Movie Review 1999
◇Movie Index

ワンダーランド駅で('98アメリカ)-Dec 23.1999
[STORY]
同棲していた彼が出て行って落ち込んでいるエリン(ホープ・デイヴィス)に、母親が新聞に彼女の恋人募集広告を出してしまう。たくさんの応募の中から何人かの男と会ってみるが・・・。一方、海洋生物学者を目指すアラン(アラン・ゲルファント)は水族館でボランティアダイバーをしながら猛勉強をしていた。
監督&脚本ブラッド・アンダースン(本作が2作目(1作目は不明))
−◇−◇−◇−
駅や水族館やパーティで出会いそうになりながら、ほんのちょっとのタイミングのズレで会えないエリンとアラン。観客は2人が恋に落ちると最初から分かっているけれど、なかなか出会えないことでやきもきしてくる。しかしそれが転じて今度はだんだん「一体どんなシチュエーションで出会うんだろう?」という楽しみに変わってくる。

2人とも、別の人物と恋に落ちそうになるが、どこかで「何か違うかも?」と思っている。運命の人がいるはずだという確信までは持っていないにせよ(こういう考えは時として勘違いを生んでしまったりするので注意が必要)目の前の人が「違う」ということは分かる。それでも独りでいるよりはマシかもしれないと一歩踏み出そうとするが、ここでうまい具合に思わぬアクシデントがあるわけだ。ありがちだけどそれが見たいんだよね、こっちとしては(笑)さて、それじゃあ2人の出会いへ。あまり大げさにはしてほしくないけど、さりげなくてなおかつ運命を感じさせてくれるようなステキな出会い方を期待してしまう。キャー!ドキドキ(笑)なーんて思ってたんだけど、ん〜。実際出会うシーンを見てですね、ワタシ的には期待してたせいか、ちょ〜っと物足りなかったかな・・・。悪くはないんだけど。

エリンとアランの生活を描くシーンが洗練されてていい。ボサノヴァをBGMに、それぞれが街を歩いたり海を見たりするシーンが心地よい軽さがある。普段見慣れたアメリカ映画とは雰囲気が違って、まるでヨーロッパの映画を見ているよう。特にエリン役のデイヴィスは知的で薄幸そうな美人で、彼女の存在が映画にサラッとした透明感を与えている。でもアランは設定よりちょっと歳取り過ぎ。オヤジジャンパーだし、髭濃いし、瞳の色もちょっと不気味。あまりステキに見えなかったのが残念だ。
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ブレア・ウィッチ・プロジェクト('99アメリカ)-Dec 18.1999
[STORY]
1994年10月21日。映画学科の学生ヘザー・ドナヒュー、ジョシュア・レナード、マイケル・ウィリアムズの3人が「ブレアの魔女」伝説のドキュメンタリー撮影のため、メリーランド州・ブラックヒルズの森へ入ったが、そのまま消息を絶ってしまった。1年後、彼らが撮影したフィルムが発見された。この作品は、その残されたフィルムを編集したものである――。
脚本&監督ダニエル・マイリック&エドゥアルド・サンチェス(初監督作)
−◇−◇−◇−
先行オールナイトに行ってきた。この上映会では本編プラス「ブレアウィッチの呪い」という43分のVTRが流された。これは3人が調査していた「ブレアウィッチ」とは何か?彼らの失踪とブレアの伝説との関連は?といったことを説明してくれる(テレビ東京で放映された「ブレアウィッチの真実」はこれとほぼ同じなので、これを見た人は必要ないでしょう)本公開ではこのVTRを流さないということだけど、これは是非セットで流してもらいたいと思った。

しかし、これを見なくても上記のような情報を知る術は色々あるのでそれを列挙する。
(1)公式ホームページ(現在はないようなので、こちらの裏ウェブサイトがいいかな)
(2)『ブレア・ウィッチ・プロジェクト完全調書』

なぜこれを書いたかというと、この映画の場合、この事前の下調べが大事だからなのね。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』は映画を見ただけではほとんど理解できないでしょう。ホームページ・関連書籍等を読んで初めてその全てが分か(ったようなつもりにな)る。つまりは複合エンターテインメントなのだ。だから映画だけ見て「つまんない」と思ったら、そりゃあんたが悪い(暴言)与えられるものだけを見てるだけじゃいけない。自らこの映画にハマらなきゃ面白くないのだ。

さて、以下はネタバレです。本編と『完全調書』を読んだ方以外は見ないほうがいいです。
さて、作品にどっぷり浸かったところで、この作品(映画、サイト等含めて)フィクションかノンフィクションかで議論したりするのはナンセンスだと思う。そんなのフィクションに決まってんだから(笑)それを踏まえた上で、次に疑問に思うのは、このフィルムが3人の「捏造」か否か、ということでしょう。(そりゃ映画なんてすべて捏造じゃん、というのはここでは置いといて下され)ということで以下、自分なりに纏めてみた。

<捏造だった場合>
1.彼らのフィルムも本もVTRもすべて捏造
 → バーキッツヴィル挙げての町おこし(観光客増加(笑))
2.彼らのフィルムは捏造だが、本やVTRは本物
 → では彼らは1年間もどこへ消えてるのか?(そこまでする必要ある?)
 → 発掘調査が行われなければ見つからないような場所に何故バッグを隠した?
 → 発掘調査をした学生の中にも捏造に荷担した人物がいる?
 → 捏造後に彼らは何らかの事件に巻き込まれた?

