Movie Review 2005
◇Movie Index

エメラルド・カウボーイ('02コロンビア)-Feb 5.2005
[STORY]
エメラルドの世界最大産地コロンビア。この地で鉱山、輸出会社、警備会社を経営する1人の日本人がいた。彼の名前は早田英志。1970年代に単身コロンビアに渡り、エメラルドの原石を売買する“エスメラルデーロ”となる。しかし危険も多く、家族を誘拐されそうになったりゲリラに命を狙われることもあった。
監督&主演・早田英志
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当初はアメリカ人の監督や俳優が製作するはずが、危険すぎるということで本人自らが製作・監督・主演した自伝的映画。2003年に全米公開、そして2004年にはコロンビアで公開してヒットしたらしい(そのかわりもっと脅迫が増えたようだ)
私は去年、映画館でチラシを見るまでこの人のことを全く知りませんでした。海外で活躍する日本人というだけで素直にスゲエ!と思ってしまう私は、本人が監督・主演というのに不安があったけど見に行ってみた。しかも若い頃の自分をコロンビア人が演じているということで(最初は日系アメリカ人が演じる予定だったが帰っちゃったんだそうだ)ひょっとしてバカ映画かも?という不安もあったんだけど、かなり真面目な作りだった。

物語の進め方やカット割りは稚拙だけど、素人が作ったインディーズフィルムと思えばなかなかの出来だ。だけど、早田氏本人の中ではストーリーが完璧に出来上がっているんだろうが、初めて見る人にとっては端折られてて不親切だと思うシーンがたくさんあり、このシーンがどういう状況なのかを理解するまでに時間が掛かったりもした。「そこでテロップ出すのはおかしいんじゃないの?」と思わず修正したくなるシーンもあり(笑)また、私は彼がどうやって成功したのかが一番知りたかったわけだが、そういうところをほとんど描いてなかったのが残念(やはりそれは秘密なのか?)

でもエメラルドの取引で相手と交渉するシーンはなかなか面白かった。石を見て、カットされた時の値段を予想し、相手の出方と心を読まなきゃいけないんだから大変だ。経験はもちろん大事だけど、ギャンブル性も持ってないと勤まらないだろう。そして儲かればいいが、金持ちになると今度は命を狙われる。早田氏が慣れた手つきで防弾チョッキを着て銃を装填するシーンを見て、これを毎日やっているのかと思うとゾッとした。銃撃戦も実弾を使ったんだろうか?音がリアルで怖かったな。実際に撃たれて意識不明になったこともあったらしい。それでも辞めずに危険なところへ行くんだよね。生涯いち“エスメラルデーロ”みたいな。で、そういう人のところにさらにお金が入り、信頼が集まってくるのかもしれないな。

そうそう、彼の若い頃を演じたコロンビア人はかなり控えめに演じていて、早田氏本人は俺様全開で激しく演じていたのが笑った。しかも悪い誘いをピシャリと断り、清廉潔白さをアピール。ちょっとカッコ良すぎじゃないですか。コロンビア人の彼は本人を目の前にして演技しづらかったのかもしれない(笑)
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オペラ座の怪人('04アメリカ)-Jan 29.2005スキ★
[STORY]
1919年パリ。かつてオペラ座だった場所ではオークションが開催されていた。そこには年老いたラウル・シャニュイ子爵(パトリック・ウィルソン)とバレエ教師だったマダム・ジリー(ミランダ・リチャードソン)の姿があった。やがて落下したシャンデリアが紹介され、2人に悲劇の起きた1870年代の記憶がよみがえる。
当時オペラ座では奇怪な事件が続いており、この日も稽古中にプリマドンナのカルロッタ(ミニー・ドライヴァー)の頭上に幕が落下する事件が起きる。カルロッタは激怒して舞台を降板、代わりにダンサーのクリスティーヌ(エミー・ロッサム)が起用され舞台は大成功する。しかしその夜、彼女は仮面の男ファントム(ジェラルド・バトラー)に連れ去られる。
監督&脚本ジョエル・シューマッカー(『フォーン・ブース』
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全世界で8000万人もの人が見たというアンドリュー・ロイド=ウェバー(以下ALW)の同名ミュージカルの映画化。15年前にすでに本作を映画化することを彼は決めていて、シューマッカーに監督を依頼していたそうだ。本作では製作・脚本・作曲を担当している。

