Movie Review 2001
◇Movie Index

ポワゾン('01アメリカ)-Nov 23.2001
[STORY]
19世紀後半のキューバ。コーヒー農園を経営するルイス(アントニオ・バンデラス)は文通で知り合ったアメリカ人女性との結婚を決めた。そして結婚式当日、やってきたジュリア(アンジェリーナ・ジョリー)は写真とは別人の美女だった。顔で決めて欲しくなかったからわざと別人の写真を送ったのだとジュリアは言うが、ルイスはすでに彼女の美貌に心を奪われていた。
監督&脚本マイケル・クリストファー(『ボディ・ショッツ』)
−◇−◇−◇−
監督フランソワ・トリュフォー、ジャン・ポール・ベルモンドとカトリーヌ・ドヌーブ主演で1969年に公開された『暗くなるまでこの恋を』のリメイク。本作公開日にちょうどテレビ放映があったので『ポワゾン』の後になってしまったが見てみた。サスペンスでも緊張感はなくて、悪女というよりは気分にむらっ気のある女と、痴話喧嘩しながらも最後まで女に付き合おうと決心する男の、とってもおフランスな映画という感じだった。

それが本作は舞台をキューバに移し、バンデラスとA・ジョリーといったフェロモンムンムンカップルの、愛と肉欲にまみれたサスペンスになっていた。すんごい濃いぃ味付け。でも不思議なことに、バンデラスにヒゲがなかったせいか、ジョリーのほうが濃くて、バンデラスが意外にあっさり系に見えたのよね。というわけでこの勝負はジョリーの勝ちってことで(何の勝負?)

本作は『暗くなるまで』にはない、死刑執行を待つジュリアが、ことの顛末を神父に語るシーンで始まる。なぜジュリアは死刑にならなければならないのか?話が進むうちに、こっちの予想がどんどん覆えされ続けるところがなかなか面白かったが、オチの着地点が予想と遥かに違ってて戸惑ってしまった。そして混乱してるうちに映画は終わってしまい、まるで2時間サスペンスドラマのエンディングでかかるような歌が流れ出しちゃって一気に脱力状態に(←グロリア・エステファンの歌に何て言い草だ)結局、この映画が何だったのかよく分かりません。
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フェリックスとローラ('00フランス)-Nov 23.2001
[STORY]
フェリックス(フィリップ・トレトン)は、移動遊園地のオーナー。ある時、一人でバンパーカーに乗る寂しそうな女に目が止まる。その夜、ふたたび彼女を見かけたフェリックスは声を掛ける。女はローラ(シャルロット・ゲンズブール)と名乗り、自分を雇って欲しいと言った。
監督パトリス・ルコント(『橋の上の娘』
−◇−◇−◇−
やっぱりルコントってマゾなのかなぁ〜と思った作品。過去の作品もそうだけど、女に翻弄され、時には身を滅ぼす男を描くのが得意だよね。男のほうは純粋に“女を愛してる”んですよ。でも女は男に対して純粋かというとそうでもない。愛があるのかどうかも分からない。打算も見えるし男に愛される自分が好き、みたいなところがあると思う。はーコワイ(そういう自分も女なんですけどね)

そんでもってこの映画がまた・・・(ネタバレせざるをえない)今年一番のトンデモ映画かも、自分の中で。冒頭のフェリックスが発砲するシーンはまず反則でしょう。そりゃないぜ。それとローラの嘘にはホント呆れた。ところどころで見せるローラの言動で、ちょっとイヤな予感はしてたんだけどね。それでいいのかよフェリックス、その女のせいで人を殺したかもしれないんだぞ!で、そのメイクを許せるのか?しかも受け口気味だぞ!と訳の分からない理由で最後は罵倒しちゃいました。でもいいんだろうな、フェリックスにとってはそれでも。むしろ彼女に子供がいなくて、平凡な女だったことに感謝してそうだ。
でもホント言うと、彼女の気持ちも分からないでもないんだ。私も不幸知らずだから。不幸な女って魅力的だなと思ってしまう時もある。病気自慢するみたいなもんだよね(←それはちょっと違うのでは?)
(ここまで)

