Movie Review 2000
◇Movie Index

ロミオ・マスト・ダイ('00アメリカ)-May 24.2000
[STORY]
オークランドで黒人マフィアと抗争を繰り広げているチャイニーズマフィアの首領の息子が何者かに殺された。香港で服役中のハン(ジェット・リー)は弟の訃報を聞くと脱獄を試み、アメリカへと渡る。ハンは弟のことを調べるうちに黒人女性トリシュ(アリーヤ)と出会うが、彼女の父が敵対するマフィアの首領だった。
監督アンジェイ・バートコウィアク(初監督作)
−◇−◇−◇−
マトリックスの進化がここにある”――というコピーは無視してたので「どこがマトリックス?」などという戸惑いはなかったけど、ストーリーがあまりにもダメ過ぎて戸惑った(苦笑)

タイトルやあらすじで見れば分かる通り『ロミオとジュリエット』を元にしたものらしいが、ジェット・リーのアクションを見せるのに、そういうストーリーにする必要性があるんだろーか?ていうか、ロミオだと?(笑)とまず疑問に思った(実際はロミオと書いて“色男”と訳されてましたが)だってそういう甘いのは絶対似合わないじゃ〜ん。実際ラブシーンの1つもないし、お互い惹かれ合ってるなんて全然見えませんでした。トリシュとダンスするシーンのハンの照れ具合はめちゃめちゃ可愛かったけどね(笑)

そういう意味でも中途半端なんだが、敵対する者同士の割には簡単に会えちゃうし、争いも緊迫感が全然ない。ジェット・リーの相手にしては敵の黒人たちが弱過ぎるっつーの。最初は彼らを手玉に取る小気味良さが面白かったが、同じ相手と何度も戦ってるので飽きちゃった。首領のデルロイ・リンドが可愛いオッサンだから許してやるが(?)

さらに書いちゃうけど、白人の利益のために黒人と中国人が我先にと土地を買い漁さってる姿を見るのは辛かった。やっぱりハリウッドじゃそういう扱いなのかねえ。あそこでヘリを爆破してくれればそんなモヤモヤもスッキリしたのに(そうなるものと思ってたが)ならねえとは!そんなこんなで楽しめなかった。

でもアクションシーンはやっぱりキレイだった。さすがにチャイニーズ系の人と戦うシーンは見ごたえある。女性と戦うシーンは笑えたしね。ただし、ヘンな脊髄バッキバキ映像さえなければ(苦笑)
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オール・アバウト・マイ・マザー('99スペイン)-May 17.2000
[STORY]
臓器移植コーディネーターをしているマヌエラ(セシリア・ロス)は17歳の息子エステバンと2人暮らし。しかしエステバンの誕生日、彼は交通事故で死んでしまった。父親のことを知る前に・・・。マヌエラは元夫に息子の死を伝えるためマドリードからバルセロナへ向かったが、元夫は失踪していた。
監督ベドロ・アルモドバル(『ライブ・フレッシュ』
−◇−◇−◇−
女、女、女、女、女ー!という映画だった。大絶賛の声を聞くけど、ワタシ的にはすっごくいい作品とは思わなかったし、泣くほど感動もしなかった。期待しすぎたかな。

確かに登場する女はみんないい女だと思う。17年前、オカマちゃんになっちゃった夫の子供を宿したマヌエラは、1人で息子を育てる。息子を失ったあと、レズビアンの女優ウマの付き人をするようになり、さらに修道女ロサが元夫の子を宿していることを知ると、彼女の世話をするようになる。どんな時でもマヌエラは母の強さと気丈さ失わない、素敵な女だ。
そして元夫の友人でやっぱりオカマちゃんのアグラートもいい女ぶりを発揮している。口やかましいけど、女であることに誇りを持っていて、ウマたちの舞台公演が中止になった時、彼女が出てきて自分の身の上話をするシーンが私は1番好きだ。

しかし一方で、ウマは貫禄があっていかにも大女優だが共演者の女優ニナに夢中で、彼女のヤク中に頭を悩ませている。ニナも実力があるのにクスリをやめられず、ウマやマヌエラに当たったり、舞台に出られないくらいラリったりしている。そして修道女のロサはオカマちゃんの子を妊娠したばかりか、HIVにまで感染し、母子ともに危険な状態にさらされる。でも彼女たちもまた、自分の気持ちに正直で、自分が生きたいように生きているだけなのだ。

