Movie Review 2000
◇Movie Index

カル('99韓国)-Nov 2.2000
[STORY]
ソウルで発生した3つのバラバラ殺人事件。事件を追うチョ刑事(ハン・ソッキュ)は、被害者たちと過去に付き合っていた女性スヨン(シム・ウナ)に事情聴取するが、彼女に心当たりはないという。そんなある時、スヨンをストーキングしていた男を捕まえるが、拘留中に彼女が何者かに襲われる。
監督チャン・ユニョン(『接続』)
−◇−◇−◇−
ベースはブラッド・ピットが主演した『セブン』 ネタバレになっちゃうので詳しくは書けないが、ほかにもいくつかの洋画や日本のテレビドラマ(あと島田荘司も(笑))からインスパイアされたんだろーなと思わせるストーリーで特に目新しさはない。けれどバラバラ死体が発見されるシーンはかなり迫力がある。特にエレベーターのはショッキングだったし、高速道路のはアクション映画かと思うほどで贅沢な作りになっている。ここらだけでも見ごたえある。血のりと分かっててもドバーッと出ればやはり目を背けてしまうもの。

でもこの手の話にありがちな、どんでん返しを狙ったおかげで話の辻褄が合わなくなっていくところがこの映画にもある。そこでそれらを誤魔化すために登場するのが関連書籍なのであ〜る。見ただけでは分からない、本を読むとその謎が解明されるだろう!という煽り文句に釣られて買ってしまう乗せられやすい人がいるんだな。それがこの私なんですが(笑)

現在日本で出ているのは『カルの謎』の1冊だけだが、韓国ではすでに10冊くらい出ているというから、いかにハマっている人が多かったかということ。この謎本を読んである程度は分かったけど(でもこの本ねえ、事件のあらましは20ページくらいで、あとの残りは小説なのよ。まぁこの小説を読むと事件の詳細が分かるんだけどね)こんなものに補足してもらわないといけない映画なんて本来なら認められないでしょ。まぁでも実は3時間近くあったフィルムをカットしまくって118分まで縮めたというから分からないところや辻褄の合わないところがあるのは当然かも。完全版として世に出して欲しいと思ってるけど。

ソッキュとウナといえば『八月のクリスマス』で共演した人たちだけど、今回はその片鱗も見せずに過去にそれぞれ傷を持つ男女を演じている。ソッキュは好きだけど、だんだん島田紳助似になってきてるのが心配だったりする(笑)
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私が愛したギャングスター('99イギリス=アイルランド)-Nov 2.2000
[STORY]
マイケル・リンチ(ケビン・スペイシー)は失業保険で生活しながら、一方では銀行強盗をする男。頭の回転が早く、警察に捕まっても裁判になっても釈放されてしまう。しかしある時、仲間割れが原因で窮地に追い込まれてしまう・・・。
監督サディウス・オサリバン(『ナッシング・パーソナル』)
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アイルランドに実在した強盗をベースに脚色された強盗犯を演じるスペイシー。これがアカデミー主演男優賞を受賞した『アメリカン・ビューティー』後初の出演作だ。リンチは強盗でありながら普段は失業保険を貰い、非常に物分りの良い2人の妻(?!)と子供たちの良きパパでもある。2人の妻のうち1人は本当の妻で、妻の妹が2号さんなのだが、お互い嫉妬することもなく助け合っていてとても仲がいい。子供たちもパパが強盗であることを知ってか知らずか素直で尊敬している。どうすればこんな家族関係を作れるのか不思議でならない。それもリンチの人柄のなせるわざか。

リンチを演じるスペイシーは力が抜けていて、非常に楽しそうだった。どんな役でも人を食ったようなところがあるが、今回はその特徴をフル活用している。お金に執着せず、警察や政府に対して反抗するために強盗し、彼らを出し抜くことが最大の快楽となっている男。相変わらず上手いけど、今回は小手先の上手さと取れなくもない(スペイシー好きにしては厳しいぞ<自分)力の入った作品後のリハビリと言われても仕方ないかもよ。でも、だからといってこれをイギリスやアイルランドの役者がやったら失業と貧困を表現してもっと泥臭くなってたかも。それが悪いわけじゃないけど、この映画の場合はそれを見せてはいけないのだと思う。泥棒がちっとも悪いことに思えない、罪悪感を持たせない作品にしようとしたのだから。

