Movie Review 2005
◇Movie Index

レーシング・ストライプス('05アメリカ)-Mar 20.2005
[STORY]
嵐の夜、サーカス団から置き去りにされたシマウマの赤ちゃんを、農場主のノーラン(ブルース・グリーンウッド)が見つけて連れて帰る。娘のチャニングは大喜びでそのシマウマにストライプスと名付け、育てることにする。成長したストライプスは農場から見える競馬トラックを見て自分も競走馬になることを夢見る。チャニングも騎手としてストライプスに乗馬することを希望するが、騎手だった妻を落馬事故で亡くしていたノーランは反対する。
監督フレデリック・デュシュー(『キャメロット』)
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私が号泣した映画『ベイブ』のスタッフが再結集して製作された作品ということで見たのだが、スタッフといっても監督や脚本を担当した人ではなく、動物調教スーパーバイザーとかアニマトロニクス技術を担当したスタッフだったのね。

確かに見てるうちに彼らが生身の動物ということを忘れてしまうほどの演技に感心してしまうし、練習シーンは燃えるし、クライマックスのレースも興奮する。ストライプスがポニーに感謝するところで涙ぐんだ。でも95分という短い上映時間のわりには、かったるく感じてしまった。

今回はストライプス以外の動物にまるで魅力がなく、彼らが喋るシーンがひどく退屈だ。特にハエ2匹は文字通り五月蝿いだけで、2匹の喋りもラップもお下品ネタも私は受け付けなくて、後半ヤツらもストライプスに協力するんだろうと分かっていても「もう出てこなくていいよ」と思ってしまった。他の動物もストライプスに協力しようと一致団結していくんだけど、なんだかピンとこなくて・・・。

で、いま気が付いたんだけど、ベイブは健気な子ブタちゃんで、大きくなれば食べられてしまう危険もあった。だから周りの動物たちも守ってあげよう、助けてあげようって気になって一致団結するのさ。でもストライプスは農場の動物たちの中で一番デカイ(笑)働かされるけど食われはしない(笑)そして健気じゃなく“やんちゃ”なのね。まだ子供だからやんちゃで構わないが、私は健気な子のほうが好きです(笑)その違いだったか。

チャニング役の子は小柄だけどおしりなんかムチムチしてて、シマウマに乗るならもっとスリムじゃないといけないんじゃないか?と思ったりしたが(でも50キロはないのかな?)乗馬経験のある子でシマウマに乗りこなすのに随分苦労したみたいだね。動物や調教師だけじゃなく、やっぱり役者も大変なのね。
個人的にはストライプスのライバル(?)だった郵便屋さんがストライプス・メイクで必死に応援してたところがツボだった。最初は誰だか気付かなかったけど、最後にまた映るところで分かった。あのヒゲがメイクにピッタリ(笑)
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ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月('04イギリス)-Mar 21.2005
[STORY]
ブリジット(レニー・ゼルウィガー)は、晴れて弁護士のマーク(コリン・ファース)と付き合い始め、仕事も恋も順調な毎日を送っていた。しかし彼のパーティーでは失態を繰り返し、彼と住む世界が違うことを実感する。一方、TVレポーターに転身した元恋人のダニエル(ヒュー・グラント)からは思わせぶりなアプローチを受ける。
監督ビーバン・キドロン(『3人のエンジェル』)
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原作はヘレン・フィールディングの同名小説で『ブリジット・ジョーンズの日記』の続編。本作では脚本も担当している。

前作はブリジットのイタさよりお洒落さのほうが上回ってたけど、本作は前作よりさらに太った(と思う)ブリジットの体型を大いに活かした(?)ダメな部分で笑いを取ろうとするシーンが多かった。タイでマジックマッシュルームを食べてしまい、ラリって手足をバタバタさせている時のお腹の肉がすごい。これを惜しげもなく(笑)見せるゼルウィガーの役者根性に脱帽だ。
ただ、ダメなところを描くのは悪くないんだけど、良くないのは、そのダメなところで笑わせて終わらせてしまうところ。マークは彼女のダメだけど飾らない、素直な部分に惹かれたわけでしょう。だからダメなところを描いたら、それだけブリジットの良さも描いてフォローしないと。ケンカ別れの後の留守番電話ぐらいかな、やっぱりブリジットはキュートでいいなぁ、と思ったのは。