私は1995年の劇団四季の公演を1度だけ見てて、もう10年も前のことだからほとんど忘れてしまったのだけど、ファントムの役者さんはよく覚えている。歌は素晴らしく上手いのだが、小柄で顔が大きかったので四頭身くらいに見えちゃって、時たま思いっきりカッコつけたポーズで歌ったり動いたりするのが笑いのツボに入ってしまい、真剣に演じている人に対して失礼だと思いながらも、ずっとニタニタし通しだった。結局、若い女の子に言い寄るあぶないオジサンが振られちゃう話という認識しかない(・・・オペラ座及び四季ファンに怒られそう)

で、今回はその失礼な認識を消すためと、ALWプロデュースということと、予告であのシャンデリアが上がった途端に劇場が1870年代になるシーンを見てこの映画を見ようと決めたんだけど、本編でのあのシーンは予告で見た時よりもさらに良かった。鳥肌が立つなんてもんじゃない、電気が走ったようにビリビリした震えが体中を駆け巡って、のっけから涙が出そうになった(劇場の音響も良かった)ちょっと大げさだけどここだけ100回リピートしてもいいです。

次に驚いたのはクリスティーヌを演じたロッサムの歌。まさかこんなに歌える人とは思ってなかった。自信なさそうに皆の前で歌うところから、ぐるりと回転して歌姫になるところは物足りない演出だし新鮮味もないが、彼女の初々しさと歌声に説得力があるので、ラウルが彼女に恋してしまうのも十分理解できる。

その後ファントムが初めて姿を現すんだけど、ここではファントムよりオペラ座の地下のセットに目が行ってしまって実はあまり印象にない。地下水路を小船に乗ってファントムの棲家まで行くんだけど、これがまるでディズニーランドのアトラクションみたいなのだ。地下にしては明るすぎるし、不気味さを全く感じない。墓場でのシーンも背景が描いた絵みたいだったし、わざとリアルにせずに舞台をベースにしている作品だということを、常に意識させるためなんだろうか。ALWの主張?(笑)

なんてことをつらつらを考えているうちにマスカレードが始まり、歌とダンスの素晴らしさに魅入っていると、そこに真っ赤なコスチュームのファントムがゆっくりと階段を下りてきて・・・かっこいい。すごいカッコイイ!ここで初めてファントムをカッコイイと思いました。周りの人々が抑えた色のコスチュームを着ているせいか余計に際立っていて、お色気ムンムン(死語)ですよ。そこから先はずっとファントム贔屓に。ドン・ファンのシーンでは、クリスティーヌよ、そのままファントムと行ってしまえ、いやむしろ私が行く!と1人熱くなっていました(バカ)

そんなわけでファントムがクリスティーヌとラウルを解放するシーンではボロボロ泣いてしまい、バトラーは言われている通り歌はロッサムやウィルソンほど上手くはないけど、声に気持ちがこもっていて演技も上手い。舞台ではファントムはオペラ座に棲む幽霊のようなものだったけど、本作では生い立ちも描かれた生身の人間だったので、彼の悲しみが余計に伝わった。ただ幽霊じゃないとすると、いろんなところに素早く現れるマメな人、という感想も(笑)
逆にロッサムは表情に乏しく、クリスティーヌの気持ちがどこにあるのか分かりにくかった。元々難しい役ではあるんだけど、2人の男の間をふらふらする人形みたいだった(あ、ファントムさんはフィギュア愛好者だからいいのか)

比較の対象とするのはおかしいけど、同じくミュージカルを映画化した『シカゴ』に比べてると完成度はずっと低いと思う。アカデミー賞の主要部門にノミネートされなかったのも頷ける。だけど完璧だったから一度見ただけで満足してしまった『シカゴ』に対し、本作はそうじゃないからまた見たくなる、完成してない舞台みたいな映画なのかもしれない(ALWの思うツボなのか?)なので時間が取れれば劇場でもう一度見たいと思う。
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オーシャンズ12('04アメリカ)-Jan 25.2005
[STORY]
ダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)たち11人に大金を奪われたベネディクト(アンディ・ガルシア)の復讐が始まった。2週間以内に奪った金を返さなければ命はないという。新たに強盗するしかない手はない、とライアン(ブラッド・ピット)の計画によりアムステルダムに向かう。その頃、ユーロポールの捜査官イザベル(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)もダニーたちをマークしていた。
監督スティーブン・ソダーバーグ(『オーシャンズ11』
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前作から3年後、ベネディクトに探し当てられた11人がヨーロッパで犯罪計画を実行する。ラスティの元恋人が捜査官として彼らの前に立ちはだかり、世界一の強盗と呼ばれるライバルまで登場する。

