Movie Review 2000
◇Movie Index

宮廷料理人ヴァテール('00イギリス=フランス)-Nov 24.2000
[STORY]
1671年フランス。フロンドの乱に加わったことから王室での立場が悪くなっているコンデ大公は、国王ルイ14世の信頼を取り戻そうと、自分の城にヴェルサイユ宮殿の廷臣全員を招待する。3日間に渡る饗宴の全てを任されたのは料理人ヴァテール(ジェラール・ドパルデュー)だった。
監督ローランド・ジョフィ(『ミッション』)
−◇−◇−◇−
クレーム・シャンティ(ホイップクリームのこと)を考案した実在の料理人を主人公に、史実に基づいて作られた豪華絢爛映画。ホントむちゃくちゃ金掛かってるというのがよく分かる。食材はそれほど写されないので、これにはあんまり力入ってないように見えるけど、食事中に催されるアトラクションが素晴らしい。昼食からしてセットが凝ってて驚いた。夕食にはさらに花火や水芸、ダンスや宙吊りまで披露され、これだけでも見る価値ある!てゆーかぶっちゃけた話、見所は饗宴シーンだけかな、ワタシ的には。もしビデオが出たらもう1回見たいと思うけど、ここ以外は早送りするかも、というくらい。

ヴァテールはルイ14世とともにやってきた女官アンヌ(演じるのはユマ・サーマン)に惹かれるが、ローザン侯爵(演じるのはティム・ロス)もまたアンヌに目をつけておりヴァテールの邪魔をする。しかしルイ14世もアンヌに目をつけ寵愛する――。饗宴の合間にそんな話も同時進行していくのだが、彼らのキャラクターは単なる記号でしかないというか表面的な部分しか見えなかったというか、生身の人間としての魅力が私には全然感じられなかったのね。特にティム・ロスなんて他の映画でも見たようなキャラクターだもん。つまらん。ラストも尻つぼみだったしね。

そうそう、フランスの話なので絶対フランス語かと思ってたのに、英語で違和感あったのさ。でも主要キャストはドパルデュー以外、米国人や英国人だったんだよね。で、これを打つためにチラシを見ていて初めて知ったんだけど、ルイ14世を演じていたのは何とジュリアン・サンズだったのよー!あんなヅラじゃ誰だか分かんないって。ティム・ロスくらいヅラとの馴染みが悪ければ(笑)すぐ分かるけどさ。やられたなぁー。もっとよく見とくんだった(昔の私の一押しだった)
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ペパーミント・キャンディー('99韓国)-Nov 19.2000オススメ★
[STORY]
99年春、40歳のキム・ヨンホ(ソル・ギョング)が20年ぶりに工場で働いていた当時の仲間たちの前に現れた。彼は自暴自棄になっており「昔に戻りたい!」と叫び、やってくる列車に飛び込もうとした。彼に一体何があったのか――。
監督&脚本イ・チャンドン(『グリーン・フィッシュ』)
−◇−◇−◇−
NHKとの共同制作によって作られた作品で、今年のカンヌにも出品された。

1979年の春から1999年の春までの20年にわたって、1人の男が歩んできた人生を回想形式で描いていく。ただし現在から一気に20年前に戻るのではなく、3日前、5年前、さらに5年前というように、少しずつ過去にさかのぼっていく。いつ、どこで、どんなきっかけがあって彼が変わってしまったのか、知りたいような知りたくないような、落ち着かない気持ちで見た。

最初はヨンホという男が嫌で嫌でたまらなかった。楽しく宴会をしているところにやってきて大暴れしたかと思えば、5年前には実業家として傲慢さをひけらかしているし、その前は暴力的な刑事として政治犯を拷問したりしている。もういい加減にしてよ〜とうんざりした。何があったか知らないけど、そういう態度は気に入らないなー!などと思っていた。

しかし原因が分かった途端、そんなことは全部吹き飛んでしまった。彼の不機嫌な顔は、辛い過去を押さえつけている苦痛の表情なんだって分かったから。そして20年前の、純朴な青年時代のヨンホを見て、もう切なくてやりきれなくなった。ごめんねごめんね、とずっと彼に謝り続けたよ・・・。体調の悪い時とか、気分がすぐれない時には見られない作品だな。精神的にやられる。ヘビーだった。