そんな彼女たちを美しいと思うが、反面、不器用で愚かな女たちだとも思う。特にロサとニナはね。その愚かさまでもいとおしく思えればこの作品が大好きになっただろう。でも私はそこまでは共感できない。ウマやロサを受け入れるマヌエラの母性は尊敬できるとしても。
なんかこんなこと書いてると「あんた女じゃないよ」と言われるかもしんないけど(笑)とりあえず結婚もしてなければ子供も産んでないんで、まだホントの女じゃないのかもね。しょうがない。
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イグジステンズ('99アメリカ)-May 12.2000
[STORY]
天才ゲームデザイナー、アレグラ・ゲラー(ジェニファー・ジェーソン・リー)の新作ゲーム「イグジステンズ」が発表された。モニターが選ばれゲームが開始されるが、見学者の1人がアレグラを撃ち、会場は大混乱になる。警備を担当していたテッド・パイクル(ジュード・ロウ)はアレグラを連れて逃げ出すが・・・。
監督&脚本デヴィット・クローネンバーグ(『裸のランチ』)
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感想に入る前に、ゲーム「イグジステンズ」の説明を少し。人間の脊髄に穴をあけてそこにコードを通し、ゲームポッドという両生類の有精卵を培養して作った端末を使って行う究極の体感ゲームのこと。ゲーム中にアレグラが撃たれたことでゲームが中断されてしまい、それを回復させるためにアレグラとテッドがゲームの世界へ入っていくのだ。

どこからが虚構(ゲーム)で、どこからが現実なのか区別がつかなくなるストーリーはたくさんあるけど、この作品でも随分惑わされた。まず、奇妙な形のコントローラーのような端末機に失笑しながら、背中に穴を開けて直接コードを挿し込むという設定に驚き、ゲーム内でもその特異な世界に引き込まれた。でも近未来的な話なのにかなりレトロな印象を受けた。もっと派手なドンパチがあるかと思えばストーリーもまったりと進んでいくしね。最初はかなり違和感があったし、見終わったあとも正直言って物足りなさを感じた。でもゲームポッドのフォルムは人間の形になる前の胎児のようだし、コードを脊髄に挿し込むシーンがかなりエロチック。ここらへんのこだわりと独特の世界を貫いたところが面白いと思った。

ジュード・ロウはやっぱ綺麗(アゴさえ見なきゃな)それまではちょっと自信過剰で小生意気な役しか見たことなかったけど、今回は柔らかで少し臆病な普通の青年といった役柄だったので余計に綺麗に見えたかもしれない。美形は衰えた時にゲゲッと思うので、1番いい時にたくさん見とくのがいいよね(笑)ま、ぶちゃいくな人はぶちゃいくな人で年々味が出るのでトクよね。
いやーそれにしても『スウィート・ヒアアフター』でユマ・サーマン似の美少女だったサラ・ポーリーがぶちゃいくになってて大ショック!なんか歯並び悪くて顔がゆがんでるんだもん。矯正すればマシになるような気がするけど・・・。
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アナザヘヴン('00日本)-May 1.2000
[STORY]
アパートの一室で発見された脳味噌のない死体。そして台所の鍋の中から被害者の脳味噌を使ったシチューが見つかった――。連続して起こった猟奇事件に、刑事の早瀬マナブ(江口洋介)と飛鷹(原田芳雄)は犯人が女子大生の柏木千鶴であることを突き止めるが、柏木もまた脳味噌のない死体となって発見される。
監督&脚本・飯田譲治(『らせん』)
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メディアミックスと称して、映画・テレビドラマ・小説(これはかなり前に出てる)・ゲーム等が次々に発表されている。とりあえず映画はドラマを見てなくても全然支障がないけど(と、映画だけを見た時はそう思ったが実は・・・知りたい人は下のネタバレを見てね)ドラマは映画を見てないとちょっと分かりにくいかなー。両方見るのが1番だろう。

飯田作品て、設定が好きだし、導入部分と途中まではかなり面白いんだけど、クライマックスからラストあたりがどうしても甘い感じになって不満が残る。この作品でも女子大生が男の首を捻り殺して脳味噌料理作っちゃうという導入部分がよく、禍禍しい事件なはずなのに原田芳雄や六平直政、柄本明といったオジサンたちのほどよいボケで笑わせてくれる。