前作の11人(プラス3人くらい)に加えてさらに登場人物が増え、盗みの計画も一箇所ではなくヨーロッパ各地に飛び、ストーリーも複雑になってずいぶん混乱させられた。しかもさりげないところに伏線があり、出演者たちの過去の作品のパロディや感想が出てきたり、出演者たちの内輪ネタもあるようで、ネタを拾えた者が勝ち組、拾えなかった者はポカーンとするしかないというキビシイ作品になった。
私は『11』はお気に入りなんだが、本作は楽しめなかった部分が多く、ネタばらしのシーンになってようやく「そうだったのか!」とか、家に帰って分からなかったところをネット検索して「あれはそういう意味だったのか!」とようやく理解。リアルタイムで楽しめなかったのがすごく悔しい。自分もチームの一員になったような一体感を持てた前作と比べて、今回は仲間ハズレにされたような気がする。もう一度見たらスッキリするだろうか。

今回はオーシャンよりもライアンのほうがメインで『ライアンズ12』のほうが合ってるんじゃないの?(笑)と思った。メンバーからの信頼もオーシャンよりライアンのほうが高くて笑ってしまったし、オーシャンが「俺って50歳に見える?」と真剣にメンバーに聞いてるところは最高だった(クルーニーが1961年生まれで、ピットが1963年生まれで2歳しか違わないのを意識してか?てゆーかピット若すぎ)
あと単純にパート2だから『12』なのかと思ってたんだけど、終わってみればちゃんと12人チームになってたのが上手いと思った。次回作があるとすれば13人チームなのは間違いないしね(ただ不吉な数字だが。それを面白くネタにしそうでもある)

個人的にはパート3も是非やってもらいたい。次は順番からしてマット・デイモンがメインとなって、彼がオーシャンやラスティさえも騙して犯罪を成功させる物語ではないかと予想しておく(ついでにネタバレ予想→ベネディクトとフォックスもお約束の逮捕・拘留
でもこれ以上、登場人物は増やして欲しくはないなぁ。それでなくても本作は11人も必要ないじゃん、という計画ばかりでそこが楽しめなかった理由の1つでもある。早々に逮捕されてラストまで出てこないものまでいるんだもの(スケジュールの都合だったかもしれないが)次回はその道のプロの、プロフェッショナルな仕事と抜群のチームワークを見せてほしい。
あ、ちなみに私は11人の中では配線のプロ、リビングストン(エディ・ジェミソン)が好きです。なんかトボけててかわいい。
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レイクサイドマーダーケース('05日本)-Jan 22.2005
[STORY]
別居中の妻・美菜子(薬師丸ひろ子)の連れ子が中学受験を控えて湖畔の別荘で合宿をすることになり、並木(役所広司)はしぶしぶ参加する。合宿には並木たちのほかに2家族が集まり、塾の講師である津久見(豊川悦司)が親子面談の訓練などを行っていた。しかしそこへ並木の愛人である英里子が訪ねてきて、夜になったら自分が泊まっているホテルに来るよう誘われる。並木は一旦はホテルへ向かおうとするが別荘へ引き返す。するとそこには英里子の死体があり、美菜子が殺したというのだ。並木の驚愕をよそに、家族たちは事件の発覚を恐れ、死体を湖に沈めてしまおうと提案する。
監督&脚本・青山真治(『EUREKA』)
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原作は東野圭吾の『レイクサイド』(未読です)映画化は『秘密』『g@me』に続き3作目で『変身』も2005年公開予定。実は過去の2作とも見てないんだけど、NHKで放映されたドラマ『悪意』は面白くて毎週楽しみだったな。それから青山真治の映画を見るのは初めて。で、何で今回はこの映画を見ようと思ったかというと、どこかの解説か批評でこの映画に出てくる死体が『ツイン・ピークス』っぽいと書かれていたのに興味を持ったのと(むかし大好きでハマってたんで)映画のタイトルに惹かれたから。ただの『レイクサイド』だったら見てなかったかもしれません。映画のタイトルのほうが座りがいいし、昔から殺人事件という言葉に興味を掻き立てられる性質なんだなぁ(笑)

というわけで見てきましたが、内容は全然『ツイン・ピークス』じゃなかったし(それはあらかじめ分かってたことだけど)死体もローラ・パーマーほどのインパクトはないんだけど、ちゃんと裸を見せてたのはエライ。それなのにラストで「り、理由ふたたび?!」なヘンなCGにされてしまって可哀相だと思った。台無し。最初のほうのシーンで蝶が潰されるシーンがあるんだけど、あそこまでベッタリなりません(蝶踏んだこと実はある)あれもやりすぎだと思った。