原作とは違ってダニエルの出番が多いこと、これはいい。原作であまり出番がなかったのがつまらないと思ったほどだし、マークとのヘタレファイトも見られて良かった。2人でこういう風にしよう、と打ち合わせしたらしいが、出来上がったのが44歳児のケンカ(笑)ステキだ。
もう1つの原作との違い、マークの弁護士仲間レベッカの役設定はダメだったな。原作での彼女は猛烈にマークにアタックしてブリジットに意地悪する。映画のレベッカはかなりソフトで最後にとんでもないオチが・・・椅子からずり落ちそうになった。何でよ?!何故そういう設定にしたのか分からない。原作通りのほうがよっぽどもスッキリしたのになぁ。

やはり1作目を超えることはなかったが(正直言って原作も1作目のほうが面白かった)原作はこれ以降は書かれてないから映画の3作目もないからいいか、と普通は考えるけど、そこを無理矢理作るのが映画会社(笑)役者たちもやる気ないようだし、彼らさえOKしなければ実現しないだろうが、ホントそれだけはやめておけ!と言いたい。
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いぬのえいが('04日本)-Mar 20.2005
[STORY]
広告プランナーの山田賢太郎(中村獅堂)は、ドッグフードのCMを手がけることになるが、上司とクライアント、タレントのマネージャーからの要望をすべて受け入れ、とんでもないCMを作ってしまう。落ち込んで仕事に迷いが出た山田は、少年時代に出会った柴犬ポチ遊んだことを思い出す――。
犬と人とを描いたアニメ、ミュージカル、コメディなどを7人が監督するオムニバス映画。
監督・犬童一心(『金髪の草原』)ほか
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アレルギー持ちなので飼うことはできないけど犬は好きだし、ショートフィルムっぽいのかと思って見てみたんだけど・・・うーん、微妙だった。犬そのものをフィーチャーした映画かと思ってたのに、犬が小道具の1つみたいに扱われている作品もあって、もっとシンプルに犬を飼う喜びを描いた作品があっても良かったんじゃないだろうか。

1本目のアニメ『A Dog's Life:good side』(監督・黒田昌郎)は、見たときは「まぁこんなもんか」って感じの感想しかなかったのだが、その後いくつかの話を挟んで『A Dog's Life:bad side』という2本目を見て驚いた。1本目はこれの伏線になってたのね。可愛い絵だけどストーリーは強烈で、犬を飼う人への警告になっている。ラストはグッときました。それが助走となって次の『ねえ、マリモ』の話で泣いた。この2作を並べたのはすごいと思った。

でもその『ねえ、マリモ』(監督・真田敦)は、人間側の視点はいいんだけど、犬側の視点から描くシーンでの言葉はいらなかったな。ただ映像を繋いでいくだけで良かったのに。もしくは吠える声や鼻をクンクンさせる音だけを入れるとかさ。人間の言葉で犬の気持ち(しかも本当にそう思ってるかどうか分からんのに)を語らせちゃうのはウソっぽくて。

ウソでも『恋するコロ』(監督・佐藤信介)はコメディだから許せる。ストーリーはどうしようもなくつまらないが、コロの表情とアテレコがハマり過ぎ。ていうか荒川良々は顔だけじゃなく声まで反則とは(笑)彼の滑舌の悪さとコロのゆるい口元がピッタリで、荒川良々が先に決まっていたのかコロが先に決まっていたのか気になる。

同じく『犬語』(監督・永井聡)もウソだけど、ここまでバカバカしいといいですね。この話が一番好き(私が大好きなファンタのCMの人だったのか!それなら納得)しかもヘンにもったいぶった演出をせず、あっという間に終わるので、もっと見たかった!と思わせてしまう。やはりショートストーリーはこれくらいの長さが作るほうにも見るほうにもベストなのかもしれない。

