたんでしょうか?やっぱ私だけ?(泣)

ワイガンドを演じたクロウは(本来なら助演なんだろうけど)アカデミー賞の主演男優賞にノミネートされた。確かにそれに値するほどの熱演だったし存在感が際立っていたけど、力が入り過ぎると首が動くみたいで、それがちょっと気になってしまった。それも役作りなのか、それともこの人自身のクセなのかな。パチーノは得意のタフな男。多少強引でも自分の信念を曲げずに突き進んで行く、まさにやり手のジャーナリストで、見ていて気持ち良かった。
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