“お受験”という題材がちょっと古いなぁとは思ったけど、そこから親が我が子でさえ何を考えているのか理解できない、というところへ持って行ったところは面白いと思った。素直に受け答えをして、言われた通りに勉強する子供たちだが、そこに子供らしさ、いやその前に人間らしさが見えない。薄気味悪ささえ感じさせる演出は上手い。特に並木の娘は大人びていて、並木と話をするシーンは「ひょっとして並木ってロリ?!」とドキリとさせられた。柄本明が演じた藤間の息子のうつろな目も気になった。そして藤間も死体を冷静に処理していくところに不気味さを感じつつ、手際の良さが頼もしいと思えるところがあって、死体処理する姿に頼もしいってのもヘンなんだけど(笑)淡々としてるのに際立った存在感。さすがだ。
それに比べて関谷夫婦(鶴見辰吾&杉田かおる)は一番分かりやすい反応を見せる一般的な人らしく見えたし、彼らの子も鈍くさいけど努力でここまでやってきたという感じ。でも並木の娘に従順そう・・・(笑)
つい事件そのものに目が行ってしまったが、親子関係にももっと目を向けて見るべきだったなーと思った。もう一度見ると違った印象の映画になりそうだ。
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ネバーランド('04アメリカ=イギリス)-Jan 15.2005
[STORY]
1903年ロンドン。新作の芝居に失敗した劇作家のジェームズ・バリ(ジョニー・デップ)は、公園に出かけて新作に取り組もうとしていた。そんな彼の前で少年たちが騎士ごっこで遊んでいた。彼らはデイヴィズ家の兄弟で、母親のシルヴィア(ケイト・ウィンスレット)は夫を病で亡くしたばかり。バリはそんな彼らのために愛犬とのダンスを披露し、喜ばせる。しかし三男のピーターだけは夢を持つことや空想することを拒絶し、バリにも打ち解けない。ピーターに幼い頃の自分を重ね合わせたバリは、次第に彼らと1日の大半を過ごすようになる。
監督マーク・フォースター(『チョコレート』
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原案は『ピーター・パンだった男』という戯曲で、バリが『ピーター・パン』を書いた時のエピソードなどを忠実に描いているわけではないそうだ(と、映画を見た後に知りました。事前に情報入れてなかったんで)実際はシルヴィアの夫は生きてるし、兄弟も5人だったし、バリが妻と別れたのは50近くになってからだった(と、映画を見た後に調べました)ちなみに『ピーター・パン』が初めて上演されてから100年にあたる2004年にこの映画は製作されました。

プロデューサーは違うけれど、同じミラマックスの映画のせいか『恋に落ちたシェイクスピア』に似てるなぁと思った。あの映画ではシェイクスピアとヴァイオラとの恋が彼の戯曲の元となっており、芝居を上演するシーンが最高に良かった。本作でもバリがデイヴィズ家との交流を通して『ピーター・パン』を書き上げて、それを上演するシーンが私の一番のお気に入りだ。
(ちょっとネタバレになるけどこのまま書きます)一体どんな舞台が出来上がるのか?役者も興行主もバリを信じられないままに初日を迎えるが、招待された子供たちにつられて大人たちまでが笑い転げ、目を輝かせて舞台に見入る。役者も客たちの反応の良さを受けて芝居に熱が入る。劇場に一体感が生まれる──と。正直もっと舞台のシーンが見たかった(そういえば子供の頃に新宿コマ劇場に『ピーター・パン』見に行ったな。榊原郁恵最後の年だった)

バリとデイヴィズ家との交流は素直に泣けるし、バリと妻、シルヴィアと母親、それぞれの相手を想う気持ちもちゃんと伝わった。が、ピーターがバリに心を開いていく描写は薄くて、彼から『ピーター・パン』へ繋がっていくというのがちょっと強引(笑)もっと丁寧に描いてほしかった。ピーターを演じたフレディ・ハイモアも、思ったよりも上手くなかったな。涙をためてバリにすがりつくシーンはとても良かったが、傷ついた少年は演じきれてなかったと思う。ちょっと拗ねてるだけの素直な子という感じ。もっと危うさを感じさせる子のほうが良かったのでは。彼よりも長男のジョージが少年から大人になる瞬間のシーンのほうが印象深かった。この時のデップの演技も素晴らしい。今回のデップは彼じゃなくても演じられそうでいて、彼じゃなければ作品が成り立たないという役で、19世紀のイギリスが舞台の作品の中でも浮かずに難なく嵌ってて、改めていい役者さんだなぁと感心した。
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