ストーリーに関しての感想を抜きにしても、作品の構成としてすごくうまいと思った。現在からいきなり20年前に戻って少しずつ現在に近づいていく描き方をしても、決して悪い作品にはならないだろう。でもこの手法を取った、監督のアイデア勝ちだなあ。
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美術館の隣の動物園('98韓国)-Nov 12.2000
[STORY]
チュニ(シム・ウナ)は結婚式のビデオ撮影の仕事をしており、式場でよく見かける議員秘書インゴン(アン・ソンギ)に片思いしている。そんなある時、彼女のアパートに兵役休暇中のチョルス(イ・ソンジェ)が勝手に入りこんできた。チュニの部屋の前の住人がチョルスの恋人だったのだ。
監督&脚本イ・ジャンヒャン(初監督作)
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少々ややこしい話なのでストーリーをもう少し詳しく説明しておく。
チョルスは恋人タヘの部屋のカギを持っており、チュニの留守中に彼女の部屋に勝手に入ってしまう。そこへ帰ってきたチュニと揉め、チョルスはタヘを見つけて問い詰めるが、彼女が別の男と結婚することを知る。そんでもってナンダカンダありつつ結局しばらくの間チュニとチョルスは同居することになる。チュニはシナリオライター志望で恋愛モノのシナリオを書いていたが、なかなか進まずチョルスがその手伝いをすることに。タイトルは「美術館の隣の動物園」美術館の係員役にタヘ、動物園の獣医役にインゴンをモデルにして、この2人が恋愛するストーリーを書いていく。このシナリオを書くシーンは、それぞれインゴンとタヘがシナリオ内で再現シーンのように役を演じている。分かったかな?

でね、このちょっと突飛な設定は面白いと思うのよ。でもさでもさ、ヘンだと思いませんこと?何で引っ越した前の住人のカギと今の住人のカギが同じなのよーーーーー!私はアパート暮らしはしたことないけど、普通、住人が替わると大家さんがカギも取り替えるってよ。それなのに韓国ではそのままなの?(泣)チュニもチョルスもカギがどうこう、って話はしなかったが・・・怖いじゃん!大家も家賃払えとか言う前にカギ替えろよ。もうしょっぱなからそれが気になって気になって、なかなか話に入っていけませんでしたっ。『カル』を見た時も、刑事が素手で現場見たり勝手に証拠品持ち出したりしてて疑問に思ったが、これはそれ以上。

この話を延々してもしょうがない。それはお国柄(?)として目をつぶろう。それぞれの好きな相手同士がシナリオ内で恋愛し、同時に好みも性格も全く違うチュニとチョルスも、喧嘩しながらだんだん心を許し合うようになる。それを表現する細かいエピソードは面白いし可愛らしい。つまり美術館がチュニで動物園がチョルスなのよ。でも1つ1つはいいのにまとまりがなく散漫な印象で途中で中だるみする。そして最後に強引にまとめたという感じが否めない。まぁ強引なのは最初からだったけどね・・・(最初のコメントにループ)
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ブラッドシンプル/ザ・スリラー('99アメリカ)-Nov 12.2000
[STORY]
妻アビー(フランシス・マクドーマンド)と従業員レイが不倫関係にあることを知ったバーの経営者マーティ(ダン・ヘダヤ)は、私立探偵を使って2人を殺そうとする。しかし探偵は逆にマーティを殺してしまう。マーティの死体を見つけたレイは、アビーが殺したと思い込み、死体を始末しようとするが・・・。
監督&脚本ジョエル・コーエン(『ビッグ・リボウスキ』
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1983年に公開された『ブラッド・シンプル』を再編集し、音楽もドルビーデジタルになった。私は83年版を見てないので、どう変わったのかよく分からないんだけど、一般的に再編集されると「完全版」とかいってオリジナルより時間が長くなってたりするが、これは逆に5分も短くなっている。長くなって良くなった映画もあるけど(個人的に『レオン』は完全版のほうが感動したクチ)これは短くなって良かったんだろうな。テンポもよく緊張感が全然途切れなかった。83年版とも見比べたいな。