<事実だった場合>
1.エリー・ケドウォードのように魔女になりきった人物がいる
 → ヘザーがブレアの魔女?(日誌に彼女を召還するような文章あり)
 → メアリー・ブラウンがブレアの魔女?(傷ついたジョシュ(の幽霊)を目撃している)
2.ラスティン・パーに心酔したコピーキャット〜模倣犯〜がいる
 → コピーキャットは全く知らない人物で3人とも狙っていた
 → ジョシュがコピーキャットで、他の2人をパーの家そっくりに作った家におびき寄せた
 → マイケルがコピーキャットで、ジョシュを殺し、ヘザーを家におびき寄せた


ここまで書いて頭痛くなってきた(笑)ってことであとは『BWP3』を楽しみに待とう(『BW2』は番外編なので見ても意味なし)つまりは、このようにいくつも仮定を出して楽しめる作品だということです。
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キス・オア・キル('97オーストラリア)-Dec 12.1999
[STORY]
ニッキ(フランシス・オコナー)はバーで男を誘惑し睡眠薬を飲ませ、眠ったところで恋人アル(マット・デイ)を呼んでは金品を奪っていた。しかしある時、騙した弁理士の男が死んでしまう。2人は大慌てで逃げたが、男から盗んだ鞄からは元フットボール選手ジッパー・ドイルと少年との猥褻なビデオが発見された。
監督&脚本ビル・ベネット(『サンドラ・ブロックの恋する泥棒』)
−◇−◇−◇−
オーストラリアの広大な大地に全て吸い込まれてしまったような映画だった。まったりした雰囲気に馴染んじゃってだらけてしまった。こんなところでカーチェイスやられてもまったくハラハラしないし「大自然の中で何て人間はちっぽけなんだろう(笑)」てな気持ちにさせられた。つまり映画の中に入れずに、どうでもよくなってしまったのだ。私の熱意は砂漠の中に埋まったみたい。

弁理士の男が死んだ理由は事故か殺人なのか分からないまま2人は車で逃げ出す。そして行く先々で新たな殺人が起こる。果たして犯人はトラウマを抱えるニッキか?癇癪持ちのアルか?猥褻ビデオを取り返そうとするドイルか?はたまたそのほかの人物なのか?――と、興味を惹かれるいいネタをこれだけ揃えておきながら、そのほとんどが消化不良気味。そんな説明じゃ満足できん!とか、もっとちゃんと説明しれ!とかそんなんばっかし(笑)

チラシに書いてあったが、ベネットはこの脚本を10年も前から書き溜め、何度も推敲してそれが20稿にもなったらしい。が、この映画の脚本は全く新しいものとか。でも考え過ぎの上にストーリー練り過ぎちゃったんじゃないかなー。1番最後に書いたものが1番とは限らない。その場のひらめきで書いたもののほうがいい場合もあると思うんだけど。その20稿を読んでみたくなるね。

結論は「見ても見なくてもどっちでもいい映画」せっかくお金払ってるんだから、たとえ面白なくてもできるだけ面白く見てやろう!って気持ちに普段はなるし、最低ならそれだけ印象も深くなる。が、見たことすら忘れてしまいそうになるいうか。どちらにしてもインパクトゼロだった。

映画の中で良かったのは2人の刑事がレストランで会話するシーン。そしてアボリジニのおじさんが凄いところ。刑事たちと彼とのやりとりをもっときちんと描いてくれれば面白く見られたのに。
あと、行きたいと思ってた映画館(渋谷シネマソサエティ)に初めて行けて嬉しかったこと。今回はそれだけで満足かな。
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橋の上の娘('99フランス)-Dec 12.1999
[STORY]
ツイてない人生に嫌気がさし、橋の上から飛び込み自殺しようとしたアデル(ヴァネッサ・パラディ)を、中年のナイフ投げガボール(ダニエル・オートゥイユ)に助けられる。ガボールが投げるナイフの的になることを持ち掛けられたアデルは、彼と共に各地を廻ることになる。
監督パトリス・ルコント(『リディキュール』
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最近ちょっと傾向が違うかなぁと思っていたルコント作品だったが、今回は久しぶりに間接的な官能的作品だった。しかし『髪結いの亭主』『仕立て屋の恋』『イヴォンヌの香り』と、男の妄想たっぷりな作品たちとはちょっと違う。男の一人よがりな幻想を見せるのではなく、男女両方からの視点で描き、幻想というより夢や幸せを見せる映画だった。