チラシに「まるでルパン三世のよう」と書かれているが、リンチのキャラクターばかりが前面に押し出されていて、あとの登場人物たちの薄さがルパンとは比べ物にならない。せめて銭形のとっつあんのようなしつこさを持った刑事が出て欲しかった。また『マイ・ネーム・イズ・ジョー』でカンヌの主演男優賞を取ったピーター・ミュランが、端役とまではいかないが別の人が演じても構わないような役で出てるのにびっくり。やはりアメリカの主演男優には勝てないもんですかね(うーん)もう少し活躍させてあげたかった。全体的に面白いことは面白いんだけど、大好き!と言えるような作品じゃない。どこかちょっと足りないなーと思うのは、そんなバランスの悪さかもしれない。
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ダンサー・イン・ザ・ダーク('00デンマーク)-Nov 1.2000
[STORY]
チェコからアメリカにやってきたセルマ(ビョーク)は一人息子を育てながら工場で働いている。彼女は失明寸前であり、手術を受けない限り息子もまた失明する恐れがあった。そのため昼夜を問わず働き手術費を貯め、ようやくそれが叶いそうになったある時、大事なお金を盗まれてしまう。
監督&脚本ラース・フォン・トリアー(『奇跡の海』
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*これから見る予定の方は、先入観を持たないためにも以下を読まないことをおすすめします

2000年度カンヌ国際映画祭パルムドールと主演女優賞受賞。ということで『奇跡の海』よりすごい映画なんだろうと期待していたけど・・・。

主人公の女性が愛する人のために自らを投げ出すというのも同じだし、思い込みの激しさはセルマも『奇跡の海』のベスも変わらない。ハタから見れば何て馬鹿なことを・・・としかいいようがない行動でも、ベスが信仰と夫の言葉によって単独で頑張るのに対し、セルマは周りの迷惑も省みず目的のために突っ走る頑固者であるというところがいかん。失明や貧乏を盾にして人に甘えてるだけじゃん(怒)特にセルマの親友キャシー(演じたのはあのカトリーヌ・ドヌーヴ)はいい迷惑だったと思うよ。とにかくセルマは好かん!

また同じ転落人生でも『マイ・ネーム・イズ・ジョー』のリアムのように斜面をゴロゴロ転げ落ちていく人には手を差し伸べにくいが、セルマの場合は手がいくつも出てるのに進んで断崖からダイビングしてるからどうしようもない。ここまでくるとマゾですな(笑)ていうか最後のほうはさっさと早く○ね!くらい思いました(鬼畜)

でも人の死や母子の愛情を見せつけられると、どんな形であれ泣いてしまう。セルマにはあまり同情できないが、息子が可哀相だなぁと思ったり、自分や自分の母親のことを思うと自然と涙が出てしまう。あたし騙されてるよなーと思いながら泣いた。なんかすっごい悔しい(笑)

とにかくセルマのことを純粋無垢と取るか、それともバカ正直で無知な女と取るか、その解釈によってこの映画の評価も変わるだろう。私の場合は概ねバカ女寄りだけど、セルマの愛情の深さと意思の強さには尊敬する。ただしその行動の仕方に異論ありなのだ。

話題のミュージカルシーンについては100台のカメラを使ったという割には、その効果があまり見えてなかったように思う。もっといろんな角度から、周りをすべて見渡せるような広い映像を期待してたのに意外に狭く感じた。そうそう、国際映像シンポジウムに参加したんだけど、カメラをどの位置に設置し、どんな風に撮影したか知りたかったのに(メイキングが見られると思ってた)デジタルビデオカメラを使う意義みたいな話ばっかりで残念。
またビョークの声は好きだけど、メロディがどれも同じようで最後のほうは飽きた。橋の上で汽車に乗りながら唄う歌くらいしか覚えてないや。
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ジャニスのOL日記('99イギリス)-Oct 29.2000
[STORY]
鬱病の母親の治療費を稼ぐため、ジャニス(エイリーン・ウォルシュ)はグラズゴーからロンドンへとやってきた。しかしなかなかいい仕事に恵まれない。そんなある時、親友のつてで自動車会社の派遣会社として働けることになったが、スパイ事件に巻き込まれ・・・。
監督&脚本クレア・キルナー(初監督作)
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原題は『ジャニス・ベアード 45WPM』で、私が見た時もこのタイトルだったんだけど、劇場公開時は上記タイトルになるそうなので、こちらもそうしました。この原題の「45WPM」というのは「45 Words Per Minute」の略で、1分間に45単語打つことができること。この45単語というのはタイプ技術の最低レベルで、つまりジャニスは派遣社員としててんでお話にならないってことなのだ。面白いタイトルだと思う。でも公開となると「45WPM」をいちいち説明しなきゃでそのまま使えない。だからって「OL日記」にするこたぁないと思うけど(笑)配給会社としてはOLの支持を集めたいだろうから仕方ないかも。ポスターも漫画『平成よっぱらい研究所』の二ノ宮知子のイラストを使っていて可愛らしい。映画祭出品に関係なく普通に公開されたとしても私は見に行ったと思う。まぁぶっちゃけた話、日本人のわたしらがイギリスのOLさんたちを見ても共感できる部分て少ないんだけどね。