シーンのほとんどが遊園地の中で、これがこの作品のすべてを支えていると言ってもいいくらい。これが単なる街中での出来事だったらつまんない映画だったと思いますよ(ちょっと暴言)特に夕暮れの遊園地は見ているだけで切ないもの。ずるい!そしてローラがバイクに乗ってフェリックスを見つめるシーンはこの映画のベストシーン。ここで初めて私はローラを美しいと思った。
そういえば『橋の上の娘』も、アデルがナイフを待つ時の顔がたまらなく綺麗だった。危険と隣合わせになった時の、女の緊張した顔というのはそそられるもんなのかな。そういう顔を撮りたがるルコントってやっぱりサドなのかなぁ〜(どっちだよ)
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アメリ('01フランス)-Nov 17.2001オススメ★
[STORY]
空想することが大好きなアメリ(オドレイ・トトゥ)は22歳の女の子。モンマルトルのカフェで働きながら、お店の人たちやアパートの住人たちに少しずつお節介を焼いては楽しんでいた。しかしある時、失敗したスピード写真をコレクションにしている不思議な青年ニノ(マチュー・カソヴィッツ)に恋をしてしまう。
監督&脚本ジャン=ピエール・ジュネ(『エイリアン4』
−◇−◇−◇−
のっけからやられた。ともするとエラい悲惨なアメリの生い立ちを、まるでおとぎ話のように語り始めるオープニング。全体的に可愛いお話なのに、ところどころにそんな毒もちりばめてあって、バランスが取れている。
そして徹底的に作り込まれたモンマルトルの街。あれはモンマルトルであり、全く別の場所なんだと思う(行ったことないけどさ)あの街だから、どんなヘンな性癖を持つ人が登場しても全く違和感がない。街と人が恐ろしいほどに調和が取れている。ストーリーもビジュアルもどちらも匙加減が絶妙で、一気にアメリの世界に引き込まれた。

アメリが仕掛ける悪戯が可愛らしく可笑しい。ちょっとお節介が過ぎるのでは?と思う箇所もいくつかあったが、父親に仕掛ける愛情たっぷりの悪戯が一番好きだ。
そんな、他人にばかり気を取られている彼女自身が、自分のことになると殻に閉じこもってしまうという設定なのだが、そのへんの曖昧な感情があまり表現できてなかったような気がする。殻に閉じこもるような性格というが、引っ込み思案でもないし、引き篭りでもないしさ(笑)特に彼女がニノに恋してしまうところが分かり難く、彼と面と向かったところでのアメリの表情に、他の人と接する時とまた違う何かが見えればなぁと思った。彼と仲良くなれそうなギリギリのところでパッとかわすところは良かったけどね。

出てくる役者はもちろんだが、ナレーションが気に入り、誰がやってるのかとパンフを見てみたら、なんとアンドレ・デュソリエだった。そういえばエンドクレジットにデュソリエの顔写真が出て「一体どこで出てたっけ?」と首をかしげていたのだが、ナレーターだったのね。声も、話し方のテンポも心地よくてうっとり。DVD出たら買おう。
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ソードフィッシュ('01アメリカ)-Nov 7.2001
[STORY]
元天才ハッカーのスタンリー(ヒュー・ジャックマン)は、FBIの市民メール監視システムに侵入してシステムを破壊したことから逮捕され、妻とは離婚、裁判所の判決により娘とも会えない身になっていた。そんなある時、彼の前にジンジャー(ハル・ベリー)と名乗る女がやってきて、政府が持っている闇資金をコンピュータ回線を使って奪う仕事を依頼してきた。娘を取り戻すための資金が欲しいスタンリーは、ジンジャーのボスであるガブリエル(ジョン・トラボルタ)に会いに行くが、いきなり難題を突きつけられる。
監督ドミニク・セナ(『60セカンズ』)
−◇−◇−◇−
タイトルの“ソードフィッシュ”とは、1980年代初めに麻薬取締局―DEAが実行した極秘作戦のこと。麻薬資金の流れをつかむために、DEAはダミー会社を作って捜査を行っていたのだが、その会社が予想外の利益を上げてしまった。作戦終了後、会社の利益4億ドルは銀行に預けられたまま利子が増え、今では95億ドルにもなっていたのだ。それを奪おうとガブリエルは周到(笑)な計画を立て、周りの人間をことごとく騙しながら遂行していく。
周到、のところで思わず(笑)を入れたのは「あんたホントそこまで考えてたのかよっ!」っていうツッコミを含んでマス。ものすごい大雑把な計画だと思うんだけど、アクシデントまで計算ずくだったら空恐ろしい。ま、映画ですけど。

それにしても『マトリックス』に激似の予告編でしたな。これもワーナー、ビレッジ・ロードショー、そしてジョエル・シルバーのプロデュースだからなんだが、VFX映像を使ってるところはもちろん、ナレーターまで一緒なのには笑った。その目玉のVFX映像は『マトリックス』の時よりも長い30秒間にもわたるもので、まるで観客が爆発の中心にいるかのような錯覚を起こす・・・という触れ込みだったんだけど、実際劇場で見てもそんな錯覚を起こすことはなかったなぁ。むしろ迫力不足で。爆発シーンをあんなゆったりしたスピードで見せられても全然驚かないし、かえってこれが作り物だということを認識させられてしまった。音もそれほど大きくなかったし、突然目の前でドカーンとやってくれたほうがよっぽども迫力あったのに。VFXの使いドコロを間違ったんじゃないかと、ちょっと思った。まぁ爆風によっていろんなものが飛び散るところは、見ていてなかなか面白かったが。