やっぱり映像がいい。カメラワーク最高。ここを見せて欲しい、と思っている角度からちゃんと見せてくれるし、思ってもないところから見せてくれもする。個人的にはライターを写す時が好きだな。何度も何度も登場するのがアクセントになってて。あとチラシにもなってるけど畑の中に車が突っ込んだとこ。この映像1つでレイの心情までも表現されてるように見えるのよね。

オスカーも貰って今じゃすっかり貫禄あるオバサン(失礼)になっちゃったマクドーマンドだけど、こんな可憐な時期もあったのね(もっと失礼)この作品内でのキャラクターとしては一番インパクトなく面白味もないと思っていたが、でも実はこの人が一番したたか。特にクライマックスでの度胸の良さを見ると、ホントは最初から何か策略があったのでは?と思わせるほど。でも嫌な女だとは全然思わない。やるなぁ(ニヤリ)って感じ。
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グリーン・デスティニー('00アメリカ=中国)-Nov 11.2000
[STORY]
19世紀初めの中国。伝説的英雄リー・ムーバイ(チョウ・ユンファ)が使い手だった秘剣“グリーン・デスティニー”が何者かに盗まれる。ムーバイの女弟子シューリン(ミシェル・ヨー)は犯人が長官の家に逃げ込むのを目撃する。その長官の家には結婚を控えた娘イェン(チャン・ツィイー)がおり、彼女の家庭教師こそムーバイの宿敵であった・・・。
監督アン・リー(『アイス・ストーム』
−◇−◇−◇−
今まで“家族”を描いてきたアン・リーが、広大な大地を舞台に“ファンタジック・アクション・ラブストーリー(C)チラシ”を完成させた。はっきり言って今までの路線を想像してるとびっくりするかもね。

でも恋愛についての構成が『いつか晴れた日に』と一緒だということに気がついた。ムーバイとシューリンはお互いに惹かれているにも関わらず、シューリンの死んだ恋人とムーバイが友だったことから、そこから先へと踏み込めないでいる。一方、イェンと盗賊のロー(演じるはチャン・チェン)は情熱的で後先考えずに突っ走っている。同じように『いつか〜』では分別ある大人な姉の恋はなかなか進まず、奔放で情熱的に恋愛する妹が描かれていたからね。どちらも原作があってオリジナルではないが、こういう話が好みなのかなあ。私はどちらの作品も大人カップルのほうに気持ちが入った。耐え忍ぶの好き(←マゾ?)

しかし、主に恋愛シーンばかりの『いつか〜』に対して、本作品はこれに武道やら敵討ちやらいろんな要素が入りすぎて、かえって散漫な印象。ずっと落ち着かない感じ。ていうか物語を理解するまでにえらい時間が掛かった気がする。なんかね、長い物語の途中から見せられたような気分なのよ。冒頭“グリーン・デスティニー”をムーバイが献上するところから始まるんだけど、なんで敵討ちしてないのに人にあげちゃうの?とか、ジェイド・フォックスって誰やねん?とか疑問がいっぱい。それすべてムーバイとシューリンの会話から読み取るしかないので、見ていて疲れてしまう。さらにアクションシーンもやたら長くて目が回りそうになった。水の上を飛んだり、竹林で戦うシーンは美しくて確かに見所だがちょっとしつこい。特に女同士の戦いは恐ろしいほどに長かったでっす。

さらにさらにはっきり言うと、このイェンとかゆー小娘が気に入らんのじゃ!!気が強くて、わがままで、コイツが無茶しなければこんな大事になることはなかったのに、きぃー!って感じっす。別に若さに嫉妬してるわけでも、チャン・チェン萌えだからでもありません(念のため)
でも嬉しかったのは父親三部作のラン・シャンを久々にアン・リー作品で見れたこと。この人を見ると落ち着く。
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