分かりやすいサクセスストーリーで、流れとしてはハリウッド映画に近いものがあるけど、次第に主人公が綺麗になっていく――なんてことがないのがいい(笑)綺麗な服を着てもやっぱりブサイクで垢抜けなくてドジなところはやはりハリウッドとは違いますな。決してリアルな話じゃないけど、母親の病気に関しては真剣で浮かれ過ぎてないし(それがもっと面白くなるであろう可能性を消してるような気がしないでもないが)でもクライマックスはまさかここまで派手にやってくれるとは思わなかった。最高のプレゼンですね。思わず買っちゃおうかなーって思わせてくれる(いや、買わないけど)爽快だった。

初めての長編作品にしてはいい出来だけど(偉そうでごめん)編集はあまりうまくないかな。繋ぎがガタガタしてる箇所があって、せっかくノッてきたのに集中力を削がれてしまうことがしばしば。撮影したのにカットした部分もあるそうなので、それが理由なのかもしれない。でもずっと普通のOLをやってきた監督ってことで親しみ持てるので、次回作に期待!あまり難しいテーマに挑まず、等身大の映画作りをして欲しい。
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漂流街('00日本)-Oct 28.2000
[STORY]
中国へ強制送還されるケイ(ミッシェル・リー)を救出し、警察から追われることになった日系ブラジル人マーリオ(テア)。2人は国外逃亡を図ろうとするが資金がない。そこでヤクザと中国マフィアのコカイン取引現場から現金を盗み出そうと計画する。しかし盗み出せたのはコカインだった。今度はマフィアのコウ(及川光博)とヤクザの伏見(吉川晃司)からも追われるハメになる。
監督・三池崇史(『DEAD OR ALIVE 犯罪者』)
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原作は馳星周の同名小説で、映画化は『不夜城』に続き2作目。これもまた映画の前に急いで原作を読んで臨んだんだけど(人間関係がごちゃごちゃしてそうだったから)はっきり言って原作とは全く別物で、読む必要なんてなかった。合ってるのは登場人物の名前くらいで、あとはほぼオリジナルと言っていいような作品。ここまで違ってると「原作と違う!」とか「原作よりつまんない」なんて感想は出ませんね。ていうか原作は読むのが嫌になるくらいキツかったので、映画が同じような感じだったらもっと嫌だなーと思ってたから、いい意味で裏切ってくれて良かった。

最初の数分で笑わせてくれた上に驚かされた。その時に「これはこういう映画なんだぞ」って宣言されたようで、それならこっちも原作のことをすっかり忘れて「よぉし!」と腹を括れた。舞台も新宿でなく渋谷の街を多く使ったので雰囲気もまるで違っていたが、この映画にはよく合っている。でも『漂流街』っていうハードボイルドなタイトルとは、どんどんかけ離れていくのが分かって「いいのか?」と心配になったけど。

ヤクザの伏見とその舎弟・山崎のコンビがいい。吉川晃司には失礼ながらまるで期待してなかったんだけど、登場人物の中でワタシ的に1番良かったもの。そして山崎役には帽子を取るまで誰だか分からなかった野村祐人。2人の掛け合いがいい味出してた。ミッチーは中国語を喋るシーンが危なっかしい感じで、アクションシーンよりもハラハラしてしまった。

軽くてノリのいい感じが心地よかったんで、売春婦ルシアと盲目の少女カーラが絡んだシーンで急に湿っぽく、さらにテンポまで悪くなってしまったのがちょっとね。それとせっかくミッシェル・リーっていう美女を使ってるのに、その魅力がほとんど引き出されてないのも残念。ただの連れ回し美人に過ぎなかった。まぁこれは男の映画だからね。エンドクレジットもやっぱり“男と男!”でした(笑)

今回もゲスト出演した馳星周は『不夜城』のティッシュ配りから昇格して(笑)今回はかなりオイシイ役だった(カッコいいんだ)下手に演技しなくていいし、こういう使い方はナイス。
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