『CMよ、どこへ行く』(監督・黒田秀樹)は電通の自虐作品(?)みたいで面白かったけど「これ別に犬じゃなくても・・・」でした。ミュージカルの異色作品『うちの子NO.1』(監督・称津哲久)はオチさえうまく決まっていたら、これはこれで悪くないと思った。日本人がやるミュージカルってちょっと・・・というのを逆手に取って、わざと大げさで気持ち悪く仕上げたところが面白いなぁと。これを突き詰めれば欧米の真似っ子でない日本独自のミュージカルが確立・・・いや、それはないか。

で、本作のメインであり4話に分けて語られる『ポチは待っていた』(監督・犬童一心)は、個人的に一番下手くそだと思ったし面白くなかった。こんなのが4話もあるから(以下略)話が悪い、テンポが悪い、犬の良さが出てない、パン屋なのに髪の毛だらしない(苦笑)犬童さんだからと期待してたのにな。特に大人になった山田とポチのボール遊びのシーンは、それこそ『フィールド・オブ・ドリームス』ばりのファンタジックな演出(やりすぎでもいいくらい)をやってよかったのに。これでは淡々と描いた、ではなくただの平板な演出だ。でもラストに『ねえ、マリモ』を持ってこなきゃいけないから(?)この程度に仕上げなきゃいけなかったのかも。
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オペラ座の怪人('04アメリカ)-Mar 16.2005サイコウ★
[STORY]
こちらへ。
監督&脚本ジョエル・シューマッカー(『フォーン・ブース』
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4回目。スクリーンが大きく音もいい映画館で満足できたので、これで打ち止めだ。その間、原作を読んでみたけど、クリスティーヌとラウルがすごく子供っぽくてビックリ。ファントムは自分では子供じみていると言ってるけど老獪な魔物という感じだった。舞台(四季しか見てないけど)は若い2人の間に割って入る中年の先生、という印象がどうしても強い。映画ではラウルが一番落ち着いていて、ファントムのほうがコドモ(笑)ひきこもりで部屋にはフィギュアがあって、歌い方はロック調と現代的だし、マスクの下以外は美しいと自分で思ってそうな着飾り具合と立ち振る舞いが、世間知らずの傲慢な若者に見えて面白い。そのくせクリスティーヌの前では息を弾ませるウブっぷりで、見てるこっちがドギマギしてしまう。クリスティーヌが歌う「Think of Me」をひっそりと地下で聞くファントムを見るとキュンとなっちゃうし、こういうところが原作や舞台版と違ってファントムを勝たせてやりたい気持ちになっちゃうんだろうな。

ついファントムやクリスティーヌ、ラウル中心に見てしまうけど、何度か見てると他の登場人物たちも個性的で細かい演技をしてるのよね。カルロッタ(ミニー・ドライヴァー)はワガママで高慢ちきだけど表情豊かで憎めない。ラウルがファントムを嵌めようと支配人たちと相談するシーンでは、ちょこっとしか映ってないのに後ろでニヤッと笑ってるんだよね。ドン・ファンでもノリノリだし(だからその後の不幸が際立つ・・・)彼女があれからどうなったのか気になります。

指揮者のムッシュ・レイエ(マーレイ・メルヴィン)も登場するたびに目が行ってしまうようになった。職務に忠実でちょっと神経質で、アクシデントにに動揺するところが可愛らしい。特にマスカレードを指揮している最中にファントムが登場すると「エエッ?!」っていうリアクションを取るので(自分はちゃんと指揮してるのにどうして曲が変わっちゃうの?!っていう感じ)つい笑ってしまう。彼がシャンデリアから逃げるところは最後まで見せてほしかった。