そして事件の犯人は1人の人間ではなく、人間に憑依(?)した“ナニカ”であることが分かり、早瀬たちはそれを追いかける。一体誰に取り憑いてのか、というサスペンスの醍醐味も味わえるし、作品中では誰も言ってなかったけど“ナニカ”に取り憑かれた人間が必ず赤い服を着るというのも観客へのヒントになってたのかな。早瀬たちと一緒になっていろんな人を怪しんではドキドキできた。

だけどそれからがちょっとねー。(ここからネタバレ)下手に愛情とかそういうのを持ち出しての解決というのがまず陳腐でつまらん。市川実和子が思ったよりも可愛くて良かったけど、早瀬とのラブシーンが長くて飽きちゃった。おまけに全然盛り上がらないし、緊迫感もゼロ。こういうところがダメなんだよ。『らせん』を見た時も同じよーな気持ちになったけど(笑)(ここまで)

(さらにネタバレ〜ドラマとの関連)一応、きちんと終わっていたが、ドラマのほうで何と、早瀬と飛鷹が映画のラスト以降、行方不明になっているとのこと。そういえば事件の原因を作った「水」についての謎の答えは出てないし、アポロ像とのつながりも言及してない、よな?ドラマの事件と一緒にこちらもちゃんと解決して下さい。お願いします。(ここまで)

面白い小ネタとしては作家の綾辻行人と京極夏彦が『幻想ミッドナイト』つながり(?)ってことでコメンテーターとして登場してるのと、脳味噌料理の監修が服部栄養専門学校ってところですかね。カルボナーラと石狩鍋も見たかった(笑)

メディアミックスとして成功か否かという問題だが、ドラマが映画以上に面白くなくて毎週見るのが非常に辛くてさ・・・。映画との関連性をドラマの中で問いただすようなこともなく(結局、早瀬たちも1回しか出てこなかった)失敗と言っていいのでは。ちなみに小説も読んだけど(感想はこちら)この中ではこれが一番面白かったね。
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アメリカン・ビューティー('99アメリカ)-May 1.2000オススメ★
[STORY]
レスター・バーナム(ケビン・スペイシー)は妻のキャロリン(アネット・ベニング)と娘のジェーン(ソーラ・バーチ)と3人家族。一見幸福そうだが夫婦仲はあまり良くなく、娘ともうまくいっていない。その上、会社からもリストラされてしまう。そんなある日、レスターはジェーンの友達アンジェラに一目惚れしてしまう。
監督サム・メンデス(初監督作)
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アメリカン・ビューティーとは薔薇の品種で、バーナム家の庭に植えられており、キャロリンが毎日丹精込めて育てている。いわばキャロリンが目指す“理想の家庭”の象徴ともいうべきものだ。しかし現実はそんな美しいものではない。

はっきり言って、こんなに笑える、というか“嗤える”作品とは思わなかった。でもブラック・コメディとは違う、面白いのに痛々しい話だった。ただ、アメリカ人ならもっと入り込めるだろうなぁ。日本人としてはちょっと分からないところもあって、どちらかというと観察するような気分で見た。

ダメおやじレスターが娘の友達に恋をしたことから、家族の状況が一変する。でもレスターは本当にアンジェラを好きになったのか?そしてキャロリンも不倫に走るが、本当に不動産王バディを愛したのか?アンジェラもレスターに抱かれてもいいような発言をするが、彼に好意を持っているのか?それは全部否!だろう。自分にないものへの憧れと、今までの自分を捨てたいだけ。彼らがもがきながらエスカレートすればするほど、焦燥感が増すばかりで辛い。それなのに彼らのおかしな行動につい笑ってしまう。こりゃ製作側の思うツボじゃないのかー!と思いながらもハマっていく。とにかく見ていて何とも言えない不思議な気持ち――っつーか、分っかんなくなっちゃったよ、全てが。

スペイシーは相変わらずの上手さだけど、隣に住む元海兵隊大佐フィッツを演じたクリス・クーパーと、息子リッキーを演じたウェス・ベントレーも最高。特にクーパーは、つい最近見た『遠い空の向こうに』で厳格な父を演じており、今回もまたそんな役だろうと踏んでいたのに、まさか!(絶句)という役で非常に驚かされた。練られたストーリーと、それを見事に演じた役者たち。それぞれのキャラクターに必ず“表に見えている部分”と“隠された部分”がある。美しい薔薇に棘があるように、引き出しの底に葉っぱがあるように、何ともない皿の裏にとんでもないロゴがあるように・・・ね。
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