トラボルタは今まで自分がやってきたキャラクターの集大成みたいで、手馴れた感じがガブリエルというキャラに合ってたが、新鮮味がなくて、あんな派手なのに私にはあまり印象に残らない人物でもあった。ジャックマンは脳まで筋肉っぽくてハッカーには見えないけど(失礼)なかなか魅力的だった。一緒に見に行ったMちゃんが惚れてました(笑)で、ハル・ベリーどうよ?(←見た人に聞いてる)

この映画をこの時期に公開するのって・・・てゆーか、アメリカでは早めに公開して良かったのか悪かったのか・・・。見終わった後にとても複雑な気持ちになった。うーーん。
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メメント('00アメリカ)-Nov 4.2001オススメ★
[STORY]
ロサンゼルスで保険の調査員をしていたレナード(ガイ・ピアース)は、妻をレイプされた上に殺害され、彼もまた頭にケガを負わされ前向性健忘症という記憶障害になってしまう。10分間しか記憶を保つことができないのだ。しかし彼は妻を殺した犯人を突き止めるため、ポラロイド写真にメモを取り、身体にタトゥーを彫ることで手がかりを掴んでいく。
監督&脚本クリストファー・ノーラン(『フォロウィング』
−◇−◇−◇−
まずは説明しよう。この映画は結末から始まり、少しずつ巻き戻しては再生され、ラストに事件の発端が明かされる構成になっている。

久しぶりに私の好きなタイプの映画が公開されて嬉しい。もう設定だけでワクワクしちゃう。パンフも買ったし、結局ノベライズも買ったし(これは過去からクライマックスへと時間通りに進みラストも違ったが読んで損したかも)DVDが出たら買って時間通りに見ちゃいそうだし(笑)映像のビジュアルそのものも好みなので。Tシャツも欲しかったなぁ〜。

でも最初に説明したような構成の映画って昔からかなりあるみたいなのね(これについてはよく知らない)私が見た中でも『ペパーミント・キャンディー』という映画がそう。この映画もまた私は大好きなんだけど、作品の完成度ははっきり言って『ペパーミント』のほうが上。ちゃんと辻褄も合ってるし、こういう構成にしたことで、物語を表現するのに非常に効果的になっているのだ。

しかし本作は、必ずヒネリを加えなければ!観客に驚いてもらわなければ!という気持ちからなのか、よくよく考えるとストーリーが破綻してるような気がしないでもない(これきっと過去から順番に見たら「あれ?」って思うハズだ)『ペパーミント』は最初からヒネリを加える必要がないからうまくいった、っていうのもあるけどね。

(ギリギリセーフな気もするけど一応ネタバレにしときます)あんまり比べちゃうのもなんですが、本作の良かったところは、過去に戻りきったところでまた現在に戻らないところ。発端が分かったところでブッツリ切った、その潔さだ。普通ならて発端が分かったところで再び現在に戻り、何かしらのオチをつけるハズ(『ペパーミント』もそうでした)でもあえてそれをやらなかったところが、かえって良かったと思う。この座りの悪さが好き(マゾ?)(ここまで)

(そしてここからは本当のネタバレ)そしてこういう終わり方にしたことで、レナードという男の悲しさが引き立ったように思う。彼はそうやって一生、妻を殺した犯人を探し続け、殺し続けるのだろう、ということ。さらによくよく考えると、彼は記憶障害というだけでなく、やはり精神も病んでいるのかなぁということ。ただの記憶障害にしては自分の都合の悪いことは消してしまうし、自分の都合のいいことは10分経っても覚えてるように見えるんだよねー。ひょっとして確信犯、なのか?(コワイヨー)(ここまで)

久しぶりにものすごい集中して映画を見たような気がする。それと「何か見落としはないか?さっき私が見たのはどんな映像だったっけ?」ってレナードと同じような気持ちになり、疑似体験してるような感覚も味わえたし。キャスティングも良かったし(ガイ・ピアース上手いし、タトゥーがセクシ〜)明らかに低予算映画だけど、アイデアでここまで引き込んだところに拍手。

追記。 DVDのリバース・シークエンス(時間軸通りに見る)機能で見てみた。ただ最初からやるのではなく、時々挿入されていたモノクロ部分をまず全てやってしまってから、時間通りに流していくものだった。すごい見やすいしやっぱり面白いなぁ。登場人物それぞれの性格が浮き彫りになったし、レナードとサミーの関係についてもすっきりした。そして上の本当のネタバレ部分についてさらに疑惑が深まったかな、と。やっぱり限りなくアヤシイ。でも何度見ても謎がすべて解き明かされることはないんだろうな。
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