よく心理学で、吊橋の上を男女に歩かせると恐怖からくる胸の高鳴りを、恋と勘違いして相手を好きになってしまうという話を聞くが、この場合はそれ以上に相手を愛してしまいそうだ。女の命を預かり支配する男と、男に命を委ねる女。本気で相手を信頼しなければ成り立たない。そうやって信頼を築き、ツキを手に入れた2人が離れられるわけがない。ナイフ投げという行為はルコントにとって理想の男女関係そのものなのかもしれない。

だが、精神的には完璧な愛を共有する2人でも、肉体的には結ばれない。一線を超えてしまったら、かえって2人の信頼関係は崩れてしまうと恐れているふしがある。だからガボールはアデルの浮気性を責めず、2人の関係はビジネスライクなものだと言い聞かせるようにむしろ勧めてしまっている。その微妙な関係を描くシーンでのガボールは、女の私から見てちょっとセクシーだった。もちろんナイフを投げてる瞬間が1番だったが。アデルも、ステージを降りるとそうでもないのに、上がった時には美しく見えた。ナイフが壁に突き刺さる音とともに吐き出される彼女の息遣いが妙に色っぽくてドキドキしてしまった。的になってる間は縛られてるしね(って違うか(笑))

(以下はネタバレあり超個人的意見)ラストはハッピーエンドだったんだけど、私はこれがいまいち納得できない。上記の妄想系作品に囚われすぎてたせいか(笑)ガボールの前に現れたアデルは絶対に幻の存在だと確信していたし、てっきりガボールは橋から落ち、アデルも屋根から落ちて死ぬと思ってたのに(←鬼畜<自分)
それがどうやら本当らしくて、エンドロール見ながら「え?え?」となってしまった。ルコントならではの“儚い美しさ”でラストを飾り、余韻に浸れると思ったのになー。同じパターンを嫌う人もいるだろうが、王道パターンを求める人もいるってことです。
(ここまで)

それを差し引いてもなかなかいい作品。時間の短さもプラス。モノクロの映像に、アデルのヘアメイクとコスチューム、舞台装置などが計算され尽くされ、活かされていた。
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ファイト・クラブ('99アメリカ)-Dec 10.1999
[STORY]
不眠症に悩むジャック(エドワード・ノートン)は、出張途中で石鹸のセールスマンをしているタイラー(ブラッド・ピット)と出会う。攻撃的なタイラーは素手で殴り合いをする「ファイト・クラブ」を設立し、そこに男たちが次々と加入した。やがてタイラーは男たちにもっと過激な行動を取らせるようになる。
監督ディビッド・フィンチャー(『ゲーム』
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過去にフィンチャーが監督した『エイリアン3』も『セブン』も『ゲーム』も私が期待していた以上の面白さがなく、いつもがっかりさせられていた。だから今回はノートンが出演していること以外には全く期待してなかったんだけど、この作品は思った以上に面白い。いろんな要素が詰まってて、あっと驚く展開もあり私好みのストーリーだった。原作読んでみたいなぁ。

冒頭はちょっと作りこみ過ぎてて気が散っちゃったんだけど、ファイト・クラブを設立したあたりからはずっと良くなった。もしかして私、この人の独特の映像センスが嫌いなのかもしれない。それとも彼が意図した不快感を誘う手法にまんまと嵌ってるんだろーか(笑)ヤバイな。

にしてもやっぱりノートンはうまい。謎めいたテイラーに振り回されながらも自らの暴力性に目覚めていくジャックにピッタリ。今までで1番のハマり役かもね。ピットはまずまず。『12モンキーズ』でもそうだったが、本来自分はこういう役をやりたいんだ!という野心がよく見てとれる。でも見てるこっちからすると、まだ容姿もガクンと衰えてないんだし、やれるうちに『ジョー・ブラックをよろしく』みたいな二枚目やっといたほうが賢明だと思うんだが。気持ちは分かるが、わざと小汚い格好を好んで演技派を目指すにはまだ早い(偉そうー<自分)

と2人のまずまずの好演に対し、謎めいた女マーラの存在に疑問がある。難病を患った人々の会合に出席し、彼らの悩みを聞いて涙することで不眠症を克服しようとしていたジャックの前に現れ、いつのまにかタイラーと関係を結んでいた女。タイラーとジャック、暴力以外に2人を結ぶもう1つの接点であるべき存在として描かれるハズだったのではないのか。それがあまり活かされてない。カーター自体、前から好きじゃなかったから余計に鬱陶しい。出るたびにイヤだった。2人に女が絡むことは構わないが、それならカーターじゃなくてもよかろう。魅力的な女優ならもっとほかにいるでしょうに。

しかし・・・タイラーが売る石鹸はいくら良くても使いたくないなー。世に出てる石鹸がみんなこんなだったら泣く!
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