そしてマダム・ジリー(ミランダ・リチャードソン)は、ファントムを匿うところまでは語るが、その後、彼女自身とファントムとの間に何があったのかは語らないんですね。ただじっと彼を見てるだけ。その目は尊敬と畏怖、そして後ろめたさがあるように感じた。彼を匿ったものの、その後は直接ファントムとマダムが顔を合わせたことはなかったんじゃないかと思う。必要なものを地下へ届けたり、何かあると彼を庇うような行動を取ったりしたが、なまじ顔を見てしまったせいか憐れむ気持ちのほうが強すぎて、愛することも癒すこともできなかった。だから彼がクリスティーヌに執着するようになって正直ホッとしたんじゃないだろうか。そして彼の自由にさせてきた。だから彼が暴走してもマダムには止めることはできない。攫われたクリスティーヌをラウルが助けに行こうとするシーンでは、クリスティーヌのためというよりファントムのためにラウルを行かせてるように見えた。とにかく目で語る人だ。冒頭のオークションシーンでも、一言もセリフがないのにファントムへの思いが伝わってきた。彼女の存在が作品に奥行きを与えてましたね。個人的にはマスカレードで彼女が着物と日本髪モドキだったのが何だか嬉しい(笑)パリのオペラ座なんて何の繋がりもない遠い世界なわけだが、ほんのちょっぴりだけど接点があるような気がして、ね。
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ロング・エンゲージメント('04フランス)-Mar 12.2005
[STORY]
1917年フランス。第一次世界大戦の真っ只中、自らの手を撃ち抜いて戦場から抜けようとした5人のフランス兵が死刑を宣告される。その中にマチルド(オドレイ・トトゥ)の婚約者マネク(ギャスパー・ウリエル)がいた。終戦後、マチルドはマネクがまだ生きていると信じ、私立探偵を雇って5人の兵士の情報を集めはじめる。
監督&脚本ジャン=ピエール・ジュネ(『アメリ』
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原作はセバスチャン・ジャプリゾの『長い日曜日』
第30回フランスセザール賞では12部門ノミネートし5部門受賞。第77回アカデミー賞では撮影賞と美術賞の2部門でノミネートされた。

結果については途中で(ここからネタバレ)おそらくマネクは他の死んだ兵士と入れ替わってるか成りすましてるんだろうな(ここまで)と思ってたので意外性はなかったけど、謎解きそのものは面白かった。マチルドと一緒になって謎を追いかけていたような感じがして、手の傷やブーツを見落とさないよう注意深く見た。

また、元兵士たちの証言によって同じ場面がどんどん変わっていくところは、ミステリ映画の常套手段とはいえ見せ方が上手い。ちゃんとその兵士のいた場所からの視点になるように別の位置のカメラから撮ったり、切替が早いので「また同じシーンか」と思わせず、見てるほうをダレさせない。そのかわり登場人物と情報量が多いので覚えるまで混乱したけど。

映画の雰囲気や映像はオドレイ・トトゥに合ってるんだけど、マチルドという役は合ってなかったと思う。ウリエルのほうが実際6歳も年下だし、2人並んでても姉さんと弟みたいで恋人同士と見るにはちょっと無理があった。それにマチルドが「夕食前に犬が部屋に入ってきたらマネクは生きてる」などと祈るシーンでも、幼さの残る女の子の切な願いというより、フシギちゃんの遊びみたいに見えちゃって気持ちが伝わってこなかった。アメリの印象が強すぎるのかなぁ。あの映画を見てなければそんな違和感もなかったかもしれないが。でも姉弟に見えてしまったことと合わせても、マチルドは実年齢も20歳前後の女の子にやってもらいたかったな。
(『ロスト・チルドレン』のミエットを演じたジュディット・ビッテってもう20歳くらいじゃないかな。いま彼女は何処・・・?)

戦地のシーンは思いのほか激しくて、思わず目を背けてしまうような描写もあり、マチルドが住む町の暖かな風景が出るとホッとさせられる。彼女の周りの人々もみな優しくて、郵便配達人が来るのがマチルド以上に楽しみだった(笑)あれジャン=ポール・ルーブが演じてたのか!可愛くて惚れました(『バティニョールおじさん』では嫌な人だったのに)
特に印象的だったのは、激戦地だった場所が終戦後に草原となっていて、そこを肩車されたマチルドや叔父たちが歩いていくシーン。ジュネ作品というとつい凝った映像に注目してしまうけど、本作で監督が一番見せたかったシーンはここかもしれない、と思った。

とはいえ、あの人の飛び道具(?)に思わずニヤリ。凝り過ぎでカッコイイ。そして野原で虫がブンブン飛んでるのを見て「ここで虫のドアップくるか?!」と思わず期待してしまったことは内緒だ(笑)
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